ソフトバンクの新たな法人事業戦略―「事業継続支援ソリューション」と「プライベート5G」

"アフターコロナにおける企業のデジタルシフト支援 ―2020年5月 ソフトバンク法人事業説明会レポート"

(2020年6月19日 掲載)

  • ソフトバンクは急増するテレワーク需要に応えるサービスを提供している
  • AI検温ソリューション「SenseThunder(センス・サンダー)」はイオンモールにも導入される
  • ソフトバンクはMapbox, Inc.と合弁会社を設立し、地図情報サービスの開発プラットフォームを日本で提供する

ソフトバンクは、2020年5月20日、法人事業に関する説明会を開催。代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之と常務執行役員の藤長国浩が、新型コロナウイルス感染症の影響下での事業継続を支援する各種ソリューションと、法人事業での5G戦略について語った。

冒頭で今井は、3月下旬に約1千社のお客さまを対象にソフトバンクが実施した緊急ヒアリングにおいて、新型コロナウイルスの影響下での要望としてテレワークに関する課題が9割弱を占める、という結果を説明した。

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今井「政府からテレワークの推進について要請が出されたため、企業の皆さまからテレワークの導入についてさまざまなご要望をいただきました。例えば、モバイルネットワークの増強だったり、リモートアクセス、 Web 会議などについてです。

テレワークの導入における企業の課題としては、社内システムにアクセスできないとか、固定電話にお客さまから電話があるのに受けられない。そして、契約書の押印のために出社が必要であるというようなことが挙げられます。また、海外出張はもちろんのこと、採用活動の一番重要な時期に採用活動が実施できないなどといった課題もあります。
こういった、全般的なコミュニケーションが取りづらいというお客さまの声が、営業現場に届いています。」

ソフトバンクは、これらの課題を解消し、テレワーク需要に応える環境を提供することに力を入れてきたという。ソフトバンクが提供するサービスの詳細について注目してみたい。

今井「ソフトバンクでは、テレワークの需要に応えられる ICT 環境、もちろん在宅勤務だったり、社内外から安全に業務ができるネットワーク環境を構築すること、そして、そのネットワーク環境の上に、コミュニケーション環境を作り上げるといった仕組みをお客さまに提供してまいりました。

例えば、スマートフォンやPCを持って在宅勤務されている方にとっては、Wi-Fiルータの需要が非常に高く、昨年の3月~4月と比較すると1.2倍~1.5倍に上がっています。

お客さまの要望に応え、在宅勤務中の方に本人確認をしながら直接スマートフォンやWi-Fiルータをご自宅へお届けする仕組みも、ソフトバンクが持っている B to B と B to C のノウハウを組みあわせて、サービスの一環として作り上げることができました。

そして、ご自宅から会社のシステムにアクセスすることができるリモートアクセスについては、昨年の3月~4月と比較すると18倍の需要がありました。自宅から社内と同等の環境へアクセスする必要があるため、お客さまからの需要が高かったようです。ソフトバンクでは、自宅にいても安全に社内環境と同等の環境にアクセスしていただけるサービスを提供しております。

続いては Web 会議です。これはZoomが中心となりますが、2020年3月~4月の新規契約ID数が、2020年1~2月と比べ41倍と大幅な伸びとなりました。こちらも、出社せずに会社のメンバーとの面談や会議を実施したいという需要や、お客さまとの商談などでWeb会議を必要とする需要が高かったようです。Zoomを使うことで対面と比較しても遜色ないテレビ会議が実現され、沢山のお客さまにご利用いただいております。

その他のG Suite や Microsoft 365などのグループウェアサービスも、1.4倍、3.8倍と非常に需要が増大しています。

また、代表電話を受けることができるサービスも需要が高まり、Dialpad™(ダイアルパッド)は昨年の3〜4月に比べて4.5倍、、UniTalk(ユニトーク)は今年の1〜2月に比べて5.2倍の伸びとなっています。」

