中小企業のためのテレワーク導入ガイド

中小企業のためのテレワーク導入ガイド

(2021年2月12日掲載)

目次

ニューノーマル時代の働き方として多くの企業が取り組むべきことのひとつに、テレワークの推進が挙げられています。柔軟な働き方を取り入れ、人材確保の可能性を広げるとともに、コロナ禍においても業務継続が可能な体制を構築することは、企業が発展するために有効な手段であると言えるでしょう。しかし、内閣府やその他の調査機関の調査結果を見ると、テレワークが浸透し、普及したとは言えない現状でもあります。その原因は何なのか。本稿ではテレワークを導入しやすい業種、しにくい業種、それぞれが抱える課題などを探り、テレワーク導入の可能性を広げるためのデジタルツールや助成金、補助金を紹介します。

日本国内企業におけるテレワーク導入の現状

働き方改革で各企業への導入が進められているテレワーク。今回のコロナ禍においても感染症拡大を防ぐための有効手段として注目され、政府からも推進することが求められています。では、現状どれくらいの企業が導入し活用しているのでしょうか。

現在のテレワーク普及率

令和2年6月21日付けの内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を見ると、「今回の感染症の影響下において、経験した働き方を全て回答してください」という質問に対してテレワークを経験したことがあると答えた人の割合は34.5%ではありますが、勤務時間のほぼ100%がテレワーク、もしくは50%以上がテレワークと答えた人はそれぞれ10%程度であり、新型コロナウイルス感染症の影響によって普及が進んだにせよ、依然として実施率は高いとは言えないことが分かります。

また、パーソル総合研究所が2020年11月にコロナ禍における企業の動向やテレワークの実施に関する2万人規模の調査を行っています。この「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」における正社員のテレワーク実施率を見ると、調査時点(調査期間2020年11月18日~11月23日)では全国平均24.7%となっています。この調査で示された数値から、さらに社会の動きとテレワーク実施率をあわせて見ておきましょう。

2020年の緊急事態宣言前の調査では、テレワーク実施率は13.2%、その後、新型コロナウイルス感染が拡大し、緊急事態宣言を発出した直後の2020年4月10日から12日の調査においては、27.9%の正社員がテレワークを実施していると回答しています。さらに、2020年5月25日に緊急事態宣言が解除された直後の2020年5月29日から6月2日の調査では25.7%。そして新型コロナウイルス感染症拡大の第3波となる2020年11月18日から23日の調査では24.7%でした。つまり、政府が緊急事態宣言を発出する前から、積極的なテレワークの活用を推進されていたにも関わらず、企業全体の意識としてはなかなか普及を徹底しようとする動きに至っていないことが分かります。言い換えれば、70%以上の正社員はテレワークを実施していないのが現状であるということです。

テレワークを導入しやすい業種と難しい業種

では、なぜテレワークが普及していかないのでしょうか。普及率の違いを業種別に確認しながら、それぞれの共通点、また全体の共通課題を探ってみましょう。

数値で見る業種別傾向

前出の内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月21日)に示されている業種別テレワーク実施状況を確認すると、教育、学習支援業では50%以上がテレワークを実施、ついで金融・保険・不動産業では47.5%、卸売業が45.5%となっています。一方、医療・福祉・保育関係の業種においては、9.8%と非常に低い値です。また、農林漁業が17.1%、小売業は20.1%という結果で、業種全体の平均実施率34.6%に比べるとかなり低い割合を示しました。 そして、一般的にテレワークが導入しにくいと考えられている製造業や運輸・通信・電気等の業種、建設業、サービス業については、40~30%前後と平均値に近い値でした。

業種の特徴からの考察

テレワークの実施率が高い教育、学習支援業では、例えば学習塾において動画を活用した授業を配信しているケースが多いほか、大学、高等学校においてもオンライン授業の実施を行っています。また、博物館や動物園といった施設でも、オンラインで館内を見学できるシステムを使って配信をしているところが多くなりました。その他、社外から社内システムに接続できるネットワークの構築といった、テレワークを実施できる環境を整えている企業・事業者も多いと思われます。

