電子帳簿保存法(電帳法)とは? 改正内容のポイントを解説

2024年3月27日更新

電子帳簿保存法の改正 ポイントをわかりやすく解説 電子帳簿保存法改正

2024年1月より本格的に改正電子帳簿保存法が施行され、電子取引については電子的な保存が義務付けられることになりました。これは、事業規模に関わらず、全ての法人企業・個人事業主に影響する内容です。2023年12月までの2年間は宥恕(ゆうじょ)措置つまり猶予期間が盛り込まれていたことで、これまで対応を先送りした企業も少なくありません。法律の理解もさることながら改正内容にどう対応すればいいのか、対策が不十分だとどうなってしまうのか、分からないまま進めることのないように十分な情報収集と対策が必要です。
本ブログでは、電子帳簿保存法改正の概要と知っておきたいポイントについて解説します。

目次

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、各税法でこれまで紙での保存が義務づけられている帳簿や書類を電子データで保存できるようにした法律です。大きく以下の3つの保存方法に区分されています。

①電子帳簿等保存
自ら電子データで作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する方法です。会計ソフトやMicrosoft Excelなどで最初から一貫して電子データで作成した帳簿や決算書類などが該当します。


②スキャナ保存
紙で受領・作成した書類を画像データとしてスキャニングして保存する方法です。取引先などから受領した請求書や領収書をはじめ、自ら作成した請求書の控えなども該当します。

③電子取引
取引情報の授受を電子データで行ない、電子データのまま保存する方法です。メールなどに添付された注文書や見積書のPDFやEDI取引などが該当します。

電子帳簿保存法の保存区分 電子帳簿保存法の保存区分

参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」をもとに作成


これまでも、電子帳簿保存法の要件は時代とともに何度も見直しが図られてきましたが、特にここ数年は経済社会のデジタル化が加速していることを踏まえ、頻繁に改正が行われています。とりわけ、2021年には大きな改正が行われ、より多くの事業者がデジタル化とこれに伴う紙からの脱却を目指せるよう、電子帳簿等保存とスキャナ保存の要件が大幅に緩和されました。
また、電子取引については、今後取引の増加が見込まれることから、全ての事業者に対して電子取引の電子保存が義務化されることになりました。

令和5年度税制改正の内容

2023年3月28日に可決・成立した令和5年度税制改正法においては、優良な電子帳簿の範囲の明確化、スキャナ保存の要件の見直し、電子取引に関する新しい猶予措置や検索要件を不要とする対象者の拡大が図られました。以下これらの内容を詳しく見ていきましょう。

①電子帳簿等保存(優良な電子帳簿の範囲の明確化)

電子帳簿等保存については、関係書類の備え付けや見読可能性の確保といった、いわゆる一般電子帳簿の保存要件に加えて、記録事項の訂正・削除の履歴を残すことができ、かつ作成した帳簿間で相互に記録事項の関連性を確認することができるなどの真実性を確保するための要件を満たして帳簿が作成される場合、これを「優良な電子帳簿」として、過少申告加算税の軽減措置などを受けることが可能です。

しかし、これまで過少申告加算税の軽減措置を受けるためには、作成している帳簿全てについて優良な電子帳簿の要件を満たす必要があり、その適用は非常に困難なものでした。また、対象となる帳簿の範囲も明確ではありませんでした。
令和5年度の改正により、過少申告加算税の軽減対象となる帳簿について、法人税等の申告に直接結びつきやすい経理誤りを是正しやすくなるかどうかといった観点から合理化・明確化が図られました。具体的な帳簿の範囲としては以下の通りです。今回の改正により、優良な電子帳簿の対象となる帳簿の範囲が明確になったことから、本制度の利用を検討する企業が増加することが期待されます。

電子帳簿等保存における優良な電子帳簿の範囲が明確化

参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」をもとに作成
 

②スキャナ保存(要件の見直し)

令和5年度税制改正により、スキャナ保存制度については、以下の見直しが図られました。

(1)スキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件の廃止
これまで、解像度、階調、大きさといった情報をスキャンした画像データとともに保存しておくことが義務づけられてきましたが、これらの情報の保存が不要となります。これらの情報をスキャンの都度、手入力で記録することは実務的に困難ですので、これらの情報を読み取る機能を備えた専用システムを利用することが一般的でした。しかし、今回の改正に伴い、当該機能を持たないシステムもスキャナ保存に利用することができるようになりました。

