経営陣ファイル 2013年

誰かを笑顔にできるゲームを作りたい ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

森下 一喜

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ソフトバンクグループでゲームの企画・開発・販売を手掛けているガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下「ガンホー」)は、「ラグナロクオンライン」「パズル&ドラゴンズ」(以下「パズドラ」)などの作品を手掛け、多くのゲームユーザーの皆さまに厚いご支持をいただいています。今回は、同社代表取締役CEOである森下 一喜に、ゲームにかける思い、そしてどんな作品を世に送り出していきたいかをインタビューします。

「ひらめき」のある作品はヒットする

まず大ヒットとなった「パズドラ」について、どんな感想を持っていますか?

森下:大変ありがたいことですが、本当に運が良かったのだと思っています。このことに一喜一憂することなく、また驕ることなく、次なるいいゲームを作りたいと思っています。僕らはゲーム屋で、僕自身もゲームクリエイターですので、面白いゲームを作ることが生きがいですから。

「パズドラ」について、「これは行ける」という感触はありましたか?

森下:私たちがゲームを作るとき、二つのパターンがあります。一つは私がテーマやコンセプトを考えて、それを現場の担当者と一緒に詰めていくケース。もう一つは、現場の社員から企画が上がってくるパターンです。後者の場合、最初は「石ころにしか見えない」企画もありますが、どこか光っている部分があれば、私自身でも磨いてみますし、皆で一緒に考えていきます。「絶対に面白いものにしたい」と思っていますので、「パズドラ」に限らず、手掛けているゲームは分け隔てなく楽しくなるように作っています。
また、これは言葉では説明しにくいのですが、自分で作品を作っていく中で、突然強い勘を感じることがあります。頭の中でゲームの仕様やアイデアがひらめき、その先のストーリー展開が一気に開けて行くような瞬間があります。「パズドラ」もそうですが、このひらめきがある作品は、その後ヒットすることが多いですね。ただこのひらめきが訪れる瞬間は早かったり遅かったりしますので、どんな作品であっても、まずは面白くするために作っていくことが重要です。

ここで「パズドラ」のビジネスモデルを少しご紹介ください。

森下:ゲーム自体はスマートフォンで、無料でダウンロードしていただけます。これだけで十分楽しく遊んでいただけますが、ゲームを進めていく中で、なかなか敵を倒せない、せっかく手に入れたモンスターを失いたくないということがあります。そんなときに、「魔法石」というアイテムを購入していただくと、ゲーム内でメリットを得る形になっています。「魔法石」はiPhone版で1個85円、Android版では1個100円で販売しています。もちろん「魔法石」を購入しなくてもゲームを進めることはできますので、購入するかはユーザーの意思に掛かっています。

ガンホーのゲームに対する考え方に、「ゲームとは努力するもの」というものがあります。これは僕自身のポリシーでもありますが、「一生懸命頑張った結果、クリアできた」という達成感、この喜びをユーザーに味わってもらいたいのです。ではアイテムはどういう役割かというと、学習塾みたいなものだと思うのです。大学を受験する際に、独学で勉強する人もいます。この人はお金を使っていませんよね。一方、塾に通って大学に行く人もいます。塾はお金が掛かりますが、傾向や対策などを得られるため効率が上がります。これがアイテム課金です。ただし、「独学でも塾に通っても、どちらも同じくらい努力することに変わりない」ということがポイントです。例えば強力なアイテムを購入したとしても、それを使うプレイヤー自身が、それに見合うレベルに達していないと使うことができません。塾に通っても、努力もせずにすぐに大学に入れるとしたら、それは裏口入学。そういうことにならないように、努力するわけです。せっかく手に入れたアイテムが、努力の末に使えるようになったときの喜びをぜひ味わってほしいのです。ですからわれわれは、アイテムを購入しなければゲームをクリアできないという設計には絶対にしません。頑張ったらクリアできるゲームを提供することが、僕らのやり方です。

世代を超えて遊べるゲームを提供したい

最近は「パズドラ」が注目されていますが、ガンホーはオンラインゲームから事業をスタートさせた会社です。事業を始めた2000年代前半、日本ではオンラインゲームという分野はほとんどないに等しい状況でした。なぜオンラインゲームをやろうと思ったのでしょうか?

