IoTと5Gがスマートシティを加速する。最新テクノロジー&事例紹介|SoftBank World 2019

IoTと5Gがスマートシティを加速する。最新テクノロジー&事例紹介|SoftBank World 2019
  • リアルタイムでセキュアなIoTネットワークが社会課題を解決する
  • IoT × 5G × AIで、高精度測位などの技術革新が起こり、産業を変革する
  • IoTでビルや街がネットワーク化されることで、働き方と暮らし方にイノベーションが起こり、地域が活性化する

(2019年10月1日掲載)

IoTと5Gによって、あらゆるものがネットワークに接続される日がやって来る。テクノロジーを駆使したスマートシティや農業機械や工業機械の自動運転などが実現し、社会や産業を大きく変えようとしている。「SoftBank World 2019」ではこうしたテクノロジーを使った最新事例が多数紹介された。本記事では、ソフトバンクのIoTと5Gのテクノロジーに関する講演をピックアップしてレポートする。

ソフトバンクが創造する次世代のIoT

神谷 義孝

ソフトバンク株式会社
IoT & AI技術本部

古野 雅人

ソフトバンク株式会社
IoT & AI技術本部

IoTの根本的な価値はデータです。ソフトバンクのIoTは、もっともセキュアなネットワークでデータの収集ができ、事業領域・規模に捉われることなくリアルタイムにデータ分析・判断・流通ができるプラットフォームです。

IoTが生成するデータを価値化するためには、リアルタイム処理が重要です。そこで、ソフトバンクではリアルタイム・イベントドリブンアプリーケーション開発プラットフォームを提供しているVANTIQ社と資本業務提携を結びました。VANTIQ社のプラットフォームを活用することで、スマートシティで生じる膨大なイベントデータを瞬時に処理、判断できるようになりました。

また、ソフトバンクは2018年9月、IoT向けの通信規格であるNB-IoT(Narrow Band-IoT)を活用した「NIDD(Non-IP Data Delivery)」の商用環境での接続試験に世界で初めて成功しました。デバイス間にIPを持たない通信区間を設けることでサイバー攻撃を根本から防ぐことが可能で、さらに通信の軽量化にもつながります。これをいち早く提供できるのはソフトバンクの大きな強みです。

IoTを活用した社会課題解決に向けた挑戦はすでに始まっています。そのキーテクノロジーの1つがVayyar社のイメージングセンサです。

高周波電波を通じて人などの対象物との距離、形状、素材などを高精度に特定。カメラとは異なりプライバシーの影響が少なく、暗闇や煙の中でも対象物を検出するため、公共施設やホーム領域からの需要が高まっています。

ほかにもユースケースは多岐に渡り、ソフトバンクでは今後、インフラ・防災、ホーム・介護、スマートシティ・ビルの3つの領域を展開していく予定です。

防災対策の例としては、地滑り危険区域の斜面の変位量をミリレベルで検出するソリューションを展開。高精度のデータを担保しつつ、約20mの距離で変位量を検出、IoTプラットフォームで可視化し、分析が可能です。

またソフトバンクでは「IoTパートナープログラム」を進めています。今年からCat.M1(カテゴリーM1)、NB-IoTなどの通信モジュールも使える環境になり、今後もさまざまなサービスをリリースしていく予定です。

ソフトバンクの5G戦略と今後の具体的な取り組み~高精度測位サービスの紹介~

野田 真

ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニット モバイル技術統括 モバイルネットワーク本部 本部長

日高 茂實

ヤンマーアグリ株式会社
開発統括部 先行開発部 技監・部長

今後は、移動、農業、都市、工場などあらゆる産業、社会が5G × IoT × AIを組み合わせることで進化していきます。

5Gの商用サービスがスタートすると、4Kや8Kのコンテンツを楽しめるようになりますが、さらにその先、5Gの高度化によって産業に大きな変革がもたらされます。

すでにソフトバンクでは5Gを活用した実証実験に取り組んでいます。福岡ソフトバンクホークスの本拠地・ヤフオクドームではマルチアングルVR観戦の実証実験を開始。大容量のVR映像を用いてスーパーボックス(球場内にあるラグジュアリーなボックス席)をVR空間に再現するほか、マルチアングルを瞬時に切り替えて視聴することも可能になります。

5Gが変革を起こすのは一般消費者向けコンテンツに留まりません。今後はあらゆる産業が自動化していきます。その際に重要なのが「高精度測位」です。

ソフトバンクではイネーブラー社とともににALES株式会社を設立。ALESが提供するのはセンチメートル級測位サービスです。

センチメートル級測位サービスとして、RTK測位方式によって誤差数cmの測位を可能にし、補整情報を取得してデバイス側で高精度位置演算を行うタイプと、クラウド側で高精度位置演算して結果を取得するタイプの2種類を提供。ソフトバンク独自の基準点が全国3,300ヵ所以上あるため、導入企業側で基準点を用意する必要がありません。

センチメートル級測位サービスの主なユースケースとしては、建設機械の自動化、ドローンの自動制御、無人自動運転の実現、MaaSへの活用が考えられます。さらに、農業分野でも農業機器の自動化、圃場(ほじょう)マップの高度化にも応用できます。

ヤンマーアグリではソフトバンクと連携してスマート農業の実証実験を実施しています。農作業の省力化、効率化を図るため自動運転技術を搭載した「SMARTPILOT」シリーズのトラクターや田植機を発売。

