中国製鉄大手「攀鋼集団」の職人技術を可視化したAlibaba Cloudのデジタル活用

2021年11月4日掲載

攀鋼集団(出典:阿里云)

Alibaba Cloudのクラウドソリューション「工業大脳」は、四川省にある大手鉄鋼企業「攀鋼(はんこう)集団」の製鉄業務を自動化しました。

昔から鉄が使われているように、製鉄には歴史があり、攀鋼集団でも多くの経験を蓄積してきました。 しかし、経験の長い職人的スタッフが肌感覚で調整してきたこの世界では、ノウハウの一般化は難しいと考えられていました。このような一見アナログ的な職人的技術を可視化し、人間の思考や認知の限界だと考えられていたところをAlibaba Cloudの工業大脳がデータ化し、自動化したのです。

鉄づくりではまず、鉄鉱石から鉄を抽出します。鉄鉱石から不純物を取り除くため、石灰石とコークス(石炭を蒸し焼きにした燃料)、加えて鋼の性能要求に応じて適量の合金元素を添加して高炉に入れ、熱し続けると鉄とそれ以外の成分(スラグ)に分かれます。鉄鉱石からできるだけ不純物を取り除いたスラグを効率よく作ることが、鉄鋼生産において高品質、高生産性、高コストパフォーマンスに繋がります。

攀鋼ではこの原材料の投入プロセスについて、競争力を高めるべく最適な人材配置や制御機械で効率化を進めていました。ですが、さまざまな課題が生まれていました。

 

  • 課題1
    「脱硫」というプロセスを経て、鉄から硫黄分を除去する際、鉄もあわせて流失、損失してしまう。
  • 課題2
    鉄鉱石から脱硫を経て、純度の高い鋼材になった後、冷間圧延工程を経て、長さが約1kmの巻いた形状のスチールコイルにする。ここで品質検査専門スタッフが5~10分で数百個から数千個の欠陥を発見し、合否判定を行うが、人によるので、経験でチェックのクオリティに差が出てしまいがち。とくに長い時間の作業では、一定のクオリティの維持は難しいところ。

職人的なスタッフたちでもどうにも対処できない壁に直面し、かつ競争力の向上が求められていました。

 

攀鋼での製鉄工程(出典:阿里云)

これらの製鉄企業ならではの課題に、Alibaba Cloudや工業大脳はどのように対応しているのでしょうか。

Alibaba Cloudのスタッフは、とくに製鉄に通じているわけではありません。また工業大脳というソリューションが、製鉄企業へのソフトウェアを最初から用意していたというわけでもありません。一方で攀鋼もまた、クラウドやビッグデータやAIなどを熟知しているわけではありません。

そこで、Alibaba Cloudのスタッフと攀鋼のスタッフが話し合い、製鉄の各プロセスの攀鋼スタッフが普段の作業をAlibaba Cloudのスタッフに伝え、それをAlibaba Cloudがデジタル化するわけです。言い換えれば聞き込みを行い、知識やノウハウを抽象化・標準化・モデル化・コード化し、システムや機器にデジタル的に組み込んでいくのです。

攀鋼での製鉄工程(出典:阿里云)

攀鋼ではデータ収集の難易度、プロジェクトのリスクや収益性などの総合的な要因から、まずは冷延板の表面検査と脱硫工程の最適化といった作業から取り組み、各プロセスの機械に負担を与えすぎないよう調整をするなど全体への最適化や自動化を進めました。

そしてヒアリングをしたのちにテストモデルを構築し、さらに繰り返すことで機器運用に最適な数値設定を見つけ出し、モデルを完成させます。生産の効率化だけではありません。各生産機器のリアルタイムの動作データを監視し、大きく逸脱するデータなど異常が発生する場合に、機器の異常を警告する機能を導入しました。

その結果、生産されるスチール1トンあたり1キログラムの鉄を節約することができました。攀鋼は年間400万トンの鉄鋼を生産するので、年間700万元以上のコスト削減効果が期待できました。

企業や工場の各種設備やセンサーのデータを集約し、AIとビッグデータとクラウドコンピューティング、それに匠の技術からヒアリングしたノウハウを合わせ、膨大なデータ価値を活性化する。それこそが「工業大脳」なのです。

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