工数削減による業務効率化の必要性と取り組み方について

2020年10月29日掲載

2022年10月26日更新

工数削減による業務効率化の必要性と取り組み方

働き方改革の推進を迫られるなかで、現状のままでは競争力や生産性が維持できなくなると先行きを懸念している企業も少なくないのではないでしょうか。今回は、業務改善のポイントとなる業務効率化について、具体的な方法や手順を交えて紹介します。

目次

業務効率化=業務改善ではない

今、働き方改革の名のもとに、多くの企業が業務改善に取り組んでいますが、実際には残業時間を減らしたり、定時退社を推奨したりと、業務時間の短縮を図る取り組みが多いようです。

業務改善のためには業務効率化が欠かせませんが、時間の短縮という視点だけにとらわれると、本来の目的を見失ってしまいます。業務改善の目的は、企業全体の生産性を高めて利益を増やすことであり、効率化を考えるときにも、常に生産性を高めることを意識しなければなりません。

生産性は、インプット(投入した時間や労働力、費用など)に対して、どれだけのアウトプット(成果)を出したかで計られます。より少ないインプットで大きなアウトプットを出せるようになると、生産性は向上し、作業時間当たりの利益がアップします。逆に言えば、どれだけ業務時間を短縮しても、成果が伴わなければ業務が改善されたとは言えないのです。

生産性向上のためには、まず業務工数(業務を終わらせるのに必要な作業量。1人当たりの時間×必要な人数で算出される)を見直して業務効率を高めるとともに、コストを見直し、製品・サービスの品質や労働環境も改善していかなければなりません。

業務効率化が必要とされる背景

人口減少と少子高齢化が加速するなか、日本企業の多くが人手不足に悩んでいます。政府は、働き方改革により多様な働き方を可能にし、子育て中の女性やいったん仕事を離れたシニア層を労働市場に参加させて労働人口を増やそうとしています。また2019年4月から、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化といった改正点を盛り込んだ「働き方改革関連法」を施行しました。

企業には、長時間労働を是正し、従業員の働く環境を改善しながら、生産性を高めて競争力を維持するという課題が突き付けられています。この難題をクリアするには、さらなる業務の効率化を図るしか道はありません。

また、経済産業省が「DXレポート」という報告書で指摘した「2025年の崖」問題も影響を及ぼしています。近年の日本企業では、複雑化、老朽化、ブラックボックス化した既存システムが新しい事業の創出を阻んでいるといわれ、深刻な問題になっています。

デジタル技術を活用したビジネス変革のことを「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」と言いますが、同レポートによると、これからのデジタル時代において、日本企業が既存システムのブラックボックス状態を解消できなければ、DXを実現できず、生き残れないと言います。そればかりか、2025年以降、1年当たり最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとも指摘されています。これが、「2025年の崖」と呼ばれる問題です。

目下、既存システムの刷新とDXの実現は、あらゆる分野の企業にとって課題となっています。DXの推進のための人材や財源を確保するためにまず取り組むべきなのが、業務効率化なのです。

業務効率化の方法

では、実際に業務効率化に取り組む場合、どうすればいいのでしょうか。さまざまな方法が考えられますが、ここでは、主な案を確認しておきましょう。

無駄な業務をなくす

まず考えたいのが、業務プロセスのなかで、無駄な業務や、複数の部署で重複して実施している業務などを洗い出して、なくしたり減らしたりすることです。業務が無駄かどうかは、業務の目的や目標と照らし合わせてみると判断できます。具体的には、朝礼をなくす、定例会議の参加人数を減らすといった事例が考えられるでしょう。無駄な業務を削減することによって、工数削減はもちろん、残業時間の削減、従業員の負担やストレスの軽減にもつながり、働き方改革も大きく前進します。

ルーティンワークの自動化

必要不可欠な業務のなかでも、毎日同じことを繰り返す単純なルーティンワークについては、Excelのマクロ機能(自動化機能)やRPA(ロボットによる自動効率化ツール)を活用して自動化すると、大幅な効率化が見込めます。

