まだ入れてないの!? キャッシュレス決済に今対応すべき3つの理由

2019年5月21日掲載

スマホによるキャッシュレス決済市場が過熱している。「PayPay(ペイペイ)」や「LINE Pay(ラインペイ)」「d払い(ディーバライ)」などが仕掛けた還元キャンペーンでQRコード決済が注目を集めたことは記憶に新しい。さらに、2019年は通信や流通の事業者、金融機関などもQRコード決済市場に参入するなど、キャッシュレス決済市場が盛り上がりをみせるなか、決済事業者や消費者だけではなく店舗にとっても、キャッシュレス決済の導入は避けては通れない流れだ。決済ソリューションを提供するSBペイメントサービス株式会社の長田氏・戸枝氏の監修を得て、キャッシュレス決済の最新動向について解説する。

目次

  • 2025年までに日本のキャッシュレス決済比率を4割に
  • キャッシュレス化をさまたげていた「初期コスト」「決済手数料」「入金サイクル」
  • 中小店舗にも広がるキャッシュレス化の波
  • 日本各地に広がる「完全キャッシュレス化」の試み
  • 乱立する決済サービス。いま、店舗がとるべき対応は?

日本のキャッシュレス決済の現状

「キャッシュレス決済」とは現金を使わない支払方法のことで、クレジットカードやデビットカード、電子マネー、スマホ決済、QRコード決済などが含まれる。

現金に対する信頼度が高く、治安がよい日本においては「現金主義」の考えが根強いこともあり、キャッシュレス決済比率は高くない。2018年に経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」によれば、世界のキャッシュレス決済比率をみると韓国89%、中国60%をはじめ、欧米諸国で40〜50%ほどなのに対し、日本は18%と低い比率となっている。

参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」 参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」

近年のインバウンド需要の高まりを受け、世界各国から訪れる観光客の消費を後押しするためにも、国内のキャッシュレス決済推進は急務。政府は大阪・関西万博が開幕する2025年に向けて、キャッシュレス決済比率を現在の約2倍の40%程度に引き上げるという目標を掲げており、キャッシュレス化の波が今後さらに加速していくのは間違いない。

なぜ、日本ではキャッシュレス決済の普及が遅れているのか

では、そもそもなぜ日本ではキャッシュレス決済があまり広まらなかったのだろうか。その理由として次の3つの点が挙げられる。

参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」 参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」

(1) 初期コストのハードル

決済端末購入の費用、インターネット回線の通信料金に加えて、レジ周りに端末を置くためのスペースを確保する必要があり、店舗の負担になっている。

(2) 決済手数料のハードル

クレジットカードの場合、決済代金の約3〜5%の手数料が発生するため、現金払いに比べると店舗の利益が減ってしまう。

(3) 入金サイクルのハードル

クレジットカードの場合、月末締め翌月入金など後日入金のサイクルになるため、現金が店舗の手元に入るまでに長くて1ヵ月近いタイムラグが発生する。入金予定はあっても手元に運転資金がなく、経営が不安定になってしまうケースも。

チェーン展開する大企業ならまだしも、個人経営の店舗にとってはこれらの負担は大きいもの。経済産業省が2016年に実施した「観光地におけるキャッシュレス決済の普及状況に関する実態調査」によると、キャッシュレス決済未対応の理由として一番多かったのが「手数料の高さ」だった。

参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」 参照:経済産業省 2018年「キャッシュレス・ビジョン」

日本におけるクレジットカード手数料は世界的に高いといわれているが、これは関わるプレイヤーの数が多いためだ。クレジットカード決済の場合、カード加盟店を開拓する企業、カード発行会社、VisaやMastercardといった国際ブランドなどさまざまなプレイヤーが関わっており、決済手数料を分配している。

多様化するキャッシュレス決済サービス

長らくカードが席巻していたキャッシュレス決済市場に、近年になり電子マネーが加わり、そしてQRコード決済という選択肢が生まれた。交通、流通、通信などの事業者がキャッシュレス決済サービスを開始し、市場では熾烈なシェア争いが行われている。

SBペイメントサービスが店舗向けに提供している31のブランドのキャッシュレス決済サービス SBペイメントサービスが店舗向けに提供している31のブランドのキャッシュレス決済サービス

