シンギュラリティをビジネスチャンスに変える2つの重要な考え方

SoftBank World 2017 講演レポート2

シンギュラリティをビジネスチャンスに変える2つの重要な考え方

(2017年8月25日掲載)

ソフトバンクグループの法人向けイベント「SoftBank World 2017」において、大きな注目を集めたのが、様々な有識者による講演である。有識者が示す、次世代を見据えたビジネスの考え方や目指すべき社会の方向性などに多くの来場者が耳を傾けた。テクノロジーは人と社会を豊かにするものでなくてはならない──。多くの示唆に富む注目の講演をレポートする。

 

「オープン」:IoTとAPIのオープン化がIoS(Internet of Services)時代を創る

シェアサイクリング戦国時代

坂村 健氏

INIAD(東洋大学情報連携学部)
学部長

さまざまなビジネスが生まれ、急成長しています。例えば、中国ではMobike(モバイク)というシェア自転車ビジネスが注目を集めています。
Mobikeの特長は、所定の場所で借りて所定の場所に返却するという手間をかける必要がなく、乗り捨てて良いという点。次の利用者は、最も近い場所にある自転車をアプリで探して利用します。このような運用が可能になったのは、予約から決済までをアプリ上で完結できるから。この便利さが受け入れられ、サービス開始から1年で中国国内の運用台数は500万台を突破したそうです。

このビジネスモデルを支えているのがIoTです。アプリによる利便性の高いサービスに加え、自転車に付けたセンサーで利用者の利用状況などを把握・分析して、条件をクリアすると割引サービスなどが受けられます。IoTのデータをもとに道の混雑状況などを割り出し、情報発信も行っています。
このように、IoTが新ビジネスの源泉となったわけですが、こうしたビジネスの創出、および今後の発展のためには「オープン」な考え方が不可欠です。自分たちだけで情報を閉じていては広がらないし、すべてを自分たちだけで作り上げることも難しい。業種・業界の枠組みを越えたオープンな連携でシナジーを高めていくことが重要です。
企業は自分たちのシステムやデータのAPIを積極的に公開すべきでしょう。あらゆるモノが、APIを通じてあらゆるシステムやデータとつながる。オープンIoT、オープンAPIの流れを加速していかなければなりません。

そうしてつながるのは、モノだけではなく、サービスもつながるようになります。オープンIoT、オープンAPIが普及していけば、すべてのサービスがインターネットにつながる「IoS(Internet of Services)」の世界が到来すると考えられます。サービスとサービスの組み合わせで、また新しいサービスが次々と生まれる可能性が高まっていきます。
ここで重要な役割を担うのがクラウドです。IoTのデータを蓄積し、APIでつないで連携・分析することで新たな価値を創出する。データの蓄積・分析基盤、APIの提供基盤として、クラウドは非常に有効です。クラウドを統合プラットフォームと位置付ければ、AIやロボットとも連携しやすくなります。

加えて、オープンな発想を持った人材の育成も欠かせません。その拠点の1つとなるのが、私が学部長を務めるINIAD(東洋大学情報連携学部)です。学生たちは、オープンIoT、オープンAPIによるプログラミングスキルの習得やユニークなサービスの開発に積極的に取り組んでいます。学生だけでなく、社会人にも門戸を開いています。ここから、来るべきIoS時代の発展に貢献する人材を、一人でも多く輩出していきたいですね。

坂村 健氏講演風景

「多様性」:来るべきデジタルネイチャー社会への提言

多様性」:来るべきデジタルネイチャー社会への提言

落合 陽一氏

筑波大学
図書館情報メディア系 学長補佐・助教

私の研究テーマは、人とコンピュータのより良い付き合い方を考えることです。テクノロジーが進化していけば、未来の社会は人と機械、物質とVR(仮想現実)など、人工物と自然物の区別がつかない「デジタルネイチャー」の世界になっていくと思います。
見た目で区別がつかないとしたら、人が見ているものが実在のものなのか、データで視覚化したものなのかはあまり意味を持たなくなります。その人にどんな価値を提供してくれるのかということの方が重要になるからです。

これはモノだけでなく、人にも同じことがいえます。存在とか実在というものの本質が改めて問い直される時代になるわけです。その中で人はどうあるべきか──。私は、人の性質をモデル化し、数値解析とシミュレーションによって情報通信の問題として定義することで、人と計算機の共存する生態系の実現を目指しています。
人は歳をとれば知力や肉体が衰えていきます。しかし、その衰えを機械で補うことができれば、いくつになっても働いたり、人の手を借りずに生活したりしていくことも可能になるでしょう。例えば、感覚はセンシング、筋肉はロボット、頭脳はAI、会話は通信というように機能分解すると分かりやすい。機械との融合によって、人が必要な機能を手に入れることで、ハッピーな社会をつくることができると私は考えています。

落合 陽一氏 筑波大学 図書館情報メディア系 学長補佐・助教

この実現のためにはテクノロジーの進化に加え、人が多様性を認め合えるようになることが重要です。今の社会は標準というものを軸に、そこから逸脱しないような教育を受けています。だから、なかなか多様性を認める方向に行きづらい。しかし、そろそろそうした考え方を改めたほうがいいでしょう。やがて訪れるシンギュラリティ(技術的特異点)が到来したとき、人がどれだけ多様性を身に付けているのか。未来の社会が明るいものになるか、そうでないかはこの点にかかっていると思います。

2045年に訪れるというシンギュラリティ(技術的特異点)。AIが人間の能力を超えることで、ビジネスや社会の構図が大きく変わっていく。その中でビジネスチャンスを掴むには、常識に縛られない柔軟な発想が欠かせない。「今までがこうだったから」「普通だったらこうするから」という考えでは新しいものは生まれないだろう。変化する社会の様相に目を向け、人とテクノロジーの関係性を見つめ直すことも重要である。未来志向でものごとを考える。それが新しい可能性を広げていく原点といえるだろう。

 

(取材日 2017.7.20、7.21)

 

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