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今、建設業界では若者離れが深刻化しており、このまま若手を引き入れることができなければ、ますます業界全体の高齢化が進むと予想され、多くの企業が今後の建設業界を担う若い人材の確保に苦戦しています。
本記事では、建設業における若年層の就業状況に加えて、若者離れを防ぐ具体的な対策についてお伝えします。
建設業における人手不足の深刻化は2024年1月25日に公表された「建設労働需給調査結果」から読み取れます。これは建設業法上の許可を受けた法人企業のうち、該当する職種の労働者を直接雇用している建設業者の中から約3,000社を対象とした調査です。
該当する職種とは、型わく工(土木)・型わく工(建築)・左官・とび工・鉄筋工(土木)・鉄筋工(建築)・電工・配管工の8職種を指します。
全国における8職種の2023年12月における過不足率は、前月(2023年11月)と比べて0.4ポイント不足幅が縮小していますが、依然として全ての職種で不足となっています。
出典:国土交通省 建設労働需給調査結果(令和6年1月調査)
この人手不足の大きな要因は需要の拡大です。
2023年8月8日に国土交通省によって発表された「令和5年度(2023年度)建設投資見通し 概要」によりますと、2015年度分から建築補修(改装・改修)投資額を計上しているとはいえ、建設投資額(名目値)は年々増加傾向にあり、2023年度の建設投資は70兆3200億円となる見通しです。
2015年以降増加してきたことを鑑みるに、2024年度も増加していくことが考えられ、建設投資と比例して建設需要は拡大していくことが伺えるでしょう。
これに加えて、「2025年問題」もあります。
「2025年問題」とは1947年〜1949年の第1次ベビーブームに生まれた、いわゆる団塊世代が2025年に全員75歳以上の後期高齢者に達することで起こる、極端な少子化と超高齢化です。この問題はさまざまな業界で人手不足に拍車をかけると懸念されており、建設業では作業に長年携わってきたベテラン層が一気に退職すると危惧されています。
ただでさえ人手不足が深刻化する建設業ですが、一方で若者離れはどのくらい進んでいるのでしょうか。
まず、厚生労働省が発表した「建設労働者を取り巻く状況について」の「6.就業者に占める若年層・高年齢層の割合の推移」によると、建設業の若年層・高年齢層の割合は1998年(平成10年)までは、29歳以下が22.0%・55歳以上が24.1%と同程度でした。
しかし、以降は高齢化が著しくなっており、2014年(平成26年)には、29歳以下の割合は10.7%、55歳以上は34.3%と差が大きくなっています。建設業において労働者が高齢化しているのが分かります。
出典:厚生労働省 建設労働者を取り巻く状況について
また、同じく「7.建設業就業者の高齢化と若年者の減少の推移」では、建設業の労働人口について詳しく取り上げられています。
建設業における29歳以下の労働者は1997年(平成9年)を境に減少しており、2014年(平成26年)には30〜54歳の層が279万人であるのに対して、29歳以下の層はわずか54万人となっています。
2つのデータからも建設業に携わる労働者の中でも若年層の割合・人口が減っていることが伺えるでしょう。
では、新規学卒就職者の就職状況・離職状況はどうなっているのでしょうか。
こちらも、厚生労働省による「建設労働者を取り巻く状況について」から読み取っていきます。
まず「4.新規学卒者の建設業への就職状況」を見てみると、新規学卒者の建設業への就業者数は1995年(平成7年)をピークに減少していましたが2010年(平成22年)より増加傾向にあります。ただ、それでも2014年(平成26年)の新規学卒者の建設業への就業者数は、全産業の就業者数のわずか5.8%とかなり低い数値になっています。
次に同じく「5.新規学卒就職者の学歴別・産業別3年目離職状況」を見てみます。ここでは全産業・製造業・建設業の3年目における離職率の推移を表していますが、高卒の建設業の離職率はいずれも全産業・製造業よりも高くなっています。大卒の場合は全産業の方が若干多いものの、製造業に比べて離職率が高いことが伺えます。
データから見ても、建設業界は若者が入って来にくい上に若年層の離職率が高く、若者離れがかなり進んでいることが伺えますし、すでに多くの企業が実際に若者離れを感じていることと思います。