また、金融・保険、不動産業の場合、顧客との対面業務にWeb会議ツールを活用したこと、事務作業や契約更新に関わる手続きを電子化・自動化するための環境が整えられていたことが背景にあると言えます。 そして、製造業では間接部門や営業部門といった部門でテレワークの実施が進んでいても、工場などの現場ではテレワークの導入が難しいと考えられます。しかし、そういった現場においてもIoT・AIを使った自動化を導入できている企業ではテレワークの実施が可能であったために43.1%と比較的高い実施率になっています。

一方、医療・福祉・保育関係の業種は、施設の利用者と直接対面で対応する業務が中心であるため、基本的にはテレワークを導入できないという状況ですが、医療業務の一部では、電子カルテの導入や事務作業の電子化・自動化などによって、テレワーク可能になっていると言えるでしょう。

テレワークを実施できる共通要素

テレワークの実施率を見ると、業種によって違いがありますが、テレワークを実施できる業務内容については共通要素があることが分かります。例えば、最も実施率が低い医療・福祉・保育関係の業種においても、事務系の業務は可能な限り電子化・自動化を図ることで、テレワーク拡大につながります。

事務系の業務においてテレワークの導入を阻む課題と解決方法

テレワークの導入と活用がなかなか進まない場合、どのような課題があるのでしょうか。上記で確認したように、物理的にテレワークができない業種や業務は存在します。一方で、事務系の業務では、テレワークを実施することが可能です。ここではテレワーク導入を阻む課題と解決方法を確認しておきましょう。

テレワーク導入を阻む課題

テレワークの導入を阻む課題は労務的、人事的な課題から設備やセキュリティ面などさまざまなものが考えられます。一般的に挙げられる5つの課題を確認しておきましょう。

押印による承認や紙の書類による作業

多くの企業では契約書や決裁資料など紙の書類を作成し、承認のための押印が必要とされています。つまり、テレワークで取引先と打ち合わせをし、合意に至るところで契約書や覚書といった紙の書類を作成し、承認のための上司に押印してもらうという作業のために出社する必要があります。

労務管理・人事評価

出社しての勤務では、労働時間が把握しやすく、上司が日常的に部下の業務やそれに伴う成果を直接確認できるため、人事評価がしやすいと考えられます。しかしテレワークを導入すると、働き方がどう成果につながっているのかを判断するために、人事評価の考え方や評価基準を企業全体として再構築しなくてはなりません。また、人材育成の機会を公平に提供する方法についても、設備や考え方などを変更する必要があります。

社内外のコミュニケーションや情報共有

出社しての勤務では、会議の場以外にも、コミュニケーションは日常的に取られています。同僚や上司、あるいは他部署のプロジェクトメンバーに対しても、必要であれば直接会話をしに出向くことも可能です。テレワークを実施すると、気軽なコミュニケーションが取りにくい、連携しにくくなるといった懸念があります。

セキュリティ確保

テレワークを実施し、社外から社内のデータにアクセスをして業務に当たるとなると、情報漏えいや、PCなど業務に必要な機器の紛失・盗難のリスクが発生します。また、従業員が自宅で業務に当たる場合、使用するPCが自分専用のものなのか、家族で共有しているものなのかなど、さまざまなケースを想定した環境づくりをする必要があります。

経営層の理解

徐々にテレワークの必要性とニューノーマル時代の働き方についての理解が深まっているとはいえ、一部の経営層のなかには、テレワークによる効果や可能性が十分に理解できず、導入に消極的な人がいます。そのため、業務効率を向上させるための電子化・自動化や、テレワークの導入が進まないケースがあります。