自動運転農機が正確な圃場の位置情報を把握するためには高精度の位置情報と大容量データ通信が必須です。ICT、IoTで農業のバリューチェーンをつなぎ、農業と食農産業の発展を目指していきます。

デジタライゼーションがもたらす変革~共創が描く新たなスマートシティ~

今井 康之

ソフトバンク株式会社
代表取締役 副社長執行役員 兼 COO

太田 朝道

東日本旅客鉄道株式会社
常務取締役 技術イノベーション推進本部長
鉄道事業本部安全企画部担当

岡田 正志

東急不動産株式会社
取締役 上級執行役員 副社長

街全体のデジタライゼーションが進むことで、より快適で安心、エコな社会が生まれます。スマートシティを実現するためには、膨大なデータを収集し、解析、活用する仕組みが必要です。

ソフトバンクでは企業や自治体に向けて、スマートシティを推進するためのIoTプラットフォームを提供。すでに、各地で社会課題解決に向けた共創がスタートしています。MaaSの分野ではJR東日本が設立したモビリティ変革コンソーシアムにソフトバンクも参画。

また、2020年にソフトバンクは本社を竹芝へ移転します。それに伴い、東急不動産と連携してさまざまなスマートビルディングに関する最新テクノロジーの実験を行っていきます。

JR東日本では「人の生活を豊かにする」を起点にした新しいサービスの創造に取り組んでいます。

A地点からB地点に移動するための鉄道事業だけではなく新たな観光ニーズの創造や、駅を交流の場にして乗ること自体が目的になる列車の運行など、出発地から目的地までシームレスでストレスフリーな移動を実現するために、JR東日本ではあらゆる移動プラットフォームの統合を進めています。

最近ではJR東日本アプリをリニューアルしたほか、新潟や伊豆、仙台などで観光型のMaaSの実証実験をスタート。鉄道などの一次交通とバスや自転車などの二次・三次交通が連携することで利便性が向上し、地域の活性化、心豊かな生活の実現につながるのです。

東急不動産では現在、竹芝地区開発計画を進めています。本プロジェクトでは最先端のテクノロジーを用いた街づくりを進めています。
非常時に電力を供給するなど、ビルに求められるBCP(事業継続計画)への対応はもちろんのこと、ロボット清掃の導入や人流ヒートマップを活用した適切な警備員配置のほか、植物を効果的に取り入れて、働き方を変えていきます。

商業エリアでは、ドローンがピザを運び、飲食店の空席情報をリアルタイムで提供します。東急不動産がハードとエリアマネジメント、ソフトバンクがテクノロジーを担い、両社の強みを生かして、竹芝を最先端技術のショーケースにしていきます。

先進事例に学ぶスマートシティビジネス最前線

海老原 城一

アクセンチュア株式会社
戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
公共サービス・医療健康 サステナビリティグループ統括

藤井 篤之

アクセンチュア株式会社
戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー

アクセンチュアでは2011年より、会津若松市の東日本大震災からの復興計画策定、産業振興、雇用創出を支援し、スマートシティ計画を進めてきました。

会津若松市の場合、街にずっと住み続けてもらうためには雇用の創出が課題でした。

そこで、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定。アナリティクス産業をつくり、データを改善して暮らしを定着させ、会津若松市として長期的に10万人程度の安定人口を目指しました。

具体的なプロジェクトとしては、市民に対して登録情報に合わせた情報を提供するサイト「会津若松プラス」や観光客向けサイト「VISIT AIZU」をスタート。その他、予防医療推進プロジェクト、会津大学でのアナリティクス人材の育成なども行っています。

世界的にもスマートシティ市場は今後10年で急成長することが見込まれています。これまでの都市開発は行政中心で進められ、CO2削減など「マイナス面を削減する戦略」が取られてきました。

しかし、近年は「プラス面を創出する戦略」に転換。街づくりの価値が、デジタル活用による顧客目線に立った生活の提供に変化しています。マネタイズモデルも不動産を造って終わりではなく、その場所で新たなサービスを生むことで利益を出すモデルにシフトしています。

これに伴い、デジタルサービス企業がスマートシティを主導する立場になりつつあります。

例えば、トロントのウォータフロント地区再開発プロジェクト「Sidewalk Toronto」では、公募によりアルファベット傘下のSidewalk Labs社とパートナーシップを締結。自動運転を前提とした人にやさしいデザイン、住民を巻き込むコミュニティデザインなどを提起しました。

企業にとっては継続的に街づくりに関わることで、サービスやデータによる価値創出、新規事業の創出につながります。各企業は自社のデジタル変革と行政との新たな関係構築を軸に、都市OSを基盤としたイノベーションエコシステムを形成することが求められているのです。

後記

都市のデータをリアルタイムで解析するIoTプラットフォーム、建設機器やドローンの自動運転を支える高精度測位サービスなど、IoTと5Gを活用したさまざまなソリューションが登場している。これらはスマートシティ化を一気に広げる起爆剤になる可能性を秘めている。IoTによって社会、産業が大きく変わり、私たちの暮らしはさらに快適になっていくのは間違いない。しかし、テクノロジーの導入自体が目的になってはいけない。何より大切なことは、各講演で話されたように、根底にある社会課題を見つめ、テクノロジーによってどう改善していくかを考える続けることなのだ。

関連リンク

SoftBank World 2019

SoftBank World 2019の孫正義・宮内謙の基調講演をはじめとした講演動画・講演資料をアーカイブ配信しています