EDIX東京2025:教育現場に革新をもたらす最新DX・AIソリューションをご紹介【展示リポート編】
2025年5月21日掲載
教育分野における日本最大級の展示会であるEDIX(エディックス)東京2025が、2025年4月23日から25日の3日間にかけて東京ビッグサイトにて開催されました。昨年に続いて本イベントでの大規模な出展となったソフトバンクブースでは、総勢30名以上の有識者や先生方をお呼びした講演や教育現場のDX・AI推進を加速するさまざまなソリューションの展示が行われました。
本記事では、イベントで展示されたソリューションを中心にご紹介していきます。
DXとAIで革新する次世代教育の最前線へ
EDIXは、「教育の未来を紡ぐ 新たな可能性の起点に」をミッションに、教育をより良いものにしたいと願う人々がつながることができるイベントです。教育に関わるさまざまな最先端のサービスや製品をその場で体験でき、それらを活用する事例や各学校や企業の取り組み紹介をブースや講演などで情報を得ることができます。開催された3日間とも、多くの来場者でにぎわっていました。
ソフトバンクの展示では、「AIで変わる学びの環境」「子どもたちの学びDX」「これからの大学DX」「次世代校務ネットワーク」と4つのテーマに分け、教育現場の課題解決に役立つソリューションを紹介しました。
AIで変わる学びの環境
かつてないスピードで社会に普及しているAI。このような新たな技術を教育の場でも活用する動きが活発になっています。特に、少子化や働き方改革の影響を受け、教員の数が限られる中で、効率的かつ効果的な教育を実現するためにAIや生成AIを活用することが求められています。「AIで変わる学びの環境」コーナーでは、これからの教育を支えるための革新的な技術やサービスが紹介されていました。
先生AIアシストLab
少子化による教員数の減少や働き方改革の推進による業務時間の制約を原因として、教員の業務負担増加が課題となっています。特に、教材作成やテストの採点業務は教員の負担感が非常に大きく、多くの時間が割かれている現状があります。
これらの課題の解決策として展示されていたのが「先生AIアシストLab」です。「先生AIアシストLab」は、先生の業務の大きな割合を占める教材・テスト作成や採点などの「授業準備・成績評価」業務を生成AIによって一気通貫でサポートすることで、先生の業務負担を大幅に減らすことができます。「先生AIアシストLab」の画面上から、学習教材や画像をアップロードするだけで、その内容をベースとした問題が生成されます。作成した問題をURLに出力し、そのURLを生徒に配布すればテストを受けてもらうことが可能です。採点もボタン一つで自動的に行われます。
現場リポート
「いざ生成AIを活用しようと思うと『プロンプト(指示文)を適切に考えないといけない』といったハードルが生まれます。『先生AIアシストLab』は、プロンプトを入力せずに使えるので、特別なスキルを持っていなくても簡単に生成AIを活用できる仕組みになっています。
問題作成は、四択・穴埋め・並び替え・記述式など複数の形式に対応しています。特に、従来の機械学習での採点が困難だった記述式に対応しているのが本サービスの特長です。回答内容の文脈を読み取って採点できるので、『ひらがなでも正解』『意味が正しければ正解』『特定のキーワードが入っていれば部分点を付与』といった柔軟な採点ができます」(ブース担当者)
展示ブースでは、学習指導要領の一部をPDF形式で読み込ませ、問題を生成するデモを見せていただきました。読み込ませるデータを限定することで、出題範囲外の問題が生成されないよう先生の意図に沿った問題を作成することが可能です。生成後に問題や解答の編集をすることもできます。本サービスはGoogle 社の「Gemini™ 」を生成AIモデルとして採用しており、Google Workspace™ との連携など、さらなる機能拡充が計画されています。
「先生AIアシストLab」のデモ画面
メンタリ
子どもたちの適切な学習環境を整えるには、「心のゆたかさ」は不可欠です。各自治体・学校では、文科省の指示によりすでに学期ごとに最低1回の「いじめに関するアンケート」を実施しているほか、各学校の方針により「生活アンケート」などを行い、子どもたちの心のケアを最優先する取り組みを行っています。しかしながら現場教師は、学び全般の業務に加えて心のケアの対応まで含めると、その業務量は一定基準を遥かに超える状況となっています。
そうした現場教師による子どもへの心のケアを効率的かつ適切に対応できるサービスとして「メンタリ」が紹介されていました。
「メンタリ」は、AIを活用して子どもたちの心のケアを行うためのツールで、主に以下の機能を提供します。
- AIによるリスク分析: アンケートDX機能を通じて、子どもの心の状態をAIがリスク分析し、早期に問題を検知します。
