(2019年1月31日掲載)
多様なワークスタイルよる業務効率化推進と、労働生産性向上を図る働き方として、近年「テレワーク」が注目されています。政府も働き方改革推進の観点からその導入支援措置を実施しています。では、どうすればテレワークをスムーズに導入できるのでしょうか。
テレワークは社員・会社双方にメリットのある働き方
テレワークとは、ICT(情報通信技術)の活用によって場所や時間に捉われない柔軟な働き方を指し、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすいワークスタイルとして注目されています。
総務省の「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(2017年3月)によると、従業員規模別に見た「企業におけるテレワークへの取組状況」は、導入済みの企業は従業員数301人以上が20.4%、101~300人が6.3%、51~100人が3.6%などとなっており、大企業と中堅・中小企業の間に大きな差が見られます。
しかし、「導入を検討している及び興味がある」と答えた企業の合計は従業員数301人以上が24.0%、101~300人が31.0%、51~100人が14.5%となっており、中堅・中小企業でも現実的な経営課題と捉えている傾向がうかがえます。
「テレワークの導入目的」(複数回答)を見ると、人材の採用・確保・流出防止が29.7%、社員のワーク・ライフ・バランス実現が27.2%、社内事務の迅速化が29.2%、社員の通勤・移動時間の短縮が26.4%という回答が見られました。企業が業務効率化や社員が働きやすい環境作りにテレワークが有効と認識していることがわかります。加えて、「テレワークの導入と企業業績」の項目を見ると、テレワークを導入している企業の方が、直近3年間の業績が増加傾向にある比率が高くなっています。また、テレワーク導入による業績の違いは、売上高より経常利益において顕著で、企業活動にとって肝心な利益創出効果の大きさが数字の上でも証明されています。
こういった結果から、テレワーク導入の有無が企業競争力に強い影響を与える時代になってきていると言えるでしょう。その観点において、中堅・中小企業こそテレワークの導入が急務ともいえます。
テレワークは勤務形態も多様
ICTの活用で柔軟な働き方を可能にするテレワークは、職種・導入目的・企業規模などにより勤務形態は千差万別です。テレワークの勤務形態について、テレワーク推進団体の日本テレワーク協会は次の3タイプに大別しています。
①在宅勤務
会社とは電子メール・電話・ファクスなどで連絡を取りながら自宅で働くタイプ
②モバイルワーク
客先や移動中にパソコンやスマートフォンで仕事をするタイプ
③サテライトオフィス勤務
駅前賃貸ビル等、会社以外の場所に設置したオフィスで仕事をするタイプ。会社同等のオフィス機能が完備されているケースが多いので通勤時間が長い社員の勤務に適している
また、日本テレワーク協会はテレワーク導入のメリットとして次の7点を挙げています。
①ワーク・ライフ・バランスの実現
家族と過ごす時間や自己啓発の時間増加
②生産性の向上
迅速・的確な顧客対応(営業部門)、計画的・集中的な業務推進による業務効率と生産性の向上(研究・開発部門、経営企画・人事・総務部門、営業管理部門など)
③優秀な社員の離職防止
育児・介護と就業の両立環境を整えることによる離職の防止
④オフィスに関わるコスト削減
オフィススペース・通勤コスト等の削減
⑤優秀な人材の雇用確保
有能でありながら長時間通勤が困難な高齢者・障害者の確保
⑥環境負荷の軽減
通勤者やオフィススペースの減少による電力消費・光熱費等の削減
⑦事業継続性の確保
災害発生時等の事業停止の防止
一方、テレワーク導入の企業のデメリットとしては、
①労働時間管理(業務内と業務外の線引き)の難しさ
②人事評価制度の複雑化
③適用職種の制約
④セキュリティ管理の煩雑化
⑤社内コミュニケーションやOJTなどの不足による人材育成力の低下
などが挙げられます。
こうしたテレワーク導入に対しては、厚生労働省は「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)、経済産業省は「IT導入補助金」、総務省は「ふるさとテレワーク」といった制度を用意しています。助成金や制度を設定している自治体もあり、東京都では「ワークスタイル変革コンサルティング」や「テレワーク活用・働く女性応援助成金」などの支援措置を、主に中堅・中小企業を対象に実施しています。
知っておきたいテレワーク導入の失敗しないポイント
テレワークの導入の当たっては、企業はまず「社内コミュニケーションが円滑に取れるか」「トラブル時の連絡、情報漏洩防止など必要なセキュリティ対策が取れるか」を押さえておく必要があります。
テレワーク導入は、「導入目的の明確化と計画→社員の勤務実態等の現状把握と対象職種の洗い出し→テレワーク導入の制度設計→PDCAの試行と検証による問題点解決→導入」が基本的な流れとなり、本格的な導入に際しては「労務管理」「情報通信システム」「テレワーク経費」の3つがキーポイントになるでしょう。
労務管理については、「テレワーク勤務規程」などを制定する必要がありますが、在宅勤務の場合は新たな規定を設けず、現行就業規則に在宅勤務に関わる追加規程を盛り込むケースが大半のようです。情報通信システムについては、セキュリティ対策におけるきめ細かな配慮が必要でしょう。テレワーク経費については、在宅勤務時の自宅における情報通信端末導入費・通信費・光熱費等の経費は会社負担を原則に、会社と社員の線引きを明確化しておくのが重要です。
なお、テレワークの導入手順、推進体制、運用などに関しては、厚生労働省が「テレワークではじめる働き方改革」、総務省が「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書」などで具体的なガイドラインを示しているので、参照するとよいでしょう。
整ってきた中堅・中小企業のテレワーク導入環境
以前から、その必要性が認識されていながら、現実的には実施が困難だった多様なワークスタイルが、ICTの発展やクラウドコンピューティングの普及などにより、実現できる時代になってきました。さらに国がテレワーク導入を後押ししていることもあり、中堅・中小企業の導入環境も年々よくなっています。
とはいえ、投資効果の高いテレワーク導入を実現するためには、やはり広範で高度な専門知識、知見、経験などが必要です。そのため、テレワークの導入の検討に際しては、信頼できるICTサービスベンダーへ相談してみてもよいでしょう。
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