NEXT GIGA成功の鍵を考える「第5回ソフトバンクGIGAスクールサミット」開催リポート
2024年10月17日掲載
2024年8月18日に「第5回ソフトバンクGIGAスクールサミット」が開催されました。ここでは、総勢12名の学校の先生や教育委員会の方、有識者の方々にご登壇いただいた盛りだくさんのイベントの内容をリポートします。アーカイブ動画も公開していますので、ぜひご覧ください。
第5回 ソフトバンクGIGAスクールサミット(アーカイブ動画)
当日の様子は下記リンク先、画面下部の「ゲストとしてログイン」からご視聴いただけます。
視聴する(無料)
ソフトバンクGIGAスクールサミットとは?
ICTを活用した授業と教育改革に挑戦する教育関係者を応援する、ソフトバンク主催のオンラインイベントが「ソフトバンクGIGAスクールサミット」です。多くの皆さまよりご好評をいただき、今年で5回目の開催となりました。
今回は「NEXT GIGA成功の鍵」をテーマに実施。毎回恒例の実践発表では、ICTの日常化を目指す先生方の挑戦を伺うことで新たな学びにつなげるとともに、取り組みに対して寄せられた声を共有することで、教育の未来を考えました。また、今回の新たな企画として、教育委員会と学校現場の先生方、コメンテーターの先生方によるディスカッションを実施しました。1人1台のGIGA端末を活用する中で生じた悩みや課題を踏まえながら、これから「NEXT GIGA」を迎えるにあたり本当に大切なものは何かを、今一度立ち止まり考えました。
第1部:GIGAスクール構想の現状
文部科学省がGIGAスクール構想を提唱してから4年が経過した今。4年前に導入したGIGA端末の入替を行う「NEXT GIGA」を目前に控え、学校現場や教育委員会においてはどのようなGIGAスクール構想が実現しているのか、第1部では奈良教育大学大学院 小﨑誠二先生、東北学院大学 稲垣忠先生、認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム 新保元康先生、埼玉県教育局 鈴木陽子氏、奈良県教育委員会事務局 藤川由佳氏、奈良市立平城東中学校 永田光恵先生によるディスカッションが行われました。
GIGAスクールの今
皆さんはGIGAスクール構想において何が行われているかをご存知でしょうか。
「コロナ禍だから端末配布されたんでしょ?」
「NEXT GIGAとは配布された端末が回収されること?」
そのような声が一部の学校から聞こえたと登壇者は言います。GIGAスクール構想とは、「1人1台端末および高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備すること」「多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現されること」とされています。ただ、学校からは授業などでの端末の活用にポジティブな声だけでなく、ネガティブな声もまだまだ聞こえてくるようです。
教育委員会とは
教育委員会とは何か? 生成AIのGemini ※に聞いてみたところ「学校の管理、教育内容の決定、社会教育の推進など」という回答になったそうです。そんな共有から教育委員会が抱えている課題についての議論がスタートしました。
現在教育委員会に勤務する鈴木氏は「教育委員会では、(学校)現場にいたときより、広いフィールドで子供たちの環境に携われる」と言います。
また、教育委員会にて勤務する中で感じる事として、藤川氏は「学校の働き方改革も必要ですが、教育委員会の働き方改革についても課題」であるとコメントし、学校のみならず教育委員会も大変な状況であると語られました。
これまでにない「まなび」の芽生え
GIGAスクール構想開始以降、小学校では端末が机の上にあるのが当たり前になっており、学習方法として情報端末を活用したまなびの時間が増加しています。端末を活用することで授業が効率化され、学習が全員参加になったという変化があるようです。
