形骸化させない働き方改革の進め方とは?生産性の向上につなげよう

形骸化させない働き方改革の進め方とは?生産性の向上につなげよう

(2019年11月21日掲載)

目次

ワークライフバランスの視点をもって働き方を見直す取り組みが進められています。「生産性向上」「長時間労働の是正」「年休の確保」などさまざまな規制や目標が打ち出されているのもその動きの現れです。しかし、取り組みをはじめてはみたものの、企業内にうまく定着せず活用されていないという事例も少なくないようです。今回は働き方改革を進めるにあたっての落とし穴を確認し、形骸化させずに着実に進める方法を考えていきましょう。

働き方改革の落とし穴

働き方改革がうまく導入されている状況というのはどういったものでしょうか。もちろん企業がさまざまな制度を改変し、従業員が利用できる制度を提供するなど物理的な取り組みは必要です。一方、制度は整っているけれど従業員がその制度を利用しないという状況であれば、働き方改革は失敗しているということになります。つまり、環境が整えられ、それが全社的に理解され、活用されてはじめて成功と言えるわけです。
では、どのような落とし穴があるのかを確認しておきましょう。

  • 在宅勤務制度を整えたのに、利用する従業員がいない
  • 時間に縛られずに働ける環境を整えたのに、ほとんどの従業員が9時〜5時の勤務を守る
  • 残業時間を減らすように促すが残業をする従業員が減らない

    制度があるのに活用されない理由

    上記で示した状態に陥る理由を探ってみましょう。

    在宅勤務が活用されないのはなぜ

    子育て世代や家族に要介護者がいる従業員にとって在宅勤務制度を活用できると、働きやすくなるはずです。在宅勤務のみならず、顧客先や移動中などにコワーキングスペースまたはサテライトオフィスなどを利用して場所に縛られず仕事ができる制度も、働き方改革の制度としては外せないものでしょう。しかし、導入はしても意外と活用されていないという企業もあるようです。その理由は大きく3つに分けられそうです。

  • 在宅勤務に適した仕事を分類しにくく、結局、出社して仕事をするほうが効率的だと従業員が感じている。

  • 職場全体の意識。在宅勤務を申請してもプロジェクトなどに参加している場合は、出社して仕事にあたることを上司が推奨する雰囲気がある。在宅勤務を申請するといい顔をされない、などの精神的な居心地の悪さを感じることが多い。
  • 制度の設定の仕方。例えば在宅勤務が1日単位で設定されているより、時間単位で設定されているほうが取得しやすい、など。

時間に縛られた勤務を続けるのはなぜ

ある研究結果に、1回の60分学習よりも、休憩を挟みながら15分学習を3回行った方が学習の定着には効果的であったというものがあります。仕事でも同じです。ただ所定内時間として定められている9時から5時までの間オフィスにいて仕事をしているよりも、その日の目標と課題を明確にして、短時間のスケジュールを立て取り組む方が効率的かもしれません。しかし、従業員も組織も意識的には理解できても実行されていないようです。その理由は意識の概念化と短期・中期・長期の目標と課題を従業員自らが意識して業務に取り組んでいないことが原因のひとつかもしれません。

  • 意識:9時〜5時まで職場にいないと仕事をさぼっているように思われるのではないかと不安になる。あるいは9時〜5時まで職場にいさえすれば、多少効率が悪くても、ちゃんと仕事をしていると評価されるので、安心してしまう。
  • 目標達成への努力:費やす時間で仕事を評価されていると考えるため、目標をいかに効率よく達成するかを考えなくなる

    このような意識や傾向を変えるために、短時間で仕事をこなし、自分をブラッシュアップするために時間を使うことが、企業文化となるように、リーダーとなる上司が率先して実行していくことが必要でしょう。

残業が減らないのはなぜ

残業時間の削減は多くの企業が取り組んでおり、法律でも時間外労働の上限が定められていますが、実際には現場の従業員からは反発されるとの声が多く聞かれます。そもそも、時間当たりの生産性を高め、効率よく仕事をこなすことは、従業員にとっても企業にとってもメリットのはずです。なぜ反発が起こるのでしょうか。

その理由は「仕事にかかる時間を削ることができない」というものです。これは真実でしょうか。それを検証するためには、「なぜ時間がかかっているのか」と追及する必要があります。たとえば、無駄な作業が多いのではないか、そもそも人手が足りていないのではないか、作業工程が非効率的なのではないか、などを見直す必要があります。
残業を減らすことを目標にする前に、業務内容の再チェックをしてみましょう。

