どこでも“顔パス”時代到来。「顔認証」でスマートになるオフィス

2019年11月14日掲載

目次

  • 顔認証関連のビジネスの市場規模は拡大が見込まれている
  • 日本コンピュータビションは世界トップレベルのAI画像認識技術を活用したソリューションを提供
  • 顔認証SDKにより、顔認証との組み合わせによるイノベーションが創出される可能性

企業のセキュリティ対策の強化を背景に、今後、顔認証関連のビジネスの拡大が見込まれている。リサーチステーション社の調査によれば、顔認証関連の市場規模は2017年に約4,500億円、2022年には約8,460億円と、5年でほぼ倍増する見通しだ。

AI画像認識技術の開発・提供をする日本コンピュータビジョン株式会社の師岡氏に、今後の顔認証ビジネスの展望について話を伺った。

師岡 宏典

日本コンピュータビジョン株式会社
事業本部 プロダクト部
課長

毎朝、数百人がカードを忘れる、オフィスビルの実情

近年、セキュリティ対策のため多くのオフィスビルの入り口には入館ゲートが設置されている。入居企業の社員はICカードを携帯し、ゲートにかざして通過する。

多くのオフィスビルで採用されている一般的な入館の流れではあるが、物理的なカードを必要とするがゆえの課題もある。師岡氏はオフィスビルの入退室管理をめぐる課題について、次のように語る。

「カードという物理的なものを使う限り、紛失や盗難による本人なりすましのリスクが潜在します。よりセキュリティを堅固にするための選択肢として、生体認証による顔認証があります。顔認証の採用は、結果としてセキュリティ向上だけでなく、いわゆる『顔パス』による入退室で、より快適でスマートなオフィスを実現します」(師岡氏)

顔認識技術を活用したビルマネジメントソリューションを提供する日本コンピュータビジョンは、ソフトバンクの100%子会社として2019年に設立。技術パートナーである世界有数の顔認証技術を誇る香港のAIユニコーン企業・センスタイム社の協力のもと、日本でのソリューション開発・運用を担当する。

日本コンピュータビジョン社に設置されている顔認証搭載デバイス。 日本コンピュータビジョン社に設置されている顔認証搭載デバイス。

「ビルマネジメントソリューションを導入したビルには、入館ゲートを設置。ゲートに据え付けられたiPhoneなどのデバイスが顔認証を行います。

顔認証データの登録は写真1枚でOK。デバイスのカメラが顔を検知すると、登録された写真と照合、『答え合わせ』をします。『答え合わせ』ができて、その人物が入館しても良い人物だとわかると、ゲートが開きます。

当社のAI画像認識技術では、顔の中の“100〜200の特徴点”を抽出・比較しています。そのため『写真ではメガネをかけている』『髪型・化粧が変わっている』『写真のときから多少年齢を重ねてしまった』といったケースでもほぼ100%に近い精度で認証することに成功しました」(師岡氏)

印刷物・写真・動画をブロック——“生きた人間”だけを検知する

毎朝何万の人が通過することを想定すると、ウォークスルーに対応した迅速な処理をしなければゲート渋滞を引き起こす。わざわざ顔を端末に向けなくてはならなかったり、処理に待たされたりするのでは本末転倒だ。

同社サービスの特長は、独自アルゴリズムを利用した高速顔認証を実現する「スピード」と、不特定多数(N)のなかから高精度で顔を認証可能とする「1対N認証」、そして偽装を防ぐ「生体検知」にある。

「一般的な顔認証システムで行われる1対1認証は、空港の入国審査におけるパスポート確認のように、“たった1つの答え(パスポート写真)”と“目前の人物”が同じであるか『イエスorノー』を判断する仕組み。対して1対N認証では、膨大な顔認証データから答えを探します。

顔認証の精度・スピードの両方を向上させた技術的なコツは、撮影した映像から正確に“顔”を見つけだせることであり、映像がぶれていたり、あるいは距離・角度・照明具合が多少の悪条件下だったりしたとしても、適切な前処理をし“答え”を比べやすいように抽出する。そこが技術者としての腕の見せどころです。

また、当社システムでは、データ登録された人物の顔写真(静止画)、顔を動かしながら撮影したような動画、さらには3Dプリンタで印刷された模造品もブロックします。『生きた人間』であるかどうかを検知することで、ゲートの鍵として『顔を貸す』という行為、あるいは顔写真の盗撮・盗用などによる悪意のあるセキュリティアタックも防止します」(師岡氏)

【動画】日本コンピュータビジョン社で顔認証が搭載されたゲートを試した様子
待たされることなく認証されゲートが開いていることがわかる。また、本人の動画を見せても認証されることはない。

 

これら「前処理」や「生体検知」には、日本コンピュータビジョンの技術パートナーであるセンスタイム社のAI画像認識技術が集約されている。

センスタイム社が発表したAI画像認識に関する論文数は世界第3位。世界有数のAI&画像認識技術力を持つユニコーン企業で、2018年4月にはアリババ社から資金調達を受けた。顔認証型のカメラアプリ「SNOW」にも同社技術が採用されている。

適用範囲拡大のトリガーとなるのは「顔認証SDK」!?

今後、ビルの入退室管理において顔認証はスタンダードになっていくだろう。そして、もちろん顔認証の適用範囲はオフィスビルに留まらない。

先日、さいたまスーパーアリーナで行われた男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の5Gプレサービス体験会の入場管理にも日本コンピュータビジョンのシステムが使われた。「顔パス入場」の有効性を実証されたほか、転売防止対策の有効性も確認されたという。

その他にもスマートリテール、防犯・監視、交通分析、画像解析などの分野での活用も期待され、日本コンピュータビジョンも国内におけるAI画像認識技術の適用範囲を「ビルディングアクセスソリューション」だけに留めることなく「ワークソリューション」や「リテールソリューション」に展開していくという。

すでにAI画像認識は「技術的に考えれば広範囲な展開が可能」だとする師岡氏。今後の展望については次のように話した。

「国や自治体による法的な整備にも期待していますが、私たちが自分ゴトとして課題に感じているのは、お客さまとの合意的な部分——特に個人情報の取り扱いです。『自分の顔が認証される』という行為そのものには、まだまだ日本人にとって心理的ハードルがつきまとう。そんな不安を払拭し、社会的な理解が深まることも大切なのかもしれません」

それを背景に師岡氏が期待を寄せるのが2019年内リリース予定の「顔認証SDK」(顔認証を行う際に必要な主機能を網羅した開発者向けのソフトウェア・デベロッパー・キット)だ。

「日常的な生活・仕事における数々のシーンで『自分が自分だと認識される』ことで、もっとお得に、もっと便利になる——そうした価値を享受するケースはこれからもっと増えていくでしょう。

当社の場合もスマートオフィスやスマートリテールが事業の柱となりますが、顔認証SDKの展開によって私たちも思いつかなかったアイデアが生まれるかもしれない。新たなビジネスの可能性へ橋渡ししてくれる“トリガー”になると信じています。」

顔認証SDKを用いた種々の試行・実証によって、顔認証技術の可能性はまだまだ広がる——。AI画像認識の多角化のカギは、すべての日本企業が握っているはずだ。

後記

今後、日本で顔認証がどのように受け入れられていくのか。セキュリティやプライバシーへの意識が高い日本人の国民性に鑑みれば、生活者へのきちんとした説明と、個人情報を提供するに足るサービス提供が求められる。顔認証SDKとそれを活用する日本企業によって生み出される顔認証サービスが、そのきっかけとなることを期待したい。

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