小﨑先生は、「中学生に端末があるときとないときについてどう思うか聞いたところ『めんどくさい』との声があり、よく聞くと『今までは授業で手を当てられたら終わりだったけども、タブレット(端末)を活用していると毎回全部の質問に解答しなければならない』と答えた。『勉強になるやん!』『なるほど、僕らいいことやっているな 』と思った」と語ります。
稲垣先生は「授業の中で、子どもたちが活動している時間が増えた。また、1人1台の端末の導入により学習の様子は大きく変わった。子どもたちが端末を触っている時間が増え、何かしらの事を行う時間が増えた。子どもがぼーっとしている時間は減ったが、子どもたちが自分でじっくり考える時間がなくなったり、自分なりの(まなびに対する)消化の時間が少なくなっているかもしれないので、まなびの姿としてどうあるべきかを考えていかなければならない」と言います。
また、小﨑先生は「今年の高校1年生は小学校6年生のときから端末を活用しているGIGA世代である。高校2年生や3年生も新しい時代の先頭であるべきところなのに、前の時代の殿(しんがり)になってしまっている。今すぐICTを活用した授業を行うべき」と語ります。さらに、教員養成過程の大学生を指導する稲垣先生は「ICTを活用した授業を受けてきていない子どもたちが先生を目指すという状況で、ICTにネガティブな思いを持つ学生も少なくない。それを踏まえ学生に学校現場が変わっていることを教えていく必要がある」と語ります。
私たちの期待
小﨑先生は「2100年になると、日本の人口は 3,700万人まで減少することになる。今後100年後の未来についても今から考えなければならない。子ども自身の学びを深める事も重要である」と続けます。
また新保先生は「ICTの力を活用して、授業だけでなく特別支援の子どもたちや部活動、先生の働き方についてもよりよい方向にしていきたい」と語ります。
これらについて視聴者の方からは「これまで『デジタル化でまた仕事が増える』と考えていたが、『少子化で人員の増加は見込めないのだから、働き方改革のためにもデジタル化が必要』という気づきがあった」との感想をいただきました。
第2部:実践発表
続いて第2部では、各校の先生方から、さまざまな取り組みとチャレンジの発表がありました。
3年目のチャレンジ
大阪府立思斉支援学校の酒井先生は「本校は『日本で最もタブレットを活用している支援学校』を目指し、iPad活用を推進する校内プロジェクトに取り組んでいます」と言います。また、長谷川先生は「今年4月に赴任してきた教員もiPad を使うことが当たり前になっている」と語ります。そんな同校におけるタブレット活用の「成功の鍵」について、教頭先生、プロジェクトチームや研修担当の先生方など、それぞれの立場から共有がありました。これは特別支援学校のみならず全ての校種において参考となるのではないでしょうか。
チーム大有の歩み ~笑顔でやってみよう!続けよう!広めよう!~
「チーム大有」としての学校全体での取り組みを進める旭川市立大有小学校。同校教諭の相木先生より DXを活用した教員主導の授業から子ども主導の授業への移行、教員間でのチャット活用による効果、そしてDX推進による在校時間の推移など教員の働き方変化の紹介がありました。また、旭川市教育委員会の小山氏からはチャットを活用した効果的な教育委員会からの情報共有・発信の方法などについても共有がありました。
テクノロジーで変わる部活動、学校スポーツ。
前長野県飯田市教育長で、現在は一般社団法人 未来地図の代表理事を務める代田昭久先生は、「子どもたちを『授業』だけでなく『学校経営』の主体者・当事者に変えていく」ことがNEXT GIGAの成功の鍵と語ります。その中でも部活動改革が大きなテーマであるとして、部活動の地域移行に関する子どもたちの認識度調査結果や長野県飯田市における部活動改革に関する取り組みの共有がありました。また、主体的・対話的な学びを実現する方法のひとつとして、ソフトバンクのソリューション「 AIスマートコーチ」の紹介もありました。
「アシストガイド」が作る安心の学び ~ICTで支える特別支援学校の日常~
香川大学教育学部付属特別支援学校の三宅先生・小林先生からは、同校とソフトバンクが共同研究を行っている、知的・発達障がいのある人がひとりで行動できるように支援するアプリ「アシストガイド」について、やりたいことを実現できるサポート役としてや、卒業後の生活を見据えた学習を行う中での具体的な活用方法およびその効果の共有がありました。
