実証実験都市、大阪から始まる5Gビジネスの未来

"TOWARDS EXPO 2025 OSAKA , KANSAI 5G X LAB OSAKAレポート 前編"

(2020年11月18日 掲載)

  • 2020年10月、大阪市「ソフト産業プラザTEQS」内に「5G X LAB OSAKA(ファイブジー・クロス・ラボ・オオサカ)」がオープン
  • 「5G X LAB OSAKA」は大阪市、AIDOR共同体(公益財団法人大阪産業局、一般社団法人i-RooBO Network Forum)、ソフトバンクが官民連携で運営
  • 2025年大阪・関西万博を控え、5Gによる新たなビジネスの創出を目論む

いよいよ本格スタートした5Gによって、新しいビジネスの芽が生まれようとしている。5Gによって何ができるのか、どう変わるのか。それをいち早く知ることが、これからのビジネスを考える上で重要になっていくだろう。

ソフトバンクではこれまでも東京の汐留や台場に「5G×IoT Studio」の展示・体験ルームを開設し、5Gの技術検証や5Gを使った最新テクノロジーを体験できる場を提供してきた。

今回、より多くの企業に5Gを体験、活用する機会を提供することを目指して、2020年10月に大阪市の「ソフト産業プラザTEQS」内に「5G X LAB OSAKA」をオープン。特徴的なのは、大阪市、AIDOR共同体(公益財団法人大阪産業局、一般社団法人i-RooBO Network Forum)、ソフトバンクが官民連携で運営していることだ。

この3者がタッグを組んだ狙いとは。そして、どのようにして大阪発の5Gビジネスを生み出そうとしているのか。大阪市、大阪産業局、ソフトバンクの担当者に話を聞いた。

プロフィール

大阪市経済戦略局 立地交流推進部 事業創出担当 課長 吉川 義一氏

吉川 義一氏

大阪市経済戦略局
立地交流推進部 事業創出担当 課長
大阪市経済戦略局 立地交流推進部 事業創出担当 係長 森岡 悟氏

森岡 悟氏

大阪市経済戦略局
立地交流推進部 事業創出担当 係長
公益財団法人大阪産業局 ソフト産業プラザ TEQS  IoT・RTビジネス推進部 部長/チーフプロデューサー 手嶋 耕平氏

手嶋 耕平氏

公益財団法人大阪産業局 ソフト産業プラザ TEQS
IoT・RTビジネス推進部 部長/チーフプロデューサー
公益財団法人大阪産業局 ソフト産業プラザ TEQS プロジェクトリーダー/AIDORエクスペリメンテーション担当/専門コーディネーター 松出 晶子氏

松出 晶子氏

公益財団法人大阪産業局 ソフト産業プラザ TEQS
プロジェクトリーダー/
AIDORエクスペリメンテーション担当/
専門コーディネーター
ソフトバンク株式会社 法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルオートメーション事業第2統括部 法人5G推進室 パートナー企画課 小林 正和氏

小林 正和

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルオートメーション事業第2統括部 法人5G推進室 パートナー企画課

大阪の産業を強くし、大阪発ビジネスを創出する

大手家電メーカが大阪に拠点を置いていた背景もあり、機械部品の製造などを行う中小企業が多いという大阪市。海外からの安価な製品の流入により業界勢力図が変わってからも、多くの中小企業は独自の技術を磨きながら時代の変化に対応してきた。

そんな中、大阪市が近年力を入れている分野の1つが、ロボット産業をはじめとするテクノロジービジネスだという。

「大阪市では15年ほど前からロボット産業振興の取り組みを進めてきました。ロボット産業は裾野の広い産業。大阪には多種多様な業種の中小企業があり、ロボット産業で強みを発揮できる事業者さんがたくさんいらっしゃるため、市として注力してきました」(大阪市・吉川氏)

こうした取り組みの一環として、大阪市の委託を受けてテクノロジービジネスの支援を行っているのが「AIDOR共同体」。構成するのは、大阪産業局とi-RooBO Network Forum * だ。

*ロボットテクノロジーによる社会課題解決を目的とする一般社団法人

「AIDOR共同体」が運営する「ソフト産業プラザTEQS」では、テクノロジーを用いたビジネス支援、インキュベーションオフィスの提供、実証実験フィールドの提供、IoTに特化した新規事業創出のためのアクセラレータプログラムなどを積極的に行ってきた。

「『ソフト産業プラザTEQS』はテクノロジービジネスの支援拠点というコンセプトで運営しています。ビジネスを作るところから育てるところ、そしてPoCからサービスインまでをワンストップで支援しています。数にして年間約50チーム程度をプロジェクトサポートという形で個別対応しています」(大阪産業局・松出氏)

大阪市がテクノロジービジネスの創出に力を入れる背景には、産業を強くするという狙いがある。新型コロナウイルスの流行によってさまざまな業界でIT化が遅れていることがあらためて露呈したことに加え、従来からの人材不足や技術継承といった課題の解決策として、IoTやロボット技術などのテクノロジーの活用が期待されている。

さらに、2025年には大阪・関西万博が開催される。

「大阪・関西万博のコンセプトは『未来社会の実験場』。先端技術の活用はメインテーマになってくるでしょうから、未来社会を想定した新しい技術、サービスを万博に向けて創出していくことは、大阪市としての今の大きな目標です。大阪発のコアコンテンツを発信していきたいと考えています」(大阪市・吉川氏)

官民一体となって生まれた「5G X LAB OSAKA」

大阪発の新しいテクノロジービジネスの創出を加速させていく。こうした思いから生まれたのが、2020年10月に「ソフト産業プラザTEQS」内にオープンした「5G X LAB OSAKA」だ。

