ソフトバンクとトレジャーデータの協業が生み出す『データ活用の最適解』とは

ソフトバンクとトレジャーデータの協業が生み出す『データ活用の最適解』とは

2018年8月、ソフトバンクグループ傘下の英・Armがトレジャーデータ(Treasure Data)を買収したニュースは、業界の内外を問わず注目を集めた。そして今日、ソフトバンクとトレジャーデータは協業を加速させ、企業のデジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)支援を本格始動するという。その背景には、どのような狙いがあるのだろうか?そして、両者の目指すDX像とはどのようなものだろうか?

ソフトバンク株式会社 法人事業戦略本部 デジタルマーケティング事業統括部 統括部長 藤平氏と、トレジャーデータの創業者・CEOであり、現在はArmのデータビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務める芳川氏に話を聞いた。

■本記事はターゲットメディア社により制作、2019年03月01日に日経ビジネス電子版SPECIALに掲載されたものです。

芳川 裕誠 氏(左)

Arm
IoTサービスグループ
データビジネス担当バイスプレジデント兼
ジェネラルマネージャー

藤平 大輔 氏(右)

ソフトバンク株式会社
法人事業戦略本部
デジタルマーケティング事業統括部
統括部長

協業の取り組みは、技術の裏付けと「社内での確かな成果」があったからこそ

海外メディアでも話題になったトレジャーデータのArmによる買収。2011年にシリコンバレーで誕生した同社のプラットフォームは、国内外含めて300社以上のデータマネジメントをサポートし、ピーク時は秒間200万件以上にのぼる高速でデータ処理を行っているという。そして、かねてよりデジタルマーケティング部門で同プラットフォームの運用を行い、その魅力を実感し続けてきたのがソフトバンクだった。

「実は、ソフトバンクグループの一員になっていただく数年前から、トレジャーデータさんとは一緒にビジネスに取り組んできました。Arm Treasure Data eCDPは『データを貯める』だけではなく、『具体的な施策を打てる』という点が非常に魅力的です。ソフトバンク社内でも本プラットフォームを使って施策を打ち、実際に結果が出ていたため、クライアント企業に提供する上での手ごたえは十分に得られていました」(藤平氏)。

同氏は、「ソフトバンクの技術と企業規模があっても、デジタルマーケティングのリソースを全て自社で賄うことは難しい。そこで、外部との連携を深めようと考えた際に、十分に信頼できるのはトレジャーデータだけだった」とも話す。デジタルの主戦場といえる米国で実績を残してきたトレジャーデータは、日本国内の企業からも確かな信頼を獲得していたのだ。

日本企業が保有するデータの約80%が活用されていない

では、ソフトバンクとトレジャーデータ、両社の協業にはどのような狙いがあるのだろうか。この点について藤平氏は、「ソフトバンクがお客さまのDX支援を行う中で、例え豊富にデータを貯めていても、十分に活かせていない非常に多くの状況を目の当たりにしてきました。日本企業が活かせているデータは全体の20%といわれていますが、残りの80%のデータを活用できない原因のほとんどが“データを活かすためのプラットフォームがない”ということです」と述べる。

藤平氏によれば、昨今、企業の経営陣の大半が「データ活用が進まない」という点に課題意識を持っており、2018年後半だけでもDX支援に関する問い合わせが約150件あったという。DXというテーマが単なるトレンドから経営の必須課題へと変わりつつある今、多くの企業が危機意識を持ち、新たな打ち手を模索している様子が伺える。

トレジャーデータが考える「既存の仕組みを壊さず、活かすためのDX」

続いて、両社が考えるDXのあり方について話を聞いたところ、意外な回答が得られた。「DXの本質は、データ統合(Integration)ではない」というのだ。

「イノベーターズ・ジレンマという言葉にあるように、一度成功を収めた企業だからこそ変えられない点があります。例えば、既存ビジネスのワークフローを変えられないように、替えられないシステムやデータベースも存在します。だからこそ、トレジャーデータでは『データを繋げる、必要なデータを取り出して共有する』という発想に基づいた解決策を提供しています。結果的に、その点がお客さまに支持されていることが多いですね」と、芳川氏。部門別、製品別などでサイロ化されたデータベースを一足飛びに統合するのではなく、目的に応じて効果的にデータを繋げるのだという。「統合」ではなく「接続・連携」を前提としている点は、データドリブンな経営を目指す企業にとっての新たなヒントになりそうだ。

2社の協業が生み出す新たな付加価値

相乗効果をいかに創出するか——。藤平氏によれば、協業が生み出す価値については、キャリアならではの戦略があるという。

「弊社が提供する独自の価値は大きく2つです。一つは、通信キャリアだからこそ持ちえる、契約者の匿名データ。個人情報を除く属性データや、位置情報(ジオデータ)をトレジャーデータ上で掛け合わせ、他社では実現できないリアルな消費者像をあぶり出すことができます。もう一つは、約2,000名のソリューション営業部隊。優れたツールを導入するだけでは差別化が難しい昨今、ロボット、AI、RPA、IoTといったテクノロジーの提供実績を積んだメンバーが、お客さまごとに最適なコーディネートを行います」(藤平氏)。

ユニークなコンセプトを掲げる同社は、BtoB市場の新たな未来を切り開いてくれそうだ。

40万社との法人取引を行う同社は豊富な知見を元に、DXの次の道筋を示そうとしている。

ソフトバンクとトレジャーデータが目指すDXのネクストステージ

相乗効果をいかに創出するか——。藤平氏によれば、協業が生み出す価値については、キャリアならではの戦略があるという。

「2段階目のDXとしては、キャリアの匿名データを活用した施策の実現を、3段階目には『各社の所有するデータのマッチング提案』も見据えています。例えば、流通業とメーカーが所有するデータのマッチングができれば、より具体的な顧客像が浮かび上がり、双方の事業拡大に寄与する提案も可能になるでしょう。データ活用に課題をお持ちの企業様は、まずはお気軽にお問い合わせいただきたいと思います」(藤平氏)。

市場をリードする両社の協業は、これまでクリアできなかった難題に対しても新たな解を提供してくれるはずだ。