AIを楽しみながら学びましょう
瀬戸SOLAN学園 大崎貢先生は、最新の生成AI技術を活用したクリエーティブで面白い取り組みを実践。また、愛光中学・高等学校 和田誠先生からは、校務にも活用可能なオリジナルのChatGPTを作成できる便利な機能や、学習面に特化した最新の生成AIツールの紹介がありました。さらに「これから生成AIをどう活用していくのか」という、生成AIとの上手な付き合い方のヒントについても触れられました。
第3部:NEXT GIGAに向けて
締めくくりとなる第3部では、実践発表の内容や各セッションのポイントを振り返るとともに、視聴者の方からのご意見・質問への回答や、有識者の先生方が考えるNEXT GIGA「成功の鍵」についての共有がありました。
視聴者からの意見・質問コーナー
「視聴者の皆さんの意見・質問から『成功の鍵』を探ろう!」をテーマに、視聴者の方よりリアルタイムで寄せられたご意見・ご質問に対して有識者の先生方が回答され、リアルな声をもとに、さらなる「成功の鍵」を探りました。
「教育委員会の担当者が全くGIGAに関して学んでいない、現場から働きかけても何も改善されていない」とのご意見に対しては、教育委員会にて17年間勤務経験のある小﨑先生より、「教育委員会も学ぶ機会が与えられないままGIGAがスタートした」「学校と教育委員会が一緒に取り組んでいく姿勢が大切」「ICTの活用はまだ始まって3・4年。まだまだこれから。協力してやっていこう」とのコメントがありました。
また「教育実習生にどのように端末を活用させればよいか」との教育実習の受入側からのご意見について、学生を教育実習に送り出す立場である大学教授の稲垣先生は「自治体によって対応のレベル感にはかなりの差があった」と言います。「教育委員会がきちんと教育実習生の端末活用にかかる方針を示すことが必要」「故障時のための予備端末を実習生用の端末として教育実習期間中のみ使用する体制を整備するなど、実習生が端末を活用できる環境を整備してもらいたい」と語りました。
成功の鍵
最後に、第3部のファシリテータ―を努める 新保先生より、「成功の鍵」についての考えを共有いただきました。
1つ目の鍵は「インフラ整備」。「まだまだネットワーク環境の整備が足りていない。GIGA端末活用の全ての前提であり、これがないと何も始まらない」と述べられました。
2つ目の鍵は「徹底的な横展開」。イベントや研究会のみでなく、チャットなどの活用により教員間や教員と教育委員会との間で日常的に情報共有を行っていくことが大切だと言います。
最後に3つ目の鍵は「時間を絞り、成果を高める」こと。人口が減少する中、学校においても、生成AIなども活用しながら「より効率化することに積極的になること」が必要だと語ります。
これに加え、有識者の先生方からは、教員自身が楽しみながら取り組むことや、全ての子どもたちに関わる取り組みの横展開、保護者への丁寧な説明も成功の鍵となりうるのではとのコメントがありました。「人口が減っていく中で、ICTの力を借りて社会全体がパワーアップすればいいな」と締めくくります。
まとめ
今回は第5回ソフトバンクGIGAスクールサミットの開催リポートをお届けしました。
視聴者の方からは「この場でしか得られないような情報や気づきがあり、楽しく参加させていただきました」「これまで端末活用した授業をやらされる感がありましたが、実践発表などを通して『ちょっと面白そうかも…』と思えたのが一番の収穫です」とのご好評の声をいただきました。
各セッションには今回のリポートではお届けしきれなかった見どころがまだまだたくさんあります。
アーカイブも併せてぜひご覧ください。
ソフトバンクは教育に関わる皆さまを応援しています。これからも皆さまと一緒に、子どもたち・教育に関わる方々を応援する取り組みを進めてまいります。
第5回 ソフトバンクGIGAスクールサミット(アーカイブ動画)
当日の様子は下記リンク先、画面下部の「ゲストとしてログイン」からご視聴いただけます。
視聴する(無料)