では、若者離れに歯止めをかけるには一体何をしたらよいでしょうか。
まず取り組むべきなのが、労働環境の改善です。
労働環境の改善と言っても、企業ごとにいろいろな課題がありますが、何よりも早く対処すべきなのが労働時間についてです。
建設業では、人手不足が深刻化しているため一人あたりの業務負担が大きくなってしまっており、なかなか休みが取れなかったり長期間労働が当たり前になってしまっています。この状態が続くと過度な労働によってどんどん若者離れが加速してしまいます。
また、これは「2024年問題」とも密接な繋がりがあります。
「2024年問題」とは2024年4月から適用となる働き方改革関連法に伴って生じる諸問題の総称を指します。
もともと働き方改革関連法は2019年4月1日に施行されたものですが、建設業では人手不足による長時間労働や労働人口の高齢化などもあり、一部の働き方改革関連法の適用に5年間の猶予期間がありました。しかし、2024年4月からは猶予期間が明け、完全に働き方改革関連法が適用となります。
働き方改革関連法が適用されると、まず時間外労働に上限が設けられます。これまでは猶予期間だったため、「36協定」を締結していて届出があれば、時間外労働時間に上限はありませんでしたが、2024年4月から時間外労働は原則月45時間以内・年360時間以内となり、違反した場合は罰則が設けられます。なお、やむを得ない事情によって労働者と事業所が合意したのであれば、特別条項が適用されて年720時間(月平均60時間)の時間外労働が可能です。
「2024年問題」についてはこちらでも詳しく取り上げています。
▶関連記事:建設業の2024年問題とは? 働き方改革に向けた課題と解決策
つまり、長時間労働が継続すると若者離れが起きやすくなるだけでなく、時間外労働の制限もあり、違反すると罰則が課される恐れがあります。雇用側は労働時間をしっかりと管理し、規定以上の時間外労働にならないよう取り組まなければなりません。
具体的な取り組みとしては以下が挙げられます。
まず、適正に労働時間を管理できる仕組みを作るのには、勤怠管理機能が搭載されたITツールを導入するのがスムーズです。残業時間の管理が可能となることから正確な労働時間をリアルタイムに把握することができ、時間外労働の超過を防ぐのに役立ちます。現場から簡単に勤怠報告ができるのもメリットの一つです。
適正な工期の設定や施工時期の平準化については、何よりも不当な短い工期の発注を受け付けないことが大切です。例えば、発注を受ける際に作業内容や必要な日数を可視化して提示することで、発注する側と受ける側が協議して、適正な工期を設定することができます。
このときツールを導入していれば、どのくらいの工数が必要なのかを正確に算出することができるので、工期の設定に役立てられます。
また、作業内容を可視化することによって改善すべき箇所なども見えてくるので、さらなる作業の効率化を図ることもできるでしょう。
若者離れを防ぐならば、労働者の身体的負荷の軽減にも取り組むべきでしょう。
建設業は長時間労働が多く休日も少ないのが現状で、作業内容によっては危険を伴うものも多くあります。それが実際に労働者の身体的負荷ともなっていますし、若者からすると「建設業は危ない」「建設の現場で働くのは大変」といったイメージにも繋がります。よって、労働者の身体的負荷はできるだけ取り除くことが大切です。
具体的には、まず先述したようにITツールを活用して労働時間を適切に管理し、長時間労働を少なくしていきましょう。
また、それに加えて効果的なのが週休2日制です。
建設業界では、まだまだ週休2日制は一般的ではなく、多くが週休1日しか確保できていません。他の業種と比べると圧倒的に休みが少なく、これが若者離れの一因ともなっています。よって、週休2日制を取り入れることで若者にも受け入れられる働きやすい環境を整えることができるでしょう。
なお、週休2日制を取り入れる際は、悪天候などで作業が進まないときのために用意されている予備日を削減して週休2日制とするのではなく、適切な日数を確保した上で週休2日制となるようにしましょう。
ただ、ここで問題となるのが工期です。
週休2日制を取るとその分工事を進められる時間が減るので、工期に遅れが生じてしまいます。そこをカバーするのに適しているのがICTです。
