【実証実験】5G通信×建設機械自律制御で建設現場の業務効率化を目指す

【実証実験】5G通信×建設機械自律制御で建設現場の業務効率化を目指す

  • 大成建設とソフトバンクが共同実験を実施
  • 可搬型機器を用いて特定の場所にプライベートな5Gネットワークを構築できる「おでかけ5G(ソフトバンクが提供する5G基地局、5G端末、コア設備、コンピューティング設備を含めた可搬型5G基地局ソリューションの総称)」を活用
  • 三重県桑名市での実証実験の様子を動画で紹介

5G商用化を直前に控え、物流や医療などさまざまな分野で5Gを使った実証実験が行われている。建設業界でも建設現場の業務効率化を目的とした実証実験が行われており、大手ゼネコンの大成建設は、ソフトバンクと共同で5G通信による建設機械の無人化施工を検証している。今回は大成建設で建設ICT(建設工事の全行程をインターネットやモバイル端末といった情報処理技術・デバイスを活用し業務効率化や品質向上を測るシステム)の研究に取り組む青木氏に本実証実験について話をうかがった。

青木 浩章 氏

大成建設株式会社
技術センター
生産技術開発部 スマート技術開発室
メカトロニクスチーム
チームリーダー
1996年大成建設入社。シールド・トンネル・ダム・下水道などの土木工事や、雲仙普賢岳の無人化施工などを担当し、2016年から現職となり建設ICTに関する開発を行う。

今回の実証実験を行った背景をお聞かせください

青木:

当社で開発した「T-iROBO」という無線通信での遠隔操作と自律制御が可能なロボットシステムがあります。無線を使って制御信号を伝送することで遠隔地からのコントロールを可能にしています。無線通信にはWi-Fiを使用しており、安価に設置できるというメリットはありますが、広い工事現場に多数のWi-Fi機器を設置する必要があったり、Wi-Fi機器の故障などで通信が不安定になり建設機械の遠隔操作に支障が出たりすることがありました。そのためWi-Fiに代わって建設現場でも安定的に通信できる無線が必要だと感じていました。

具体的にどのような実証実験を行ったのですか

青木:

実証実験は2回に渡り実施しました。1回目はソフトバンクの本社(東京・汐留)から赤坂に設置したサイバー現場(PCのソフトウェア内に設置された仮想の現場)の画像伝送とサイバー現場に配置した建設機械の操作をモバイルデータ通信である4G LTEと5Gそれぞれで行い、通信速度と遅延時間を比較しました。その結果、5Gは4G LTEに比べ通信速度は10倍、逆に遅延時間は10分の1となり、これならWi-Fiに代わる無線通信手段として5Gが使えるのではと考えました。
2回目は実際の現場と環境が近い屋外の実験場で行いましたが、それを実現したのがソフトバンクの「おでかけ5G」でした。三重県桑名市の実験場に基地局(アンテナ)、コア装置、5G端末といった5Gネットワーク構築に必要な機器を搬送し、現場周辺だけの閉域な5Gネットワークを構築してもらいました。閉域なので外部からネットワーク内にアクセスされる心配もなくセキュリティも担保できていました。検証したことは、現場と環境が近い実験場でサイバー現場と同様の通信パフォーマンスを出せるかでした。具体的には「T-iROBO」による遠隔操作が可能なバックホウ(ショベルカー)とクローラダンプに高解像度カメラと5G端末を設置し、カメラの高画質な映像の伝送と操作室からこれら建設機械を遠隔操作と自律制御するための信号伝送を実施しました。

実証実験概要図

現場での「おでかけ5G」のパフォーマンスはいかがでしたか

青木:

サイバー現場同等のパフォーマンスが得られました。バックホウが掘削した土砂をクローラダンプへ積載し、クローラダンプがその土砂を積んで時速8Km/hで現場内を移動し所定の場所で排土する、という一連の流れを無人化し、基地局から50~100メートル離れた場所で作業させましたが全く問題ありませんでした。操作室ではカメラの高画質な映像をモニタリングでき、自律制御の信号もリアルタイムに伝送できました。また、100~200メートルのエリアをカバーするための機器がWi-Fiの場合は数台必要ですが、5Gは見晴らしの良い高所といった5G通信条件の良い場所に基地局を1機設置するだけで現場全体をまかなえそうだと感じました。さらに電波についてはWi-Fiよりも5Gの方が指向性が強く、広い範囲を移動するクローラダンプや車体が旋回して5G端末の向きが変わるバックホウには向いていないのではないかという懸念がありましたが、Massive MIMO(マッシブ マイモ)といった技術によりビームフォーミング(電波を特定エリアに集中的に出力し通信速度を高めたり、電波をより遠くへ飛ばせるようにする技術)することで、建設現場で動き回る建設機械でも安定した通信ができると実感しました。

5Gを使った今後の取り組みをお聞かせください

青木:

山間のダムや長距離トンネルといった土木工事現場での実証実験を考えています。土木工事は道路や電気や上下水道といったインフラが整備されていない場所が多く、最初にそれらを整備してから工事がスタートします。昨今の建設業界ではICTを活用し建設現場の生産性向上を目指すi-Constructionが推進されていますので、5Gのような高品質な通信インフラの整備も必要です。高セキュリティ性を担保した企業専用の5Gネットワークを屋外でも簡単に構築できる「おでかけ5G」が最適解になるのではないかと思っています。

■後記

建設現場での業務効率化というと、建設機械の遠隔操作を思い浮かべる人が多いだろう。それにより、一人の作業員が移動することなく複数の現場で作業できるようになり業務効率化が図れるかもしれないが、同時に動かせる建設機械は1台だけのため省人化には繋がりにくい。しかもモニター映像を見ながらの操作になるため遠近感をつかみにくく現場特有の音も聞くことができないため操作は難しいという。今回の青木氏の取り組みは、建設機械による作業そのものは無人化し、人はソフトウェア上のスタートボタンと不具合が発生した際の緊急停止ボタンをクリックするだけというもので、一人が複数台の建設機械を監視できるようにすることで省人化を実現するというものだ。そのために必要な5Gネットワークを手軽にかつ閉域で構築できる「おでかけ5G」は近い将来建設業界のスタンダードになるだろう。

 

取材日:2019年3月15日

関連リンク

ソフトバンクの5G×IoTについて
https://www.softbank.jp/biz/5g/