LLM(大規模言語モデル)とは? いまさら聞けない基礎知識を解説
2024年07月29日掲載
生成AIがさまざまなシーンで活用されるようになってきました。私たちが日々の仕事を行う上で欠かせない存在になる未来も遠くはないでしょう。そんな中、AIに関連した用語も増え続けていますが、いざ説明するとなるとよく分かっていないものも多くあるのではないでしょうか? そこで今回は、最近、あちらこちらで見かけるようになった用語の中から「LLM( 大規模言語モデル)」について解説していきます。
LLM(大規模言語モデル)とは
LLM=Large Language Models(大規模言語モデル)とは、AI(人工知能)の一部門である自然言語処理(NLP)技術を活用し、人間が行うような文章の理解や作成を実現するモデルを指します。LLMは、機械学習の一種であるディープラーニングによって大量のテキストデータを学習し、文章を理解できるようになります。文章を正しく理解することで、次にくる構文的に正しい単語や語句を予測し、新たな文書の作成など複雑な自然言語処理が可能となるのです。なお、LLMは大規模なテキストデータに特化したモデルですが、似た言葉にLMM(大規模マルチモーダルモデル)があります。LMMは、テキストデータだけでなく画像や音声なども取り込んで処理するものを指します。それぞれの得意分野が異なり、用途により使い分けが必要です。
人間のような書き言葉や話し言葉を生成するためには、無数の言葉とその関連性、背後の意味を学習しなければなりません。そのデータが膨大であるが故に、単なる言語モデルではなく「大規模」な言語モデルと呼ばれます。
LLMは、さまざまな分野で活用が期待されており、情報検索や機械翻訳、仮想アシスタント、文章生成・要約・校正・補完などの分野・業務での適用が期待されています。
LLMと生成AI・ChatGPTとの違い
AI元年とも呼ばれた2023年は、日常生活のみならずビジネスシーンでも生成AIが話題となり、多くの企業で業務利用が進みました。
LLMは生成AIの一部で、そのLLMの中でも特定の対話型AIが存在します。この章ではLLMと生成AI・ChatGPTとの違いについて説明していきます。
まずはLLMと生成AIの違いですが、どちらも人工知能=AIの一種として分類されそれぞれが得意とする分野において異なる性質を持っています。LLMは、膨大なテキストデータを用いて訓練されたAIモデルで、自然言語の理解と生成に特化している一方で、生成AIはより広範囲のコンテンツ生成、例えばテキスト、画像、音声、動画などの新しいコンテンツを自動生成することが可能です。
また、米OpenAI社が開発したChatGPTは、LLMを応用して人と自然な会話ができるように特化した「対話型AI」です。特定の質問や話題に対し、信頼性のある応答をチャット形式で生成する能力を持ちます。これらは同じNLP(自然言語処理)の範囲に属しながら、異なる目的と応用領域に応じた能力を持つモデルと言えます。
LLM(大規模言語モデル)の仕組み
LLMによって文章が生成される仕組みをステップ別にみていきます。LLMでは、膨大なテキストデータセットを用いた事前学習(Pre-Training)と、性能を最適化するための微調整(Fine-Tuning)のプロセスを経て、文章を生成します。(下記ステップは一例であり、この限りではありません)
STEP1:トークン化(Tokenization):入力の文章を最小データであるトークン(単語や文字)に分割します。
STEP2:文脈理解(Contextual Understanding):このステップは「文脈」の理解です。トークン化された文章を数値データに変換し、プロンプト内の各トークンとの関連性を計算します。
STEP3:エンコード(Encoding):各単語の「特徴・特性」である特微量を抽出します。具体的な特徴が数値データへと変換されます。
STEP4:デコード(Decoding):エンコードされたデータを元に、次の単語を予測します。
STEP5:出力(Output):生成された文が結果として出力されます。
LLM(大規模言語モデル)の課題
LLMはあらゆる分野での活用が期待される一方で、いくつかの課題が存在します。
一つ目の課題は、言語ごとの精度の差です。LLMが生成する結果の精度は学習データの量と、データの質や網羅性に大きく依存し、データが不足している場合は出力結果に影響を及ぼします。これは「ハルシネーション(幻覚)」ともよばれ、AIが事実とは異なる「もっともらしい噓」を出力することを指します。LLMは構文的に正しい単語や語句を予測しているだけで、人間的な意味を完全に解釈しているわけではありません。そのため、誤った内容の出力や、ユーザーの意図と一致しない出力をすることがあります。ハルシネーションの発生を制御するためには、学習データ量とデータの質の向上が必要ですが、大量のデータに対してその品質を上げることは、非常に労力がかかることであるとされています。
二つ目は、セキュリティと著作権に関する課題です。社内で適切に管理・監視されていない外部提供のクラウドサービス型のLLMを利用する場合、LLMが適切に管理・監視されておらず、重大なセキュリティリスクをもたらす可能性があります。学習データに機密情報や個人情報が含まれていた場合、情報漏えいのリスクにつながるため、LLMを利用する際には、入力した情報を学習に使用しないモデルを利用することや、ユーザー自身も機密情報を入力しないことを心掛ける必要があります。また、LLMから生成されたテキストをそのまま使うと、著作権の侵害に該当する恐れがあります。このように、LLMは大きな可能性を秘めている一方で、商用利用する際には、技術開発とユーザーの教育の両面から取り組むことが重要です。
まとめ~ビジネスの進化に向けて~
LLMは、人間のような自然な対話能力により、あらゆるビジネスの分野で活用することが期待されています。しかし一方で、適切な応答を生成する技術、あらゆるリスクに関する取り決め、そして実際に使うユーザー自身が、生成AIを業務利用する際のポリシーをしっかり理解することが重要となります。
あらゆるリスクがあることは事実ですが、これらのリスクを恐れて何も取り入れない、ということのほうが、今後ビジネスを進化させていくためにはリスクになりうる時代です。LLMがこれからどのような新たな価値を生み出すのかを期待し、あらゆる課題を理解した上で、積極的に活用していくことが、ビジネスシーンにおける生成AI活用の成功の鍵となるかもしれません。
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