今、建設現場での作業を効率化するさまざまなICTが提供されており、ICTを導入することで、測量や重機の運転といった作業の効率化が図れるので工数を大幅に削減することができ、週休2日を確保できるようなスケジュールも立てられます。
最後に、将来性を感じてもらいやすくする工夫についても取り組むべきです。企業として若者に将来性や魅力を感じてもらえれば、人材確保のチャンスは格段に広がります。
将来性を感じてもらうポイントとしては次の2つが挙げられます。
●ITツールやICTなどを取り入れた柔軟な対応ができる企業かどうか
建設業はほかの業界に比べてIT化が進んでおらず、いまだに手作業や紙でのやりとりが多いです。その分、効率化できていない部分もあり、それが若者にとってマイナスなイメージになってしまっているのは否定できません。先述した、ITツール・ICT・IoTのほか、AIやクラウドサービスといったソリューションを積極的に活用することで、時代に柔軟に対応できる企業であることをアピールできます。
上記のようなツールを導入する際には、まず労働時間管理などに適したITツールから導入するとよいでしょう。そのツールから得た勤怠情報・作業内容をもとに効率化できる作業を探し、それに応じたサービスなどを導入することでスムーズにIT化やDX化が進みます。
●賃金が上がりやすいかどうか
シンプルに賃金も将来性を感じてもらうポイントです。
同じ建設業でも賃金が上がりやすい企業と上がりにくい企業であれば、当たり前ですが、賃金が上がりやすい企業の方が企業としての将来性を感じてもらえます。ただ、賃金を上げるためにはいくつかの取り組みが必要です。
まず、売り上げのアップや経費削減です。感覚的に頭の中で経営数値を管理していたり、粗利率のよい案件が見えていないなど、自社の経営状況をリアルタイムに把握できていないのでは売り上げアップは望めず、賃金を上げることも難しくなります。見える化を実施し、売り上げにつながる取り組みを行いましょう。
また、売り上げがあっても経費が嵩んでしまっていては賃金を上げることができません。同時に経費削減への取り組みも欠かせないでしょう。
さらに、適切な額で賃金を上げるには、そもそも誰がどんな成果を上げているのか把握する必要があります。ITツールを導入してそれぞれの業務内容を把握し、データを以て職人さんを適切に評価できる仕組みを作ることも必要です。
ますます若者離れが進む建設業界ですが、それを防ぐためには労働環境を改善したり、身体的負荷を軽減したり、若者に将来性を感じてもらいやすくすることが大切です。
具体的には、以下のような施策が効果的です。
ただ、いざ取り組むとなると、どんなツールを利用すればよいのか、導入にかかる費用はどう賄えばよいのかなど課題もあるかと思います。
そこで最後に、建設業にぴったりのソリューションについてご紹介します。
クラフトバンクオフィスは、専門工事会社の事務作業の効率化が図れる経営管理システムです。
現場の人工経費や請求・入金をリアルタイムで確認でき、経営に関するデータをレポート化することも可能です。
また、現場とのやり取りにも活用することができ、日報・勤怠打刻をLINEで済ませることが可能です。カレンダー機能が搭載されているので明日の現場の情報もスマホで確認できます。
さらに現場で撮影した写真などはスマホからクラフトバンクオフィスのフォルダへアップできるので、スムーズな情報共有も可能です。
LINE WORKSとは、企業向けに提供されているビジネス版のLINEのことです。従来のLINEと同じく、チャットやスタンプ機能が搭載されているだけでなく、グループ内での資料共有としてお使いいただけるフォルダ機能をはじめ、掲示板やカレンダー、アンケートなど社員同士のコミュニケーションに欠かせない機能が搭載されています。
ITツール・ICT・IoT・AI・クラウドサービスなどを導入する際にぜひ利用すべきなのが、IT導入補助金です。
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者向けにITツールの導入にかかる経費の一部を補助し、業務効率化やDXをサポートする制度を指します。補助金を受ける際には申請が必要となり、「補助金コンシェル」はIT導入補助金の申請をサポートするサービスとなっています。
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