杭州スマートシティ「云栖小鎮」で普及するスマート駐車場&消防の事例

云栖小鎮。面積は3.5平方キロメートル(出典:阿里云)
云栖小鎮。面積は3.5平方キロメートル(出典:阿里云)

(2021年11月24日掲載)

Alibaba Cloudの大きな発表会や展示会で「云栖大会」と書いてあるのを見たことがありますか? またAlibaba Cloudのサイトでは、しばしば”云栖”という単語が登場することをご存知でしょうか? これは浙江省杭州市の云栖小鎮(ユンチー シャオチェン)というところにAlibaba Cloudのオフィスがあるため、”云栖”と呼ばれているのです。

2011年に誕生した云栖小鎮は、一体の住宅地の名称でもあります。2015年に云栖小鎮をクラウドコンピューティング事業の起業とイノベーションの拠点にすべく、Alibaba Cloudは云栖小鎮に移転。この云栖小鎮で中国でも最も早いスマートシティの導入が行われたというわけです。

というわけで、今回は云栖小鎮でのスマート化の取り組みを紹介します。ここでは大きく2つ、中国全土で問題視されている駐車場の改善と、消防の改善について紹介していきます。

まず駐車場については、「キャッシュレスによる後払い」「空きスペースの動的な割り当て」「違法駐車車両の誘導」の3つのソリューションを行っています。この背景として、「駐車場が止められない」、「駐車場を探すのが大変」といった状況から、交通渋滞まで引き起こされているという問題が、中国全土の都市部で発生していました。そこで云栖小鎮で最新のソリューションを導入して、検証しているのです。

「キャッシュレスによる後払い」とは、駐車場から出る際にSMSで請求書のリマインダーが送られ、その確認後にキャッシュレスのAlipayで支払う仕組み。この支払いモデルを導入後、平均出庫時間が23.4秒から2.6秒と89%短縮され、また駐車場の出口で料金を支払うための行列がなくなり混雑が解消しました。朝夕のピーク時には大量の車が出入りしていますが、料金支払い機もゲートもないので一見すると自由に停められる駐車場のように見えます。

スマート化によりゲートを外し駐車にかかる時間を短縮(出典:阿里云)
スマート化によりゲートを外し駐車にかかる時間を短縮(出典:阿里云)

「空きスペースの動的な割り当て」については、22の駐車場(計6,500台分)の駐車スペースの状況をIoT技術を利用して把握することで、駐車場から得られたリアルタイムのデータを基に、駐車したい車の所有者に空いている駐車スペースを割り当てるという仕組みです。

ドライバーがアプリから最寄りの駐車場を検索すると、ナビアプリに予約可能な近隣の駐車場の残りの駐車スペースが表示され、同時に道路ネットワークや過去の駐車場などのデータを組み合わせて算出され、最適な目標駐車場が紹介されます。

車の所有者が駐車場を決めて駐車の予約を完了させると、駐車スペースから10メートル以内の車の移動に合わせて車止めが自動で動いてスペースに入れるようになります。この仕組みで、駐車にかかる時間を大幅に短縮できます。

上で述べたように、駐車場を最適な形で案内することは実現できましたが、それでも違法駐車をするドライバーもいます。違法駐車をするドライバーたちは、この場所のスマート駐車サービスを知らないとか、適当な駐車場が見つからないことを理由にしがちです。これまでの道路運送車両の管理では、主に違反点数や罰金など「罰」が与えられていました。

「違法駐車車両の誘導」ですが、これは「厳格な取締り」から「柔軟な注意喚起」への変化とも言えます。違法駐車の状況を自動的に識別し、違法車両を発見できる道路監視システムを導入、まずは発見するとドライバーのSMSに「違法駐車をしている車両は、できるだけ早く走り去ってください」というメッセージを送信し、加えて近隣の駐車場情報や正確なナビゲーション情報を提供します。こうした工夫で、気持ちよく違法駐車を処理しようとしているのです。

駐車場の次は消防の改善です。

まずは煙、火、電気、水の状態をリアルタイムに認識できる各種IoTセンサーを設置することで見える化に成功しました。リアルタイムに異常を感知し、「15秒で火災を識別し、30秒で警察に連絡、3分で現場に人員を配置」という火災時の迅速な対応メカニズムを実現しました。また火災のリスクがある状態も感知し火災予防も行います。

云栖小鎮スマート消防システム(出典:阿里云)
云栖小鎮スマート消防システム(出典:阿里云)

火災が発生すると、当直者はスマートフォンで警報情報をリアルタイムに表示・受信できるようになっています。あわせて、周囲のネットワークカメラを連動させて現場確認することも可能です。現場の火災状況が解決できないことを確認、その後警察側のGoサインを経て、消防側へのネットワークカメラによる火災のライブ中継が開始されます。消防隊は、このライブ中継の映像から現場の火災状況を把握でき、より迅速に消防活動が可能になったというわけです。

次に、火災管理システムを構築しました。これは火災のレベルや機器の状態に応じて、屋内の正確な位置情報から避難経路が自動的に生成されるというものです。防災訓練や災害時に正確かつ視覚的に提供されます。

また、消防データの安全性と追跡可能性を確保するために情報の記録を残せるブロックチェーンを消防に導入しました。消防データの過程での誤報や記録の改ざんの問題を解決するため、そして消防データを証拠として認め、火災報知器データ、点検データ、隠れた危険データを積み重ね、事後評価の根拠とするためです。

以上、今回は駐車場と消防を中心に云栖小鎮でのスマート化の取り組みについて紹介しました。Alibaba Cloudだけでなく、現在中国の他社も別の場所でスマート化に取り組んでいます。各社が導入を繰り返すことで知見を増やし、ニーズを把握し、その経験をベースとしたよりスマートなスマートシティが、今後ますます中国各地で導入されることになるでしょう。

■参考リンク
・Alibaba Cloud中国サイト(阿里云)の紹介記事  案例酷 | 云栖小镇: 如何解决城市停车“老大难”?  【云栖号案例 | 物联网与人工智能 】“数据驱动、智能引领”,打造未来智能小镇“样板间”

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山谷 剛史
中国アジアITライター
山谷 剛史
1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。 2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。
主な著書に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?(星海社新書)』『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち(ソフトバンク新書)』など