プロジェクトPickUp 2006年

「システムではなく、人間。」
その道のプロが多彩なテーマの情報を発信する

株式会社オールアバウト

オールアバウトがさまざまな分野で、「その道のプロ」をガイドとして情報を発信する「All About」をオープンさせて5年。現在では月間利用者数が1,500万人を突破し、ガイドサイト数400以上(2006年3月現在)、売上高22億円(2005年3月期)のメディア企業に成長した。総合情報サイトの「All About」を中核に、ミセス向け「For F」や団塊世代の50代男性向け「DORON」など人気のウェブマガジン、ECショップの「All About スタイルストア」など、多数のコンテンツ・サービスを運営する。これまで積み重ねてきたオンラインビジネスのノウハウ、定評のある編集力、「社内から新しいアイディアがどんどん集まってくる」という企画力。さらに2004年9月からはヤフーが資本参加し、連携が始まっており、事業が飛躍的に拡大するプラス要素はそろっている。

恵比寿の本社オフィスで、プロデューサーと広報のマネジャーとして活躍する2人の女性に取材した。

  • *掲載内容は2006年3月時点のものです
株式会社オールアバウト
メディアプロデュース部門 ガイドリレーション部
プロデュース2グループ マネージャー
千葉 伸子(ちば のぶこ)
株式会社オールアバウト
コーポレートスタッフ部門 コーポレートコミュニケーション部
広報グループ マネージャー
立石 夕子(たていし ゆうこ)

専門家がナビゲートする400以上のガイドサイト


センスのよいインテリアでまとめられた社内

たとえば、今年ドイツで開催されるサッカーのワールドカップ。通常の検索エンジンに関連するキイワードを入力すると、数百万という膨大なウェブサイトの検索結果が表示される。この検索結果の中から、点在する自分の知りたい情報を探すには、ひとつひとつのサイトを見ていかなければならない。

これに対して「All About」では、その分野の専門家が、ひとつのテーマに対してまとまった情報を発信している。たとえばトップページの「スポーツ」をクリックし、チャネル内の「ワールドサッカー」を開くだけ。このガイドサイトを担当する斉藤さんは、新聞や雑誌等に記事を寄稿し、サッカーの書籍も出版するプロのスポーツライターである。サッカーをテーマにした情報を専門家の目で選別し、厳選して紹介しているので、ユーザーはその情報を効率よく読むことができる。「おすすめガイド記事」には人気チームや予選の試合状況などがタイムリーに取り上げられ、新しい記事が追加されるたびに多くのアクセスが集まるという。

その道を知りぬいたプロだからこそ、担当するテーマの中で本当に役に立つ情報だけを偏りなく広く深く取り上げることができる。その語り口は真剣で熱い。「その道のプロが、あなたをガイド。」というキャッチフレーズの通り、プロフィールを公開したその道のプロが、本音ベースでナビゲートしているのである。

「オープン当時161だったガイドサイトも、今では17チャネル、400以上になりました。テーマによっては、1回ご覧いただければ満足いただけるケースもありますが、同じテーマを月に何回も見てくださるコアなファンの方もいらっしゃいます。中でも“パン”“料理のABC”といったグルメ・クッキング系や、最近では“家計管理”“はじめての株式投資”といったマネー系なども人気がありますね」と語るのは広報の責任者としてオールアバウト全体のPRを行う立石。会社やサービスの広報だけでなく、各ガイドに対する取材も含めると、メディア対応は月に百件以上にもなる。

「ガイドの方は全員、その道のプロ。医師や建築家、弁護士など公的な資格を持つ方、カリスマ消費者として有名な方、趣味をきわめて独立された方まで様々ですが、担当するテーマのことなら誰よりも詳しく、その知識や経験を広めたい、というサービス精神を持っていることが共通の条件です。もともと、一芸に秀でた“人の知識”を、インターネットを通じて万人に利用していただきたいという主旨でスタートしたサービスですから、ユーザーのニーズがある限り、ガイドサイト数は、もっと増やしていきたいですね」(立石)

選び抜かれたその道のプロたち


オープンなスペースで働く本社スタッフ

各サイトの良し悪しは、そのテーマの編集長であるガイド自身の力量によるところが大きい。そのため、オールアバウトでは担当ガイドの選定に高いハードルを設けている。書類選考や面接を含め、応募から数回の審査を経て決定するガイドの競争率は、実に10倍。チャネルを担当するプロデューサーを中心に、それまでの経歴はもちろん、そのテーマを任せるにふさわしいかどうか、情報更新を継続して行うことができるか、時間をかけてじっくり検討するという。

