アリババ「双11」の偽物騒動、世界初6G衛星打ち上げ(山谷剛史の中国ITニュースまとめ 2020年11-12月)

(2021年1月26日掲載)

中国アジアITライター・山谷剛史さんが、中国国内で話題になったITニュースをピックアップする連載企画です。今回は2020年11月~12月の中国主要インターネットニュースについてまとめました。

 

ライブコマースが流通総額約5,000億元を記録するも、ニセモノ騒動で冷や水を浴びせる結果に

 

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天猫の2020年の双11セールでは4982億元のGMVを記録(出典:QuestMobile

 

中国で最大のECセールとなる「ダブルイレブン(双11、独身の日セール)」が行われた。2020年は11月11日だけでなく、1日から11日の11日間に拡大。流通総額はアリババのECサイト「天猫(Tmall)」で4,982億元(2019年は1日で2,684億元)、それを追う「京東(JD)」は2715億元を記録した。

 

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天猫の2020年の双11セールでの各ECサイトの客寄せ手法(出典:QuestMobile

 

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天猫の2020年の双11セールでの淘宝、拼多多、京東のアプリDAU(出典:QuestMobile

 

このダブルイレブンで毎年注目されるのが取引額だけでなく、新たな販売の仕掛け、2020年は新型コロナウイルスでの家こもりを機にますます人気が高まったライブコマースでの販売が台風の目に。人気実況主(ライバー)がどれだけ売るかにも注目が集まり、「辛巴」氏が昼から夜まで行った1日の実況販売で、流通総額19億元弱を記録し話題になった。

ところが後日、辛巴氏が実況販売したもののひとつである「高級燕の巣」が高級でなく激安な商品だったとしてニセモノ扱いされ、リコールに発展。また注目されたライバーのひとりで、元スマートフォンメーカーSmartisan創始者の「羅永浩」氏も、ニセモノのウールシャツを販売したことが発覚。

 

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ライブコマースでのニセモノの販売も目立つように(央広網

 

期待された新産業「ライブコマース」だが、トップ配信者に人気が集中する結果となった。これに対してなんとか中小のライバーがライブコマースで売って儲けようと、ニセモノの販売やフォロワーや取引額の偽装やニセタレントの登場やタレント出る出る詐欺など、トラブルが続出。業界全体的にネガティブなニュースが次々に登場し、冷や水を浴びせる結果となった。

 

量子コンピューターの話題が続々と登場

従来のコンピューターと比べて圧倒的な処理能力を実現する量子コンピューターに関する話題が中国で続々と取り上げられた。

中国科学技術大学は12月、量子コンピューターの「九章」を発表した。台湾の微系統曁奈米科技協会によれば、九章は「ガウシアンボソンサンプリング」が行えるもので、一般的に量子コンピューターと呼ばれているものではないと指摘している。従来のコンピューターでは計算に極めて時間のかかるガウシアンボソンサンプリングについて、世界最速のスーパーコンピューター「富岳」を使うと6億年かかるものが200秒で計算できるようになったとした。

同じく12月にはアリババが、アリババクラウド量子開発プラットフォーム「ACQDP」と、オープン量子エミュレータ「太章2.0」を発表した。量子コンピューティングをテストしたり、量子ハードウェアを設計したりすることができるとしている。

ほかにも12月には安徽省合肥で、量子計算とビッグデータを活用した開発支援プラットフォームを、量子計算企業の「本源電子」と「合肥市大数据」が発表した。計画では2021年4月までに開発プラットフォームと開発のトレーニングができるようにし、2021年内に量子化学ソフトを開発し、1,2社の医薬企業と材料企業が利用できるようにするとしている。

 

アントほか8社、突然資金運用系の貯蓄系金融商品販売をストップ

アントの支付宝(アリペイ)、テンセントの理財通、京東金融などフィンテック企業8社各社の貯蓄商品が12月、突然購入できなくなった(商品購入者は保有商品情報を見ることができている)。この事件が発生する前に、中央銀行の中国人民銀行金融穏定局長が、「フィンテック企業が銀行のライセンスを持たないにも関わらず、銀行より好条件の商品を販売している」として批判した。

11月にはアントが突然の上場延期を発表したが、貯蓄系金融商品がなくなった件も含めて、フィンテック企業への引き締めの影響が出たと考えられる。

 

顔認証サービスのセキュリティが問われる

顔認証は中国においてセキュリティや支払いなど様々な用途で使われているが、中国の権威ある政府系メディアが、たびたび顔認証の安全性を疑問視する報道を行った。

具体的には
・無数の顔写真データが顔認証用に販売されている
・3Dプリンターによる安価なマスクで顔認証が突破できる
・カメラによる設置で個人情報が勝手に保存され使われるという問題提起
といった話だ。

