IoT事例:LIXIL岩井工場で進むフォークリフトのデータ活用~IoT SIM 「1NCE」を活用した実証実験~
2025年1月7日掲載
現代の物流現場では、効率化とコスト削減、さらには環境保全がますます重要視されています。株式会社LIXIL(以下、LIXIL)では、これらの課題を解決するために、IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用したデータ取得によるフォークリフトの実証実験(PoC)を開始しました。今回は、その取り組みと成果、さらには今後の展望について詳しくご紹介します。
LIXIL岩井工場の取り組みと背景
環境保全とコストメリットの両軸から電動フォークリフト用再生バッテリーを導入
LIXILは『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』をパーパスに掲げ、サッシや水まわり製品といった住宅関連の製品を製造・販売しています。茨城県にある岩井工場はその中核として、特に窓まわりの商材を手掛ける国内最大規模の加工工場であり、約700名の従業員の方々が日々生産活動に従事しています。
岩井工場 技術課 課長の奥野氏は企業として環境保全に注力していると語りました。
「LIXILでは、中長期計画に基づき、環境への配慮に力を入れています。例えば、再生可能エネルギーの活用やCO₂排出削減を目指し、ソーラーシステムの導入を進めています。LIXIL岩井工場では隣接する敷地にメガソーラー発電施設を保有しており、工場全体の電力をまかなえる規模で発電を行っております」(奥野氏)
注力する環境保全とコストメリットにより、既存で利用している電動フォークリフトから発生するバッテリーのリユース技術を活用した再生バッテリーを採用。岩井工場 技術課に所属する小針氏は効果を次のように語りました。
「元々、電動フォークリフトのバッテリーを6年と定義して、6年サイクルで新しい車体に乗り換えていました。車体はまだ利用できるとしても新品のバッテリーは価格が高く、それであれば新車に乗り換えた方が良いと判断していました。今回、安価な再生バッテリーを採用したことで、車体の使用期間を延ばすことができ、環境負荷の低減と電動フォークリフト1台あたり約150万円程度のコスト削減効果を実現しました」(小針氏)
LIXIL岩井工場 技術課の皆様(左より、小針氏、木所氏、奥野氏)
今回採用された再生バッテリーについて、株式会社イグアス(以下、イグアス)の熊田氏と市川氏は次のように語りました。
「イグアスはITハードウェアやソフトウェア機器のディストリビュータです。社会課題の解決に取り組んでいく枠組みの一環として、廃棄バッテリーのリユース技術を活用した再生バッテリー『MOTTA(モッタ)』を提供し、CO₂の削減やリサイクルなど環境に考慮した取り組みを実施しています」(市川氏)
「MOTTAは環境に優しいだけでなく、経済的なメリットも提供します。バッテリー導入は通常イニシャルコストが多くかかりますが、再生技術を利用しているためイニシャルコストが下げられるというメリットもあります」(熊田氏)
実際のフォークリフト(左)と再生バッテリー(右)
IoTでデータを取れる環境づくり
実際にフォークリフトで再生技術を活用しはじめたLIXIL岩井工場。利用に際し、気になる点も改善していこうと考えています。
「再生バッテリーを採用した電動フォークリフトの実走テストを実施して、車体を長く維持できると判断したものの、実際に車体が使えるかどうかというデータもほしいと考えていました。電動フォークリフトを長期利用する際の問題点として、運搬物の違いや運転士さんの扱い方により車体の寿命にバラつきがでてしまうため、データを利用することで寿命の根拠が取れるようになれば良いなと思っていました」(小針氏)
データを見える化することで、長期利用するための保証にしたいと考えていたタイミングで、イグアス社より再生バッテリーにIoTのSIMである1NCE(ワンス)を利用したIoTソリューションを活用するPoCの打診があり、実際に行うことになりました。
PoC中のIoT機器(左)と接続するSIMの1NCE(右)
IoTでデータを取得し、稼働時間や負荷の状況、充電量などのデータを取得しユーザインターフェース(UI)に反映させています。
「バッテリーは電圧、抵抗値、電流の流れ項目を絞ってデータ取得しています。これらは相関関係があり複合的な判断で行っていますが、バッテリーの知見がないと判断ができないもので、イグアスとして取り組んでいます。将来的にはAIも活用して判断していく予定です」(熊田氏)
ユーザインターフェース(UI)イメージ
ソフトバンクの1NCEの強み 価格競争力とサポート力
イグアスではIoTソリューションへ搭載するSIMとして、ソフトバンクが提供する1NCE(ワンス)を採用しています。
「今まではフォークリフトの利用状況を紙ベースで管理したり、運転士さんの感覚値で判断しているところが多くありました。過去にもフォークリフトの利用状況のデータ取得する製品はありましたが、価格が非常に高額でした。そのため、なるべく安くご利用いただける環境をいかに作るかがポイントと考えていました。
IoTソリューション用のSIMとして1NCEを採用したのも、ほかと比較して圧倒的に価格競争力が高い点でした。通信費も1台だけなら少ないものの、台数が増え100台200台となるとコストも大きな額になるため、なるべく通信費を下げる必要がありました」(熊田氏)
価格競争力に加えて、ソフトバンクとのパートナーシップも大いに役に立ったと熊田氏は続けました。
「1NCEはIoT向けに特化したサービスであり、IoTソリューション開発にあたりソフトバンクさんから色々アドバイスや技術的サポートをもらうことができました。親身になって、一緒に取り組んでくださるソフトバンクさんの姿勢は非常に大きなメリットだったと思っています」(熊田氏)
今後の展望
データ取得を開始し、分析に進みはじめたLIXILとイグアス。設備管理としてタイヤやバッテリー交換を担う技術課の木所氏は今後の展望について次のように語りました。
「現在はトライアル運用中で数台のフォークリフトにIoTソリューションを搭載しています。日々、負荷状況がとれているので、今後は搭載台数を増やしたりしてこれらのデータを精緻化し活用することで部品の交換時期などに結びつけて、計画的に管理ができるようになればと思っています」(木所氏)
データを取得しフォークリフト管理の判断に使っていきたいと小針氏、奥野氏も続けます。
「車両の増減の判断や、データに基づくフォークリフトの長寿命化を進めていきたいと思っています。例えば、使っていないフォークリフトの有無を確認し、ほかのところでカバーできないかを検討したり、反対に利用頻度が高く負荷が高すぎる場合には台数を増やすことで違う仕事にも利用ができるのではないかなどの判断を行っていきたいと思っています。
フォークリフトの長寿命化に向けて、データやノウハウを蓄積して、IoTソリューション側からタイヤの交換は今ですよ、などアナウンスしてもえれば、人の業務が削減できてほかの仕事に集中できるとも思っています」(小針氏)
「予測が進んでいけば、例えば来期は〇本タイヤの交換を行いますなど、予算立てがしやすくなると思っています。なるべく省人化していき、我々が推進すべき技術的な改善や分析に力を割いていきたいですね」(奥野氏)
LIXIL岩井工場のIoTを活用したフォークリフトの実証実験は、コスト削減と環境保全という二つの大きな成果に向けて進んでいます。この取り組みが今後の物流業界におけるデジタル化の進展を示す重要な一歩となることは間違いありません。
今後の進展にもぜひご期待ください。
PoCを行うLIXIL、イグアス 各社
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