5G X LAB OSAKA

「5G X LAB OSAKA」では、5Gの技術検証ができるトライアル環境を提供しているほか、5Gを活用した最新の機器、サービスのデモンストレーションを展示。製造業、建設業、小売業、放送業、地域向けなどのさまざまな業界に向けた5Gを活用したソリューションを体験し、一歩先の未来をのぞくことができる。

では、なぜ今回、大阪市、AIDOR共同体、ソフトバンクの3者による共同運営に至ったのか。また、「5G X LAB OSAKA」にどんな期待をしているのか。3者は次のように話す。

「これまでテクノロジーを活用した事業の創出を支援してきましたが、行政だけではやはり限界があります。そこで、ソフトバンクさんと組んで、技術やネットワーク、ノウハウを一緒に活用していくことができれば、より大阪のテクノロジービジネスを活性化できるだろうと考えました。

『5G X LAB OSAKA』を多くの企業に使いたおしてもらって、オンリーワンの技術を生かした新しい5Gビジネスを創出していってほしいですね」(大阪市・吉川氏)

「今はさまざまな業界で人手不足が課題になっていますが、ソフトバンクとしては5Gを活用してこの課題を解決していきたいと考えています。しかし、ビジネスを生み出すには業界を熟知したパートナーが必要です。

これまでも汐留に『5G×IoT Studio』の展示・体験ルームを開設して、さまざまな業界のお客さまと5Gの新サービスを作る取り組みをしてきました。大阪市がものづくりに強い中小企業やスタートアップを支援していると伺ったことが契機となり、ぜひ一緒に取り組んでいこうと協定を結び、『5G X LAB OSAKA』の開設につながりました。

ソフトバンクからは5Gに関するテクニカルな相談にのることで技術やノウハウを提供し、逆に大阪市さま、大阪産業局さまと組むことで、ビジネス支援のノウハウを学ばせてもらいたいと思っています。大阪産業局さまが支援しているスタートアップ企業とも、今後アライアンスを組んでいきたいですね」(ソフトバンク・小林)

「5Gは数年後には社会に欠かせない通信インフラとなります。だったら、事業開発は少しでも早く取り組んだほうがいい。今はAIやクラウドも手軽に使えるようになり、開発のハードルも下がっていますし、起業もしやすい環境になっています。『5G X LAB OSAKA』が出来たことで、テクノロジービジネスに取り組みたい企業さんにとっては大きなメリットになると期待しています」(大阪産業局・手嶋氏)

大阪から世界へ。新ビジネスの実験場を目指す

「5G X LAB OSAKA」オープン後、すでに多くの企業が視察に訪れ、早速ラボの活用を検討しているスタートアップもあるという。また、「5G X LAB OSAKA」の展示においても「ソフト産業プラザTEQS」が支援しているスタートアップ企業のブースも設置されている。今後、このラボから、大阪発の新しいビジネスが次々と生まれていくに違いない。

「TEQS」に入居する株式会社デナリパムによる等身大のコミュニケーションデバイス「デナポータル」
「TEQS」に入居する株式会社デナリパムによる「5G X LAB OSAKA」での展示。等身大のコミュニケーションデバイス「デナポータル」。

「TEQS」主催のアクセラレータプログラムを修了したKYOTO’S 3D STUDIO株式会社による伝統的な建築物や文化財の3Dコンテンツ
「TEQS」主催のアクセラレータプログラムを修了したKYOTO’S 3D STUDIO株式会社による展示。伝統的な建築物や文化財の3Dコンテンツを楽しむことができる。

「大阪・関西万博が開かれる2025年には5Gが広く普及していることが予想され、もちろん万博会場も5Gエリアになります。万博ではさらにその先の未来を伝えるパビリオンが展示されますから、ソフトバンクとしても大阪生まれの新サービス、新製品の展示に向けたお手伝いをしていきたいと考えています」(ソフトバンク・小林)

「企業の皆さんと話すときに、2025年と期限が明示されていることでプロセスを具体化して開発を進めていけるという声がありました。いつかではなく、2025年。世界に向けて発信できる場があるので、企業の皆さんには最大限に『5G X LAB OSAKA』を有効活用してもらいたいですね」(大阪市・森岡氏)

「大阪・関西万博に向けて新しいビジネスを生み出すことはもちろん、万博のあとも、生まれたサービスを社会に実装するための取り組みは続いていきます。我々としては長期的にテクノロジービジネス創出のサポートを続けていきたいと考えています。

そのために必要なのが実証実験を行う場。大阪産業局では以前から実証実験の支援をしており、『ソフト産業プラザTEQS』が入っているATCという施設全体、さらには周辺のスポーツ施設も含めて、実証実験フィールドとして提供しています。ATCは平日と休日で来館者の数や属性が変わるので比較実験もしやすく、いい意味で実験し放題です。『5G X LAB OSAKA』と合わせて活用していただき、新しいビジネス創出につなげてもらいたいですね」(大阪産業局・松出氏)

2025年の大阪・関西万博、そしてさらにその先の未来に向けて、大阪発の新しいビジネスから目が離せない。

編集後記

テクノロジーの社会実装のために欠かせない実証実験だが、一方で実証実験を行うにはさまざまな制約がつきものだ。万博を控える大阪では街をあげて実証実験の場を提供しており、その5Gにおける実証実験からサービスインまで一気通貫で支援を受けられる場が「5G X LAB OSAKA」だ。これから大阪からどのような5Gビジネスが生まれるのか。後編では、「5G X LAB OSAKA」の注目の展示内容を紹介する。

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