新規参入したキャッシュレス決済サービスが競い合うことで、消費者や店舗にさまざまなメリットが生まれている。これまでキャッシュレス決済の導入をさまたげていた初期コスト、決済手数料、入金サイクルという3つのハードル。これらはおもにクレジットカード決済にともなうものだった。しかし、新たに登場したQRコード決済のなかには、クレジットカード会社に頼らない仕組みを構築しているサービスもある。近年、決済サービス事業者は、前述の3つのハードルを超えるべく、サービスを強化している。

(1)導入初期コストがゼロに

導入初期コストの面では、政府がキャッシュレス化の還元事業を発表。中小・小規模事業者を対象に決済端末の導入費用の2/3を国が補助、残りの1/3を決済事業者が負担する※ 。つまり、対象の店舗事業者は事実上、決済端末の購入費用がタダになるのだ。

※2019年10月〜2020年6月までの経済産業省「キャッシュレス・消費者還元事業」利用の場合

(2)決済手数料無料のサービスが登場

決済手数料を無料とする決済サービスが登場。「PayPay」や「LINE Pay」などのQRコード決済サービスは初期費用、月額固定費用、決済手数料をLINE Payは2021年7月末、PayPayは2021年9月末まで無料としている。3年間の期間限定とはいえ、決済手数料がかからないというのは店舗事業者にとってうれしい点だろう。

銀行口座からアプリに直接チャージできる仕組みを採用している場合、クレジットカード会社を通さずに決済が可能となるため、店舗にとっては決済手数料をおさえることにつながる。

また、2019年10月からは消費税増税にともない、前述のキャッシュレス化還元事業として、中小・小規模事業者を対象にキャッシュレス決済で消費者への最大5%還元と、政府による加盟店手数料の1/3補助(加盟店手数料率3.25%以下への引下げが条件)が予定されている。

(3)入金サイクルが短く

入金サイクルが大幅に短縮されたことも特徴。各サービスによって異なるが、数日ごとに締めて1週間程度で入金されるサービスが多い。なかには、最短で翌日入金のサービスも登場。個人経営の店舗にとっては資金繰りをしやすくなり、導入障壁が大幅に下がるといえる。

上記3つのほか、日本のキャッシュレス化をさらに推進する可能性があるのが、2019年3月に発表されたApple Cardの存在だ。これまでwalletアプリにクレジットカードを登録し、Apple Payによる支払手数料を得ていたアップル社は、自らがカード事業者となることで、さらに大きな割合の手数料を得られるようになる。

それを利用者に還元することで、最大で3%キャッシュバックを実現。利用した翌日にはiPhoneのwalletアプリに入金されるという。現時点では日本上陸予定は発表されていないが、上陸した場合は日本のキャッシュレス決済市場にとって大きな衝撃を与えるだろう。

なぜ今、キャッシュレス決済対応をするべきか

決済サービスが競い合うことで、店舗事業者にとってはキャッシュレス決済導入のハードルの大部分が解消されつつある。さらに、キャッシュレス化には以下のようなメリットもある。

(1)購買単価が高くなる

現金に比べると、財布の残金を気にせずに購入できるキャッシュレス決済のほうが、購買単価が高くなる傾向がある。また、各社が実施している還元キャンペーンや、消費税増税のタイミングでスタートする5%還元策などによって、消費者の購買意欲はさらに高まることが予想される。

(2) 機会損失を回避

「キャッシュレス決済に対応していないから購入を諦めた」という消費者は多い。現金以外の支払方法の選択肢を消費者に提供することで、購入の機会損失を回避することができる。

(3)業務の効率化

キャッシュレス決済の導入で現金管理の手間やリスクが減り、日々の業務の効率化を図ることができる。残高の確認、釣り銭の用意、銀行への入金などの手間が減るほか、売り上げも管理ツールなどで集計できるので管理の手間も省ける。

中小店舗で進むキャッシュレス化

現在、中小規模の店舗では現金決済のみとし、キャッシュレス決済に対応していない店舗が少なくない。しかし、世の中のキャッシュレス決済の需要が高まるにつれ、導入を検討している店舗事業者が増えているという。

決済代行サービスを手がけるSBペイメントサービスの長田氏は次のように話す。

「政府の推進策もあり、これまでは現金決済のみだった中小規模の店舗事業者からの問い合わせが増えています。クレジットカードも含めてキャッシュレス決済自体を初めて導入するというケースも。とくに地方の大都市や観光客が多いエリアではインバウンド対応として導入が相次いでいます。近隣の店舗がキャッシュレス決済を導入した、来店するお客さまから『使えないんですか?』と直接言われたことなどがきっかけとなって、いよいよ対応しなければと本腰を入れる店舗事業者が増えているようです」