なお、スキャンする際の解像度(200dpi以上)や階調(256階調以上)の要件が廃止されるものではありませんので、注意が必要です。

(2)記録事項の入力者等に関する情報の確認要件の廃止
「記録事項の入力者等」とは、スキャナで読み取った画像がその国税関係書類と同等であることを確認する作業をした者、または、その作業を直接に監督する責任のある者を指します。通常、この情報を保存するめには、社員にシステムのIDを付与する等して管理する必要があります。しかし、当該作業を含む証憑の整理や記帳業務を外部の業者に委託していれば必ずしも社内の人間が行うとは限らず、また、RPAを活用して当該業務を自動化しているケースも増えており、誰が当該作業を行ったかを把握することが困難になることが増えました。令和5年度税制改正でこれらの情報の確認要件が廃止されたことにより、BPOやRPAを活用するシーンにおいても、スキャナ保存を利用できる可能性が広がりました。


(3)帳簿との相互関連性が求められる書類を「重要書類」に限定
これまで、スキャナ保存の対象とする「全ての書類」について帳簿の記録事項と相互にその関連性を確認できるようにしておくことが求められてきましたが、令和5年度税制改正で相互にその関連性が求められるのは契約書や請求書、領収書等の「重要書類※」に限定されることになりました。

通常、見積書や注文書等の「一般書類※」については、これらに対応する伝票を起票することはなく、そのため一般書類については帳簿との相互関連性を確認することが困難でした。今回の改正で相互関連性要件が重要書類に限定されたため、見積書や注文書等の一般書類についてもスキャナ保存の対象とすることが容易になり、より実務に即した内容に改正されたと言えます。

※ 重要書類:お金や物の移動に直結、連動する書類。契約書、請求書、領収書等。
※ 一般書類:お金や物の移動に直結、連動しない書類。見積書や注文書等。

スキャナ要件における令和5年税制改正での変更点

参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」をもとに作成

③電子取引

電子取引については、タイムスタンプを付すなどの真実性の確保のための要件(真実性の要件)、PCやディスプレイ等の備付け及び検索機能の確保のための要件(可視性の要件)といった保存要件を満たした上で、電子的に保存することが義務付けられています。令和5年度税制改正においては、(1)電子取引の保存を行う者等に関する情報の確認要件の廃止(2)検索要件の全てを不要とする対象者の拡大、(3)令和4年度税制改正で講じられた宥恕措置に代わる新しい猶予措置が整備されました。

 

(1)電子データの保存を行う者等に関する情報の確認要件の廃止
スキャナ保存の記録事項の入力者等に関する情報の確認要件の廃止と同様、電子取引についても電子データの保存を行う者等に関する情報の確認要件が廃止となります。

(2)検索要件の全てを不要とする対象者の拡大
電子取引を電子的に保存する際の大きなハードルとなっているのが「検索機能の確保要件」です。
検索機能の確保要件は以下の3点です。

要件①:取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(「記録項目」といいます)を検索の条件として設定することができること
要件②:日付または金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
要件③:2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること

なお、税務調査等の際に電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、上記②及び③の要件が不要となります。
この検索機能の確保要件について、令和5年度の税制改正において2つの改正が講じられました。
1つ目は、比較的小規模な事業者について認められていた検索機能の確保要件を不要とする売上高の基準を1,000万円以下から5,000万円以下に引き上げるというものです。
2つ目は、電子データを出力した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている事業者についても、検索機能の確保要件が不要となりました。これにより電子取引の電子保存義務化に対応することの大きなハードルとなっていた検索機能の確保要件が緩和される一方で、電子データを取り扱うことのメリットの1つである検索能力の向上が失われることにもなります。適用にあたっては慎重な判断が求められます。

(3)令和4年度税制改正で講じられた宥恕措置に代わる新しい猶予措置の整備
令和3年度の税制改正において、電子取引を電子的に保存することが義務化されましたが、多くの企業でこれに対応することが困難であるとして、令和4年度の税制改正において、2022年1月1日から2023年12月31日までに電子取引を行う場合には、電子取引を出力した書面の保存をもって、電子的な保存に代えることができる経過措置(宥恕措置)が講じられました。この宥恕措置が終了する2024年1月以降の取り扱いに注目が集まっていましたが、令和5年度の税制改正において、宥恕措置は予定通り終了とし、これに代わる新しい猶予措置が講じられました。