今井 「さらに、こういった1つ1つのサービスを個々にご紹介するのではなく、「SoftBank Telework Support」といった形でさまざまなサービスをまとめてご検討いただける仕組みを、3月の段階で準備することができました。

加えて、お客さまのご要望に応じた法人向けのソリューションを、無償サービスとしてお客さまに提供することができるようになっています。
内容としては、リモート会議やコミュニケーション活性化、そしてそのサービスを支えるセキュリティ、日本と中国間でのテレワークなど、新しい働き方をサポート出来る環境作りです。ソフトバンクでは、この期間ご苦労されているお客さまのご支援の一助になれればということで、サービスを無償でご提供させていただいています。期間限定で無償割引を提供しているサービスの一覧は、テレワーク支援サイトでご確認いただけます」

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さらに今井は、テレワーク以外にも、新型コロナウイルスの影響下で企業が事業継続するための課題を4点あげた。
1点目は、出社の必要がある社員の健康管理。2点目は、オンライン教育の仕組み。3点目は、小売業などにおけるeコマース販路の促進サポート。4点目は、店舗休業でも接客が可能となるオンライン接客サービスである。

このような業種、業態ごとの課題に合わせた事業継続のためのソリューションのひとつとして、顔認証技術を使った新たなサービス、AI検温ソリューション「SenseThunder(センス・サンダー)」の提供開始を発表した。

AI検温ソリューション「SenseThunder(センス・サンダー)」

今井「ひとつ代表的な事例をご紹介させていただくとともに、新ソリューションを発表いたします。日本コンピュータビジョン株式会社が提供する AI 検温ソリューション「SenseThunder」です。
このAI 検温ソリューションサービスは、体温検知と顔認証で、出社が必要な社員の健康管理を徹底していきます。例えば、体温の異常を検知して入場を制限することもできますし、顔認証による個人認証もプラスできます。さらに、マスクをしていない社員の入場を制限する仕組みも提供できます。」

SenseThunderとは?

AIを活用した「独自の顔認証デバイス」と「サーモグラフィカメラ」の組み合わせにより、わずか0.5秒で個人認証と体温測定を同時に実施し、発熱している人をリアルタイムに見分けることができるソリューション。
顔認識AIと体温推定AIの組み合わせにより、サーモグラフィで測定した体表温から誤差±0.3℃で体温を測定できることが特長で、最大2mの離れたところから検知するため、スムースにゲートを通り抜けることができ、マスクを着用したままでも顔認証が可能。

ソフトバンクは、社員の健康管理のために汐留本社に「SenseThunder」をすでに設置している。出社する必要がある社員が安全に安心して業務ができるように、顔認証と検温の仕組みを作り上げたという。
さらに、2020年秋に移転を予定している竹芝新本社では、顔認証と連動した取り組みを予定している。例えば、入館ゲートで顔認証を行うと、その社員の席が何階かを識別し、エレベーターと連動して、自動でその社員の席があるフロアに停止する。さらには、顔認証を行った後、そのテナントビル内の店舗で決済ができるようになる仕組みも検討しているとのことだ。



「SenseThunder」はソフトバンクの汐留本社以外にも、すでに導入が広がりつつあるという。

今井「プレスリリースもいたしましたが、全国のソフトバンクショップ・ワイモバイルショップ約3,000店に、順次『SenseThunder』を設置していきます。2020年の7月までに全店舗へ設置を完了する見込みです。

また、『SenseThunder』はソフトバンクショップ・ワイモバイルショップだけでなく、安全対策の一環として官公庁をはじめ小売、医療、通信販売、製造それ以外の企業にも活用いただいています。特に、医療現場において、『SenseThunder』は安全確保のための非常に重要な要素として採用されています。

『SenseThunder』はすでに多くのお客さまに活用いただいておりますが、その中でも、イオンさまに導入いただき本日プレスリリースされました。イオンさまは、安全な店舗運営を目指し、従業員、そしてお客さま向けに、AI 検温ソリューションを活用して店舗の安全性を確保していくという取り組みをスタートされます。