森下:そのころオンラインゲームは、アメリカでは結構流行していたのですが、日本で市場としてまったく成立していませんでした。従って、オンラインゲームへの進出は、正直早すぎたと思います。しかしそのような状況下でもオンラインゲームをやろうと思ったきっかけは、私の過去に関係があります。
ゲームに携わる以前の私は、ソフトウエアの開発や営業として順調な社会人生活を送っていました。でも自分の生き方として、「これでいいのか?」という感覚がありました。なぜなら私には昔から、「エンターテインメントの仕事がしたい。人が笑顔になれるようなことがしたい」という強い願望があったのです。エンターテインメントの仕事には、音楽や芸能などいろいろありますが、その中で一番好きなものはゲームでした。ゲームはいわば「総合芸術」です。自分自身が主人公になって、現実世界では体験できないことをバーチャルな世界で体感できるというのは、エンターテインメントの中でも唯一だと、そう思っています。

当時、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション®をはじめとしたゲーム機が全盛でしたが、それら向けにパッケージソフトウエアを提供するにしても、やはり人とは違う道でやりたい。「波とは乗るものじゃない。創るものだ」これは私のモットーですが、誰かの二番煎じではなく、自分たちで波を起こしたい…そこで着目したのが、ゲームの中でもオンラインゲームでした。

ガンホー設立後最初の大ヒットとなったのは「ラグナロクオンライン」ですが、これはどういう経緯で作られた作品なのでしょうか?

森下:ガンホー設立の少し前、オンラインゲームの事業を立ち上げるべくいろいろ考えていた時期のある日、弟の家に遊びに行ったときのことです。その日の弟は、夜中の1時、2時になっても、ずっとパソコンに向かって何かをやっていました。横からモニターを覗いてみると、韓国語で書かれているゲームをやっていました。これが当時韓国で人気の「ラグナロクオンライン」だったのです。弟が遊んでいる様子を見ていて、「このままじゃダメだけど、日本向けにアレンジしたら絶対に面白くなる!」という直感的なひらめきがありました。そこでさっそく、このゲームの会社にコンタクトすることにしました。ファミコン以来、長くロールプレイングゲームをやってきた自分にとって、「ラグナロクオンライン」は自分の趣向に非常に合っていました。これを日本向けにしっかりアレンジしていけば、一つの市場を開拓できると思いました。

「ラグナロクオンライン」は今や400万ものユーザーに親しまれていますが、あまりゲームをやらない人に魅力を伝えるとすると?

森下:ゲームはオンラインでもオフラインでも、面白いものは面白いと思います。ただ、何を面白いと感じるかは人それぞれの価値観ですので、面白さが分からないという人はいけない、などと思ったことはありません。僕らの作品の魅力を伝えると言っても、言葉で分かってもらうのはなかなか難しいものです。やはり作品を見てもらって、感じてもらう他ないと思います。
極論すると、ゲームは人生や生活の必需品ではありません。絵も音楽も、生きていく上で必要不可欠ではないです。でも見たり聞いたりした方が、何か面白い体験ができるかもしれませんし、誰かを笑顔にしてあげることもできるかもしれない。僕たちのやっていることは、そういう「付加価値産業」でしかないと思っています。だからこそ、人生の貴重な時間を使ってゲームをやってくれる人には、「こんな面白いゲームがあるんだ」と思ってもらえるような作品を作ることが、僕らゲーム屋の使命です。

最後に今後への抱負をお願いします。

森下:私たちは「たかがゲーム屋、されどゲーム屋」です。どんなに時代や周囲の環境が変わったとしても、クリエイティブに特化して、最高のゲームを作ることに注力していきたいです。いいゲーム、最高のクリエイティブをたくさん作って、多くの人を笑顔にしていく。その結果としてしっかり売り上げで結果を出して、全てのステークホルダーにメリットを提供する。これが大事だと思っています。
今後の抱負としては、例えば「パズドラ」では、世代を超えてずっと遊んでいってもらえるものにしたいと思っています。現在ニンテンドー3DS版の「パズドラZ」を開発中ですが、これはアイテム課金がありませんので、親子で安心して遊んでもらえるものになっています。このように、時代に合わせて「パズドラ」を作っていき、今から何年か何十年後、「これはこうやって遊ぶんだよ」と、親・子・孫が世代を超えて一緒に遊んでもらえる…そういう作品になれば幸せだと思っています。


森下 一喜(もりした かずき)

森下 一喜(もりした かずき)

  • ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長CEO 兼 企画開発部門統括 エグゼクティブプロデューサー
  • 株式会社ゲームアーツ 代表取締役社長
  • 株式会社アクワイア 取締役
  • 株式会社グラヴィティ 理事
  • 株式会社グラスホッパー・マニファクチュア 取締役

略歴:1973年新潟県出身。ソフトウエア開発会社を経て、2000年オンラインゲーム受託開発会社を創業後、2002年にガンホーを創業。2004年から現職。同時に「ラグナロクオンライン」を日本国内でプロデュースし、現在、代表取締役社長CEO 兼 企画開発部門統括 エグゼクティブプロデューサーとしてゲーム開発の制作総指揮を執る。スマートフォンゲームでは2011年「ケリ姫クエスト」、2012年「パズル&ドラゴンズ」、家庭用ゲーム機向けには「ピコットナイト」、またプロデューサーとして「ラグナロクオデッセイ」などを手がける。

(掲載日:2013年6月19日)

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