- AIチャット機能: 教師に代わってAIチャット機能が、子どもたちにとって気軽に話せる環境を提供します。
- 専門家による対応提案: リスクのある子どもに対して、AIが専門家の知見をもとに適切な対応方法を提案します。
「メンタリ」のデモ画面
現場リポート
「心の悩みを抱えていても、なかなか相談できない子どもたちがたくさんいます。表立って先生に話しづらい、スクールカウンセラーもハードルが高くて相談しにくいという声があります。また先生たちも、普段の業務に加えてアンケート結果を見るのに時間がかかってしまうなど、子ども一人一人の悩みに気づきにくい環境があります。そうした課題に向き合うために作った支援ツールが『メンタリ』です。
ユースケースとしては、小・中学校の子供たちに一人一台配布されているGIGA端末に『メンタリ』のアプリをインストールし、日々の学校生活において定期的なアンケートなどを実施します。実施結果をAIでリスク分析することでリスクのある子どもを早期に検知し、先生に適切な対応を提案してくれます。そしてすぐ先生に相談するのではなく、『傾聴』に特化されたAIチャットを使って悩みや課題を吸い上げて言語化してもらいます。その悩みをAIが要約することで、状況を正しく先生に伝えることができます」(ブース担当者)
展示ブースでは、今後実装が検討されている「心拍検知」機能のデモが行われていました。「心拍検知」はGIGA端末のカメラ※を使って利用することができ、チャット回答時の子どもの心のゆらぎを視覚化することで、異変を見える化できるという画期的な機能でした。
深刻化する子どもの悩みを「メンタリ」が適切な支援へ橋渡しする役割になっていると感じました。24時間365日、いつでもどこでも子どもたちを支援できる仕組みとして、今後の教育現場での活用が期待されます。
子どもたちの学びDX
GIGAスクール構想・コロナ禍を通じて教育でのICTの利活用はより広く根付きはじめ、子どもたちの主体性を意識した「探究的な学び」、つまり、子どもたちの「知りたい」「やってみたい」と自ら考え行動することによる学びが重視されるようになっています。
「子どもたちの学びDX」のコーナーでは、GIGAスクール構想で子どもたちに配備されているiPad やChromebook™ といった学習用端末はもちろんのこと、各自治体・学校で活用が進む自ら意欲的に学べる環境をサポートするICTツールを取りそろえました。
AIスマートコーチ
体育・部活動の現場では、指導者不足や専門性の欠如、先生の負担増加、子どもたちの運動離れといった複数の課題から、子どもたち一人一人に合った指導法を提供することが難しい状況です。
このような課題に対し「AIスマートコーチ」は、スマートフォンやタブレットで撮影した運動の動画をAI技術で解析し、お手本動画と自分の動きを比較・分析したり、練習メニュー作成や活動記録などの機能を提供することで、具体的な指導へつなげていきます。お手本動画はプロや大学生、専門家による指導動画などがあり、AIによる骨格推定・フォーム解析、マッチ度(類似度)判定などの機能を使って、指導する側だけでなく子どもたちが自ら課題を発見し、友達とディスカッションしながら改善できる環境を提供することが可能です。
AI骨格解析の画面
現場リポート
「必ずしも先生全員が体育を得意としていたり、顧問となった部活のスポーツを経験しているとは限りません。『AIスマートコーチ』を使うことで、自分のフォームをじっくり分析するという『振り返り』の総量が増えます。体育の授業における分析は、これまで積極的に実施できていない部分でもあるので、映像を見ながら指導する、子どもたち自身で振り返れるというスタイルは『できる・できない』で判断されがちな体育から脱却することが可能になります」(ブース担当者)
実際に、AI骨格解析のデモを見せていただきました。最初は子ども一人が側転する様子の動画が流れていましたが、お手本動画と動きを合わせるために再生速度や向きをそろえたり、重ねて再生するなど比較しやすいように編集ができました。さらにAI骨格解析で映像が抽象化されることで、腰やひざの位置の違いが明確になり、「次はどこを変えてみようか」という判断がしやすくなっています。
ユースケースとして、小学校体育では、跳び箱や器械運動、鉄棒、縄跳びなどで動画比較やAI骨格解析を活用し、個別最適な学びや自宅学習に活用されています。また、中学校・高校では、部活動における多様な競技でフォーム改善や自主練習の振り返り、遠隔指導に利用されています。今後はお手本動画の拡充や学習指導要領に準拠した教材の強化を図りつつ、さらなる教育現場のDXを推進していきます。
ALPHA(アルファ)
体育の中でのDX推進は授業だけではなく、体力テストの場面でも進んでいます。小学校から高校まで毎年一回行われる体力テストでは、「結果を紙からExcelへ手入力するなどの手間がかかる」「個人結果票の返却に時間がかかる」「結果を活用できていない」といった課題が存在します。
