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障がいがある子どもたちの可能性をICTで引き出す「魔法のプロジェクト」

誰しも、苦手なコトがあるのは当たり前。
でも、ちょっとやり方を変えてみたら上手く出来た、なんていう経験ないでしょうか?

障がいのある子どもたちにも、スマホやタブレットを使うことで勉強や生活をサポートし、「思うようにできなかったことが、できるようになった!」という経験を一つでも増やしてあげたい。そんな思いで始まったのが「魔法のプロジェクト」です。

今回、東京大学 先端科学技術研究センター(以下、東京大学先端研)の中邑 賢龍教授、実際に学校で授業を行っている“魔法のティーチャー”のお二人、ソフトバンクグループの教育事業を担う株式会社エデュアスの佐藤 里美さん、ソフトバンク株式会社 CSR企画部の木村 幸絵さんに、この取り組みについて聞いてみました。

  • 「魔法のプロジェクト」が認定する個々のニーズに合わせより質の高い支援を実践できる先生

「魔法のプロジェクト」を始めたきっかけを教えてください。

中邑教授:今から約20年前、発達障がいがあり会話でコミュニケーションを取ることが苦手な“あきちゃん”という少年に出会いました。あきちゃんにポケベルを渡したところ、驚くほど上手に使いこなしていたんです。それを見て、ICTの活用で障がいがある子どもたちの可能性が広がると感じました。

ただ、携帯情報端末の購入費用や維持費がネックとなり、その研究を実行に移すことができずにいた時、ソフトバンクグループの方と出会い、研究のために携帯情報端末を無償で貸し出してもらえることになりました。

東京大学先端研 中邑教授

これまで、障がいのある子どもたちの教育にはどのような課題があったのでしょうか?

(左)中邑教授/(右)エデュアス 佐藤さん

中邑教授:多くの人が、障がいのある子どもに対して「努力して頑張ってできるようになることが大切」と考える傾向がありました。しかし、障がいによっては、努力しても他の人と同じように学ぶ事ができず、自信を失い、諦めてしまう子どもたちがたくさんいました。

エデュアス 佐藤さん:子どもたちは学ぶことを楽しみに学校に入学してきます。障がいがあっても一人一人に合った学び方を提供できる環境があれば、その子の持てる力を最大限引き出すことができると感じています。
その手段の一つが、われわれが手掛けているICTです。近年通信機能付きのタブレットが登場したことで、これまでの支援専門機器とは違い、より学校で活用しやすい環境を提供できるようになりました。そこで、東京大学先端研とソフトバンクグループで、障がいのある子どものための携帯情報端末の活用事例研究として「魔法のプロジェクト」を立ち上げたんです。

なるほど。ICTによる支援ということですが、具体的にはどんなことをしているのですか?

ソフトバンク 木村さん

ソフトバンク 木村さん:子どもたちの学習や日常生活で活用してもらうために、プロジェクトに参加している協力校へスマホやタブレットを一定期間無償で貸出しています。その活用事例を報告会や事例集という形で公開して社会と共有することで、障がいのある子どもの支援や社会参加の機会の促進を目指しています。
例えば、目の悪い子がメガネを掛けて生活するのと同じで、文字を読むことが苦手な子は、文字の読み上げ機能を使って学習するという風に、ICTで日々の生活や学習を支援することができます。これまでに延べ300以上の特別支援学校などに参加いただいているんですよ。

「魔法のティーチャー」に聞いてみました!

では教育の現場で、スマホやタブレットはどのように活用されているのでしょう?「魔法のティーチャー」の先生たちに、お話を聞いてみました。

松江市意東小学校 井上 賞子先生
主に「読み・書き」に困難を感じる子どもたちの学習に利用しています。「読むこと」が苦手な子どもは音声付きの教材を選べるように、また「書くこと」が苦手な子どもは、ノートの代わりにカメラ機能を使うなど、さまざまな入力方法から、自分に適した記録の方法を選べるようにしています。

ICT機器は、子どもたちの特性上の困難を補い、学ぶ機会を提供してくれました。その結果、「自分に適した方法があれば学べる」と自信を取り戻し、不適応が改善したり、集団の中で学べるようになった子どもがたくさんいます。

「特別な支援を必要としている子どもたち」は、「みんなと同じ方法では学びにくい子どもたち」です。ICTの活用は、そんな「学び方の多様性」を支える上で、とても重要な役割を果たしていると、強く感じています。

長野県立稲荷山養護学校 青木 高光先生

周囲の人たちとの関わりが豊かになることを目的に、主に子どもたちのコミュニケーション支援のためにICTを使っています。

具体的には、自閉症の子どもが見通しを持って自分から活動できるように視覚的なスケジュールをタブレットに表示させたり、会話でコミュニケーションを取るのが難しい子どものために50音表やシンボルをタッチすると音声が再生されるアプリを使ったりしています。

タブレットで文章を打ってもらうと、周囲の人が驚くような、豊かな文章で気持ちを表現したりと、今では、タブレットが自己表現に欠かせないツールとなっています。

今後「魔法のプロジェクト」に期待することは何でしょうか?

中邑教授
長く続ける事が一番大きな力になると実感しています。「魔法のプロジェクト」のおかげで多くの先生の意識が変わってきました。

井上先生
たくさんの先生方の事例に触れたり、中邑教授のお話を伺う中で、「こうした方法が選べることは、子どもたちにとって当たり前に必要なことなんだ」という確信を強く持つようになりましたが、このような情報にまだ触れられずにいる関係者も多いと感じることがあります。ぜひ、「魔法のプロジェクト」で実証されたたくさんの効果を、どの学校でも子どもたちが選択できるように、継続的な提案と社会への発信を続けていただきたいと願っています。

青木先生
子どもたちが抱えている困難の、どんな側面を支援すればよいのか。その効果は過去の事例で実証できていると思います。今後は、「社会的な障壁にどうアプローチしていくか」が課題だと思っています。それを崩していく方法を、現場の教員と共に考えてくれるプロジェクトであってほしいと願っています。

「魔法のプロジェクト2017~魔法の言葉~」協力校を募集

来年度のプロジェクト「魔法のプロジェクト2017~魔法の言葉~」に向けて、1月19日より協力校の募集が開始されました。今回から、児童・生徒の特性に合わせた支援をさらに強化するため、新たに人型ロボット「Pepper」を導入したのだとか。
「魔法の言葉」というプロジェクト名には、児童・生徒の願いや希望の「言葉」と先生からの教えや褒められる「言葉」がスマホやタブレット、ロボットを通じて交わされ、障がいのある子どもたちのコミュニケーションの幅を広げてほしいという願いが込められているそうですよ。

「魔法のプロジェクト2017 ~魔法の言葉~」
協力校の募集について

ソフトバンクでは、この「魔法のプロジェクト」だけではなく、みんなが共に生きられる社会を目指して、さまざまなニーズに対応した取り組みを行っています。ぜひチェックしてみてくださいね!

詳しい取り組みはこちら

(掲載日:2017年1月30日)
文:ソフトバンクニュース編集部