Google Workspace を使った組織変革のフレームワーク 「チェンジマネジメント」とは?

2021年8月31日掲載

テレワークの普及などをきっかけに、業務効率化やコミュニケーション活性化を目的としてグループウェアの導入を検討する企業が増えています。しかし、全ての企業がグループウェアを使いこなせているわけではなく、「導入したけれど業務利用が進まない」などの悩みを抱えている企業も少なくありません。グループウェアは業務のあり方を大きく変える可能性を秘めており、企業側もその変化に柔軟に対応できる組織である必要があります。そこで、当記事では代表的なグループウェアである「 Google WorkspaceTM 」を導入する際に有効な、Googleが提供する組織変革のサポート「チェンジマネジメント」について、Google Cloud の JAPAC Digital Transformation Consultant 山田 理禾 氏にお話を伺いました。

目次

お話を伺った方

山田 理禾 氏

Google Cloud
JAPAC Digital Transformation Consultant

「 Google Workspace 」導入により期待できる効果と社内の反応

-「Google Workspace 」を導入することによる変化を、ポジティブ・ネガティブ両方の側面で教えてください。

「まず、ポジティブな変化について代表的な4点をお話しします。
1点目は作業効率化です。業務のプラットフォームがデジタル化・クラウド化されることで各種の業務ツールをオンラインで使えるようになり、業務の能率が上がるだけでなく関係者による資料確認なども素早く行うことができます。

2点目はイノベーションです。これは3点目として後述するコラボレーションとともにクラウドサービスである点でのメリットとなります。組織の中にいるさまざまな人と情報共有が簡単にできるようになることで、仕事や働き方に対する新しいアイデアが生まれ、企業改革や新たな成長のきっかけになることが期待できます。

3点目のコラボレーションではグループウェアという新しいテクノロジーを導入したことにより、プラットフォーム上で同じ資料を確認したりドキュメントを共同編集するなど、クラウドで気軽に仲間と協力しあう効果が期待できます。さらに、メールだけ、電話だけなど一つ一つの機能を限定的に使うのではなく、ビデオ会議、チャットなどを組み合わせることで生産性を高めることができるのも、『 Google Workspace 』ならではのコラボレーションです。

4点目は人材の確保です。現在デジタルネイティブ世代が社会に出て活躍しはじめているので、彼らがもともと慣れ親しんでいるツールに使い勝手が近い業務システムを導入することは、デジタルネイティブ世代の人材の定着に重要であり、『 Google Workspace 』はその第一歩といえるでしょう」

ポジティブな変化 ポジティブな変化

一方で『 Google Workspace 』の導入当初は、社内でネガティブな反応を引き起こすこともあります。導入企業における導入当初の社員の反応は4つのパターンに分けられるのですが、実は社員の8割から9割は導入当初、ネガティブな反応を示します。中には変化を積極的に受け入れてナビゲーターとなる人もいるのですが、比率としてはとても少ないです。
残りの人々は大きな声を上げて批判する評論家タイプ、どうしたらよいか分からずパニックに陥る被害者タイプ、特になにもせず様子をみている傍観者タイプがあります。
こうしたネガティブな反応の裏側には慣れ親しんだツールこそが効率的であり、それを失うことが怖い、という人間の心理が隠れているので、いかにして人々の変化に対するこうした恐れをなくしてナビゲーターに近づけていくかが、チェンジマネジメントの重要な目的です」(山田氏)

社員の反応4パターン 社員の反応4パターン

「 Google Workspace 」導入の成否を分ける鍵

-「 Google Workspace 」の導入を成功させる上で重要なことと、導入が失敗してしまう原因とは何でしょうか。

「導入時には下の図における上側の青いラインを一人一人にたどって頂くことが重要です。最初の段階では変化によって何が起きるのか、ポジティブ・ネガティブ両面を理解することからはじめます。次にポジティブな変化を実体験する事で、自分の中で新しいツールやテクノロジーを使って働くというマインドセットが生まれて、最終的に業務に完全に組み込まれて浸透の段階まで移行することが『 Google Workspace 』の導入や、それに関わるチェンジマネジメントを成功させる上でとても重要です。
反対に失敗するケースでは下側の赤いラインをたどる場合です。社員に対して『 Google Workspace 』を導入する目的やメリットを十分に説明しておらず、社員が変化を自分事化する機会がないことなどをきっかけに、社内で変化への理解が深まらず混乱が広がる、会社やリーダーに対して不信感を持ってしまうなどの反応が発生します。そうなると新しいツールを導入しても活用されず、慣れ親しんだ古いツールに戻ってしまいます。こうなると失敗であり、このような事態に陥ることは防がなければなりません。
『 Google Workspace 』の導入とそれに付随するチェンジマネジメントが成功するかどうかを計測するための指標は、導入プロジェクトの最初に定義しておきます。プロジェクトの進捗中にこれらの指標や現場の社員の声を定期的にチェックすることで現状が成功・失敗のどちらに寄っているかを確認し、事態が深刻になる前に対処できます」(山田氏)

成功と失敗のフロー図 成功と失敗のフロー図

チェンジマネジメント概要

-貴社が推奨しているチェンジマネジメントについて、概要を教えてください。

「チェンジマネジメントとは、組織が変化するためにフレームワークにそったサポートを体系的に行うことを指します。特に『 Google Workspace 』のようなグループウェアの導入においては、社員と社内の業務プロセスが変化の影響を大きく受けるため注視する必要があります。
チェンジマネジメントでは4つの柱が重要です。1つ目の柱は関係者を巻き込むことで、誰が重要な関係者であるかを見極めて、組織全体として活動していくための体制を整えることです。経営者など組織のトップ層は組織全体に模範を示し変化を推進していく重要な役割を担います。部課長など管理職は現場の反応をトップに伝える上でも大切なポジションとなります。また、変化に対して前向きで自ら動いて周囲を変えていく現場社員のエバンジェリストも社内で見つけて巻き込んでいくことも大切です。