デジタルツールの導入・活用

日々の業務における情報共有やコミュニケーション、スケジュール、顧客管理などを効率化してくれるデジタルツールを導入するのも有効な手段です。例えば「LINE WORKS」「Slack」などのコミュニケーションツールや「 Google Workspace 」「Microsoft 365」のようなグループウェア、各種営業支援ツールなどの選択肢があります。

マニュアル・フローチャートの作成

業務の進め方や社内ルールをまとめた業務マニュアルを作ることも、効率化を推進する一案です。マニュアルがあることで、上司が部下に業務の手順や詳細について説明する時間や手間を削減することができ、ミスを減らすことにもつながります。さらに、業務ごとに仕事の流れを図にしたフローチャートも作成すると、より業務を進めやすくなるでしょう。

担当者の見直し

ときには各業務の担当者を見直し、配置換えを行うことも必要です。人事担当者が面談を通して各従業員の現状を把握して適性を見極め、より向いている部門・職種を担当させることで、自然に各部門の業務効率アップが期待できます。

効率化を図る手順

生産性を維持しながら工数削減を進め、業務効率化を実現するのは、簡単なことではありません。効率化を成功させるためには、適切な手順を踏み、ポイントを押さえることが重要です。次に、具体的な手順と注意点を紹介します。

1. 現状を把握する

業務効率化といっても、業務の全てのプロセスを効率化しようとするのは現実的ではありません。業務全体を効率化しようとすれば、かえって人手や時間が費やされ、生産性が低下してしまう場合もあります。ひとつの業務のなかでも無駄なプロセス、特に非効率で、そのためにミスやトラブルが起こりやすいプロセス、担当者に過度な負担がかかっているプロセスを絞り込んで効率化していくことが大切です。

そのためには、まずは業務フローを確認して現状を把握する必要があります。実際の業務の流れを見なければ、どのプロセスが無駄になっていて、どのプロセスに課題があるかが分からないからです。前項のフローチャートを活用すると重複している業務や無駄な業務が見える化され、効率化を進めやすくなるでしょう。

2. 対象工程を見直し、工数を削減する

対象となるプロセス・作業を決めたら、業務効率化のためのフレームワーク「ECRS(イクルス)の原則」に沿って工数削減を行いましょう。下記の4つのポイントについて、ECRSの順に実践していきます。

  • Eliminate:無駄なプロセス・作業を排除する

  • Combine:類似した作業を結合する。逆に分けることで効率化しそうな作業は分離する

  • Rearrange:プロセスの順番を組み替える

  • Simplify:作業を簡素化する

ECRSに沿って効率化を進めるなかで、前項で紹介したデジタルツールの導入も検討するといいでしょう。アウトソーシング(外部委託)を検討するのもひとつの方法です。もちろん、削減するばかりではなく、新たなプロセスを加えることで業務が効率化するケースもあります。

3. 効果の検証・評価

業務工数を見直したら、新しいフローで業務が滞りなく進み、品質の低下や問題が生じていないか、見直し前と比べてコストが削減され、効率的に業務を遂行できるようになっているかを検証・評価しましょう。評価結果は社内で共有し、問題がある場合は解消しておくことが大切です。

まずは現状を可視化し、自社に合った取り組みを検討しよう

業務改善と業務効率化を同じものと見なす取り組みを見かけることがありますが、必ずしも両者は同じものではなく、業務効率化は業務改善を図るための手段のひとつに過ぎません。業務効率化の目的は業務改善であり、すなわち生産性や品質を高めて企業の利益を増大させることです。業務効率化に取り組む際には、目的を意識するようにすると効果を実感しやすいでしょう。

もし、自社の業務効率が悪く、社員に不満がたまっていると感じるのであれば、まずは現状を可視化してみてください。その上で手順に沿って、自社の現状にあわせた対策を計画し、実施しましょう。あわせて、現状の可視化から検証・評価までの一連の取り組みを継続的に行えるよう、業務効率化に特化した部門を作るといったように、社内の体制を整えることも必要です。

ソフトバンクは、業務効率化に役立つ多彩なソリューションと知識を提供するほか、社内でいち早く多様な業務効率化の取り組みを進めてきました。検討を始めた段階で、ソフトバンクのような業務効率化を助けるデジタルツールを取り扱う企業に相談するのも、スムーズに進める手段のひとつです。まずは自社の現状に目を向けることから始めてみましょう。

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