(2020年1月7日掲載)
ソフトバンク株式会社の鈴木 岳彦です。
Alibaba Cloud は中国のアリババグループ(NYSE:BABA)の事業部門としてグローバルのお客様のオンラインビジネスとアリババグループのEコマースのエコシステムに対応するクラウドコンピューティングサービスを提供しています。
一言で言うと中国に強いAlibaba Cloud、誤解を恐れずに言えば中国に関しては他社クラウドにない圧倒的な強みを持つAlibaba Cloud について、“日本と中国をつなぐ”をテーマに計6つのソリューションを紹介します。
前編では“1.日本のコンテンツを中国に配信する”について、後編では”2.日本と中国をネットワークで接続する”以降が対象となります。
目次
1. 日本のコンテンツを中国に配信する
まず初めにコンテンツ配信の例をあげます。
- 日本の商品やサービスを紹介するWebサイトを中国全土に配信する
- ゲームコンテンツを中国全土に配信する
- スポーツやアミューズメントなどのライブ映像を中国全土にストリーミングする
日本にあるコンテンツを中国全土の14億に迫る人々(日本の10倍超の市場!)に届けるということです。
また、コンテンツについて情報システムの観点で分類し、それぞれに最適な配信手法を考える必要があります。
- 静的コンテンツ(HTMLや画像ファイルなど)
- 動的コンテンツ(ゲームや検索システムなど応答内容が状況により変動するもの)
- ライブストリーミング(動画、音声などのライブ映像)
詳細は後述しますが、静的コンテンツにはAlibaba Cloud CDN を、動的コンテンツにはDynamic route for CDN を、ライブストリーミングはApsaraVideoLive とAlibaba Cloud では全方位に対応可能なプロダクトを提供しています。
上記の静的・動的・ライブストリーミングという区分に加えて、データの機密性・完全性・可用性もソリューション選定を考える中で重要な要因となります。 配信するコンテンツについて多少の誤差、例えば時系列的な誤差、が許容される場合はキャッシュテクノロジーを利用するCDNのアプローチを適用可能です。 一方、多少の誤差も許容されない場合はCDNの利用は不適で、トランザクションを処理するサーバとクライアントが常に通信し処理を進める必要があります。
それではAlibaba Cloud によるソリューションを紹介していきます。
1.1. Alibaba Cloud CDN による静的コンテンツの配信
Alibaba Cloud CDN を利用することで画像やHTMLファイルを中心とする静的コンテンツを中国全土に配信することが可能です。 1,200を超えるキャッシュノードと100Tbp の帯域幅により、中国全土のエンドユーザへの高速なコンテンツ配信を実現することが可能です。
Alibaba Cloud のCDN を利用するメリットを3点ほどご紹介します。
- パフォーマンス(ノード数&帯域)
- 日本法人がAlibaba Cloud を契約し、オンデマンド&従量課金 でCDN を利用可能
- 中国本土へのCDN 利用で必須となるICPに関するサポートをAlibaba Cloud が提供
Alibaba Cloud CDNは上記の3点以外にも様々な特徴を持っています。 以下の公式ドキュメントをご確認ください。
Alibaba Cloud 利点
1.2. Alibaba Cloud Dynamic route for CDN による動的コンテンツの配信
Alibaba Cloud Dynamic route for CDN (以下、DCDN) は動的コンテンツの高速化を実現するソリューションです。 DCDNは静的コンテンツと動的コンテンツを自動的に判別します。 静的コンテンツはクライアントに近いノードのキャッシュから配信し、動的コンテンツは直接オリジンサーバからコンテンツを取得します。この時、DCDNが持つノード間ネットワークの最短経路を利用することで動的コンテンツの応答を高速化します。
Dynamic route for CDN は静的コンテンツにも対応していますのでAlibaba Cloud CDN とどう使い分ければよいのか判断に迷うかもしれません。マトリックスにまとめてみました。DCDNはCDNの上位互換となり、基本はDCDNを利用するで問題ありません。 あえて言えば、静的・動的コンテンツを自動判別することを避けたい場合にCDNを使うことになるかもしれません。
項目 | Alibaba Cloud CDN | Alibaba Cloud Dyamic route for CDN |
---|---|---|
高速化の対象 | ・静的コンテンツ | ・静的コンテンツ ・動的コンテンツ |
高速化の方式 | ・ノードにキャッシュ ・クライアントは一番近いノードからコンテンツを取得 |
・静的コンテンツはAlibaba Cloud CDN と同じ動作 ・動的コンテンツはCDN網の最適ルートを経由しオリジンサーバからコンテンツを取得 |
オリジンサーバ側の対応 | ・静的コンテンツと動的コンテンツの明示的な分離が必要 | ・オリジン側で対応不要(DCDN側で自動判別) |
DCDNの利用シーンも併せて紹介します。
ECサイト | オンライン決済を高速化 |
---|---|