これらの課題を解決できるのが体力テストデジタル集計アプリの「ALPHA」です。「ALPHA」は、全国4,200校、160万人に利用されており、従来の紙で実施されていた体力テストを一人一台のタブレットを活用してデジタル化し、先生の業務量を大幅に低減しながら、児童生徒の個別最適な運動プラン作成をサポートします。テスト結果は即時フィードバックされ、子どもたちそれぞれに最適化されたアドバイスなども表示されるので、子ども自身が前回からの成長度合いや次回の目標設定を自発的に行うことができる点も魅力です。
お手本動画の画面
現場リポート
「体力テストの結果の集計が非常に簡単になるというのも大きなメリットですが、一番ご評価いただいているのは『お手本動画』です。これまでも動画を使った指導というものはありましたが、先生がYouTube™ などで動画を探してくるのも大変ですし、運用上の問題がありました。『ALPHA』では、お手本動画がシステム内でまとまっており、テスト結果に対して最適な動画がレコメンドされます。これによって先生の動画を探す手間を省けますし、体力テスト中の空き時間に子どもたちが動画を参照して改善点を話し合ったりするなど、子どもたちの自主性や協同性を促進する効果も見られております」(ブース担当者)
展示ブースでは、握力測定をして結果を入力するデモが行われていました。アプリ画面は分かりやすいデザインになっており、操作説明なしでも生徒自ら入力できることも多いそうです。実際に導入した学校での事例動画の紹介もされており、現場でどのように活用されているかをイメージすることができました。
▶「ALPHA」の詳細はこちら
これからの大学DX
大学教育の現場でも、学生の満足度向上、教職員の業務効率化、キャンパス環境の整備といったさまざまな課題に対応するため、DXやAIの推進は重要なテーマになっています。「これからの大学DX」のコーナーでは、大学の経営力強化に向けたソリューションが紹介されていました。
Axross Recipe(アクロス レシピ) & 人材育成ハッカソン
大学では、学生の探究学習や課題解決型の人材育成、開発スキルを向上させるための実践的な取り組みが求められています。こうした取り組みは大学単体だけではなく、企業や自治体と連携してそれぞれの強みを生かしながら、大学や地域が抱える課題に取り組むといった活動も行われています。そうした活動の中で活用されているソリューションのひとつが「Axross Recipe」です。
「Axross Recipe」は、AI・DX人材を育成するためのオンライン学習プラットフォームと研修・定着化支援サービスで、生成AI活用や業務改善など具体的なニーズに合わせて学ぶ機会を提供しています。現役エンジニアのノウハウが詰まった1,000種類以上におよぶAI・DX関連のコンテンツを「レシピ」として提供しており、より実践的なスキルが身につけられるツールとして大学や専門学校でも利用されています。オンライン学習に留まらず、実際に手を動かして学べるワークショップ形式やコンテストといったイベント開催など、オンライン・オフライン含めた複数の形式で学びを深めることができます。
「Axross Recipe」のデモ画面の様子
現場リポート
「教育現場でのDX・AI推進の支援を『Axross Recipe』で行っています。いわゆるEラーニングとして自主学習する機能だけではなく、自分でレシピを投稿したり演習を組むことで学び合える環境になっていて、ノウハウやナレッジを提供することもモチベーションのひとつになります。
また大学でのユースケースとして、人材育成アイデアソン・ハッカソン※などのイベントの開催もあります。学生が自分の学校や地域の課題に直面し、解決策を考える力を養います。アイデアソンで出てきたアイデアを実現するプロセスや実際の開発をハッカソンを通じて学ぶことで、企画から実装に至るまでの実践的なスキルを習得していくことが可能です」(ブース担当者)
学生にとっては、問題解決能力やチームワーク、プロジェクト管理といったスキルを実践的に学ぶことができ、大学側にとっても、学生の成長を支援しながら、教育の質の向上や研究起点の課題解決などを促進することができる素晴らしい取り組みだと感じました。
※アイデアソン:「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた言葉で、特定のテーマや課題に対して、参加者が短期間で集中的にアイデアを出し合い、創造的な解決策を考えるイベント
※ハッカソン:「ハック」と「マラソン」を組み合わせた言葉で、参加者が短期間で集中的にプログラミングや開発を行い、実際に動作するプロトタイプやソフトウェアを作成するイベント