また、すでにクレジットカードやSuicaなどの電子マネーを導入している店舗でも、新たにQRコード決済の導入を検討しているケースがあるという。

QRコード決済をはじめ、さまざまなキャッシュレス決済環境が整えば、「キャッシュレス決済に対応していない店舗は選ばない」という消費者が増えていくだろう。近い将来、中小の店舗事業者にとっても、利益を出していくためにはキャッシュレス決済対応が不可避となる日がやってくるはずだ。

キャッシュレス決済の最新事例

キャッシュレス化をめぐる現在の議論は現金のほかに決済手段を追加するというレベルのものだ。しかし、「Amazon Go」のような無人店舗が社会実装されたとき、キャッシュレス決済は決済のスタンダードになる可能性がある。完全キャッシュレス化に向けた新しい取り組みはすでに日本各地でスタートしている。

【事例】現金不要の複合リゾート施設「i+Land nagasaki」

長崎県の伊王島にある複合型リゾート施設「i+Land nagasaki(アイランド ナガサキ)」(運営:株式会社 KPG HOTEL&RESORT)では、パートナー企業と協業しSBペイメントサービスの決済サービスを導入。施設内での都度の利用料金のデータをリストバンドに印字したQRコードに蓄積し、最後に利用料金をまとめてクレジットカードや電子マネーで支払うことができるというものだ。

SBペイメントサービスの長田氏はサービス導入のメリットを次のように話す。

「従来のアミューズメント施設では、入園チケットの支払いはキャッシュレス決済が利用できますが、園内での支払いは現金のみというケースが多くありました。来園者は結局財布を持っていなければいけなかったんです。『i+Land nagasaki』のケースでは、入園時にリストバンドを発行することで園内での支払いもすべてキャッシュレス決済で完結することができます。来園者は財布を持たずにアクティビティを楽しめるようになり、新しい体験を提供できる点が魅力。施設内の決済データが蓄積することでマーケティングにも活用できます」

こうしたキャッシュレス決済対応を進めるエンターテインメント施設は今後ますます増えていくことが予想される。また、大手コンビニや飲食チェーン店などでは、完全キャッシュレスの実証実験が進められている。

日本のキャッシュレス化への道筋

決済サービスの拡大によってキャッシュレス決済市場が広がりを見せているが、諸外国と比較し、日本ではさまざまなサービスが立ち上がり、乱立している状況だ。これでは店舗にとってどのサービスを選べばいいかわからないという懸念もある。

また、複数の決済サービスや規格に対応しようすると、課題となるのが管理の複雑さだ。QRコード決済を導入したくても数が多すぎてどれを選べばいいかわからない、サービスごとに専用端末やQRコードを用意し、それぞれの管理画面を確認する必要があるといった点が新規導入の障害になっている。

そこで活用したいのが決済代行サービスだ。1つの端末で各社のクレジットカード、電子マネー、QRコード決済などをまとめて利用でき、管理画面も一元化できるため、店舗は少ない負担でさまざまな決済手段に対応できる。さらに、新しい決済手段に対応する際も、店舗には大きな手間がかからない。

インバウンド需要の高まりとともに、現金社会だった日本も今まさにキャッシュレス化への開国を迫られている。サービスが乱立している現状から、いずれサービスは競争に勝利したいくつかのものに集約されていくだろう。過渡期である今とるべき対策として、決済代行事業者に一括でとりまとめを依頼するのも一考だ。

■後記

今後数年間、キャッシュレス決済をめぐる環境はめまぐるしく変化していくことが予想される。そうした中で、あらゆる消費者のニーズに応えるためにはさまざまなキャッシュレス決済に対応することが必要となるが、企業にとっては運用面でもコスト面でも負担が大きい。

SBペイメントサービスではオンラインとオフライン(店舗向け)双方のあらゆるキャッシュレス決済に対応。各社の決済サービスを一括で提供でき、店舗とオンラインショップの両方を企業ごとの要望に合わせて提案することも可能だ。

・「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
・Apple、Apple Pay、Apple Card はApple Inc.の商標です。
・その他、本記事に記載されている会社名および商品・サービス名・ロゴは、各社の商標または登録商標です。

■監修

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