孫 正義 グループ代表挨拶 2015年

ソフトバンクアカデミア特別講義
「Singularity~情報革命が導く世界~」

2015年10月22日、これからのソフトバンクグループを担う後継者発掘、育成を目的として設立されたソフトバンクアカデミアでは、在校生と入校希望者などを対象とした特別講義を開催しました。特別講義ではソフトバンクグループ株式会社 代表取締役社長の孫 正義が講演を行いました。

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シンギュラリティが意味するもの

Singularity(シンギュラリティ)—。
これが何を意味するのか、われわれの未来に何をもたらすかについて少し語ってみたいと思います。

シンギュラリティという言葉の意味は、技術的特異点、つまりあるクロスポイントをもって事が起きるということです。ここで言うシンギュラリティというのは、「コンピューターのAI(Artificial Intelligence)が人間の知能を越える日」ということ。これが何を意味するかというと、地球の歴史上で最も高度な知能を持っている人類を初めて越えるものがこの地球上に存在することになるということです。

これまでコンピューターは記憶・計算・検索などの点においては人間を上回っていましたが、人間は考え、予測することができ、創造力を持っている。感情を持っている。そういう点で人間の知能はコンピューターを上回っていると思ってきました。そのためか、コンピューターが人間の知的能力を上回る日が来ることを信じたくないという人が大勢います。しかし私はこのシンギュラリティがかなり近い将来、少なくとも30年以内にはやってくると思っています。

AIのIQが人類を超える

人類の知的能力を測る指数としてIQが一般的に使われています。一般の人々の平均値を100とするとその標準偏差からどのくらい遠くに位置するかで、知的能力の優位性を測ります。アインシュタインやダヴィンチは200くらいあったのではないかといわれていますが、300あるという人は聞いたことがないので、200あれば普通の人が考え付かないくらいの天才だということになります。

さて、このIQが30年後にどのくらいになっているか。コンピューターのAIは、30年後にどのくらいになるかを私なりに推測すると、なんとIQ10,000にもなります。100に対して200が天才というならば10,000はどうでしょうか?今まで人類に存在していなかった300すらはるかに超える数字です。どれほど想像を絶する知能を持っているか。それが30年後くらいにやってくると想像したら、もう歴然とした差になると思います。

30年後にIQ10,000でなかったとしても、それが40年後だったとしても、私に言わせれば誤差の範囲内です。人類が地球上に生まれて2万年といわれ、2,000年前に西暦が始まりましたが、数千年前の中国ではいろんな文明が発達し始めていました。これから1,000年、2,000年はあっという間に過ぎていきます。その中で30年の差は誤差だということです。

つまりそのくらいの誤差の中でIQ10,000を超える知的活動ができるものが地球上に生まれ、われわれの想像を絶する時代がやってくるというわけです。

2018年に起こるクロスポイントとは

今から20年前に、ハードウエアとしてのコンピューターの能力が人間の能力をいつ超えるかということを推論しました。人間の脳は2進法で、ニューロン(神経細胞)の接触の有無によって「0」と「1」の関係を表しますが、コンピューターチップの中で電気の流れをコントロールするトランジスタも通電の有無によって、記録や記憶をしていきます。どちらもまったく同じ2進法だということです。物理的なちょっとした違いは誤差であり、人間の脳もトランジスタも同じロジックで成り立っています。

トランジスタの数が、人間のニューロンの数を超える物理的なクロスポイントがいつになるのかを20年前に推論し、また4、5年前にも検証し直しましたが、2018年でした。2018年には300億個のトランジスタが一つのチップに入るということです。物理的なハードウエアが人間に追いついたとしても、人間の方が賢いという人もいますが、私から言わせれば時差だ。ハードウエアが人間を追い越して、次にソフトウエアが追い越していく。

ハードウエアの能力がどのくらい人間の脳を上回るかというと、2018年にはクロスポイントを迎え、そこから30年後には100万倍になると思っています。これまでは、人間がプログラムを作っていたのだから、コンピューターが人間にかなうわけがないと多くの人が言います。人間の脳は見るもの、聞くもの、触るもの、経験するもの全てを取り込んで、自己学習していきます。それを“ディープラーニング”といいますが、これがコンピューターAIの新しい手法であり、ディープラーニングは誰かがプログラミングするのではなく、頭の中で触れたもの全てのリレーショナルデータベースができ、経験値となって推論などに役立っていきます。

同じようにトランジスタもディープラーニングすると、人間の能力のように全部自分で取り込んで賢くなっていく。つまりハードウエア的には100万倍の能力を持つようになるということになります。

次のクロスポイントは「ロボット」

もう一つの数字を挙げたいと思います。現在、地球上に70億人が住んでいるといわれていますが、30年後には100億人になるでしょう。私は30年後にはロボットの数がクロスポイントに達すると思っています。ロボットの数が人類の数を超えていく。想像できますか?ロボットというと「Pepper(ペッパー)」だけではなく、車も自動操縦が可能となり、走るロボット=自動車のようになるでしょう。ありとあらゆる形のロボットが生まれ、AIを持ち、全てインターネットやクラウドにつながり、人間の知能をはるかに超えたスマートロボットが多数存在する世界が来るかもしれない。

今、われわれはインターネットにつながるものを何台持っているか?一人当たり平均2台と言われていますが、30年後には1,000個くらいになると思います。そうすると地球上に10兆個のIoT製品が溢れる、電化製品だけではなくて衣服も文房具もありとあらゆるものがインターネット・情報につながる世界が来るでしょう。

三つのキーとなるテクノロジーを挙げるとするならば、IQ10,000、人間の100万倍の脳細胞を持った「AI」、それを搭載した「スマートロボット」、それらを含めたあらゆるものがインターネットにつながった「IoT」。これらのシンギュラリティがこれからたった30年で訪れる、その時、人間とコンピューターやロボットの関係性はどうあるべきでしょうか?

シンギュラリティ。情報革命が導く世界

シンギュラリティ—。

この日がやってくることが人類にとって良いことなのか?悪いことなのか?進化なのか?破滅なのか?考えてみて欲しいと思います。私は性善説、楽観的な考え方なので、それだけ知能を持ったコンピューターは人類にとってきっとすばらしいものになると信じています。

1,000年前、毎日生きるために殺し合う時代がありましたが、今はそんな時代ではなく、人間はより社会性や理性を持ち助け合うことで、社会が良い方向に進化してきていると思っています。昔の野蛮な時代よりは良くなっている。人間の知性・理性・社会性・モラル・エチケットなどが進化するように、われわれの知能をはるかに超えたコンピューターが、地球を破滅に導くことは防いでくれると思っています。コンピューターと共存できると信じたい。そうなった時に、言葉のバリアーはなくなり、未来の予測も簡単にできるようになるでしょう。人々はコンピューターを道具として使い、コンピューターも人類と共存しながらより良い社会をつくっていくのだと思います。事故のない車社会、300年後には人々の平均寿命は200歳くらいになり、しかも若々しく生きていけると思います。

情報革命は進化であり、調和である。
シンギュラリティは、人類がこれまでに解決することができなかった課題や問題に対する知恵と力を提供してくれる。つまり情報革命は人々を幸せにしてくれる。

良い時代がくるように、情報革命を担う一員として貢献していきたい。
情報革命は人々の幸せのためにあると信じています。

(掲載日:2015年11月12日)