IoT化されたキャンパスは、学生とともに成長する

東洋大学情報連携学部(INIAD):後編

IoT化されたキャンパスは、学生とともに成長する

(2017年12月12日掲載)

赤羽台にあるINIADのキャンパスは、坂村学部長の総合デザインと建築家の隈 研吾氏による外観デザインによるものだ。ものづくりの現場で利用されているような、プロユースの加工機械などが用意されているほか、学生たちは、プログラミングを学習し、このキャンパス内のIoTデバイスを自由にコントロールして実習を行うことができる。「IoTビルの機能を学生たち自身の手で作り上げてもらう。学生とIoTビルがともに成長していくのが理想」と坂村氏は、学生たちが学び、それを体現するフィールドとしてこのキャンパスを位置付けている。以下では、INIADキャンパスの主な施設を紹介する。

連携を強化する少人数教育の場

INIADの教育の拠点となるのは、床面積約1万9,000㎡の「INIAD Hub-1」。従来の日本の大学では、学生に知識を伝える講義が主流で、多くの学生を収容できる大教室が効率的とされていた。一方、「連携」を重視するINIADは、少人数教育を前提として施設、設備を設計。一方的な講義はネットで受講してきて、教室では教師と学生、学生同士が討論を行う対話中心の授業、手を動かす実習を中心に据えている。教室には、ホワイトボードも黒板もなく、必要な講義資料はプロジェクタで壁に投影。教師は学生のPCの画面を常時見られるようになっている。

東洋大学情報連携学部(INIAD)キャンパス

かざすだけで使える交通系ICカード

交通系ICカードを入退室やロッカーの開閉などの個人認証に利用。デジタルサイネージ脇のICカードリーダーにカードをかざすと、自分の時間割などを表示することもできる。交通系ICカードを使うのは、ユニークな個体識別番号があり、しかもローコストに利用できるため。坂村学部長は、2020年に向けて、海外からの訪日客をおもてなしするための取り組みも進めているが、そこでも、この技術を使っている。

交通系ICカードで個人認証をおこなう

プロのものづくりを体感できる「INIAD Makers’ Hub」

INIADは、プログラミングなどのソフトウェア面だけでなく、ハードウェア、つまりものづくりも重視している。その象徴ともいえる施設が「INIAD Makers’ Hub(メイカーズハブ)」である。ものづくりに取り組む人々(Makers)の活動を支援するため、実際にビジネスで利用されるものと同等の設備、サポート用専任のスタッフが置かれている。写真は3Dプリンタ、3Dスキャナ、3D切削加工機、レーザカッター、カッティングブロッタ、真空形成機など。また、デジタルマルチメータ、オシロスコープなど、各種計測機器も用意されている。INIADの表示板や看板などは、これらの機材を利用して自作されている。

プロのものづくりを体感できる「INIAD Makers’ Hub」

ARを応用した表示・案内システム

エレベーターホール、廊下などに設置されているフロア案内にも秘密がある。スマホやタブレットをかざして、画面にフロア案内を表示させると、現在地や目的地までのルートをナビゲーションしてくれたりする。AR(Augmented Reality:拡張現実)を応用した仕組みだ。さらに、目的地への移動を開始すると、天井のプロジェクタから廊下や壁に「→→→」の道案内が実際に表示。目的地のドアの前に立つと目的地を示す表示が現れる。こうした仕組みが学生たちにヒントと刺激を与え、さらに新しいサービスが生まれることを期待しているのだ。

ARを応用した表示・案内システム

各種センサーを自由に追加、交換できる

INIAD Hub1の天井は、ケーブルなどがむき出しの状態だが、これにも理由がある。カメラやセンサー、アクチュエータなど、さまざまなデバイスを交換したり、新しいデバイスを追加したりする際の工数を削減するためだ。むき出しにしておくことで、いつでも手軽に、最新のデバイス、センサー類を設置でき、手間をかけずに、学生たちに新しいチャレンジの「ネタ」を提供できる。

各種センサーを自由に追加、交換できる

「本のない図書館」が象徴するもの

INIADで徹底されていることの1つが「ペーパレス」である。それを象徴しているのが図書館だ。約100万冊の蔵書はすべてデジタル化されている。あえて設置された空っぽの図書棚が「未来の図書館」を想起させる。同様に、張り紙などをなくすために、室内表示、各種案内は、天井のポイントプロジェクタによって壁に投影されるようになっている。医務室、学生相談室の前など、通常ならお知らせの貼り紙が目立つ空間でも、INIADの場合は紙がなくすっきり。大学のキャンパスに限らず、今後は病院や公共施設などでも、こうした提案が増えていくのかもしれない。

「本のない図書館」が象徴するもの

坂村 健氏を学部長に迎えたとあって、開学前から大きな関心を集めていたINIAD。その内容は、坂村氏が「世界最先端のIoTビル」と呼ぶキャンパス、共通言語としてのプログラミング、多様性と連携を重視したカリキュラムなど、従来の学問とは一線を画すものだ。学問として体系的に新しいテクノロジーや連携を学んだ人材が、将来、どんなイノベーションを私たちに提示してくれるのか、今からその時が待ち遠しい。

 

世界最先端のIoTキャンパスで産声をあげた「文・芸・理」の連携教育の可能性 東洋大学情報連携学部(INIAD)
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東洋大学情報連携学部(INIAD)
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