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2020年5月19日掲載
中国アジアITライター・山谷剛史さんが、中国国内で話題になったITニュースをピックアップする連載企画です。今回は2020年3月~4月にリリースされた、中国の新型コロナウイルスに対するインターネットの新しいサービスについてまとめました。
新型コロナの脅威が落ち着き、消費活性化を狙い、電子商品券(中国語で消費券)配布が中国全土で配布され始めた。「阿里巴巴(アリババ)」系の「支付宝(アリペイ)」や、「騰訊(テンセント)」の「微信支付(ウィーチャットペイ)」、それに「美団」や「大衆点評」などでも取得できうようになった。つまり誰もがいつも使う定番のアプリで、消費振興の商品券を入手できるようになったわけだ。
3月26日に浙江省杭州でアリペイを通じて、1アカウントあたり10元チケットが5枚つづりの商品券を総計16億8000万元ばらまいたのを皮切りに、中国各地で地方政府主導で電子商品券の配布が行われている。5月も引き続き中国全土で配布が続く。
4月22日に「中国政府対新型コロナグループ」が新型コロナ検査(PCR検査)を進めると発表したことを受けて、後日ECサイトの「京東(JD、ジンドン)」、「アリババ」、「pin多多」などがそれぞれ医療機関と提携し、新型コロナのPCR検査サービス開始を発表した。例えばアリババの場合、傘下の阿里健康が担当し、被検者からの検査キット到着後24時間以内にチェックを完了し、ネットで回答するという。2月3月中にAIによるPCR検査は開発済みと報道されていて、AIによるチェックが行われると予想される。
中国での新型コロナウイルス抑え込みのノウハウを共有すべく、英語対応の特設サイトにアップし、それを世界各国の中国大使館が紹介する動きが見られた。
3月27日には、テンセントより「Together We Can”全球戦“疫”信息平台」がリリース。これまでテンセントが出してきた各種対新型コロナ向けサービスの英語版へのリンクが用意されている。
また4月23日には、「COVID-19 Graph - Knowledge Dashboard(知識疫図-全球新冠疫情智能駕駛艙)」というサイトが、中国ハイテク各社が参画した研究所「北京智源人工智能研究院数据開放研究中心」より、リリースされた。これは各国の新型コロナ感染者数や新型コロナニュースがビジュアルライズされ紹介されている。
オンライン教育のニーズに、政府や教育企業やネット企業出した教育アプリや、会議機能のついたアリババグループの「釘釘(DingTalk)」などのオフィスアプリの普及率が一気に高まった。さらに4月20日にはテンセントから、クラスの中での宿題プロセスに最適化された「騰訊宿題君」がリリースされた。
騰訊作業君は、クラスの中で利用するクローズドSNSの宿題アプリで、作文や英語の発音練習を含めた宿題の答え合わせもAIで対応してくれるため、教師の負担の減少が期待できる。もともとは有償のところを新型コロナ期間は無償にしているとし、学校ユーザーをとりこむことで、他のテンセントの学校向けのアプリを使わせようとしている。
EC大手の京東は4月15日、新型コロナ対策として、「助農(農村を助ける)」チャンネルをオープンした。さらに4月21日には、アリババのECサイト「天猫(Tmall)」に、同社のニューリテールスーパー「盒馬鮮生」がオープンした。これまで盒馬鮮生は店舗と専用アプリで販売していて、天猫に店舗はなかった。天猫では、アリババのデジタル農業基地で生産された産地直送の果物、野菜類、麺類、米類、おつまみなどが多数用意されている。いずれも産地直送で農作物を発送し、食品の多様化ニーズと、農村の脱貧困を実現する。
農業といえば4月3日にテンセントがスマート農業事業を手掛けることを発表した。アリババもすでに同社のクラウドを使った「農業大脳」というソリューションを提案している。ネット大手各社は農業にも注力し、競合していく。
TikTok中国版ことバイトダンスの「抖音(ドウイン)」は、特定のダンスや芸術や料理の腕をアップした動画で競い合う「抖音挑戦賽」を新型コロナ期間も開始した。業界団体や企業や自治体が主催し、新型コロナ蔓延時の中国人の暇つぶしをサポートした。抖音は新型コロナでの行動としては、混乱を避けるべくアップされた新型コロナ関連情報のデマコンテンツの削除を行った。
中国ネット大手の「網易(ネットイース)」の音楽ライブ専門配信ライブストリームサービス「雲村臥室音楽節」が新型コロナの中、ミュージシャンとファンの間で評価され、オンラインフェス系サービスでは定番サービスになった。1日5、6組が2、3時間演奏するもので、1か月の累計観客数は1600万超となった。
動画サービスの「ビリビリ」「抖音(ドウイン)」「快手」あたりも同様にライブストリームによる音楽サービスを提供しているが、ネットイースのサービスは常に演奏を行っている状態となっていることから、ネットイースのそれが定番となった。
新型コロナが猛威を奮った際、美団は生鮮やフードデリバリーインフラとして活躍したが、落ち着いた4月10日あたりより中国全土から利用店舗からの不満が噴出し、利用を解約するという声も出てきた。緊急事態に手数料を下げないどころか上げたというのだ。特に2月は、美団も安全なサービス提供に神経をとがらせてきた。しかしそのようなときも価格面も気にしないと、落ち着いたとき店舗側から不満が噴出することを美団は身をもって示したといえる。
大手ECサイトのジンドンとエアコンなどで知られる家電メーカー「GREE」による対新型コロナロボットセットが発売された。このセットは、「室外消毒ロボット」「室内消毒ロボット」「検温ロボット」「モノ運びロボット」の4点からなる。モールや交通ターミナルや駅やオフィスビルのロビーフロアなど、人が密集しがちな場所に投入し、消毒や感染者のチェックなどを行うことを想定している。
上海市は、新型コロナの危機がある中でのイベント開催の方針などについて定めた「上海促進在線新経済発展行動方案」を発表した。
行動計画文書中で示された上海市政府が後押しする業界は、従来の国が進めている無人工場、工業インターネット、オンラインファイナンスに加え、オンラインエンタメ、リモートワーク、オンライン医療、生鮮EC、オンライン展示会など、アフターコロナならではのジャンルだ。世界的な世界的な商談イベント「広州交易会」がオンラインになるなど、アフターコロナでは、会議・展示会などのオンライン化がひとつのトレンドとなるだろう。
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