ソフトバンクは、こういった新型コロナウイルス対策に関するさまざまなサービスを、ぜひとも企業の皆さま、そして社会でご活躍されている方のために提供していきたいと思っています。」

地図情報サービスの開発プラットフォーム「Mapbox」

続いて今井は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた人流データなどの活用を取り上げた。

ソフトバンクグループのヤフーやAgoopは、人流解析のデータを政府などに提供して、クラスターの早期発見や、外出自粛の警鐘といった新型コロナウイルスの感染拡大防止に役立てている。

「緊急時にこそデータが重要視される」として、米国のMapbox, Inc.と合弁会社を設立し、地図情報サービスの開発プラットフォームを日本で提供することを発表した。

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Mapboxとは?

Mapboxは、基礎的な地図の上にさまざまな天気や流動人口、渋滞情報といったデータを追加し、さらに各企業が持っている独自の情報を加えることで、目的に応じてカスタマイズ可能な地図のプラットフォームを提供している。
法人事業説明会の冒頭でも紹介された日本経済新聞の「新型コロナウイルス感染 世界マップ」でもMapboxのプラットフォームが活用されているという。

今井「国連やアメリカ政府、そして大学、 FacebookやTwitter、Snapchatといった各種ソフトウェアサービス会社など、世界中のさまざまなところでこのカスタマイズ自在な地図がすでに活用されています。
災害大国である日本においても、リアルタイムのデータが非常に重要であります。データを可視化して、人命維持に欠かせないライフラインマップや、緊急物資配送に役立つ道路状況マップ、災害が起こった時のハザードマップに役立てる。そこにMapboxは大いに活用できると思います。

今後は、自動運転や災害救護ロボットの自律走行に必要な、リアルタイムに位置情報が得られる地図の作成に取り組む他、ソフトバンクが展開する、自動運転MaaS、 AI 配車、 ECに伴う配送業務といったサービスとも連携することで、5G・IoT時代に向けて更なるグループシナジーを発揮していきたいです。
Mapboxの役割は今後、どんどん大きくなるんじゃないかなと感じています。

データを活用したビジネスをさまざまな企業に支援していくことで、デジタル化を推進していきたいと思っています。」


次に、常務執行役員の藤長国浩が登壇。アフターコロナにおいてカギとなる、データを活用した企業のDX推進におけるソフトバンク法人事業の特長を、以下のように説明した。

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DX推進の取り組みについて

藤長「ソフトバンクの法人事業では、お客さまのIT のステージによって、さまざまなソリューションを提供していきたいと思っています。お客さまによっては、いろんなステージでお困りがあります。1つのソリューションではなく、いろんな角度からソリューションをご提供し、ステージに合わせ活用いただきたいと考えています。

ソフトバンクは通信事業者ですが、通信デバイスはもとより、さまざまなソリューションを組み合わせて、ワンストップでお客さまへご提供していく体制を整えています。それに加え、通信サービス以外にも、クラウドや IoT、RPA、 AI、 データマネジメントといった100を超える数々のソリューションをすでにお客さまへお届けしています。そしてそれを支える260社以上のグループ会社と連携をして、お客さまの課題解決に向けて、努力をしています。
最新のテクノロジーと総合力というところが、ソフトバンク法人事業の一番の強みと考えています。」

さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現させる上で必要な3つの基盤、「コミュニケーション基盤」、「デジタルオートメーション基盤」、「データ活用基盤」を取り上げ、ソフトバンクおよびグループ会社における最先端テクノロジーの総合力で、これら3つの基盤に関するサービスを一気通貫で提供できることがソフトバンクの強みである、と強調した。

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藤長「スマートフォンはもちろんのこと、スマートフォンから接続するクラウドをコミュニケーション基盤としてご提供します。また、お客さまの業務を自動化するためのデジタルオートメーション基盤ではさまざまなRPAを用意しています。そして、それらから出てきたデータインサイト、これを活用するデータ活用基盤により、お客さまのいわゆる行動予測や、需要予測、販売の拡大に結びつけていきたいと考えています。