さらにもうひとつ考えておく必要があるのが、残業代で稼ぐ−−いわゆる「生活残業」という考え方です。残業代も含め生活費の予定を立てていた従業員にとって、実質的に収入が減ることは歓迎できない、というものです。
ここで考えたいのが残業代の還元です。ある企業では残業を半減させることに成功したことで、残業代として支払っていた人件費の削減ができました。しかしそれを従業員に還元することを実施。たとえば、20時間分の残業代の固定支給、残業時間削減目標を達成した組織に対して特別ボーナスを支給、全社一斉に年休取得日や取得推奨日を設定などの施策を実施したのです。そのことで、残業代が減っても働く事へのモチベーションは維持され、従業員自身が業務効率化へ取り組む姿勢が見えたといいます。
こうした、さまざまな落とし穴で共通しているのは「全社的に制度を使う合理性が理解できていない」ことと「意識的に躊躇する気持ちがぬぐえていない」ことによるものが大きいと考えられます。

成功に導く取り組み方

では、どのような進め方をすれば形骸化せず、着実に定着した制度になっていくのでしょうか。

経営陣からの決意表明(リーダーシップ)

まず、制度を導入するにあたり、働き方改革はなぜ必要なのかを伝え、そのための制度であることを理解してもらう必要があります。そして、具体的な取り組みとして、どのようなことを行うのかを明らかにします。
このとき重要なのが、変更前と変更後に現れる従業員への待遇を分かりやすく示すことです。たとえば、残業時間の削減を実現することで、実際には収入の一部になっていた残業代は減ります。
しかし、その減った残業代は、他の制度を追加することで還元されることを示すなど、働く意欲を維持できる対策も同時に行う必要があります。在宅勤務などテレワークの推進をする場合には、評価基準も明確化し、在宅勤務を選択しても納得感のある評価を受けられることを伝え、理解してもらうことが大切です。
そのような取り組みへの実施と対策を講じたうえで、まずは経営陣や部・課のリーダーから行動することが必要でしょう。

業務の分析とシステムの構築

さらに現場での取り組みの一歩としては、必要な業務と省力できる業務、あるいは自動化できる業務などを分析し、それらに応じてシステムを構築することが必要です。たとえば、会議は必ず会議室に全員が集まって行う必要があるのかどうか。それを電話会議に置き換えたり、クラウド上にチーム全体が情報共有できるツールを導入し「いつでもどこでも情報共有とコミュニケーションが図れる環境」を構築することで省けないか、といった分析をします。全ての業務でこうした見直しを行い、削減できる作業や時間を洗い出します。ムダの見える化ができた段階で、残業時間の削減や効率的な働き方といった改革に結びつけていきましょう。

生産性向上と働き方改革への取り組みをリンクさせ、評価する

企業としては「働き方改革」への取り組みの結果、生産性が維持できない状況になれば、取り組みを進めることはできません。つまり働き方改革の条件は生産性が向上することです。
厚生労働省が推進している働き方改革においては、労働時間法制の見直しと雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を柱に、働く人びとが、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」出来るようにするための改革を目指すとしています。
こうした取り組みが企業にとっては具体的に生産性の向上へとつながらなければ意味が無いということになります。では現場視点でどのような因果関係があるのか、考えて見ましょう。

現在、日本は高齢化社会に突入し、さらに超高齢化社会を目の前にしています。言い換えれば、生産年齢人口は減少の傾向にあるということです。また高齢者人口の増加にともない、介護の必要性が高まります。働きたくても介護のための時間との調整が難しいと感じる人は増えると考えられます。
こうした働く人のニーズの多様化、生産年齢人口の減少が大きな社会的課題です。
この状態で企業の人材不足は深刻化する傾向が現れています。企業にとっては必要な人材を確保し、生産性の向上を目指したいにも関わらず、求人をしても人が集まらないといった可能性が高くなっているのです。
この問題を解消するには、魅力ある職場づくりがカギです。魅力ある職場の条件を考えると、自分に合った働き方を選択できること、労働に対する評価が正当に受けられることといった項目が挙げられます。これらは「働き方改革」を実現することと同じ条件でもあります。

つまり、働き方改革の実施、定着への取り組みは、生産性の向上への取り組みともいえるわけです。
まずは、労働効果を図るシステムを導入し、業務を見える化して、どのような課題があり、それから取り組むべきかを明らかにしましょう、そして、従業員も納得出来るように、取り組みの目的、方法といった情報を共有していくことからはじめてみましょう。

要約文

働き方改革に取り組むべきだと考えている企業は少なくありません。しかし、実施しても定着していると感じている企業は一部です。働き方改革が定着しないのはなぜなのでしょうか。その理由と対策を探ってみましょう。

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