課題の解決策

上記で確認したテレワークを阻む課題を解決するために必要なのはどのようなことなのか。それはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と企業全体での意識改革だと言えます。ここでは、課題ごとにどのようなデジタルツールの活用が有効なのかを確認しておきましょう。

紙書類と稟議(りんぎ)、決裁、契約:あるプロジェクトで承認を必要とした場合、多くの企業では稟議書を作成し、必要部署から承認のための押印をもらい、決定権のある人物まで回った段階で決裁に至ります。このプロセスのままではテレワークは導入できません。そこで書類を電子化し、オンラインストレージといったクラウドのファイル共有システムを活用します。電子化した書類はルールに従ってオンラインストレージに保管するように決めておくと、テレワーク中であっても必要な書類にアクセスができ、管理も徹底することができます。

さらに電子印鑑システムを取り入れることで、場所にとらわれず、必要なときに承認のための電子押印がきるようになります。

こうした環境が構築できれば、どこからでも情報共有がしやすくなるほか、プロセスの時間短縮や保管コストの削減も可能です。

労務管理や教育:テレワークを導入するための環境として、労働時間をどのように算定するのかを決めておく必要があります。さらに、Web会議ツールやチャットツールで相談やアドバイスがしやすい環境を整えておくことが必要です。そうした上で、評価をどのようにするのかといったルールづくりをすることが重要です。こうした環境を整えるために、勤怠管理ツールを活用し、テレワークをしている従業員が不安にならないような状態を構築しなくてはなりません。

また、Web会議ツールを活用してオンラインでのセミナーや研修会を実施するなど、時間と場所にしばられない教育の機会をつくる必要があります。

コミュニケーション:コミュニケーションは、従業員のモチベーション維持、健康管理のほか、プロジェクトのスムーズな進行、生産性の向上にとって重要です。Web会議ツールやチャットツールを活用して、プロジェクトメンバーどうしが互いの進捗状況を把握し、アドバイスや質問、相談といったコミュニケーションが取りやすい環境を構築する必要があります。

膨大な単純作業:テレワークを実施するために、手作業で処理をしていた定期的な作業や定型作業は、RPAを導入して自動化を図ることが必要です。そうすることで、作業のために従業員が出社しなくても自動で処理することが可能になり、さらに人的ミスも防ぐことができるので、業務効率化が図れます。

セキュリティ:テレワークの導入が進むと、サテライトオフィスなど社外で業務に当たる従業員が増えることになります。PCの画面を盗み見される可能性や、USBメモリやスマートフォンを紛失するリスクも増えます。そのため、従業員全員がセキュリティへの意識や対処法を理解し、実行できるようになっておく必要があり、セキュリティに関する教育や意識改革は必須と言えるでしょう。

また、OA環境のセキュリティレベルを高めておく必要があります。例えば、本人認証や端末認証システムを導入し、端末管理によるアクセス制限、ウイルス対策ソフトのインストールなどを行います。また、テレワークのICT環境構築の方法として、リモートアクセスツールを活用することが考えられます。社外から社内PCへのアクセスができるうえ、社外で使う端末にはログやキャッシュなどのデータが残らないので、社外PCからの情報漏えいリスクを低減できます。

さらに、インターネット回線からVPN経由で社内の情報にアクセスすることで、社外のネットワークから侵入されるリスクを抑えることもできます。

また、新しいセキュリティ概念としてゼロトラストにも注目が集まっています。ゼロトラストとは、すべてのトラフィックを信用できないものであるとし、社内からのアクセスであっても、都度その信用を評価し、ネットワーク内外どこからの脅威にも対応できるセキュリティモデルです。このゼロトラスト概念に基づいた次世代のセキュリティモデルをゼロトラストセキュリティモデルと言い、それを実現したネットワークをゼロトラストネットワークと呼びます。

こうしたゼロトラストネットワークを実現すれば、テレワーク導入で社外からのアクセスが増加したり、利用端末が増加したりしても、セキュアな環境を維持できる可能性が格段に高まるのです。

