5Gでアップデートする「道路」。スマートハイウェイが日本のインフラ老朽化を解決

5Gでアップデートする「道路」。スマートハイウェイが日本のインフラ老朽化を解決

  • 日本の道路、橋、トンネルは老朽化が深刻な問題に
  • IoT×5Gで橋の振動データを送り、健全性を監視
  • 公共インフラ、移動体、あらゆるものを5Gがつなぐ「移動」の未来

日本の道路や橋、トンネルの老朽化は、もはや待ったなしの状態だ。一方で、MaaSなどの新しい移動の概念が生まれるにあたり、道路などの公共インフラに求められる役割が変わりつつある。道路はICTによってどのように生まれ変わるのか。

ソフトバンクは5Gを活用したスマートハイウェイの構想を打ち出し、2019年1月から3月の期間、実証実験を行った。同プロジェクトを担当したソフトバンクの田島裕輔氏と、パートナーとして参画したパシフィックコンサルタンツの中澤治郎氏に話を伺った。

中澤 治郎

中澤 治郎

パシフィックコンサルタンツ株式会社
交通基盤事業本部 インフラマネジメント部 橋梁保全室長
田島 裕輔

田島 裕輔

ソフトバンク株式会社
先端技術開発本部 先端事業企画部 5G試験課長

かつてインフラ先進国だった日本の現状

日本では1950年代半ばからはじまった高度経済成長期に、公共インフラの建設ラッシュが起こった。道路や橋などの公共インフラの寿命は約50年と言われ、2019年の今、老朽化が問題視されている。

例えば、日本国内には橋梁が約73万本存在する。このうち建設からすでに50年間を経過した橋梁は約25%に達し(2018年時点)、10年後の2028年には約50%に急増するという(出典:国土交通省道路局『道路メンテナンス年報』)。

社会インフラサービスの計画・調査・設計・管理を行うパシフィックコンサルタンツ株式会社の中澤治郎氏は、日本の道路の問題点について次のように話す。

「橋梁やトンネルなどは、5年に1回を目安に、技術者が手作業で触診や打音での検査をしています。しかし1990年代から公共事業の数が減り、それに伴って就業者数も減少傾向にある日本では、検査をする土木技術者の数が足りていません。

ドローン、ロボティクス、AIなど、テクノロジーを用いた新たな検査手法を見出し、ただちにそこへ投資していかなければ、公共インフラの老朽化は加速するばかりです」(パシフィックコンサルタンツ・中澤氏)

そんななか、今年4月、ソフトバンクは「5Gを用いたスマートハイウェイの実現に向けた実証実験」について発表した。愛知県内にある有料道路にカメラやセンサを設置し、それらのデータを5Gの通信ネットワークを介して迅速かつ効率的に収集。さらにはAIデータ解析によって、さまざまな運用管理情報を道路管理会社に提供していく、というものだ。

同プロジェクトには、パシフィックコンサルタンツも参画。ソフトバンクが5Gの通信やAIなどのICTに関する技術を提供し、パシフィックコンサルタンツは公共インフラに関する知見を提供した。

5G×IoTが実現する「橋梁の健全性監視」

実証実験の1つでは、橋桁・橋脚に加速度センサを設置。複数のポイントで計測した振動データを5G回線で収集する。振動データを監視することで、橋の異常を遠隔地から検知できる。将来的には、多くの工数をかけることなく、日常的に橋梁の状態を監視できるようになるかもしれない。

「橋梁の健全性監視」を実現できた背景には、1つの基地局への「多数同時接続」を可能とする「5Gネットワーク」がある。

「第4世代と言われているLTEのIoTネットワーク向けの通信規格はNB-IoT(Narrow Band IoT)と言われる規格ですが、橋梁に設置された加速度センサから取得するデータの量はIoTデバイスとしては非常に大きく、NB-IoTではなかなか能力が伴いませんでした。

今回の実証実験では5GのIoTネットワーク向けの通信規格として、『5G-mMTC』という無線機を試作開発しています。この取り組みは『5G-mMTC』を『5G時代のIoT規格』として適用していくユースケースになるかもしれません」(ソフトバンク・田島氏)