2つ目は組織分析です。組織には多様な社員が働いており、変化に対するリアクションもさまざまです。そうした反応を分析して、理解することはチェンジマネジメントの計画を作成する上で大切です。また、チェンジマネジメントの成功指標を定義することも組織分析の重要なポイントです。成功指標は導入期と導入後で大きく変わり、導入期では導入が組織全体で進捗しているか、プロダクトの利用率が上昇しているか、現場の反応はどうかなどが重視され、導入後では社員の働き方がどう変わったか、ビジネスがどう効率化されてリターンを生んでいるかなどを見ていきます。こうした指標を当初から設定して、絶えず計測することが重要です。

3つ目の柱はコミュニケーションです。現場で働く社員に対して何故変化が起きるのか、その変化はどのようなものか、さらに社員にはどんなベネフィットがあるのかなどを伝え自分事として理解してもらわなければなりません。こうしたメッセージは一度伝えれば組織に浸透するものではなく、インタラクティブな交流なども通し、さまざまなチャネルで繰り返し伝えていくことが重要です。また、変化のアナウンスメントや中間進捗など会社全体に関わるメッセージについては、経営層から発信してもらう必要があります。

最後の柱は教育です。『 Google Workspace 』というテクノロジーを使って、新しい働き方を実行していくには相応の知識が不可欠となります。これは企業側から社員に対して、研修など習得の機会を提供する必要がありますので、知識がしっかり全社に浸透するようマネジメントしていきます」(山田氏)

チェンジマネジメントの導入プロセス

-「Google Workspace 」導入企業における、チェンジマネジメント実践プロセスはどのようなものでしょうか。

「まず、『 Google Workspace 』を3ヵ月3ステージで段階的に導入します。最初のステージはまず導入企業のIT部門を対象に導入します。IT部門はテクノロジーの変化に密接な関係があるためです。その次がエバンジェリストと呼ばれる組織全体の5%~10%に当たる早期導入ユーザで、最後に全社導入の3つのステージを辿ります。
上記と並行してチェンジマネジメントの実践を行いますが、まずは対象となるチームやユーザに対して必要性や概要を説明するキックオフからはじめて協力体制を構築します。ここでは最初に経営層、管理職の方々にチェンジマネジメントの概要と重要性、またリーダーとして変化を推進する役割を理解して頂くことが重要です。
次に組織のさまざまな社員に対してユーザアンケートやインタビューを行い、今回導入する『 Google Workspace 』がそれぞれの働き方にどう影響するのかを把握した上で、導入期の活動の全体像を描きながら、IT部門への導入を経てエバンジェリストの選定やトレーニングを行い、その反応を踏まえて全社導入をしていきます。全社導入の段階でもユーザへのトレーニングやコミュニケーションを取りつつ進めます。また、導入完了後の満足度調査も重要です。このような段階を踏んでチェンジマネジメントの実践を進めています。
また、この3ヵ月間はあくまで導入期であり、組織を変えるためのチェンジマネジメントはこの後も続いていきます」(山田氏)

チェンジマネジメントが解決する課題

-チェンジマネジメントは 「Google Workspace 」の導入など、企業の大きな変革における課題をどのように解決するものでしょうか。

「チェンジマネジメントは組織とそれを構成する人が変化に柔軟に迅速に適用できるようになるためのサポートをするフレームワークです。そのためチェンジマネジメントを実践する上での課題は、変化へ抵抗する人々への対応がメインとなります。人が仕事で変化に直面したとき、抵抗勢力になる要因は以下の3つがあります。

1つ目は、これまで方向性や未来を理解していた自分の仕事に対し変化が起きることで方向性や未来が不明確になるかもしれないという安心感の喪失です。これまでは仕事で何をすればよいか、どうすれば上手くいくのかが分かっていたのが、仕事のやり方に大きな変化が起きることにより、先が見通せなくなることが怖いといった感情が生まれます。

2つ目は自身の存在意義や価値の喪失です。今まで個々の業務ツールに慣れ親しんでいた人が『 Google Workspace 』のような統合型の業務環境に移行したことで、培ってきた知識や経験が生かせなくなると感じることがあります。 3つ目は関係性の喪失です。働き方や業務のプロセスが変化する際には人間関係を含めてさまざまな関係性をリセットすることが時には必要ですが、これを恐れたり面倒に感じたりする人々もいます。

こうした要因で抵抗勢力となった人々が社内のどこにいるのか、なぜ抵抗するのかを理解した上で、プロジェクトの中で役割を担ってもらうように巻き込んでいき、抵抗勢力から仲間になっていただいて、全員で組織を変えていくようになることがチェンジマネジメントによる課題解決です」(山田氏)

変化を受け入れ、成長する組織になるために

グループウェアはテレワークなど多様な働き方を推進したり、業務の生産性を向上させる上で非常に有用なツールですが、業務環境を一変させてしまうため、社内の抵抗は小さくないかもしれません。現在グループウェアを検討されている企業の方は、充実機能の「 Google Workspace 」とともに、チェンジマネジメントの導入を考えてみてはいかがでしょうか。 「 Google Workspace 」については、下記フォームから資料をダウンロードいただけます。

Google Workspaceご紹介資料

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