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山頂に、より快適な電波を!日本最高峰 富士に挑む!

今年から新たな国民の祝日として8月11日が「山の日」となったが、日本の山で真っ先に浮かぶのは、富士山ではないだろうか。残雪がまだ残る7月初旬に山開きとなり、9月上旬までが登山シーズン。昨シーズンの8合目における登山者数の合計は23万人以上に上る。

登山シーズン開始に向け、毎年、山ではさまざまな準備が行われる。 山小屋や登山道の整備はもちろんだが、携帯電話サービスのエリア対策もその一つだ。

登山客のいざという時の重要な連絡手段として、また登頂の感動や楽しみを共有できるように、名峰富士に挑む現場を追った。

万全の準備で挑め!

富士登山を経験した人、計画したことのある人なら、さまざまな法律や「富士山憲章」「富士山カントリーコード(利用ルール)」が定められていることはご存じのはず。2013年の世界遺産登録をきっかけに、環境保全に対する意識はより高いものが求められ、登山者は万全の準備をして山頂を目指す。

それは、電波対策も同じ。
挑むは、3,776mの日本最高峰。

2015年7月:始まりは2015年の山開きから

シーズン中、富士山で提供されるネットワーク品質は「携帯電話を使う登山客がどのぐらいいるのか?」「携帯電話をどのように使っているのか?」が大きなカギ。2016年の対策は、昨シーズンのネットワーク監視データや利用データを基に強化対策が検討され、導き出される。

今年、ソフトバンクで実施したのは、より遠くに、より効率よく電波を送る高利得・狭角アンテナを用いた登山道の電波強化、および2.1GHz帯と900MHz帯の二つの電波を使ったキャリアアグリゲーションによるさらなる速度の向上。また、一部ルートでは2.5GHz帯を用いた「SoftBank 4G」の提供や、本八合目へ無線基地局の設置、山小屋でのWi-Fiサービス提供などさまざまな対策を実行することになった。

2016年3月:関係各所と密な連携が不可欠!

国立公園であり、特別名勝・史跡であり、そして世界遺産である名峰 富士での電波対策は、関係省庁、自治体や山小屋オーナーとの密な連携が不可欠。3月末までには、今シーズンに向けた対策を協議し、関係省庁などに申請しなくてはならない。

2016年春:麓から富士山めがけて電波を放射!

市街では、携帯電話の無線基地局は互いに光ファイバーなどの回線でつながっていることが多いが、富士山では、その回線がない。また、山中や登山道などに大きな構造物を建てることが出来ないため、主に麓に位置する基地局(以下「麓局」)から、登山道や山頂を目掛けて電波を発射することで、携帯電話が利用できるエリアを作り上げる。

麓局からは1年を通して電波を放射しており、麓局での強化対策は、後の登山道、山頂での対策・施工の前工程となるため、春先から先駆けて対応している。

2016年7月:遂に山開き!いざ行かん、富士へ!

通年利用できる麓局からの対策は下から狙うということもあり、電波が届く範囲も限界が・・・。
特に山頂、お鉢巡りのルートは麓局からは見通しがきかず電波が届きにくい。そのため、山頂に特化した対策が必要となるが、山開き期間中以外、1年の大半が雪に閉ざされる富士山。雪解け前では資材の搬入・設置ができず、毎年山開きに合わせ、わずかな期間で行うことになる。

初!本八合目に無線機設置

麓局からの電波を使った対策とはいうものの、五合目から登山時間にして数時間に及ぶ登山道および山頂のカバーエリアは広く、各麓局で対応する利用者数は膨大。特に最も利用者の多い富士吉田口ルートと須走口ルートの合流地点はご来光に合わせた登山客が集中するスポットで、合流地を起点に登山道が渋滞するほど。利用者が特定の麓局に集中してしまうと、いくら電波が強くても満足できるサービスを提供できない。

ソフトバンクではこの問題を解消するため、本八合目に初めて無線基地局を設置。これにより麓局に利用者が集中することがなくなり、富士山における全体のキャパシティ増にもつながる取り組みを行っている。

一番の課題である伝送路は、他のエリアとは独立した専用の5GHz帯無線エントランス回線を用い、約10km離れた麓の基地局とつながっている。

これにより通年利用できる麓局からの電波に加え、富士吉田・須走ルートの八合目付近では、新たな無線基地局により通話・通信品質が向上した。

山小屋にも対策を!

麓から吹く電波は山頂に近づくにつれ強度が弱まり、屋外では問題なくとも山小屋などの屋内では利用しづらくなる場合がある。これらに対しては、山小屋のオーナーさんと個別に協議の上、Wi-Fi機器や屋内向けの小型中継局を設置するなどの対策を行っている。

山頂エリアでは

山頂では麓局から発射された電波を受け、それを山頂エリアに再照射する中継局を設置。
通常の無線基地局と比べ、伝送設備などが不要となる中継局は、設備が小規模で設置場所の限られる山頂での対策として、富士山に限らず多くの山々で用いられる。

2016年の富士山対策は、7月12日、13日の山頂エリア提供をもって全て完工。

今は対策チームによる現地での実測調査や基地局設備側からの監視データなどを用いて品質の劣化がないか、対策すべき課題はないかなどの監視・確認作業が進められている。

そして今年も完工と同時に、翌年へ向けた対策が既に始まっている。

難関 富士山対策に挑んだ東海技術統括部の皆さん

(掲載日:2016年8月10日)