「そのかいあってか、いちどガイドに決定した方はずっとそのテーマを担当されているという、安定運営(笑)。本業が忙しくなってやむをえずという場合を除いて、自分から辞めたいとおっしゃる方はほとんどいないんですよ。サイトがマンネリ化したり、古い記事がいつまでもトップページに残っていたりする状態を避けるために、最低更新頻度を決めているのですが、毎日何らかの情報をアップデートされる方が多いんです。」と、マネジャーとして各プロデューサーを束ねる千葉は言う。マスコミに登場する有名な人のガイドサイトだけでなく、最新トレンドを取り上げ、こまめに情報が更新されているサイトには、固定ファンが定着して多くのアクセスが集まるようになる。各ガイドの地道な努力が、月間1,500万ユーザーという高い数字を維持している理由のひとつといえる。

また、2004年9月からオールアバウトに資本参加しているヤフーとのシナジー効果も、良い形で現れている。国内最大のポータルであるYahoo! JAPANからユーザー導線を確保するだけでなく、広告の共同出稿やタイアップ企画もある。「共同で年間の注目ニュースを公開するコーナーを設けたり、 “Yahoo!知恵袋”で各ガイドがユーザーに質問を行うイベントを実施したりと、ヤフーの集客力とオールアバウトの編集力を活かして様々な連携を行っています。今後も新しい共同事業や、広告の共同展開など可能性はいろいろありますね。」(立石)

優秀な企画力がサービスの成長を支える

オールアバウトが持っているサービスは、400以上のガイドサイトだけではない。この5年間で、ライフスタイル提案型のウェブマガジン「For L」「For M」「For F」「DORON」、ガイドやスタイリストが実際に使って良いと判断したアイテムのみをそろえたセレクトショップ「All About スタイルストア」、建築家やファイナンシャルプランナーなど住宅・金融の専門家に相談や仕事の依頼ができる「All About プロファイル」など、新しいサービスを次々とオープンさせてきた。斬新なアイディアやヒットしそうな企画は、風通しのよいオールアバウトの社内から生み出されてくるという。

「基本的に、誰もが企画を考え、周囲に相談したり提案できる環境なんですよ。“編集者たるもの、ミーハーであれ”という森川編集長を筆頭に、みんな好奇心旺盛。これだ!と思ったものがあれば、企画書にまとめて、編集長をランチに誘って見てもらう(笑)。本質的でないものはボツになることも多くありますが、そこでGoサインが出れば、まわりに声をかけて必要なスタッフを確保し、立ち上げ作業が開始されるんです(笑)。仕事は忙しいですが、プロデューサーは時間を作って、アンテナをはるためにドラマをチェックしたり、新しくオープンしたスポットやレストランをまわったりしています。」(千葉)

「ウェブマガジン“DORON”の立ち上げ時は、語源の“ドロンする(=仕事を終えて会社を出ること)”が社内ではやって、みんな帰るときに「ドロンしま〜す」って言ってましたね(笑)。ノリのいい会社なので、スタッフ同士の雑談の中でいい企画がまとまってくることも多いです」(立石)

企画職だけでなく、デザイナーやシステム開発、管理スタッフも、それぞれが担当する仕事の中でいかに良いものを生み出すか、常に考えているという。品質の高いデザインインターフェース、使い勝手のいいガイド用管理ツール、効率的なバックオフィス業務・・・誰かが思いついたアイディアは、時間をおかずチーム内で共有され、議論を重ねながら実行に移されていく。そのスピード感や社内連携が、会社全体に良い緊張感をもたらし、常に成長し続けるサービスを実現しているといえる。「人」を前面にしたサイトは、ユーザーに対する、コンテンツに対する、社会に対するオールアバウト社内の「人」の熱い思いから生まれているのである。

取材後のひとこと

仕事で一番やりがいを感じる瞬間

千葉さん:
「私にとっては、ガイドの担当をさせてもらえることが、やりがいでもあり大きな楽しみ。お会いするたびに、誰よりも早く最新の情報やおトクな話をお伺いできますし、ひそかに業界のパーティに連れて行っていただいたことも・・・役得です(笑)」
立石さん:
「やはり取材対応をさせてもらっているときですね。メディアの方にご説明した後、その媒体に、自分たちが伝えたいことがきちんと出ていると本当に嬉しくなります」

これまで一番大変だったこと

千葉さん:
「事業の成長するスピードが速く、一時期はスタッフが足りずに、60人ものガイドの方を私ひとりで担当していたことがあるんです。それはもう、ハードワークという量を超えていましたし(笑)、細かいケアができずに悩んだこともありました」
立石さん:
「日々、楽しいのですが、入社以来、平均して忙しかった感じですね(笑)。実は広報のほか、IRや人事も兼任していまして、今期に入ってからは、仕事のキャッチアップをしながらJASDAQ上場準備をこなすという目の回るような日々でした」

今後の目標

千葉さん:
「もっとガイドサイトのテーマの幅を広くすること。2007年度末までに、500サイト開設が目標です!」
立石さん:
「当社のサービスや企業理念を、もっと世の中に広めていきたいですね。All Aboutを使ってもらうことで、ちょっと良い生活ができる。これをより多くの方に知っていただき、使ってもらうことが当面の目標です」

(掲載日:2006年4月10日)

[注]
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