遠隔医療システムの日本ー中国間接続にAlibaba Cloudが選ばれる理由

2021年7月15日掲載

前回のコラムでは、日本-中国間のネットワークにおけるよくある課題と、Alibaba Cloudを活用した解決策を紹介しました。

今回のコラムでは、医療業界における具体的なユースケースを紹介していきたいと思います。

目次

日本における遠隔医療の現状

世界中で新型コロナウウイルス感染症(COVID-19)の感染が広がる中、さまざまな業種でオンラインによるサービスが急速に拡大しました。 医療分野においても、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとして、診療のオンライン化など遠隔医療への注目が急速に高まっています。

日本の遠隔医療は、1997年 厚生労働省(当時 厚生省)が発行した「情報通信機器を用いた診療について」の通知をきっかけに本格的に取り組みがスタートしました。そして、法整備や通信技術の進化やスマートフォンなどの普及をきっかけに、現在では数多くのサービスが開発されています。

遠隔医療がもたらす効果には、高齢者など移動が困難な患者の負担軽減、専門医不足の解消など医師と患者が離れた場所にいながら診療を受けることができる、などがあります。 また、診療までの待ち時間の解消や、院内での感染リスクの低減なども、遠隔医療のメリットといえるでしょう。一方で、十分な検査や処置が困難な点や、遠隔医療のエビデンスが不足している点、医師及び患者のITリテラシーなどといった課題があることも事実です。 まだ始まったばかりの遠隔医療ですが、その未来には、5Gを活用した高画質な画像による診断や超低遅延のネットワークを生かした手術支援など、大きな期待が寄せられています。

Female doctor working with two computers for distance patient consultation and searching her health information from medical record system.

今回のコラムでは、オンラインで医師間のコミュニケーションを支援するサービスを提供しているお客さまを想定し、ユースケースを紹介します。

テレビ会議による医者と患者の双方向コミュニケーションや、患者データや静止画・動画の共有、手術映像のライブ伝送など、医療に携わる医師負担の軽減や地域医療へのサポートを目的としたサービスです。 今回、このサービスを国内にとどまらずグローバルへ拡大するにあたり、中国の医療機関提供する想定で、医療機関とシステムをつなぐネットワークとしてAlibaba Cloudを利用するケースを紹介します。

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中国展開における通信の課題と解決策

この遠隔医療システムは、インターネットを利用して国内の医療機関とシステム間を通信します。静止画や動画を共有しながら診断支援を行うことから、医療機関とシステム間の通信安定性はサービス品質において重要な要素となります。 当初、日本ー中国間もインターネットを用いて中国の医療機関とシステムの接続することを想定しておりましたが、通信が不安定になるという課題がありました。 また中国向けのサービス展開は初期段階ということもあり、できる限りコストを抑えて通信環境の整備を行いたいニーズがありました。

「通信安定性の改善」と「低コスト」の2つの課題に対する解決策として、今回Alibaba CloudのCloud Enterprise Network(CEN)を採用しました。CENは、Alibaba Cloudのリージョン間を結ぶグローバルネットワークです。CENの特長の一つとして、ネットワーク帯域幅を2Mbpsから購入できることから、利用状況にあわせて柔軟に増減速することができます。つまり、サービス開始直後はコストを抑えながら利用し、ユーザー数やトラフィックの増加にあわせて、帯域幅を調整するといった運用が可能です。特に、今回のようなこれからサービスを開始するお客さまにとって、初期コストを抑えた導入がしやすい製品です。

今回のケースでは、CENの他に中国リージョンにVPN Gatewayを構築し、中国の医療機関とAlibaba Cloud間をVPN接続するように設計しました。

〈構成イメージ〉 〈構成イメージ〉

これによって、中国国内はインターネットVPN、日本ー中国間はCENを経由した通信を実現します。Alibaba Cloud東京リージョンに設置したNATサーバを経由してインターネットへ抜けるため、従来の環境を変更することなくお客さまシステム及び、日本国内の医療機関と安定した通信を確立します。

さらに万一のインシデント発生に備えて、監視・運用代行サービスを導入しています。監視・運用サービスとは、お客さまのシステム基盤の監視と運用支援をソフトバンクが代行するサービスです。今回は、Alibaba Cloud上のサーバの死活監視やCEN帯域幅を監視を行う設定を追加し、システム基盤のインシデントや急激なトラフィックの増加によるサービス停止のリスク対策として導入をするに至りました。

日本ー中国間通信において重視すべき3つのポイント

日本ー中国の通信において、検討時によく重視されるポイントは ①通信の安定性 ②コスト ③運用・保守 の3つの観点です。

①、②はCENの特長であり、これまでも多くのお客さまへ導入実績のあるソリューションです。
③の運用・保守については、お客さま自身で実施される予定でしたが、今後もサービス開発に力を入れていきたいというご要望から、日本ー中国間のネットワーク基盤の運用をソフトバンクが代行することになりました。監視・運用サービスを導入いただくことにで、慣れないクラウド環境の運用や予測が難しいネットワーク利用状況の監視など、サービス開始後の運用負荷を軽減し、お客さまには安心してサービスの開発に集中いただくことが可能となります。

導入後はインターネット利用時と比較し、安定した通信により遠隔医療サービスの品質が改善することができました。またCENの帯域幅が柔軟に変更できるため、中国からの利用状況に応じて変更ができる点に、コスト面でも満足頂くことができました。

今回のコラムでは、遠隔医療サービスの日中間接続にAlibaba Cloudを採用いただいた事例を紹介しました。 Alibaba CloudのCENは、遠隔医療サービスに限らずさまざまな分野において、高品質、低コストなグローバルネットワークサービスとしてご利用いただけます。遠隔医療のような高い通信品質が求められるサービスにおいても、特に品質と柔軟性においてご満足頂くことができました。 今回運用面の不安においても、ソフトバンクの監視・運用代行サービスを導入頂くことで、慣れないクラウド基盤の運用を安心して行うことができるとお声を頂くことができました。

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Cloud SD-WANソリューション

監視・運用代行サービス

Alibaba Cloud

平松 秀章

ソフトバンク株式会社
クラウドエンジニアリング本部 PaaSエンジニアリング統括部

2020年9月にSBクラウドへ入社。プリセールス部に所属し、グローバルNWを中心にAlibaba Cloudの提案活動やサービス開発を行う。

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