新しい猶予措置は、電子取引を保存要件に従って保存することができない事業者に対する猶予措置として、所轄税務署長がその事業者が電子取引を保存要件に従って保存できないことについて相当の理由があると認め、かつ、その事業者が税務調査等の際に電子データのダウンロードの求め、および当該電子データを出力した書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合には、当該電子データを電子的に保存する際の保存要件の充足を不要とするものです。なお、ここでいう「相当の理由」とは、システムの導入が間に合わないことや業務フローが整備しきれなかったなどの理由を指すとされており、猶予措置を適用することのハードルは非常に低いと考えられます。
しかし、この猶予措置は電子データと当該電子データを出力した書面をいずれも保存しておく必要があります。今後より一層電子データの取り扱いが増加すると見込まれますので、猶予措置をあてにし過ぎず、保存要件に従った保存、すなわち、電子データの保存のみで済む体制を整えることが重要です。

対応しなかった場合の罰則は?

ところで、電子取引を電子的に保存しなかった、言い換えると電子データを出力した書面のみを保存している場合に罰則はあるのでしょうか?

電子取引を電子的に保存していなかった場合、法人税法などが求めている帳簿や書類の保存ができていないことを意味しますので、「青色申告の承認取り消し」の対象になるとされています。最も、実務上取り消しにあたっては、違反の程度などを勘案して検討するとされていますので、電子的に保存できていなかったからと言って直ちに青色申告の承認が取り消されることは考えにくいと考えられます。
しかし、電子取引の電子保存義務化への対応は、今後の経済社会のデジタル化に備えるために避けては通れない重要なタスクと言えます。罰則が設けられていないからと言って対応をないがしろにした結果、経済社会における競争力を失ってしまっては元も子もありません。

他方、電子データに関して仮装や隠ぺいなどの不正が確認された場合には厳しい罰則が設けられています。電子データの活用は経理業務の効率化に大きな効果を発揮する反面、電子データの取引情報の仮装や隠ぺいは紙と比較して容易であるとも言えます。したがって、スキャナ保存と電子取引の区分において、これらの不正抑止の仕組みとして「重加算税の加重措置」が設けられています。

そもそも通常の重加算税は、税務調査時に申告内容の仮装や隠ぺいなど悪質なケースとみられる不正が認められた場合に35%の割合で課されます。そして新たに、その不正が電子データに関連するものであった場合、さらに10%の加重が行われるというものです。また留意しておきたい点として、紙の段階で不正が行われ、それを電子データとした場合にも加重対象となります。そのため、そもそも取り込む紙のデータが実態のある内容なのかをチェックできる仕組みが必要になります。

これからの電子帳簿保存法への対応

新しい猶予措置が設けられたことで、「急いで対応しなくても大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、先にも述べた通り、経済社会のデジタル化が進み、今後電子取引の取り扱いが一層増加すると予想されます。さらに、2023年10月からはインボイス制度がはじまり、インボイス(適格請求書)を電子データでやり取りするケースも増加していると思われます。
言うまでもなく、請求書や領収書等のインボイスを電子データの形式でやり取りする場合は「電子取引」に該当します。

新しい猶予措置は、現在多くの企業が採用しているであろう紙を主とする業務フローを大きく変更することなく、電子取引の電子保存義務化に対応できます。しかし、今後電子データの取り扱いが増加するとたちまち業務負荷も増大してきます。電子データの保存に加え、電子データを出力した書面も保存しなければならないからです。
新しい猶予措置はあくまでも一時的なものと捉え、すぐ目の前まで迫っているデジタル社会に対応できる体制を整えることを強くお勧めします。

電子取引データの保存どうすればいい? おすすめの電子帳簿保存法対策

電子帳簿保存法に対応する電子保存できる書類の種類はさまざまです。すでに会計システムを使っている場合も追加で対応が必要になります。自社に合わせた解決策を選びませんか?ソフトバンクなら電子帳簿保存法に対応できるサービスを複数ご用意しています!

関連セミナー・イベント

条件に該当するページがございません

おすすめの記事

条件に該当するページがございません