小売業界の企業さまとの取り組み事例をご紹介をさせていただきます。
小売業では、店舗側からはタイムリーな受発注がしたい、本部側は在庫の管理をリアルタイムで行いたいというお悩みがあります。これらをRPAを使い自動化していきます。
そしてその自動化されたものを、さまざまなクラウドサービス、スマートデバイスを使って円滑にコミュニケーションできるような形にしていきます。さらに、そこから生まれたデータを、INCUDATA、ヤフーによるデジタルマーケティングを活用して、お客さまの売上利益を伸ばしていく。ソフトバンクはそんなお手伝いをさせていただいています。

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次にサプライチェーンのDXの事例ですが、生産、物流、保守といったような形で、お客さま自身もデータが分断されているケースがあります。
そういったケースにおいてデータを繋げるというところで、ソフトバンクは「Arm Treasure Data CDP」というサービスを持っており、そのクラウドサービスでデータを収集統合していき、さらに ヤフーが持つ市場調査や需要予測を掛けあわせて、販売の機会を多くしていくということに取り組んでいます。
重要なのは、データ化し、データを統合し、可視化していくことです。そして、それだけではなく業務の中に必ずアナログなシステムがありますので、これらをデジタル化していって、さらにオートメーション化していくというお手伝いもしています。

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このようなソリューションを形成する1つ1つのサービス、クラウドやセキュリティ、RPA自体も昨対比でどんどん伸びていっております。更にこれらを総合して、ソリューションとしてご提供していくのが、私どもソフトバンクの法人事業です。」

法人事業での5Gの取り組みについて

続けて、人手不足が喫緊の課題となっている工場や工事の現場において、生産労働力を創出する上で5Gは切っても切れないと藤長は説明する。ソフトバンクは2020年春から5Gの商用サービスをスタートさせており、5Gの実用化を前提としたユースケースの創出にパートナー企業らと共に取り組んでいる。

加えて、2022年度からソフトバンクが顧客の敷地内で5Gネットワークを構築して保守・運用を行う「プライベート5G」の提供を予定していることを明らかにした。

法人5Gに関する発表詳細はこちらをご覧ください。

経済復興・持続可能な社会の創造に向けたデジタルシフト支援

発表会の最後を、今井は次のようなメッセージで発表を締めくくった。

今井「今、アフターコロナに向けてどんなサービスを行っていくかということがよく議論されています。新型コロナウイルスによって日本経済が受けた打撃は、非常に大きなものがあります。倒産、失業増加、イベント自粛、そういう意味では、経済のマイナス成長がますます続いていく。これをどう止めていくかは、日本の企業の大きな課題だと思います。経済復興に向けて、ソフトバンクが企業の皆さまをご支援していきたい。

ソフトバンクは、新型コロナウイルスに対応するサービスの提供だけではなく、日本が従前から抱えている大きな課題についても取り組んでます。世界の中で一番進んでいる高齢化。労働人口が減少し、次の生産性を生み出す労働力も作り上げていかなければなりません。
これは、今までの仕事の仕方をガラッと変えて、企業のDXを早期に実現しなければならない。働き方改革だったり、低コストでデジタル化がきちんとなされていくかを診断する仕組みや、業務が完全自動化されていくような仕組み、サプライチェーンもどんどん高度化していかなきゃいけません。
経済復興・持続可能な社会の創造に向けて、やはりテクノロジーを活用してソリューションを作り上げていく、解決策を提供していく。今までは事業成長のためにいろんなテクノロジーを活用して参りました。でもやはり、社会課題を解決していくために企業の存在はあり得ると思っています。そういったことをソフトバンクは真剣に取り組んでいきたいと、そう思っています。

こうした社会のさまざまな課題を、アフターコロナにおける企業のDXとして、ソフトバンクはご支援していきたいと思っています。」