電力の自由化とは? 店舗や事務所の電気代を下げる対策について

2024年10月7日掲載

電力の自由化とは? 店舗や事務所の電気代を下げる対策について

企業にとって電力会社を正しく選ぶことは、コストや工数削減を考える上で、非常に重要です。一方で、電気料金は社会情勢や天候に左右されることも多く、知識なく選定するのは至難の業と言えます。
これから解説する内容は、「なぜ新電力ができたのか」や「どうやって自社に適した電力会社を選べばよいのか」といった悩みの解決にお役立ていただけるものになっています。電力会社の切り替えを検討の際は、ぜひご参考ください。

目次

電力の自由化とは

電力の自由化とは、2014年に成立した改正電気事業法によって、2016年4月以降から地域の電力会社以外も電力事業に参入できるようになったことを指します。それまで特定の1社がその地域を独占して電気を販売していましたが、消費者が自分の価値観に合わせてどの電力会社と契約するかを選べるようになりました。なお、電力自由化後に民間企業も含めた電力小売事業に新規参入した電力会社は「新電力」と呼ばれています。

電力の自由化の目的

①電力の安定供給

電力自由化の大きなきっかけは、東日本大震災と福島第一原発事故です。これにより原子力の安全性だけでなく電力の供給能力について大きく見直されました。例えば、東日本と西日本では電気の周波数が異なるため、余剰電力の融通ができず、その結果10日間にもおよぶ計画停電が実施されたことを背景に周波数変換設備が強化されています。未曽有の危機に備えるためにも、各一般送配電事業者が広域的に協力していくことが重要視されています。

②電気料金の最大抑制

2024年9月時点で小売電気事業者は計732社に上ります。これらの事業者が絶えず価格競争を行うことで電気料金が抑制されているのです。さらに、2021年のコロナ禍による電力需要の急拡大、2022年のウクライナ侵攻による原価高騰を受け、各電力会社には価格だけでなく安定供給や付加価値も求められるようになりました。

③利用者の選択肢を増やし企業の事業機会を増やす

利用者は電力会社を選ぶ際に、契約先の電力会社に倒産の恐れがないか、セットでお得に利用できるサービスがないか、電力市場の価格は安定しているかなどを複合的に考える必要が出てきました。一方で電気事業者企業にとっては新規需要を獲得する機会になっており、これまで地域の電力会社に独占されていた約8兆円の電力市場が解放されたことで、2022年には市場規模が15.1兆円に成長しています。

法人を取り巻く電力市場の状況

再エネ賦課金の値上げ

電気料金には電力市場の価格に左右されず、毎月決まった金額が請求される項目があります。それが再生可能エネルギー発電促進賦課金です。

再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)は、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」由来の発電を増やすために2012年から導入されている制度です。月の電気使用量に賦課金単価をかけることで請求金額が算出できます。賦課金単価は年間でどれくらい再生可能エネルギーが導入されるかを推測し経済産業省が決めていますが、24年度は過去最高の「3.49円」になっています。

政府による補助金の終了

コロナ禍やウクライナ侵攻による電気料金の価格高騰に対しては、政府の補助金も導入されましたが、2024年11月に終了する予定です。

エネルギー価格高騰対策として政府で実施された事業は2種類あります。2023年1月使用分から実施された「電気・ガス価格激変緩和対策」と2024年8月使用分から適用される「酷暑乗り切り緊急支援」です。2024年11月以降は補助金がなくなるため、電気の使い方が同じでも料金が高くなってしまうリスクがあります。実際に、補助金がなくなった6月から7月使用分の請求金額が高いと感じた方も多いのではないでしょうか。これから新たな補助金が実施される可能性も議論されていますが、現時点では時期や金額について公表されていません。補助金はあくまで一次的な援助なので、長期的な視点で電気料金を抑える対策が必要です。

※沖縄県では別途電気料金高騰に対する支援が行われています。

エネルギー費用上昇への対応策

電力自由化の影響もあり、今や多くの事業者が新電力を検討する時代へと変わりました。
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会が公表している電力取引の結果によれば、2024年6月の新電力シェアは22.2%と増加しています(契約口数ベース)。電力の全面自由化から8年が経過し、電力会社を変えても現在の送配電事業者から電気が送られてくる仕組みは変わらないという認識も浸透してきたのではないでしょうか。契約見直しの際は、削減額や解約手数料、企業独自の特典を確認し、自社にあった電力会社を選定するのがおすすめです。

以下に一般的な料金体系を解説しますので、プラン選びの参考にご覧ください。
電気料金は一般的に4つの項目に分けられます。

①基本料金

②電力量料金

③燃料調整費

④再エネ賦課金

重要なのは①②③の単価を比較することです。従来までは①の基本料金と②の電力量料金のみを比較するのが一般的でした。しかし、2022年のウクライナ侵攻による原価高騰を受けてからは、③の燃料調整費を独自に定める企業も増えています。④の再エネ賦課金は国によって決められており、どの電力会社と契約しても変わりません。

特に②の電力量料金は2種類あるので注意が必要です。
1つめは固定単価プランです。契約期間中の単価が決まっているため、急激な価格高騰のリスクがありません。未来の電気代の見通しが立てやすいことを理由に選ぶ企業が多いです。
2つめは市場連動プランです。市場の取引価格を反映するので、市場が安定している場合は電気を安価に利用できるのが特徴です。一方で、市場価格が上がった場合は、その分だけプラスで請求されます。電力の市場連動単価は電力会社によって異なるので各社のHPなどで確認しましょう。

電力調達における企業努力

常に変化する市場環境に応じていくために、電力会社がどのような努力をしているのかを把握することも重要です。例えば法人向け低圧電力サービス「ソフトバンクでんき for Biz」を提供するSBパワー株式会社では、卸電力取引市場価格や予備率のデータを分析・リスクを定量化することで調達コストをコントロールしています。さらに運用面ではAI・機械学習などを駆使し需要量の予測精度を高めています。このように企業のリスク低減に関する情報開示を追っていくのも、電力会社を選択する上では重要です。

見積依頼で現状把握

自社の電気料金をどのくらい削減できるか気になる場合は、電力会社へ直接見積り依頼を出してシミュレーションしてみましょう。見積もりは既存で契約している電力会社の検針票や請求書があれば可能です。
法人(低圧)の場合、「ソフトバンクでんき for Biz」では薬局200店舗で年間800万円削減、小売業70店舗で140万円削減、営業所5店舗で30万削減に繋げたケースもあります。まずは、見積もりを依頼し検討余地があるかを探りましょう。

まとめ

今年度から再エネ賦課金の単価が上がっており、11月以降は国からの補助金が終了します。なお、気象庁によると今年の冬は平年並みの寒さになる予想で、暖冬だった去年に比べて暖房の使用頻度が増える可能性があります。総務省の家計調査では2月の電気使用量が一年で最も多いと公表されており、電気料金のピークはこれから迎えると言えます。
店舗や事務所を多く抱える事業者さまからは、見直しによる削減額が想定以上に多かったなどの声も聞かれますので、ぜひこの機会に電気料金を見直しましょう。

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