観光アプリでストレスフリーな周遊体験を 大阪観光局における観光DXの取り組みに迫る
2025年4月9日掲載
インバウンド観光の再開に伴い、外国人観光客数はコロナ禍による落ち込みから徐々に回復傾向にあるものの、全国の自治体においてはより多くの観光客を誘致すべく、さまざまな施策の検討が必要になっています。
本記事では、公益財団法人大阪観光局(以下、大阪観光局)が目指す観光客へのストレスフリーな観光体験を実現する取り組みの1つとして、ソフトバンクと連携して企画・開発された観光アプリについて、大阪観光局で観光DX・マーケティングを担当されている牧田拡樹氏と芦田真亜氏にお話しをうかがいました。
大阪観光局の取り組み
徐々に回復傾向にあるインバウンド旅行者を含めた観光客に対して、単なるコロナ禍前への回帰だけではなく、ストレスフリー・シームレスで快適な旅行を満喫してもらうための利便性向上や環境の整備、中でもデジタル技術を活用した観光DXの促進が必要になってきています。
そんな中、大阪府は2025年の大阪・関西万博の開催やIR(統合型リゾート)誘致などを控え、2024年には来阪観光客数が約1,460万人を超えるなど、コロナ禍と比較し多くの観光客が訪れています。一方で、従来の観光客の行動様式は、大阪市内の主要観光スポットへ集中する傾向があり、府域を周遊してもらうための観光情報の共有や行政・民間の連携、送客の仕組みなどが不十分な状況でした。また、近年の観光客の旅行形態がよりデジタルを活用したものに変化していることから、観光客への認知向上や消費拡大を促進する活動には時代に合わせた環境構築が必要となっていました。
そこで、重要性が高まっているのが「データの活用」です。効果的な観光促進施策を立案し、その効果を素早く検証してより良い施策に改善するためには、観光客の行動履歴データのようなファクトを適切に入手する手段の整備が重要になります。
これまでも人流データや出口調査に基づいた消費額データなど、さまざまなデータを用いてマーケティング活動を行ってきた大阪観光局ですが、次のような課題があったと牧田氏は話します。
牧田氏:「課題の1つ目としてあるのが『観光客の一極集中』です。
大阪府に観光に来た人は、大阪市内の人気観光スポットにとどまる傾向があります。市外へ周遊してもらうためには、二次交通整備といった課題もありますが、それ以上に徹底的なコンテンツ(魅力)の深堀りが必要です。やはりどんな企業も儲かる場所で商売をしたいわけで、一極集中という言わば自然発生的に起こる事象をマーケティングによって人為的にコントロールし、大阪府全体への周遊を促進させることが重要です。
そして課題の2つ目は『データ収集の継続性』です。
現在、観光客の導線や消費額についてはデータを他社から購入していますが、同じ方法でデータを取得しつづけるには、非常にコスト負担が大きい状況です。そのため、なんとか自前でデータを収集できる手法を開発する必要があります」
「Discover OSAKA」開発に向けた取り組み
このような課題の1つの解決策として開発したのが観光アプリ「Discover OSAKA」です。アプリを通じてストレスフリーな観光体験の提供と、データを継続的に取得すると言う課題解決に挑みました。
牧田氏:「元々はアプリ開発を目的としていたのではなく、『観光』『飲食』『交通』『物販』『宿泊』の5つの要素をデジタルツールを通じて一気通貫で体験できることを目指しました。そのほかにも、プッシュ通知や位置データによって意図した場所へ送客できるという面からアプリの開発を検討しました。
また、プロポーザルを実施するにあたり、いかにアプリをダウンロードしてもらうかが最大のカギだと考えていたので、重要視していたのが『尖った提案』でした。そうした中でソフトバンクの『キャラクターを使ったXR体験』の提案に『これはいけるんちゃうか』と思い、採択に至りました。観光と言えば楽しみや感動が欠かせません。来ていただいた観光客に明るく楽しんでツールを使ってほしいとの思いにマッチしていたのはソフトバンクの提案だけでした」
このような流れから、ソフトバンクとの連携による開発が始まりました。しかし、開発にあたっての課題も出てきました。
キャラクター活用の課題もクリア
最大の問題はキャラクターの活用でした。ソフトバンクよりさまざまなキャラクターを提案し、検討いただきましたが、キャラクターの使用許諾の自由度がなく「気軽に写真を撮ってもらいたい」という想いと反する結果となっていました。そんな中、採用に至ったのが株式会社サンリオ(以下、サンリオ)のハローキティでした。
芦田氏:「国内はもちろん、海外での認知もあることからハローキティを選びました。サンリオもアプリプロモーションの観点から、最大限ハローキティの効果を発揮できるようにと親身になってくれていて、良いパートナーを見つけてくださったソフトバンクにはありがたく思っています。
当時は我々にキャラクタービジネスの経験がなく、手探りの状態でした。しかし、通信キャリアとしての事業だけでなく地域創生など幅広い事業に携わっているソフトバンクと連携できたことで、あらゆる知見や人脈を生かしてさまざまな課題も一緒に乗り越えていけたのだと思います」
