自動車保険の故障判定を画像AIで自動化するアントグループの「定損宝」

2021年6月21日掲載

定損宝(出典:アントフィナンシャルのブログ) 定損宝(出典:アントフィナンシャルのブログ)

現在、様々な画像系AIを活用したソリューションがあります。たとえば顔認証や、レントゲン画像からの異常発見、工場内での不良商品抽出など、重複して同じものを見る作業において、ディープラーニングによって鍛えられたAIは活躍します。そして自動化することで疲れることなく24時間365日、人よりもスピーディーに対応し、結果大きなコストダウンを実現します。

自動車保険もまた、アリババ系のフィンテック企業「アントグループ」がリリースする画像系AIを活用した「定損宝(中国語発音はding sun bao)」を利用することで劇的に業務改善が可能です。従来の自動車保険は、故障や事故が発生した際に保険会社のスタッフを電話で呼んで事故現場をみてもらい、見積もりを人工で算出するものです。これをAIで自動化します。

定損宝は、アントグループ(当時はアントフィナンシャル)が2017年6月にリリースでしたサービスです。定損宝は、自身で損傷程度がわかる写真や動画を撮って送信すると、ディープラーニングにより学習されたAIにより、数秒で自動的に見積もりが出てくるというものです。10年以上事故現場を見た専門の保険スタッフの品質の80%超という正確さを持つAIによって、スタッフのリソースや場所を選ばずに処理することを可能にしました。保険業界の人的コスト削減にも活用できるわけです。

アントグループが定損宝のサービスを発表した際には、自動車保険のプロ6人と定損宝が作業を公開して対決を行いました。その結果、10倍以上もの効率の良さを定損宝は示しました。

もちろん、外からの写真や動画の撮影だけで見られる車の損害は限られています。とはいえアントグループによれば、中国の4,500万の保険適応事故のうち、車の外損が6割を占めるとのこと。ここをカバーするだけでも自動車保険のDX化が進みます。また中国では保険金目当ての虚偽の申告が全体の申告の1~2割を占めたとのことですが、それにふりまわされて人的リソースを無駄に消費することがなくなるとしています。

「定損宝」の画像AIはアリババDAMOアカデミーで開発された技術を応用している(出典:アリババDAMOアカデミー) 「定損宝」の画像AIはアリババDAMOアカデミーで開発された技術を応用している(出典:アリババDAMOアカデミー)

現在は定損宝は個人も直接の利用が可能ですが、リリース当初は保険会社が定損宝にアクセスし、自動見積りを利用できるようにしていました。太平、大地、陽光、安盛などの保険会社が導入した結果、利用回数は総計1,000万回を超え、結果75万時間の人的労力を浮かせたとしています。

以前、アントグループは将来の自動車保険のイメージを発表しました。今後導入する可能性のある技術の導入事例はこんな感じです。

ある日ドライバーが車を運転します。ドライバーは車の前でユーザー認証を行うと、カーナビから運転経歴や運転頻度からベストの保険が提案されて、はい/いいえの二択で音声回答します。提案するのはベストな保険で複数から選択するものではなく、運転時に支払う数元程度の低価格な保険です。その日は車での出勤なので、家と勤務先の往復の移動から保険商品を提案されました。またある日は道路交通状況から事故が起きにくい道路をナビゲーションし、さらにその経路に合わせた保険商品を提案されました。

車を少しぶつけてしまう、傷つけてしまうことがあれば、故障個所を自動で判断し保険会社が見積り、多少の傷であればそのまま走行可能で、あとで修理代は負担すると保険会社のAIから指示されます。つまり未来の自動車保険は、人によって値段が異なり、運転ごとに少額を支払い、運転しなければ払う必要がなくなると、アントグループは描いています。

ちなみに自動運転車は普及すると、事故はドライバーの責任からメーカーの責任になり、自動車保険は消えていくと予測しています。

未来の自動車保険の形は変わっていくにしろ、まずは自動車保険のAIによるDX化は中国の関連業界にメリットをもたらしたといえるでしょう。

参考リンク

Alibaba Cloud中国サイトでの紹介記事
・アントフィナンシャルのブログ:深度 | 蚂蚁金服AI首席科学家漆远:用AI和爱, 让我们遇见更美好的未来
・アリババDAMOアカデミー(達摩院):車両部品識別AI

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