【後編】Alibaba Cloudがデータ分析に強い理由-日本での導入事例から見る特長

2021年4月14日掲載

世界3位のIaas市場シェアを持つAlibaba Cloud(アリババクラウド)。2017年には国際オリンピック委員会のクラウドサービスパートナーになるなど、あらゆるビジネスから注目を集めています。 前編では、Alibaba Cloudのデータ分析プロダクトが誕生した歴史や、それらのプロダクトが中国市場の成長とあわせてアップデートされてきた背景、そしてAlibaba Cloudの設計思想についてご紹介しました。

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後編では、プロダクトの特長を活かした日本市場でのケーススタディと、今後の展望についてお話します。

目次

  • 日本の大手企業さまに導入頂き、経営課題の解決にご活用いただいている
  • 次世代DWH「Hologres」をはじめ、グローバルで日々研究開発が行われている
  • 自らのビジネスで直面した課題を解決するという「ユーザー目線」を武器に、これからのデータ分析の領域を牽引していく

設計思想に基づくAlibaba Cloudの3つの特長

前編では、「Fast Data(ファストデータ)」「Live Data(ライブデータ)」「Intelligent Data(インテリジェントデータ)」という3つの設計思想についてご紹介しました。本編では、それらの設計思想に基づく3つの特長についてご紹介します。

1つ目の特長は「シームレス」であること。特に、「構築のしやすさ」と「データの結合のしやすさ」が大きな魅力です。また、マルチクラウドやハイブリッドクラウドの環境を前提にしており、他のクラウドやオンプレミスの環境ともシームレスに連携できる機能を備えています。

2つ目は、「無制限のスケーリング」が可能であること。分析の遅延や停止は業務効率を大きく下げることとなります。Alibaba Cloudはデータの種類や量にとらわれることなく「無制限のスケールアウト、スケールイン」で業務をサポート。止まらない、遅れないプラットフォームとして、ストレスなく利用することができます。

そして3つ目が「ユーザーのワークロード変動に応じて料金を支払う」仕組みであること。また複雑な初期構築が不要なので、イニシャルコストも最小限で事業をはじめることができます。ランニングコストは「必要な分だけ支払う」を掲げており、事業のサイズにアジャストして低コストに抑えることができるため、資金を逼迫させることなく、事業推進を図ることが可能となっています。

Alibaba Cloudの日本市場におけるケーススタディ

中国で生まれたAlibaba Cloudですが、日系企業さまにも数多くご利用頂いています。詳しくは「導入事例」ページをご参照ください。

Alibaba Cloudの特長の一つとして「データ結合のしやすさ」をご紹介しました。そのメリットを生かすことができたのが、観光業界での事例です。ビッグデータを活用し、観光サービスの効率化を目指すプロジェクトです。

同プロジェクトは人の流れを把握するため、ポイント型流動人口データagoopを利用していました。そこへ、Alibaba Cloudのデータ統合・連携基盤を活用。データ分析環境を提供することで、観光客の移動状況や混雑状況を可視化させることができました。既存システムとスマートに連携し、シームレスな環境を素早く提供できる、Alibaba Cloudならではのケーススタディでしょう。

〈データ分析プラットフォーム導入事例〉 〈データ分析プラットフォーム導入事例〉

もう一つ紹介したい事例は、データ活用基盤の最適化です。お客さまは、オンプレミス環境でデータ処理・分析基盤を運用していましたが、コスト面とIT部門のデータ準備作業に課題を抱えていました。

ペタバイトクラスのデータを扱っており、既存のデータウェアハウスはCPUとメモリが枯渇。特に夜間のバッチ処理が滞留していました。35%のコスト削減と90%の作業時間削減を目指し、Alibaba Cloudを導入。