牧田氏:「ソフトバンクからいくつかキャラクターの提案がありましたが、私たちの『やりたかったことができなかった』という経験をくんだうえで、サンリオという新たなパートナーを見つけてくれたので、やりたいことの差異がなかったのかなとも思います。XR体験の部分に関しては想定外なことも多かったですが、その課題解決にソフトバンクが実直に取り組んでくれた姿勢も良かったです」
「Discover OSAKA」アプリの主な機能
①XR体験 大阪府内のランドマークや観光地、また大阪府外の場所でアプリ内カメラを使用することで、株式会社サンリオのハローキティと記念撮影をすることができます。
②観光コンテンツの提供や検索 月ごとのイベント情報や府内の観光施設情報のほか、目的地までの案内もサポートしてくれます。
③体験施設の予約&決済 大阪楽遊パスの購入や、施設入場・体験商品の予約・決済が可能です。日本語のほか、英語・中国語・韓国語にも対応しています。
④顔認証による決済サービス アプリ内で事前に顔写真とクレジットカードの情報を登録しておくと、財布はもちろんのことクレジットカードやスマートフォンを出すことなく決済が完了します。
⑤Shop’nFly(インバウンド向け免税ECサービス) アプリからオンライン注文すると、旅行中に宿泊ホテルや空港で受け取ることができるオンライン免税サービス。大阪のお土産を中心に約100商品をご用意しています。手ぶらでスマートに大阪旅行を満喫できます。
⑥SmileCoupon(寄付機能付き飲食店クーポンサービス) 大阪の飲食店でお得に食事が楽しめる、デジタルクーポンサービスをアプリに搭載。クーポン代金の一部が被災地や子供支援団体への寄付となります。食事を通じて社会貢献と飲食業界の活性化に貢献できるサービスです。
そのほか、乗り合いタクシーサービスや宿泊予約機能も搭載し、ストレスフリーな観光体験を提供しています。
▶「Discover OSAKA」について(外部ページへ遷移)
▶「Discover OSAKA」のご利用方法【動画】(外部ページへ遷移)
今後の展開ついて
芦田氏:「デジタルプロモーションの効果もあって、アプリのダウンロード数は17万件を超えて一定数のユーザーを確保できた状態になってきましたが、データを活用するためのサンプル数としては圧倒的に数が足りていません。観光アプリは基本的に観光地にいる間しか使わないものですが、ダウンロードのハードルを下げて、大阪に来たときには必ず使ってもらえるツールにすることが重要だと思っています。
その上で、本来あるべき姿であるデータ収集基盤として活用できるアプリに育てていきたいです。今後は機能を増やすというより、今あるコンテンツの操作性や満足度の向上を目指しながら、お客さま目線でキティちゃんを楽しみながら大阪府を観光してもらえるアプリを目指していきます。How to動画やキティちゃんとかわいく撮れる裏技なんかも周知していけたら良いですよね」
牧田氏:「万博に向けてもミャクミャク(EXPO2025 大阪・関西万博の公式キャラクター)とキティちゃんのコラボフレームを展開したり、旅館業の方と連携して各旅館の部屋の中にもチラシを置いていただいたりと、多くの方にXR体験を試してもらえる仕組みを作っています。ぜひ多くの方に楽しんでもらいたいなと思います」
ミャクミャク × ハローキティのコラボフレームのイメージ
大阪観光局が考える「デジタルを使った観光の未来」
最後に、今後実現したい大阪、関西の観光の未来についてもお二人にうかがいました。
牧田氏:「お客さまが『ストレスフリー、シームレスで、いつでもどこでも旅ができる』それこそ、財布も携帯も持たずに、入場から体験、飲食、ショッピングなど全てができる世界を目指しています。ソフトバンクやサンリオなどの企業と連携して取り組んでいますが、みんな前向きで、互いが『この人たちと組むと、何か面白い景色を見れるんちゃうか』と思ってやっています。今後も楽しい観光を提供できるように目指したいです」
芦田氏:「観光って基本的に楽しくなるために行くものですよね。財布やチケットを忘れた、店に行ったら閉まっていたなどの悲しくなる場面を、我々の持っているツールによって、例えば顔認証で施設入場や決済ができたり、的確な店舗情報を提供することで、そういった悲しい体験をなくしてあげたい。極端なことを言えば、アプリとパスポートさえ持ってくれば、チケット購入、飲食、宿泊など観光に関わる全てのことが楽しんでもらえるような、大阪に来た人に『大阪めちゃくちゃ便利で楽しいやん』と言ってもらえるようなハッピーな世界を作れたらいいなと思います」
大阪を「アジアナンバーワンの国際観光文化都市」とすることを目指す大阪観光局。同局の取り組みは、大阪のあらゆる魅力を発信するものとして、これからも国内外からの観光客に新たな価値を提供し続けていくことでしょう。
関連ページ
ソフトバンクの自治体DX推進サイト「ぱわふる」_観光・地域活性化
人々の生活スタイルや価値観が変わりつつあり、自治体でもその変化に対応していく必要があります。
ソフトバンクではデータに基づいた観光施策立案はもちろん、観光客の周遊促進、更なる購買体験の実現など、さまざまなソリューション群により、各自治体に最適なご提案をいたします。
> サービスをみる