※ハッカソン:「ハック」と「マラソン」を組み合わせた言葉で、参加者が短期間で集中的にプログラミングや開発を行い、実際に動作するプロトタイプやソフトウェアを作成するイベント
KANAMETO for Campus(カナメト フォー キャンパス)
大学の情報発信とコミュニケーションの効率化は、学生の満足度向上や大学運営の質を高めるために重要な要素です。「KANAMETO for Campus」は、LINEを活用した大学向けの情報発信・コミュニケーションツールです。セグメント配信やアンケート、チャットボット、リッチメニューなど多彩な機能を提供することで、「重要な情報が学生に伝わっていない」「履修登録など同じ質問が集中する」「さまざまな制度・取り組みが学生にとって探し出しづらい」といった課題を解決します。元々、自治体向けに展開されていたLINE公式アカウント運用ツールを、大学など学校法人向けに開発したサービスです。
「KANAMETO for Campus」が提供する機能の一部
現場リポート
「学生への情報発信は、ポータルサイトやメールなどで行う学校が多いですが、そもそもサイトに訪問しないと情報が出ているか分からなかったり、メールを見ない人も増えてきているので、情報を的確に届けることが難しい状況です。
その点、LINEはほとんどの学生が利用しているアプリなので、プッシュ型での情報発信が非常にしやすい点がメリットです。そのLINEと連携する『KANAMETO for Campus』は、重要な情報を確実に学生に届けられるサービスです。学年や学部ごとにターゲットを絞ったり、メッセージの到達率や開封率を出すこともできるので、どの時間帯・曜日で発信すると良いのか分析をすることも可能です。窓口予約やメッセージのリマインド機能もあり、学生の利便性を向上させることが可能です」(ブース担当者)
展示ブースでは、デモ環境を体験することができ、無料でお試しいただけるフリープランも紹介されていました。OB・OG、保護者とのコミュニケーションを持つことも可能なので、卒業した後も母校とのつながりを維持しやすいサービスだと感じました。
次世代校務ネットワーク
GIGAスクール構想をきっかけに、校内の通信環境は急速に整備されたものの、教育現場でのICT活用が進むにつれて、これまで以上に大容量な通信ができる通信環境が求められています。しかし、十分な通信環境が用意されている学校は少ない状況です。
このような課題への解決策として「次世代校務ネットワーク」のコーナーでは、高速で安定した通信基盤を構築できるソリューションが紹介されていました。
OCX光 インターネット 1G/10G回線
オンライン授業やタブレットを活用した学習が進む中で、校内ネットワークの安定性と速度は教育現場において非常に重要な要素となっています。特に、同時に多数の端末が接続することで回線が混雑し、授業がスムーズに進行しないケースも少なくありません。
「OCX光 インターネット」は、国内最大級※の相互接続・バックボーン帯域をもつ高速・高信頼の光回線サービスです。オンライン授業中の回線遅延や学習用端末の一斉使用時における通信速度低下などの課題に対応します。
教育機関向けに、ネットワークの現状を詳しく診断・分析し、詳細なリポートと改善提案を行う「OCXネットワークアセスメント」を提供しており、校内の通信環境で問題のある箇所を特定し、最適な解決策を講じることが可能です。
「OCXネットワークアセスメント」でネットワークの不具合を原因調査
現場リポート
「学校は敷地が広く、端に位置する教室や多数のPCで同時接続する際につながりにくくなるという声を多く聞きます。ただ、学校には通信ネットワークに対して専門的な知識を持つ方が少ないため、原因を特定したりその対策を考えることは非常に困難です。そのため、最初に「OCXネットワークアセスメント」で校内ネットワークのどこに不具合があるのかを調査することをおすすめしています。アセスメントによって回線速度、帯域使用状況などを可視化し、安定運用するための対策や将来的な拡張計画を立てるサポートを行っています」(ブース担当者)
実際に東京都内の複数の小中学校で、「OCXネットワークアセスメント」と「OCX光 インターネット」の導入も行われており、ブースではその事例の紹介も含めてICT専門スタッフによる無料相談が実施されていました。
まとめ
EDIX東京2025を通じて、子どもの「学び」や先生の「働き方」それぞれを支える技術やソリューションの展示を目にすることができました。
いまだ教育分野へのAIの浸透率は低いとされていますが、AI技術が教育現場にどのように役立つのか、その可能性を示す展示が多く、来場者の関心も高かったように感じます。教育現場のDX・AI推進が一層進むことが期待されます。
ソフトバンクは今後も教育現場のニーズに応えながら、テクノロジーの力で子どもたちの未来を拓く、より良い教育環境づくりを支援してまいります。