「MaxCompute」で迅速かつ柔軟な拡張を可能にし、負荷を増大させていたデータマート群は「AnalyticDB」を提供することで、データ準備作業から解放しました。また、データ分析については「Quick BI」で不十分だった体制を改善させています このようにデータ収集から蓄積、処理、準備、分析まで全体のプロセスをカバー。人が行っていた作業を軽減し、既存データウェアハウスから新世代データレイクに環境を変えることで課題を解決しました。

グローバルで開発する次世代DWH「Hologres」

データ分析において多くの課題を解決してきたAlibaba Cloudですが、当然これからも進化が必要です。その一つが「Hologres」という、バッチ処理とリアルタイム処理を支える次世代データ分析プロダクトです。

〈「Hologres」のコンソール画面〉 〈「Hologres」のコンソール画面〉

最後に、ここまで解説した課題解決の背景や企業姿勢から生まれた、Alibaba Cloudの設計思想について説明します。3つの設計思想を順に紐解いていきましょう。

〈〈Alibaba Cloudのデータ分析プラットフォームの3つの設計思想〉〉 〈〈Alibaba Cloudのデータ分析プラットフォームの3つの設計思想〉〉

これはPostgreSQLと100%互換性を持つ次世代リアルタイム分析プラットフォームです。HSAPというアーキテクチャでバッチとリアルタイム処理をフルサポートしながら同時に数千以上のSQLクエリを処理できます。ペタバイトを超えるDWHに対する複雑なクエリでも1秒以内の返却を実現します。

「Hologres」はAWS S3などにあるデータをそのまま分析できるプラットフォームとして、マルチクラウド環境を前提に設計されてます。GCP BigQuery、snowflakeなどを意識し、グローバルで注力して開発が進められているさなかです。

現代ビジネスの発展に必要な”目線”

このようにAlibaba Cloudは、巨大で膨大な情報が飛び交う中国というマーケットを中心としながら、各事業で直面した課題の解決を繰り返して開発されてきました。そこで、一貫して考えられているのは「ユーザー目線でデータを生かすために、プラットフォームはどうあるべきか」です。

データから価値を生み出すことは現代ビジネスにおいて必要不可欠ですが、課題も多く残されています。Alibaba Cloudの「LiveData(データの鮮度が命)」、「FastData(リアルタイム処理+クイックスタート)」、「Intelligent Data(意思決定に有用なデータの提供)」といった設計思想や、それに由来する「マルチクラウド対応」、「データ結合のしやすさ」、「無制限スケーリング」、「ワークロードに合わせた料金」といった特長は全て、自らのビジネスで直面した課題の当事者(=ユーザー)の立場から考えられたもの。
試行錯誤の歴史と背景があり、そこで培った目線を反映させたプラットフォームだからこそ、Alibaba Cloudは選ばれているのです。

誰しもがインターネットに接続して、データのやり取りを行うデバイスを持っています。ネット上でのやり取りが主流となった現代、ビジネスを発展させる上でデータ分析は非常に重要でしょう。いかなるデータの種類や量でも分析できるプラットフォームとして、新たなクラウド文化を形成しています。

次回の記事では、どのようなシナリオでAlibaba Cloudが有効なのかについて、具体的に掘り下げていきたいと思います。

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サール バシル
(El Hadji Bassirou Sarr)

ソフトバンク株式会社
クラウドエンジニアリング本部 PaaSエンジニアリング統括部

ソフトバンクで10年以上のインフラ運用経験を経て、2016年よりSBクラウドの立ち上げから参画。ローカライズ、オペレーション&サポート、プロダクト企画開発などの責任者を歴任し、2018年より総勢約70名の多国籍チームである同社の技術部門のトップを務める。

大原 陽宣

ソフトバンク株式会社
クラウドエンジニアリング本部 PaaSエンジニアリング統括部

2019年からSBクラウドにJoin。収集、分散処理、ETL、検索、分析、機械学習基盤の構築、運用等を経て、現在分散系をメインとしたビッグデータとデータベースを得意・専門とするデータエンジニア。 Alibaba Cloud MVP。

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