ソフトバンクCEOが語る「5Gはデジタルトランスフォーメーションの“第三の波”」

"ソフトバンクCEOが語る「5Gはデジタルトランスフォーメーションの“第三の波”」"

(2020年5月13日 掲載)

  • 5Gによって「モノとモノ」がつながり、新しい産業が生まれる
  • 医療、スマートシティ、エンタメ、建設、物流、製造業界に起こる変革
  • ソフトバンクは陸だけでなく空の基地局も利用して、あらゆる場所にネットワークを届ける

2020年3月27 日、「SoftBank 5G」の商用サービスが開始した。これから5Gによってどのような情報革命が起こるのか。

2019年11月、ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙は「Communication Tech CONFERENCE2019」に登壇し、5G以後の世界の展望を語った。

5Gが利用可能になり、各産業の動きが本格化している今。宮内の言葉を再録し、あらためて5Gの可能性を考えたい。


アメリカの未来学者、アルビン・トフラーは著書『第三の波』の中で、人類の歴史における大きな技術革新を、3つの波として言及している。

第一の波は、人類の営みが狩猟採集から農耕へと転換した約1万5千年前。第二の波は工業化による産業革命。そして第三の波が、まさに今訪れている脱工業化社会、つまり情報やサービスが主役となる、情報革命後の世界だ。

Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン氏の直後に登壇した宮内は、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)の大きな潮流を『三つの波』になぞらえ、語った。

"ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙"

宮内「Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン氏の後にお話させていただけることを光栄に思います。アルビン・トフラー流に言えば、DXの第一の波はYahoo!だったのではないでしょうか。Yahoo!ができたことで、インターネットは私たちにとって当たり前のものになりました。

そして次にiPhoneが生まれ、3Gから4Gへ移行したことで、モバイルインターネットの時代がやってきた。今日、これからするのは、5Gによって本格的にはじまろうとしている、DXの第三波についてのお話です」

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙

宮内 謙

ソフトバンク株式会社

代表取締役 社長執行役員 兼 CEO

DXにおける第三の波とは

"コミュニケーションはテクノロジーとともに進化"

人類のコミュニケーションの手段は、手紙からはじまり、電話、ファックス、そしてインターネットへと移り変わってきた。宮内はインターネットの誕生をDXの第一の波とし、スマートフォンの誕生を第二の波と位置づける。

そして今、5Gの誕生による第三の波が、世界各国に訪れているという。

宮内「中国では、2019年11月1日に主要都市で一斉に5Gが開始しています。国家戦略として基地局の設置に取り組んでいます。韓国でも、2019年4月に5Gをスタート。都市部では5Gがほぼつながるようになっています。

5Gと同時にAI・IoTのテクノロジーが進化。膨大なデータをAIが推論し、答えを導き出す。こんな時代が、これから5年で訪れるでしょう。

スマートフォンによる『人と人』のコミュニケーションが欠かすことのできないものになり、そして Apple Watchなどのデバイスによって『人とモノ』がつながるようになった。そして次につながるのは『モノとモノ』です。

DXの第三の波、それは『モノとモノ』がつながるということじゃないかと、私は思っています。

フィジカルなモノに通信機能が入る。もっと極端に言えば、フィジカルなモノに目がつく。すると何が起こるでしょう。単に情報を伝達するだけでなく、そのモノ自体が自動化するようになります。自動運転車は、そのわかりやすい例です。機械が目を持ち、データを集め、安全に運行する。

5Gのネットワークが世界中ではじまると、フィジカルとデジタルが融合して、変革が起きる。これが、5Gが大きなビジネスを生むと言われる、一番の理由です」

"=” DX(デジタルトランスフォーメーション)について語るソフトバンク宮内謙"

5Gが生み出す新たな産業

WEF(世界経済フォーラム)とアクセンチュアの共同調査によれば、2030年までに5Gが世界にもたらす経済効果は14兆ドルにのぼるという。また、KPMGは5Gによってビジネス上の課題が解決されることで創出する価値を4兆3,000億ドルと推計する。

また、総務省「電波政策2020懇親会」の参考資料では、日本における5Gの経済効果を約46.8億円と見込む。

宮内「5Gが創出する新たなマーケットは膨大なものになります。5GがもたらすDXは、情報システム部門の改革といったレベルから、企業のビジネスモデル自体を変革するものになるでしょう。それが、5Gの力です」

5Gの特長である、「超高速」「多接続」「超低遅延」。これらにより各産業に何が起こるのか──。

●医療

"5Gで変わる医療:遠隔医療"

5G以後の医療の世界では、モバイル通信によりCTやMRIなどの高精細な画像を医師間で共有することが容易になり、遠隔画像診断が可能になる。また遠隔で医師が患者を診察する遠隔診療、そしてロボットによる遠隔手術も、低遅延なネットワークにより技術的には可能だ。

宮内「中国の平安グッドドクターというサービスは、ユーザがアプリケーションを立ち上げ、症状をチャットや電話、テレビ電話で医師に伝え、診断を受ける。病院での治療が必要な場合はそのまま予約に進みます。

3億人のユーザから毎日60万件以上の相談が寄せられますが、専属の医師の数はたったの1,000人超。大半の質問には、AIが回答しています。これが5Gの世界になると、8K映像を使って、より高度なAI診断が可能になります」

●スマートシティ

"5Gで加速するスマートシティ化"

都市のあらゆるものが5Gによってつながることで、データにもとづいてインフラをリアルタイムで最適化する次世代都市が誕生する。行政サービスもデジタル化することで、都市のハードとソフトの双方が全て一元管理できるようになる。

