FinTech時代に金融業界が進めたいデータ活用
FDUA河合氏が語る「なぜ必要なのか」
2023年3月17日掲載
顧客データを収集・分析し、営業活動の高度化や効率化を目指す金融機関が増えています。一方、「なぜデータ活用をする必要があるのか?」と具体的な取り組みや進め方に落とし込めずデータ活用が思うように進められないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本ブログでは、2023年2月1日に開催されたウェビナーでの一般社団法人金融データ活用推進協会(以下、FDUA)理事 河合氏のお話からその答えを紐解いていこうと思います。
金融業界でのデータ活用の必要性
データ活用を考えるきっかけとなった中国での衝撃的な体験
FDUAで理事を務め、Japan Digital Design 株式会社(以下、Japan Digital Design)でデータ分析事業も手掛ける河合氏は6年前に中国を訪れた際、多くの人たちがスマートフォンを片手に店頭でQRコードを読み取って決済、あるいはアプリケーションを使ってお互いにQRコードを読み込んで個人が簡単に送金をする姿に驚いたと言います。今でこそ日本でも当たり前の光景ですが、中国のシステムは金融だけでなく生活や行政などのサービスにも対応しており、スマートフォンからワンクリックでタクシーを呼んだり、チケットの予約をしたり、公共料金を払ったりと、さまざまな操作を可能とするプラットフォームが実現していました。
さらに河合氏が衝撃を受けたことは、そのプラットフォームに集まる何億人ものデータが活用されていることでした。「データを分析することで需要を知り、適切な商品を届け、ユーザの信用リスクを計ることができます。例えば、私が融資を借り入れる場合、私の行動から私の信用リスクを計ります。金融サービスでのデータ活用がここまで進んでいるのかと衝撃を受けました」(河合氏)
自らデータ活用を進める中で感じた「データ分析を理解する必要性」
河合氏がその後入社したJapan Digital Designでは、機械学習を用いたモデルにより、金融データが各種の目的のために分析されていました。データ活用を進める中で、「分析結果を利用する立場の人も、データがどのように入力・分析・出力されているかを知らなければ、どのような分析ができるのか、事業目的を実現するためにはどんなデータ分析をお願いすればよいのかが分からない」と感じ、これがFDUAでの取り組みにつながっていったと語ります。
FDUAで金融業界のデータ活用を推進
河合氏は自らの経験から、金融業界でのデータ活用の推進が必要と考え、「金融データで人と組織の可能性をアップデートしよう」というミッションを掲げるFDUAに理事として参加しました。
金融業界でデータ活用が進まない3つの理由
FDUAではデータ活用を推進していく上で、活用が進まない理由が3つあると考えています。1つ目は、そもそもデータ活用を「なんのためにやるのか」が明確になっていないということ。これだと活用を推進してみたものの効果が出ずに負の経験になってしまいます。
2つ目は、「人材の不足」です。デジタル人材がいない、または人材はいるが本人たちのやりたいことに業務内容があっていない、人材の確保・育成が難しくデータ活用を推進できないという状態です。
3つ目は、「組織にデータ活用のカルチャーが根付いていない」ことです。組織にデータを活用するカルチャーがなく、仮に個別の案件が成功したとしても部分的成功に留まってしまっていると、部署を横断した施策に発展させることができません。
FDUAの取り組み
先述した3つの課題を解決すべくFDUAでは取り組みを進めています。
「なんのためにやるのか?」の解決策は「成功体験のシェア」
データ活用を「なんのためにやるのか?」が明確になっていないという課題に対しては、各金融機関に共通する課題とそれらを解決するAI・データ活用の汎用的な方法を共有することで解決を目指しています。「成功するかもしれないね。というあたりをつけやすくすることでデータ分析プロジェクトの成功率を上げる」と河合氏が説明したように、成功体験をシェアすることによってデータ活用の目的を明確化できる可能性があります。
また、FDUAでは、書籍も出版しており「ユースケースが満載です」と河合氏が語ったように書籍を通しても成功体験のシェアを進めています。
ビジネスの知見を持つ人にデータ活用の技術を身に付けてもらう
人材育成の課題に関して河合氏は「今まではデータサイエンティストの技術に着目していたのですが、むしろ必要なのはビジネス力です。したがって、ビジネスの知見を持った人が技術を身に付ける方が早いのではないかと考えています」と語り、FDUAではビジネスの知見を持つ人に技術を身に付けてもらうための枠組みとしてコンペを開催しています。
2023年1月~3月に開催したコンペでは、銀行で保有するデータに類似するデータを人工的に作り、実務体験に近い形で住宅ローンのデータ予測のモデルを構築することを競っており、金融データ分析に興味を持ってくれる人材の発掘や育成を目指しています。
カルチャーを根付かせる組織変革
「カルチャーの課題は組織作りに通ずる」とも河合氏は話し、FDUAでは金融機関がAI・データ活用で組織変革することに必要な評価項目を定義するなど、例示しながらデータ活用を進めやすい組織改革を行っています。
まとめ
今回のウェビナーでは、河合氏によって金融業界でのデータ活用の必要性、データ活用を推進するFDUAの取り組みについて説明がされました。ウェビナー後半では、国内屈指のCDP「Treasure Data CDP」を提供するトレジャーデータ株式会社 小林氏も登壇しました。小林氏は、Amazon、Google、楽天といった企業が預金や貸付に参入してきており、こうした環境の中で銀行が成長を続けるためには、データ活用、しいてはCDPを用いたデータ統合が必要と語り、データ活用によって銀行の抱える課題をどう解決できるのか都市銀行・地方銀行の事例を含めて紹介しました。データ活用に興味のある方は、ぜひご視聴ください。
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