DX推進
データ活用によるスマートシティの実現

2017年12月、パシフィックコンサルタンツとソフトバンクは「スマートインフラソリューション」の開発を目的に業務提携を開始しました。防災・交通に関するソリューション開発を進め、2020年12月からは人流統計データサービス「全国うごき統計」の提供を開始しています。「SoftBank World 2021」Day2(Marketing DX & Security データ活用で加速する事業成長)から両社の実践をレポートします。

※記載内容は2021年9月時点のものです。

登壇者

パシフィックコンサルタンツ株式会社
デジタルサービス事業本部 DX事業推進部 DX事業推進部長
杉本 伸之 氏[技術士(建設:都市計画・道路)]

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部 スマートインフラプロジェクトプロジェクトマネージャー
龍野 祐太郎

まちづくりにビッグデータが必要な理由

総合建設コンサルタント会社・パシフィックコンサルタンツとソフトバンクは2020年12月10月より、交通手段(自動車・鉄道・飛行機)や経路を含めた人の移動に関する統計データ「全国うごき統計」の提供を開始しました。「全国うごき統計」とは「ソフトバンク携帯電話基地局から取得した位置情報(十分に匿名化されたもの)を活用し、日本全国24時間365日、人の移動と滞在が把握できる統計データ」のサービスです。本講演はサービス提供の背景にある“課題”の言及からスタートしました。

龍野「財政逼迫、少子高齢化に伴う人手不足、頻発する自然災害、カーボンニュートラル、そしてコロナ禍以降の新しいライフスタイルへの対応等々、日本の社会課題は複雑化の様相を呈しています。これらの社会課題を解決するにあたって割り振りされる予算は限られているため、効率的かつ効果的な施策の検討実施が必要です」

杉本氏「最近はEBPM(Evidence-Based Policy Making)——エビデンスに基づく政策立案——が着目されるようになっていることからも分かるように、行政においても、客観的なデータやエビデンスに基づきながら着実に対応していかなければならず、経験則に基づく対応では的確な社会課題解決が難しくなっています」

龍野「EBPMを実現していくのに必要なのが『ビッグデータ』です。この10年間でスマホ普及率が爆発的に増加したことで、さまざまなデータを取得できるようになりました」

杉本氏「新型コロナウイルス関連の報道でも人流データが活用されるようになりました。しかし現在のまちづくり施策では、ビッグデータが十分に活用されていません。例えば、どの自治体も経済活動を把握するための『商業地・観光地における歩行者通行量』を計測しておりますが、公平性・確からしさ・使いやすいさ・コストなどを理由に、いまだに、ほぼ“人手”による計測を行っています」

龍野「このたび提供を開始した『全国うごき統計』は、これら4つの課題を解決してくれるのに有効なサービスです。同サービス上では『対象エリアにどこからどのぐらいの人が来たのか(移動情報)』『エリアに人がどれだけ集まっているか(滞在情報)』を分析。さらにはパシフィックコンサルタンツ様との業務提携により『人がどんな手段・経理で移動したのか(交通手段・経路判定)』まで可視化できるようになりました。『鉄道などの交通機関の利用状況・各エリアの人口統計データとの掛け合わせ』でさらに高い精度での推計も可能になっています」

人流統計データ「全国うごき統計」の可能性と実例

両氏は「全国うごき統計」の活用事例を紹介しました。

杉本氏「ある自治体では『公共交通計画の再検討』に全国うごき統計を活用しています。具体的には、県内を観光エリア・都心・居住エリアに分類した後、そのエリア間を走行する車・バスなどの潜在需要を全国うごき統計で把握。その結果『居住エリア→観光エリア』間の潜在需要があることを導き出し、新たなバス路線を検討することにつながりました」

龍野「災害時の分析にも全国うごき統計を活用できます。2019年10月に発生した台風19号で長野県千曲川が氾濫しましたが、当社はそのときの人流データを活用・分析し、避難状況を可視化しました。こうして時系列に並べてみると、河川沿いの方々が避難所のある場所・河川から少し離れた場所に移動していることがおわかりいただけると思います」

杉本氏「千曲川の例に関連してお話しすると、全国うごき統計では『エリア別の時系列で避難状況を分析する』といった使い方が可能です。例えばこちらの図でエリア1・エリア2を比較してみると、エリア1では避難が早く最終的に浸水域内での残留率が低いのに対し、エリア2では避難開始が少し遅れて浸水域内での残留率が高くなっています。仮に『エリア1では地域コミュニティが活発で普段から避難訓練を行っていた、エリア2ではそうでなかった』等の因果関係がわかった場合、そうした地域の実情を組み合わせることでより地域に根ざした避難計画を立てられるようになるでしょう」

人流データ×各種データとの連携によって「都市課題の解決」へ

最後に杉本氏は「データ活用の将来展望」として、東京都「東京データプラットフォーム ケーススタディ事業」における「全国うごき統計」活用について紹介し、セッションを締めくくりました。

杉本氏「当社は本事業において『人流データを活用した駅利用圏ポテンシャルマップ展開』を提案し、東京都から採択されました。本プロジェクトは、これまで経験則で語られていた『どのエリアの人がどの駅を利用しているのか』といったことを全国うごき統計を用いて見える化し、駅ごとの消費ポテンシャルを把握しながら都民生活・企業活動に役立てる取り組みです。将来的にはこのデータベースに決済情報や検索データなどを加え、観光地の需要予測など、活用の幅を広げていきたいと考えています」

<編集後記>
パシフィックコンサルタンツとソフトバンクの共創から生まれた「全国うごき統計」。人流データ単体での活用はもちろん、各種データとの連携により、都市課題の解決に活用ができそうです。エネルギー、経済・消費活動、交通・物流、天候・自然、インフラなどさまざまなデータとの連携が見込まれます。両社の取り組みはまだ始まったばかりですが、データの社会実装による「都市課題の解決」がこれからも期待されます。

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全国うごき統計

「全国うごき統計」は、ソフトバンクの携帯電話基地局を利用した人流統計サービスです。携帯端末の位置情報をどのように活用できるか、また特長をご紹介します。

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人流統計サービス「全国うごき統計」

ソフトバンクの携帯電話基地局の仕組みを利用した人流統計サービスです。
日本全国の人流を24時間365日把握し解析することができます。