顔認証を使うサービスに冷や水をかける結果となったが、結果として、顔認証でのふるまいのルールが再確認された。一旦は顔認証のニュースが減ったが、1月になってから再び増えている。

 

ビッグデータ詐欺でデリバリーとシェアバッテリーが物議に

ハイテクに冷や水の話題は、顔認証以外にも出てきた。権威ある新華社が美団(Meituan)とシェアバッテリーサービスに対し、「ビッグデータ詐欺(大数据殺熟)」を行っていると批判した。ビッグデータ詐欺とは、これまで積立てたサービス利用データから、サイト利用者が買いたいときに販売価格があがり、同じタイミングでも利用者や条件によって値段が変化していくというもの。

ビッグデータ詐欺案件といえば、オンライン旅行予約サイトの航空券販売で、同時刻でもリロードの度に値段が変わるとして、批判を浴びたことがある。消費者が不利益・不公平だと感じるようなことは、中国のニュースメディアで槍玉に挙がりやすい。

主要アプリやサイトに、老人や障碍者向けアクセシビリティ対応を指示

 

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老人向けカルチャースクールでスマホを学ぶ(出典:新華網

 中国政府の国務院は11月下旬に、ネットリテラシーがない高齢者などがアプリやサイトを利用できるようにすることを求めた「関于切実解決老年人運用智能技術困難的実施方案」を発表した。具体的には、主要アプリやサイトに対して文字を大きくする、シンプルにするといった「老人モード」を2年以内に用意するというもの。

日本では各種アプリが利用できると生活が便利になるが、中国では実質各種アプリの利用が必須であり、キャッシュレスでも、各種ECでも、移動でも、スマホがそれなりに使えないと日常生活においてかなり不便を強いられる。新型コロナウイルスで移動に「健康コード」の表示が求められるなど、ますますスマホの使いこなしが必要となっている。こうした中で弱者向けのアクセシビリティの改善を政府が指示したわけだ。こうしたことは珍しい。

対象となるのは、支付宝、淘宝(Taobao)、微信(WeChat)、微博(Weibo)をはじめとした43のアプリと115のサイトで、高齢者モードか、アプリではシンプルな高齢者版が出るだろう。

 

世界初となる6G試験衛星「電子科技大学号」打ち上げ

 

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電子科技大学号(出典:中国青年網)

 

世界初となる6G試験衛星「電子科技大学号」が、山西省の太原衛星発射中心より長征6号のロケットに搭載されて打ち上げられた。

次世代通信6G(第6世代通信)では日本中国両国とも、陸だけでなく、海や空(宇宙)でも高速で無線通信を実現するとしており、その実現に向けて電子科技大学号は陸と天空での無線通信(テラヘルツ波通信)テストを行う。

これから5Gが本格普及する中で早くも6Gの話題だが、 国務院は「6Gは先の話として研究はしていくが、まずは5Gの研究開発を継続して推し進める」とのこと。また2020年末の段階で地方都市「地級市」まで5Gの基地局は建設されているが、さらに建設を進めていく。さらに5Gについては2020年に約1億4400万台のスマートフォンが出荷されたと中国政府工業和信息化部(工信部)は伝えている。さらに普及を進めようとキャリアが、5Gも4G以前も利用できる「5Gプラン」への移行を強く推し進めている地域も。

 

ファーウェイ、Honorを分離 

ファーウェイは11月中旬、アメリカからの圧力を受ける中、スマートフォンのサブブランド「Honor(栄耀)」の分離・売却を決定したことを発表した。「深セン市智慧城市科技発展集団」とHonorのディーラー30社による新会社「深セン市智信新信息技術有限公司」がHonorブランドを買収し、Honorはファーウェイとの関係を断ち独立する。

Honorブランドは2013年に誕生。コストパフォーマンスがよいことで評価を得て、2019年も含め、何度かダブルイレブンセールで全スマートフォンモデル中トップセールスを記録することもあった。2020年のダブルイレブンセールでの戦績は、新機種が出ていなかったこともあって2019年と比べて目立ってよくはなかったが、HONOR Lifeというスマート製品群を発表。スマートフォン部品の供給不足に備えて、スマート家電を強化していくようだ。

Trustdataによれば、2020年第3四半期のスマホ出荷台数は多い順に、ファーウェイ(23.3%)、OPPO(18.3%)、vivo(16.8%)、Honor(13.2%)、シャオミ(13.0%)、アップル(8.5%)となっている。

 

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山谷 剛史
中国アジアITライター
山谷 剛史
1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。 2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。
主な著書に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?(星海社新書)』『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち(ソフトバンク新書)』など