CSRトピックス 2010年

新しい視聴覚教育の実践に取り組む iPhoneで街中の音を集める
「サウンド・コミュニティ・プロジェクト」

ソフトバンクモバイル株式会社は、社会貢献活動の一環として、「次世代の育成」「環境」「福祉」の3分野での貢献を目的とした活動を行う非営利団体に対して、一定の条件の下、携帯電話の短期無償貸出を行っています。今回は、この制度を利用して、iPhoneを使った新しい視聴覚教育の実践に取り組んでいる川口市立映像・情報メディアセンター「メディアセブン」(埼玉県川口市)のディレクター、氏原 茂将さんにお話をうかがいました。

“新しい視聴覚教育”への挑戦

インタビュアー:
「メディアセブン」では、“新しい視聴覚教育”の実践に取り組んでいるそうですね。
氏原さん:

埼玉県川口市の中央図書館に併設された「メディアセブン」は、現代版の視聴覚教育を実践する場として2006年7月に開館しました。インターネットやパソコンが家庭に普及し始めた2000年頃から、「映像などを見たり聞いたりするだけの視聴覚教育から、子どもたちがパソコンなどを使って自ら創る視聴覚教育へ」と、現代版の新しい視聴覚教育が求められるようになってきました。そこで設置されたのが「メディアセブン」です。メディアリテラシー教育を実践できる専門性を身につけたスタッフが必要とされたため、そのノウハウを持つ私たち「NPO法人 Community Design Council」が開館当初より企画・運営に携わり、 2009年度より指定管理者となっています。

「メディアセブン」では、録音スタジオやプレゼンテーションスタジオなどの施設を利用者に貸し出しているほか、視聴覚教育のワークショップや映画上映会、パソコン講座、トークイベントなどを開催しています。従来型の携帯電話を利用したワークショップは以前にも開催していましたが、iPhoneをワークショップで活用し始めたのは、2010年に入ってからのことです。

インタビュアー:
新しい視聴覚教育を実践する上で、ワークショップにiPhoneを活用することになった経緯についてお聞かせください。
氏原さん:

ワークショップのひとつに、子どもたちが街の音やインタビューの音声を録音して集める「サウンド・コミュニティ・プロジェクト」があります。身の回りの音を注意深く聞きながら集めるという行為を通して、当たり前だと思っている生活圏を、再発見するきっかけとなることを目指したワークショップで、国内では仙台市や山口市、海外では台北市で行った実績があります。しかし、録音機械で街の音を録音して集約する作業は、想像以上に手間がかかり、それが足かせとなって、長らく実施されていませんでした。

2007年と2008年には、携帯電話で撮影した映像を集めた映画祭「ポケット・フィルム・フェスティバル」が横浜市で開催され、それに合わせて、「メディアセブン」でも携帯電話で映像を製作するワークショップを実施しました。ところが、携帯電話で撮影した動画を、パソコン上で特別なソフトウエアを使って編集し、再び動画データを携帯電話に戻して視聴しなければならず、「携帯電話ですべて完結できればいいのに」と強く感じました。そうした状況が、iPhoneの登場で大きく変わりました。屋外で録音ができ、さらに搭載されているGPS機能を使い、インターネット上の地図に簡単にマッピングすることができるようになったのです。

当初は、子どもたちがiPhoneの操作方法を理解するのに時間がかかるのではないか、という点が気がかりでした。しかし、そんな不安を吹き飛ばしたのが、2010年2月に「メディアセブン」で開催したワークショップでした。このワークショップでは、講師役の大学院生が開発したiPhoneアプリケーションを利用して、指先に反応して動くアニメーションづくりに小中学生が取り組みました。初めてiPhoneを手にした子どもたちが、即座に使いこなしている光景を私たちは目の当たりにしたのです。そこで、「iPhoneを使って『サウンド・コミュニティ・プロジェクト』を発展させよう」ということになり、ソフトバンクモバイルの無償貸出制度を利用して、iPhone20台を借り受けてワークショップを開催しました。

iPhoneを使った「サウンド・コミュニティ・プロジェクト」



インタビュアー:
「サウンド・コミュニティ・プロジェクト」は、iPhoneを活用することでどのように生まれ変わったのでしょうか。
氏原さん:

子どもたちは3人1組で、iPhoneを片手に街に出て、そろばんを弾く音、駅前のディスプレイから流れる音、川の流れる音、街角の花屋さんへのインタビューなど、思い思いに音を集めます。録音した音や音声のデータは、iPhoneに搭載されたGPS機能を使って、位置情報と共に子どもたちがその場からメールで送信します。それが自動的にデータベースに登録され、インターネット上の地図に表示されます。夏休み期間中、6月に開催したワークショップで子どもたちが集めた音や音声のデータを、「メディアセブン」施設内の大型スクリーンに「Googleマップ」を映し出して展示を行いました。その際にも子どもたちにiPhoneを貸し出すことで、さらに多くの街の音を集められるようにしました。

自分がよく通っている場所でも、その場所でどんな音がしているか、ということにはなかなか気付きません。普段通っている道でも、立ち止まって耳を澄ませてみると、意外な音が見つかります。それによって、その場所に対して抱いていたイメージが変わることもあります。「サウンド・コミュニティ・プロジェクト」は自分の住む地域を、普段は意識していない“音”の観点から見つめ直して再発見することのできる、素晴らしいプログラムだと考えています。

インタビュアー:
新しい視聴覚教育に取り組んでいくうえで、iPhoneの魅力はどのようなところにあるとお考えですか。
氏原さん:

これまで、映像や音声の編集を行うには高機能のパソコンが必要とされ、子どもたち自らが編集作業を行う上で大きな制約になっていました。ところが、今ではiPhoneを使えば、大げさな機材を必要とすることもなく、どこでも、誰でも、映像や音声の編集を行うことができます。ワークショップに参加しているときだけではなく、家に帰ってからも、子どもたちがまったく同じ作業ができるようになったのです。これはとても大きな変化です。

携帯電話というと、特に学校では、“危ない”という面が強調され過ぎている気がします。たしかに、有害サイトなどの危険から、子どもたちを守る必要はありますが、携帯電話をはじめとする新しい“メディア”に、子どもの頃からどんどん触れることも大切ではないでしょうか。「メディアセブン」のワークショップであれば、一定の使い方のルールの下で、安心して子どもたちにそうした新しい“メディア”に触れてもらうことができます。安心できる環境下で、創造力を膨らませてくれる“メディア”を、もっともっと子どもたちにとって身近で楽しいものにしていきたいと思います。

(掲載日:2010年11月29日)

[注]
  • *Apple、Appleのロゴは、米国および他国のApple Inc.の登録商標です。iPhoneはApple Inc.の商標です。
  • *iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
  • *Google、Google Mapsは、Google Inc.の登録商標です。
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