スマホ1台でフィットネスを実現「阿里体育」の人体映像認識AI

2021年8月10日掲載

阿里体育のWebサイト 阿里体育のWebサイト

今夏は世界的な大会が日本で開催されたため、連日各種スポーツが注目されました。それにちなみ、スポーツにまつわるサービスを紹介します。

今回紹介するのは、アリババのスポーツ関連事業を取り扱っている企業「阿里体育(AliSports)」です。阿里体育では、新型コロナウイルス感染拡大によって外に出れず運動不足になりがちな昨今のニーズに応えるため、家でもスマートフォンやタブレットだけで室内運動が可能な運動サービスを開発しました。

そのサービスはどこで利用できるのかというと、同社と資本関係にある「楽動力」のアプリや、アリババのSNSアプリ「釘釘(Dingtalk)」、アリババ系フィンテック企業「アント」のアプリ「支付宝(Alipay)」からになります。

楽動力のアプリ画面 楽動力のアプリ画面

たとえば楽動力のアプリでは、メニュー画面にある腕の上げ下げ運動や腹筋や腕立て伏せやスクワットといった、様々な運動が行えます。そしてスマートフォンのカメラに全身をうつして指定した運動を繰り返し行うと、その回数を自動でカウントしてくれるのです。加えて、ビデオ会議アプリのように録画した映像に独自の背景を入れることも可能です。

腹筋運動映像からのAI学習(出典:阿里技術) 腹筋運動映像からのAI学習(出典:阿里技術)

またこのアプリを利用して、大学対抗オンライン運動会「雲動会」が開催されたことでも知られています。

一方DingtalkやAlipay内では、同様に離れたスマートフォンやタブレットを前に縄跳びを行い、跳んだ数をカウントしてくれるミニゲームが用意されました。また学校のオンライン教育時にも、家庭内での運動チェックに活用されたのです。

これらのサービスは各種AIをはじめ、様々なモノやサービスを開発するアリババの研究機関「達摩院(DAMOアカデミー)」との共同開発によるもの。人体の動きを識別するAIの実装によって、実現したものになります。アプリの中にAIが搭載されているので、人の動きをオフラインでも認識できるようになっているのです。

ただし、スムーズに利用できるアプリであるためには、いくつか条件があります。まず、ユーザーが稼働しているスマートフォンやタブレットのスペックで動くものでなくてはなりません。そして稼働するからといって、AIでリソースを占めるようではいけません。

阿里体育のAIを活用した縄跳びサービス(出典:阿里技術) 阿里体育のAIを活用した縄跳びサービス(出典:阿里技術)

これらの条件をクリアしてシンプルで重くない処理を実現するため、阿里体育のサービスでは、利用者を以下のように処理しています。

・カメラに入った人を頭、肩、足など14点の点をそれを結ぶ線に簡略化
・棒人間のように各点を結び、さらにその棒人間の動きから動作を認識
・運動の動作を繰り返すことで、運動した回数をカウントする

回数を正しくカウントできているかは重要な問題で、もしそこに欠陥がある場合はユーザーがアプリから離れてしまうでしょう。そこで正確にカウントできるように、この画像認識AIを鍛えて精度を高めています。手順としては、オリジナルの映像データからAIを通して補正し、正しい運動データにした上で各種運動のカウントを取れるようにしているのです。

テストを重ねてAIの精度を高めたいと考えられていた矢先、新型コロナウイルス感染拡大で急に家庭内運動アプリのニーズが出てきました。ですが、多くの人にアプリをテストさせてAIを鍛えるには、時間もコストもかかります。

そこでこのAIを鍛える際に発生する問題を解決するため、自動テストツールが開発されました。その結果、迅速なディープラーニングを実現したのです。

また自動テストツールは特定の運動について検索し、検索して見つかる動画を解析して、多少の変換を行い実際の運動のシミュレーション動画を生成しています。そこから骨格データをつくり、自動でテストレポートを生成しているのです。このツールが大量にサンプルを読み込むことで、精度の向上を実現しました。

このように、AIで人体を点と線で認識できるようになったことによって、各種運動による人体の動きがより正確に認識できるようになりました。また新たな運動やそれを活用したゲームも、続々と登場してくるのではないでしょうか。今後も、AIを活用した運動サービスに注目していきましょう。

参考リンク

阿里体育
・阿里技術「AI运动:阿里体育端智能最佳实践

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