2026.02
RAG×データ構造化による「社内規程・ルール確認の高度化」の取り組みを向上
概要
ソフトバンク株式会社では、業務における社内手続きやルール確認の効率化を目的に、生成AIを活用したRAG(検索拡張生成)システムを導入しました。
膨大なPDF・Excel形式の社内規程等の文書を TASUKI Annotationにより構造化し、ChatGPT Enterpriseとセキュアに連携。これにより、社内ルール確認のために発生していた作業時間が大幅に短縮され、リリースから2.5カ月で延べ1.1万回利用されています。(約2,800時間の業務時間創出)
また、今回の取り組みで得られた知見をもとに、他業務への展開や社外提供を視野に入れた活動が進められています。
- 社内規程、ガイドライン、マニュアル等が膨大な量になっており、正しい情報の入手、必要情報の抜け漏れ確認が必要な状況があった。
- 社内規程、ガイドライン等はさまざまなファイル形式が存在。特にExcel表形式のデータに対する生成AIの回答精度が低く、実務利用が困難だった。
- RAGとデータ構造化により、規程情報を横断的に検索・理解できる環境を実現。
- TASUKI Annotationとの連携により構造化データ処理を導入し、生成AIの回答精度を大幅に改善。業務で活用できるレベルに到達した。
導入サービス
ガバナンス企画部 決裁支援課 原 真弓子
規程検索・確認業務の高度化に向けた取り組み
「当社では、ガバナンス企画部『規程管理窓口』が、150数件の規程、およびそれらに付随する別紙等の改定審査・社内公示等を担っています。規程類は、PDFやExcel、Wordなど目的に合わせてさまざまな形式で作成され、社内掲示ツールに規程名称単位で掲示管理されています。規程管理窓口では、その大量の文書から情報を探し出し、また必要に応じて、複数の規程を横断的に読み合わせながら規程改正要否の判断をする必要があります。そこに非常に多くの時間がかかっていました。
社員からも『参照したい規程や条文を探すのが大変で、業務で参考にしづらい』『その内容は、どの規程のどこに書かれていますか?』という声が多く寄せられていました。
規程内容は正確に伝える必要があるため、どうしても文字が多くなり、文章が長くなりがちで、Excelの一覧表も複雑化してしまう。PCでも見づらく検索も煩雑で、その結果、業務効率が下がってしまう要因になっていました」(原)
RAG活用において顕在化したデータ構造の課題
こうした課題を解決するため、当社では生成AIとRAG(検索拡張生成)を活用した規程検索の高度化を検討しました。しかし、初期段階では期待した成果が得られない場面もありました。
「PDFの文章データであれば一定の精度で回答できていましたが、Excelのような表形式データはうまく読み取れませんでした。文字情報だけを対象にRAGを構築してみたものの、実務で求められる回答精度には届きませんでした」(原)
正しく規程を読み解くには、文章だけでなく、表形式で整理されたルールや条件も併せて確認しなければならないケースが多く、生成AIがそれらを正しく理解できなければ、実務での活用は難しくなります。RAGを導入しただけでは十分ではなく、生成AIが理解しやすい形でデータを整備することの重要性が明らかになりました。
TASUKI Annotation導入によるRAGシステムの実用化
こうした課題を解決するために導入されたのが、RAG前提のデータ構造化を支援する TASUKI Annotationです。
PDF・Excelといった形式の異なる規程データを、生成AIが理解しやすい構造化データへ変換し、条文や表、条件・例外といった情報の関係性を整理することで、RAGシステム全体の精度向上を図りました。その結果、生成AIが規程の内容を正しく把握できるようになり、規程確認における回答の精度と再現性が大きく向上しました。
「Excelを含む規程データをAIが正しく理解できるようになり、ようやく“実務で使えるレベル”に近づきました。テキスト形式のPDFだけでなく、表形式の規程別表等も一定程度正確に認識できるようになったことで、業務で活用できる環境が整いました」(原)
ChatGPT Enterpriseとの連携による業務定着
連携プラットフォームとして、すでに全社で導入されていた ChatGPT Enterpriseを採用しました。生成AIによる規程検索を、既存の業務環境から利用できる構成としています。
「社員が最も使いやすい導線と、セキュリティの両立にこだわりました。すでにChatGPT Enterpriseが全社導入されていたので、社員が普段使い慣れた環境から規程RAGにアクセスできるようにしています」(中村)
併せて、OAuth認証※によるアクセス制御を行い、利用者を限定した運用としています。
「生成AI導入において情報統制や漏えいリスクへの懸念は常にありますが、そこを万全にした上で運用できた点は大きな成果だと感じています」(中村)
この構成により、規程検索・確認業務の中で生成AIが自然に利用されるようになり、業務フローの一部として定着していきました。
OAuth認証とは、ユーザーの認証情報を直接共有することなく、別の認証システムと連携して、システムへのアクセスを制御するための認証方式です。
TASUKI Annotation導入による業務効率化の成果
システムのトライアル導入後、その効果は早期に現れました。
規程検索・参照にかかる時間が大幅に短縮され、各業務の効率化につながっています。
「日々規程を参照する社員にとっては、規程を探して内容を理解するのに、1回あたりおよそ15分かかっていました。生成AIを活用することで、その時間を短縮できるようになり、リリースから2.5カ月で約1.1万回利用されています。その結果、合計で約2,800時間の業務時間創出につながりました。
また、単に規程を探す時間が短縮されたというだけでなく、業務の目的や背景を踏まえて、AIが『この業務を行うには何を確認すべきか』を整理し、関係する複数の規程やルールを提示してくれることで、確認漏れを防ぐきっかけにもなりました」(原)
あらゆる業務において社内ルールの確認は付きものなため、日常的に複数の規程を横断して確認する場面が多く、生成AIを用いた検索が毎日繰り返し利用されています。こうした特性もあり、短期間で高い利用実績につながりました。併せて、「規程・ルールの正しい確認・理解」から会社全体の「ガバナンス強化」への効果も期待されています。
「『必要な時にすぐに規程の確認ができる』という環境があれば、社員は正しい手順・判断に容易にたどり着けるようになります。判断のばらつきを抑え、逸脱や例外運用を減らし、結果としてガバナンス強化につながっていくと考えています」(原)
現在は、月次の規程改正サイクルに合わせてRAGデータを更新しており、継続的に生成AIを活用できる業務基盤が整っています。
規程運用・管理業務を起点に、生成AI活用の幅を広げる
今回の取り組みを通じて、規程運用・管理業務において生成AIを実務で活用する運用が進んでいます。
「まずは規程確認での活用を定着させつつ、今後はほかの業務文書やナレッジへの応用も検討していきたいと考えています。 生成AIを業務で活用するためには、データ構造とガバナンスを両立させた基盤づくりが重要です」(中村)
今後は、規程業務で得られた知見をもとに、生成AI活用の範囲を段階的に広げていく予定です。
お話をうかがった方
法務・コーポレートガバナンス本部
ガバナンス企画統括部
ガバナンス企画部 決裁支援課
原 真弓子
AI&データ事業推進統括部
TASUKI事業部 事業推進課
中村 友哉
本事例での導入サービス
TASUKI Annotation RAGデータ作成ツール
生成AIの精度向上に直結するデータを効率的に構造化&精度評価。RAGを高度に活用する際に課題となるポイントをテクノロジーで支援するツールです。RAGに関する知見がなくても、社内データを活用した精度の高いRAG回答生成を簡単に得ることが可能です。