河南省大水害の復旧支援に活用された中国IT企業のスマートシティソリューション

河南省大水害の回復や救出に奔走する人々(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)
河南省大水害の回復や救出に奔走する人々(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント
(2021年10月22日掲載)

8月に中国の内陸にある河南省の省都・鄭州市や新郷市で未曽有の豪雨となり、地域一帯が浸水しました。これによりしばらくの間停電に加え、インターネットが利用できなくなってしまったのです。豪雨もまた未曽有なら、ネットインフラが使えなくなるのもまた未曽有の事態となりました。

ネットインフラが現場で使えない中、アリババなど中国のインターネット大手各社はさまざまな災害復旧支援を行いました。今回は各社が行った支援内容を紹介します。

アリババは、鄭州のスマートシティを構築しています。鄭州のスマートシティでできることのひとつとして、市内各病院の空きベッドなどの状態からスマートシティが救急車に患者の搬送先を指示するというサービスがあります。今回、このサービスが活用されました。

アリババの対処(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)
アリババの対処(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)

また中国ではニューリテールとも呼ばれる生鮮ECやマンション団地内でのまとめ買いEC(社区団購)や、市内各地に倉庫もしくは倉庫代わりにして展開する店舗などが普及しています。アリババでもこれらのサービスを行っていることもあり、倉庫内にあった水・米・麺や包装食品など約45万個の食品を、鄭州の7,000の社区21,000地点に配送しました。また同じくEC大手の京東(JD.com)も、倉庫から大型トラックを複数台活用し、倉庫から被災地へ物資を届けました。

倉庫から各地に食料を搬送(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)
倉庫から各地に食料を搬送(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)

そしてO2O(Online to Offline)最大手である美団でも、社区団購が取り扱われています。このマンション団地での住民のまとめ買いは、「団長」が購入リストをまとめてECサイト側に発注する仕組みです。そこで美団では、各マンション団地に根ざしている「団長(ショップ店長)」を通じて、独居老人の安全生活保障のサポートを行うことを発表しました。

それから、多くのインターネット大手企業が、情報掲示板を開設しました。

百度のニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」で「河南暴雨」と検索すると、救援要請情報が出てきます。そこに代表者の名前と電話番号、加えて「だいたい100人くらいがいて、ホテルが傾いていて電話が通じない」「車内3人で待機、何も食べていない」といった現地の情報を書き込むことができるようになりました。

またアリババの「高徳地図」や百度の「百度地図」などの地図サービスでは、河南豪雨の書き込みサービスの機能が急遽追加されました。これは地図上に浸水ポイントを指定し、浸水ポイントをタップすると、詳細情報が書き込めるというもの。ここに被災者が状況や必要な物資について書き込むのです。避難場所が必要な人に、避難場所について地図で明示する機能も追加されました。

高徳地図の河南水害対応マップ(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)
高徳地図の河南水害対応マップ(出典:阿里巴巴の公式微博アカウント)

加えて、アリババの「医鹿(旧名:阿里健康)」や、京東の「京東健康」といったオンライン医療サービスは、それぞれ河南省の人々に対してオンライン問診サービスを無料で提供しました。

災害復興支援といえば、募金を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。この募金にも、インターネットが活用されました。

アリババの「淘宝網(Taobao)」では、「救在一線」で検索すると中国扶貧基金会と提携し、募金ができる同会の店舗のリンクにジャンプできます。またテンセントのWeChat(微信)では、募金のミニプログラム「騰訊公益」で河南省に募金ができるメニューが用意されました。またECサイトショップ向けに、1つ商品が売れるごとに0.01元募金するというオプションも追加済みです。京東でも、募金プラットフォーム「物愛相連」で、河南省に募金ができるメニューが用意されました。

配車サービスをリリースしている企業「滴滴出行(DiDi)」の取り組みにも、注目です。Didiでは今回の豪雨の際に一旦サービスを停止し、各ドライバーに対し安全第一を呼びかけました。一方で、ボランティアのドライバーを集い、物資の運搬や医療スタッフの移動を行いサポートしました。

インターネットが繋がらなくなった地域もあった河南豪雨でしたが、繋がる場所ではスマートシティやニューリテールの物流網やオンライン医療が、災害に役立てた結果となりました。このように企業が市民をスムーズにサポートできたのは、社区団購により町中に倉庫を分散させて、住民代表と連絡できる体制であったのも大きいと思います。

日本でそのまま同じことができるわけではありませんが、今回の中国の災害対策には少なからず参考になるところもあるのではないでしょうか。

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山谷 剛史
中国アジアITライター
山谷 剛史
1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。 2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。
主な著書に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?(星海社新書)』『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち(ソフトバンク新書)』など