実証実験のパートナー企業として参画し「橋梁の健全性監視」に注力してきた中澤氏も次のように話す。

「5Gには可能性を感じています。かねてから当社でも健全性監視に取り組んできました。しかし、橋のデータを収集するためには、手作業でセンサの中のメモリカードを取り外さなければなりませんでした。

5Gネットワークを利用すれば、多数のIoTデータを、リアルタイムで、かつ容易にクラウド上へ収集できます。道路管理者や土木技術者の工数軽減や安全性確保はもちろんですが、最終的には道路利用者に健全なサービスを提供できるよう、この取り組みを進化させていきたいです」(パシフィックコンサルタンツ・中澤氏)

あらゆる道路をスマート化し、日本の公共インフラを次のステージへ

実証実験ではIoT(加速度センサ)による「橋梁の健全性監視」のほか、2つの取り組みを実施した。

  • AI(人工知能)によるインターチェンジ監視

ソフトバンクが開発した「おでかけ5G」をインターチェンジに配置。「おでかけ5G」の大容量通信を用いた高精細な4K映像の伝送と、MEC(Mobile Edge Computing)サーバによるAI画像解析を行い、ヘルメット、角材、タイヤなどの落下物や逆走車を検出する。高精細な4K映像を解析した結果、HD画質では検出できない小さな物体をAIで検出でき、パトロール員の安全監視の効率化や見落とし低減などへの活用が期待される。

  • IoTによる渋滞監視

IoT無線技術とソーラーバッテリーを活用した簡易トラフィックカウンターを知多半島道路の5ヵ所に設置し、渋滞の検出精度を向上させる。特定地点の渋滞発生を検出できたことに加え、従来と比べて渋滞の長さをより精細に検知できることを確認。ドライバーに対して、より正確な渋滞情報を、より迅速に提供することができるようになると期待される。

ソフトバンクの田島氏は、スマートハイウェイの意義について次のように解説する。

「数々の課題を抱えている道路インフラの世界で、5Gという新たな通信方式をベースにしながら、道路の先進化・高度化を実現したい。そんな思いから私たちは『スマートハイウェイ』を構想しました。

工場をIoT化し、サプライチェーン全体を管理する『スマートファクトリー』という概念がありますが、それと同様の世界が『道路』の世界にも到来します。

今回は愛知県内を対象に3つの実証実験を行いましたが、今後もスマートハイウェイ化の推進に取り組んでいきたいと思います」(ソフトバンク・田島氏)

5Gが描く移動の未来

スマートハイウェイの取り組みは5Gと道路を対象としたものであり「移動」という意味では、道路はその1つにすぎない。今後の展望について、田島氏は次のように語った。

「例えば、自動運転技術が今よりもっと進んだとき、道路はどんな姿になっているでしょうか。もしかしたら交通標識なんてなくなっていて、必要な道路情報のデータが自動車へ転送され、自動運転してくれる。そんな未来になっているかもしれません。そうした世の中に少しでも近づけるよう『スマートハイウェイ』の実証実験を通じ、道路の側から人や自動車にどんな情報を出せるのか、今後も検証を進めていきたいです」

道路、自動車、そして目的地となる街。それぞれがIoT化し、5G回線でつながったとき、これまでとはまったく異なる交通の形が生まれるだろう。そしてそのとき、道路に求められる機能も異なるものになっているに違いない。

田島氏は最後に、社会的にも関心が集まる5Gの可能性について次のように述べた。

「5Gという新しい通信方式では『低遅延』『多数同時接続』『大容量』という新しい3つの要素が加わりました。それらをベースとして、どんな新しいことをできるのかを考えるのが我々のチームの役割です。スマートハイウェイの取り組みのみならず、さまざまな業種の方から関心を寄せてられています。これまで想像もしていなかった領域にまで5Gの可能性を拡げていきたいです」

後記

実用化が近づく5Gのもたらす未来。都市のあらゆるものがIoTでつながり、ビッグデータが生まれる。今回紹介したスマートハイウェイは5Gがもたらすイノベーションの一例である。道路から取得したデータはインフラの老朽化だけでなく、私たちの移動に関するさまざまなサービスに利用が可能だ。2020年より徐々に社会実装が開始されていく5G。それはそう遠くない未来の話だろう。

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