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2020年10月26日掲載
観光業などの経済再始動を目的とした「GoToトラベルキャンペーン」が国内で話題になっておりますね。現在、中国でも感染リスクを高めないようにしつつ観光業復活を目指す動きが目立っています。
中でもビッグデータ産業に力を入れる西南部の「貴州省」では、感染拡大防止と観光の効率化を両立したシステムを導入・活用しています。それが、貴州省が今年5月に導入したミニプログラム「一碼遊貴州(発音はイーマヨウグイジョウ)」です。日本語に訳すと、「ひとつのQRコードで貴州観光」という意味になります。
「一碼遊貴州」は、微信(WeChat)のミニプログラムで起動するもので、アプリストアからインストールする必要はありません。微信から検索するか、もしくは貴州省の観光客の動線上に表示されているQRコードをスキャンすることで使用できるようになります。
何ができるかといえば、観光地の入場チケットのオンラインでの購入や各観光地の説明ほか、ホテル予約・食事情報・お土産購入・交通案内・道路交通情報・ナビゲーションなど、観光客が必要としている機能はだいたいこのアプリに入っているのです。
貴州省に旅行に行く前の調べ物や予約に使えますし、現地でGPSによる位置情報と連携して近くの観光地やレストランや交通情報のリサーチもできます。日本の自治体でも観光案内アプリがありますが、それ以上になんでもできるアプリと言えるでしょう。
貴州省では観光客誘致のため、各観光地の入場料を平時の半額とするキャンペーンを行っています。「一碼遊貴州」を利用する場合、平時の6割引とさらにお得です。ホテル予約機能や食堂の紹介や道路ナビなど、専門のアプリのほうが細やかな機能が備えられているかと思います。
ですが、入場料がこのミニプログラム利用でのオンライン購入によってさらに安くなるのであれば、利用する観光客は多いでしょう。実際これまでも中国各地でバス・地下鉄の乗車カードが普及しましたが、その際も、利便性もさることながら「利用すると何割引されてお得だ」という理由によって、普及に拍車がかかりました。
またこのミニプログラムは、アフターコロナの旅行スタイルに対応したものとなっています。中国政府はアフターコロナの観光のありかたとして、「観光地で密にならないよう時間ごとに入れる観光客を制限して観光地に入場させる」という方針を示しました(もっとも商業地では、中秋節や国慶節の長期大型連休に、多くの人でごった返してはいましたが)。
つまり観光客は、各観光地が用意したアプリやページからオンラインで日時指定のチケットを購入する必要が出てきたわけです。新型コロナウイルスのリスク削減のために手間がかかるようになったわけですが、この手間をできるだけなくすべく、省内の全観光地のチケットがひとつのアプリで全て予約購入できる「一碼遊貴州」が登場したというわけです。
貴州省といえば、ビッグデータ産業を振興しようとしているという点で知る人ぞ知る自治体。「一碼遊貴州」でも、ビッグデータを活用しています。アフターコロナの今だからこそ人数制限を行っていますが、もともと貴州省は観光業へのビッグデータの活用を考えていました。
「観光地の特定の場所で長い行列ができている」、「移動しにくい」など、観光地ならどこでも起こりうる問題をビッグデータで解決しようというわけです。具体的には、「一碼遊貴州」からのデータと防犯(監視)カメラで人の動きを把握すれば、密になる状況を解消するための対策が打てます。
また「一碼遊貴州」では、観光客が各観光地を5段階で評価できます。年齢別や性別などの観光客の属性情報に加え、どこに行って満足だったか不満だったかといった傾向などがビッグデータから見えるようになるのです。中国のスマートシティでも、どの道路が混雑してどう解決するかがビッグデータを活用して行われていますが、それを観光地向けにしたものといえるでしょう。観光地の予約だけでなく、交通情報やホテルやレストランサービスなどをまとめて紹介し使ってもらおうというのは、「観光客情報をビッグデータで把握したい」という理由があるのです。
日本の自治体でも観光案内アプリがありますが、「一碼遊貴州」は観光客への観光地紹介に留まらず、客流を把握し観光地を改善するためのクラウド+ビッグデータを使ったサービスとなっています。今後も貴州モデルをベースに、中国各地で似たようなサービスが展開されていくでしょう。
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