宮内「2019年9月に、アリババクラウドが主催するカンファレンスに参加しました。中国・浙江省の省長は、5Gで全てのものを見える化すると、おっしゃっていました。例えば、交通渋滞を検知し、混雑状況に応じて信号機をコントロールする。また、スマートフォンアプリからアクセスできる行政サービスの統合プラットフォームをつくるとか。これが実現すれば戸籍謄本の取得など、あらゆる手続きがスマートフォンアプリでできるようになります。

そのためには、行政で管理している住宅から橋まで、全ての情報をデジタル化しなくてはなりません。全ての情報をデジタル化することができれば、住民への行政サービスをAIが行うことができるようになる。そんな世界が、5Gならば実現できるのです」

●エンターテイメント

5Gにより、スポーツや音楽イベントの観戦は劇的に進化する。AR(拡張現実)で目の前に憧れのアーティストが現れる。VRで、遠隔地にいながら試合やライブを観戦。また、ゲームも、スマートフォンでゲーム機並みのリッチなコンテンツを楽しむことができるようになる。

宮内「5Gの登場により、エンターテイメントにはバーチャルリアリティの波が一気にやってきます。私も韓国の5Gネットワークでスポーツやライブを観戦しましたが、驚きました。

ソフトバンクも、2019年9月にエイベックスとの共催で、幕張メッセでバーチャルキャラクターによるライブイベントを実施しました。バーチャルキャラクターと観客がリアルタイムでコミュニケーションを楽しめ、大いに盛り上がったそうです。

また、NVIDIAと共同でクラウドゲーミングサービス『GEFORCENOW』の提供も開始します。場所やデバイスに縛られず、スマートフォンでも本格的なゲームコンソールのような体験をすることができます」

●建設

"5Gで建設業界の人手不足解消へ"

人材不足が深刻化する建設現場も、5Gによって生まれ変わる可能性がある。

宮内「職場の死亡事故の1/3が建設現場で起こっている。それほど建設の現場は厳しく、またそのために人材確保も大変です。しかし、5Gは低遅延であるため、遠隔で正確に重機を操作することもできる。そうすれば、危険な現場に人を派遣しなくても済むようになります」

●物流

"5Gで物流業界の人手不足解消へ"

5Gによりリアルタイムで荷物やトラックの位置を把握し、配送効率を向上させるなど、EC需要の増加に伴い、スマート物流へのニーズも高まっている。

宮内「EC需要の増加により、物流業者の配送量は10年で2倍以上になっています。しかし、働く人は増えておらず、物流業界においても人手不足は深刻です。そんな中、ソフトバンクは5Gの車両間通信によるトラックの隊列走行の実証実験を行いました。有人運転の先頭車両に無人のトラックが追従する。これも5Gの低遅延の特長があるからこそ実現可能なことです」

●製造

"5Gで工場の生産性/安全性の向上へ"

工場のロボットや機器が5Gでつながることで、遠隔からの監視や制御、自動化など、製造工程の効率化が期待されている。また、流通とデータ連携することでサプライチェーンの効率化・最適化が実現する。

宮内「ソフトバンクでは、すでに5Gを活用した製造工場の稼働状況や人の行動の可視化に取り組んでいます。スマート工場の実現には機器を入れ替えなければならないと思われがちですが、それでは多額の設備投資が必要になってしまいます。ソフトバンクでは工場内に設置したカメラが撮影した8K映像を使って、機器に取り付けたメータをチェックするという方法で、工場内の可視化を実現しました。

現状の機器を生かしながら、工場の中を完全にネットワーク化。データを蓄積し、AIが分析することで、工場の生産性や安全性を高めます」

世界の基盤となるネットワークを全ての場所に 

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講演の後半。宮内は、次世代産業のインフラとなる5Gの早期実現と、ネットワークを全ての場所に届けることの重要性について言及した。

宮内「ソフトバンクは全国23万の基地局を整備し、人口カバー率99%以上を実現。他社に先駆けて大容量プランも展開しています。そして、我々がこれから注力していくのは、5Gによる低遅延ネットワークの早期実現です。世界の基盤となる5Gは、これから本格的に浸透していき、みなさんのビジネスモデルを変えていきます。

また、私たちの生活において、ネットワークという絶対的なインフラがない場所があってはなりません。しかし、そうは言ってもまだネットワークが届かないエリアも存在します。そこで、私たちが長く計画していたのが、上空からネットワークを届けるということです。

ソフトバンク子会社『HAPSモバイル』が提供する、成層圏に位置する通信プラットフォームは、直径200kmという大規模なサービスエリアを形成することができる空飛ぶ基地局です。地上の基地局と同じ電波を発信するため、スマートフォンでそのまま利用することができます。世界でも、アフリカなどのエリアでの活用が期待されています」

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最後に、宮内は来場者に向けて次のようなメッセージで講演を締めくくった。

宮内「今日、私が申し上げた中で、一番重要なのはデジタルトランスフォーメーションです。5Gによって、フィジカルとデータがリンクすることで、大きなビジネスの可能性が生まれます。そしてみなさんの産業にも新たなプラットフォームが生まれるでしょう。

みなさんがプラットフォーマーになるのか、その中のエコシステムの一員になるのか。その両方の可能性があるでしょう。これまでのようにプラットフォーマーが全てを独占するのではなく、プラットフォーマーもエコシステムの構成員も、全てオープンな世界がやって来ます。

ぜひ、みなさんと一緒に我々もお仕事ができれば良いと思います。どうも、ご清聴ありがとうございました」