経営層の意識変化:テレワークを導入したいと現場や多くの従業員が考えていても、経営層が納得できていないとなかなか導入が実現できません。経営層がテレワーク導入に消極的な場合、多くの理由は効果が実感できないことです。そのため、テレワークを導入しようと検討をはじめた段階で、テレワークの実施による業務効率化の定量効果を計測できるようにしておく必要があります。そして、実施しやすい部署から導入し、テレワーク推進担当者と経営層が密にコミュニケーションを取り、導入状況を確認しながら範囲を拡大していくような体制をつくることも重要です。他社の成功例を学ぶ機会を設けることも理解を深めるよい機会になるでしょう。

テレワーク導入に利用できる助成金、補助金

テレワーク導入のためには、さまざまなツールの導入や新たなシステムの構築が必要ですが、そのためのコストが課題となり、なかなか進まないというケースもあります。そうした課題への解決策のひとつとして、助成金や補助金の活用を検討しましょう。助成金や補助金は政府が交付するもの、地方自治体が独自で交付するものなどさまざまありますので、各公式Webサイトで確認してください。また、申請期限の事前準備や資料作成は早め対応するようにしましょう。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続し、経済が低迷している状況のなか、支援として新たな助成金や補助金が公表される可能性もあります。自社のある自治体の公式サイトや厚生労働省、経済産業省などの公式Webサイトをチェックし、上手に活用して、テレワーク導入をスムーズに進めていきましょう。

中小企業がテレワークを導入すべき理由

従来は生産性の向上やワーク・ライフ・バランスの実現などの「働き方改革」の観点から推進されてきたテレワークですが、新型コロナウイルス感染症の流行時における事業継続性確保の面からも重要であることが分かりました。

また、「時間や場所に縛られない」柔軟な働き方を実現できるので、通勤が困難な遠方居住者や高齢者の雇用、育児や介護などを理由とした離職の防止や新たな人材の確保にも期待ができます。 前述で紹介したデジタルツールを活用することで、テレワーク導入のハードルは徐々に下がってきています。すべての業務を一斉にテレワークにするのではなく、部分的にITツールを活用することでもテレワークは実現できます。

コストが課題となりテレワークに踏み切れなかった企業にとっては、補助金制度や助成金制度を活用することは大きな後押しとなるでしょう。しかし、中小企業こそがテレワークを導入すべき理由がコストの課題解消以外にも多くあると言えます。

人材不足、事業継続、働き方改革への取り組みとしても、人材確保が難しいと言われる中小企業ほど、積極的にテレワークを導入することで生産性の向上、企業の将来性の拡大につながると言えるのです。

専門知識と技術力のサポートを受けながら自社に最適なテレワーク導入法を探すのが成功への近道

業種それぞれが抱えている課題は多様であり、ツールや助成金の利用がテレワーク導入に効果的かどうかは一概に言えません。しかし、全体にテレワークが取り入れられなくても、業務の一部にツールを活用することで、現状の業務の効率化、将来的に人材確保ができる体制の整備、事業継続可能な業務の拡大などを行うことは可能でしょう。大切なのは自社において、どのような業務がテレワークの導入可能なものなのか、それを推進するには何が課題であり、どのような対策があるのかを客観的に把握することです。

まずは業務の効率化、人材確保への対策としてどのようなツールが活用できるかを考えはじめるだけでも、大きな一歩を踏み出すことになります。多様な業種のテレワーク導入をサポートしている専門企業に相談することで、自社だけでは気付けない問題点や解決策が見つかることもあります。

ソフトバンクでは、リモート会議を実現するためのツールやノウハウ、セキュリティ強化のための環境設定などテレワーク導入のサポートを提供しています。テレワークの準備としてどのようなツールを選べばよいのか分からない、どのような効果が得られるのか想像がつかないといった相談からはじめることができます。

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