ソーシャルメディア | コメントやオーディオ・動画コンテンツを高速化 |
行政と企業 | 信頼性向上のためにDCDNを使用 (DDoSやCC攻撃に耐えうる落ちないサイト) |
ゲーム | ログイン、トランザクションが必要な処理(アイテム購入など)を高速化 |
1.3. Alibaba Cloud Global Acceration による通信経路の最適化
続いて紹介するのはAlibaba Cloud Global Acceleration (以下、GA)です。 GA を利用することで日本にあるオリジンサーバを中国本土のパブリックIPで公開することが可能となります。 例えると、中国側にNAT Gateway があって、日本のオリジンサーバをそのNAT Gateway で公開するという感じです。
静的コンテンツも動的コンテンツも対応するDCDN が提供されている中、このGA が有効活用出来るのはどのような場面となるのでしょうか? 例をいくつかあげます。
- コンテンツの一意性を求められるシステム・サービス
クライアントとサーバの通信経路およびその中で行われる制御を完全にコントロールしたいシステム・サービスとなります。DCDNは静的コンテンツと動的コンテンツを自動判別しますが、厳密なトランザクションが求められるシステムではそのような自動判別に頼るとシステムの安定動作が難しくなる場合があります。 また、良い意味で内部の制御がブラックボックスで短いスパンで機能向上(変化)していくDCDNを利用した場合、オリジンサーバ側のシステム・サービスで都度対応が必要となります。 - 日本と中国本土間の通信帯域を確保したいケース
DCDNと異なり、GAでは通信帯域を明示的に指定しプロダクトを購入します。 例えば10Mbpsの帯域を購入することが可能です。 この利点は業務要件に必要な帯域を予約し専有できるということです。
GAの利用がもっとも適しているのはゲームコンテンツと言えます。 日本にあるゲームを提供するオリジンサーバを簡単に中国に公開することが可能です。 この時、日本と中国間の通信帯域は確保されるためエンドユーザに快適なゲーム実行環境を提供することが可能となります。
1.4. Alibaba Cloud Live Streaming によるライブ映像の配信
コンテンツ配信の最後に紹介するソリューションはライブ映像の配信を実現するAlibaba Cloud ApsaraVideo Live です。
基本的な動作フローはCDNと近いものがありますが、ライブストリーミングに特化したプロダクトとなっています。 ApsaraVideo Live ならではの機能を以下にピックアップしています。
- ライブビデオキャプチャ
- ライブビデオ視聴
- ライブビデオ管理
- ライブビデオのセキュリティ
- データ統計
- コンソール管理
- API管理
詳細は以下の公式ドキュメントを確認してください。
ApsaraVideo Live 機能
1.5. コンテンツ配信のまとめ
「日本と中国をつなぐ」をテーマにコンテンツ配信を実現するAlibaba Cloud の4つのプロダクトを紹介しました。 ここでは利用シーン視点でまとめます。
利用シーン | CDN | DCDN | GA | ApsaraVideo Live |
---|---|---|---|---|
静的コンテンツ中心のWebサイト | ◎ | ◎ | ▲ | N/A |
動的コンテンツを含むWebサイト | ▲ | ◎ | 〇 | N/A |
一意性の管理が必要なWebサイト | ▲ | ▲ | ◎ | N/A |
HTTP/HTTPS以外のサービス | N/A | N/A | ◎ | RTMP/FLV/HLS |
帯域確保が必要なサービス | N/A | N/A | ◎ | N/A |
ライブ配信 | N/A | N/A | N/A | ◎ |
概要レベルの紹介ではありましたが考えうる利用シーンそれぞれに対応できるプロダクトをAlibaba Cloud は提供していることを紹介できたと思います。 もちろん、同様なサービスを他の事業者が提供していることもありますが、サーバ含めて一元的に提供できること、オンデマンドかつ従量課金で利用できること、そして日本で契約し日本円で利用できるという点はAlibaba Cloud の強みとなっていると考えます。
なお、ICPライセンスの考慮は4つのソリューションそれぞれで必要です。 CDNでもDCDNでもオリジンサーバが中国本土外にあり、例えば日本、コンテンツを中国本土に配信するという点でICPライセンスは必要です。 GAもApsaraVideoLiveも同様です。 Alibaba Cloud はICPに関する支援も対応します。中国展開を考えるお客様には非常に頼もしいクラウドサービスとなっています。
前編はここまでです。 “2.日本と中国をネットワークで接続する”は後編となります。
後編の目次
2.日本と中国をネットワークで接続する
2.1. Express Connect によるリージョン間接続
2.2. Cloud Enterprise Network によるリージョン間接続
3. まとめ
関連サービス
Alibaba Cloud
Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。→詳細はこちら