5Gで競争力強化を目指す企業と共にビジネス課題を掘り起こし解決を図る

"5Gで競争力強化を目指す企業と共にビジネス課題を掘り起こし解決を図る"

(2020年4月9日 掲載)

■以下は『週刊ダイヤモンド』2020年4月4日号(3月30日発売)に掲載したものです。

今年3月から始まった5Gの通信サービスは、社会やビジネスに大きなインパクトを与えるものとなりそうだ。特に期待が大きいのがビジネス領域。5Gを活用して、建設機械の遠隔操作やトラックの隊列走行の実現に向けて準備を進めている企業もある。ソフトバンクは顧客の現場により近づき、ビジネス課題解決のパートナーへと変貌しようとしている。

藤長 国浩

ソフトバンク株式会社
常務執行役員

いよいよ始まる5Gの通信サービスによって、社会やビジネスは大きく変わることが予想される。そのインパクトについて、3月に商用サービスを開始したソフトバンクの藤長国浩氏はこう説明する。
「4Gまではどちらかというと生活者向けのサービスが主体でしたが、5Gは特に企業や産業向けの分野で大きな影響があります。例えば、工場などのさまざまな設備をネットワーク接続する際、4Gでは限界がありました。多数の設備がつながると、どうしても遅延が発生するからです。5Gなら、こうした課題の解消をはじめ、幅広い用途が考えられます」

工場のデジタル化と遠隔操作、隊列走行

今後、労働力人口が減少する中で、日本企業には生産性の向上が求められている。こうした観点でも、5Gに対する期待は大きい。
ソフトバンクは大成建設と共に、現場の建設機械を遠隔操作する実証実験を行った。遠隔操作においては、0.5〜1秒の遅延があると事故につながる可能性があるといわれる。4Gではリスクが高い。

「4Gに比べて、5Gは桁違いに高速で遅延が少ない。リモート操作は5Gならではの事例です。実用化されれば、熟練者はセンターから数台の建設機械を操ることもできます。遠方の現場に出向く必要がないので、移動時間も節約できます。1人当たりの生産性は何倍にもなるでしょう」と藤長氏は話す。

また、住友電気工業とは、工場におけるアナログ業務のデジタル化の実証実験を進めている。例えば、設備のアナログメータをカメラでモニタリングし、5G経由でセンターに送信した画像データをデジタルの数値に変換。巡回頻度を減らせるほか、手作業の入力も自動化できるので大幅な業務効率化が可能だ(図1)。アナログ業務のデジタル化は、次世代への技能継承にも役立つだろう。

"5Gを活用した工場のスマート化の実証実験例"

物流分野では、自動運転によるトラック隊列走行のトライアルが行われている。低遅延の車車間通信ができるので、走行時にも高い安全性を確保することができる(図2)。

"自動運転による隊列走行の実証実験"

「ドライバーが運転する先頭車両の走行ルートを、後続車がなぞって走ります。今回は、トラック3台の実証実験だったため、1人が3台分の荷物を運ぶことになります」と藤長氏。ドライバー不足は、今後さらに深刻化することが予想される。今のうちに、こうした準備が必要だ。

多様な産業分野のパートナーと実証実験を進める一方で、ソフトバンクは5G時代をにらんで組織強化を進めている。

「2年半前にデジタルトランスフォーメーション本部を立ち上げ、お客さまと一緒に課題解決に取り組む体制を整えました。お客さまがまだ気付いていない課題が、それぞれの現場に埋もれていると思います。それらを顕在化させ、知恵を出し合いながら解決していきたい。そのために、顧客接点を担う営業や技術などの分野の人材への投資を大幅に拡大しています」

マルチクラウド戦略で顧客に最適な提案を

それぞれの産業向けのソリューション開発にも注力している。顧客の現場に入り込んで事例を積み重ね、これらをソリューションとして整理することで低コスト化とリードタイムの短縮を図る方針だ。

「お客さまごとに環境の違いがあるので、型通りのソリューションを提供する形にはならないでしょう。カスタマイズが必要となりますが、その点も、一緒に工夫していきたいと考えています」と藤長氏は説明する。

ソフトバンクの優位性はデバイスとネットワークを統合して提供できること。加えて、近年強化してきたマルチクラウド戦略の強みを生かせる点も重要だと藤長氏は指摘する。

「当社のネットワークは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure(以下Azure)をはじめ、世界の主要クラウドとダイレクトに接続しています。その優位性を生かし、お客さまに最適なクラウドを提案できます。そのための、各クラウドに特化したノウハウも集積してきました」

5G時代、膨大なデータを収容・分析する基盤としてクラウドは必須だろう。ソフトバンクは、Azureのパートナー認定プログラムの最高位である「Microsoft Azure Expertマネージドサービスプロバイダー(MSP)」と、Azureのネットワークサービスに特化したパートナー認定プログラム「Microsoft Azure Networkingマネージドサービスプロバイダー」の認定パートナーだ。二つの認定を取得したのは、日本の企業で初めてで、世界でもソフトバンクを含めて数社しかない。
また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資するスタートアップとの連携も、今後、大きな差別化ポイントになるだろう。

「私たちは従来、通信事業者としてお客さまと向き合ってきました。今後は関係性をさらに深めて、ビジネスの課題を共に解決していきたい。5Gを機に、ソフトバンクは大きく変わります」と藤長氏は言う。実証実験のパートナー企業は、すでにその変貌ぶりを実感しているに違いない。