気象予報や災害予測に活用される中国のAI・クラウド技術

2021年4月1日掲載

日本がそうであるように、中国もまた気象庁にあたる気象局が天気予報を発表しています。ただ、中国のそれぞれの省市が気象観測に新しい手法を取り込んでいるのは、中国らしいところ。

とくにクラウドやビッグデータやAIなどの活用に力を入れているのが、内陸の直轄市「重慶市」です。重慶は西南地方の暴雨の6割が集中するほど特別雨量が多く、暴雨による災害が起きやすい土地とのこと。

確かに中国での水害を振り返ると、三峡ダム付近の地域ではよく暴雨による災害が報じられています。こうしたことから、重慶市は天気予報と暴雨予報の際の市民への連絡や注意喚起に力を入れてきました。

2018年末には、重慶市が「天資」という天気予報システム建設プロジェクトを打ち出しました。天資の天気予報システムでは、「ビッグデータ分析」「災害予報」「産業予報」「予報チェッカー」「情報端末による情報のシェア」「業務システムのスマート管理」などができるといいます。

重慶市は北海道ぐらいの広さですが、その天気観測には2,093カ所の気象観測所と、8基の観測衛星と、4カ所の天気レーダーと、13カ所の落雷観測器を活用しており、雲や雨の元となる対流を観測しています。

加えて、ディープラーニングで過去10年間の天気レーダーによるデータと地表の観測データをインプットしていき、どういうときの強い対流が暴風雨や雷や雹(ひょう)をおこすのかを記憶させました。ビッグデータによる積み立てと、クラウドならではの高い計算力により、より高精度な天気予報システムの構築を実現したのです。

天資災害天気予測システム(出典:百度智能云) 天資災害天気予測システム(出典:百度智能云)

天資システムの導入によって、重慶の天気予報の精度は大幅に向上しました。2時間内の対流情報から雷や雹やゲリラ豪雨の予測能力は顕著にあがり、直近2時間における6分毎の落雷降水予報を実現し、2019年に数回起きた雹や暴風は予想的中率が100%に。

また、通常の天気においても1時間に1度、3キロメートル四方で予報ができるようになり、2019年上半期の気温予想の正答率は16%、降水量の正答率は6%向上しました。天気のプロフェッショナル人材の分析よりも、AIとビッグデータによる予測のほうがより正確に細かい単位で予想できるようになったわけです。

さらに、天候予想の後の伝達も高速化しました。今までも「天気が大荒れになる」と判断されると自動的にショートメールを送っていたのですが、毎秒160件の送信が限界でした。

それが新システムに移行することで1秒間に3,000件微信(WeChat)やショートメールに送ることが可能になり、過去には各地域の責任者160万人に2時間以上かけて送っていたのが、10分以内にできるようになったとしています。

こうしたことから、災害による被害者も激減しました。たとえば2019年6月には石柱県に100ミリを超える雨量の大雨が降り、5カ所に大きな被害がもたらされました。ですが、ショートメールや微信による素早い警告が送られてきたので、人的被害の影響は受けなかったとしています。

Alibaba Cloud大会で熱弁するイギリス気象局のAlberto Arribas氏(出典:人民網) Alibaba Cloud大会で熱弁するイギリス気象局のAlberto Arribas氏(出典:人民網)

実はイギリスでも、AIやデータをもとに天候を予測する方法が求められています。

この背景には、イギリスでは2050年を目途に「空飛ぶ車」のような乗り物を運用しようとしている計画があります。イギリスは天気が変わりやすく悪天候になりやすい中で、いかにして素早く天気を予測して対流の発生しないところを通っていくかの予想能力を欲しているというわけです。

そこでイギリス気象庁とAlibaba Cloudが提携して、Alibaba Cloudのオープンプラットフォーム「天池(Tianchi )」で、AI専門家や技術者からアイディアを公募するコンテストを実施しました。

イギリスの一部の地域をピックアップし、その地域をさらに細かく分けた上で、細かく分けた各地の3年間の5分毎の気温、降水、風力などのデータを公開し、複数飛行物体が飛んでもぶつからないように飛べる最適な飛行ルートの算出方法を賞金商品つきで募集するというものです。

気象予報や災害対策だけでなく、未来の飛行物体の運用を考える上でも、今後はクラウドがますます活用されていくことでしょう。

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