自治体、三菱地所、フィリップス、Yahoo!……MONET「日本版MaaS」を共創する“仲間”が集合|MONETサミット講演レポート 後編

自治体、三菱地所、フィリップス、Yahoo!……MONET「日本版MaaS」を共創する“仲間”が集合

  • 自動運転車『e-Palette』(イーパレット)はサービスそのものを届ける“サービスの移動”
  • 全国の自治体、88社の企業が連携する日本連合
  • 「通勤」「ヘルスケア」「保険」「交通決済」、MaaSがもたらす社会変革

(2019年5月21日掲載)

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MONETが日本連合で目指す、MaaSプラットフォーム戦略とは

2019年3月28日、東京・六本木のグランドハイアット東京で開催された「MONETサミット」。MONET Tehcnologies株式会社(モネ・テクノロジーズ) 代表取締役社長 兼 CEO・宮川潤一氏のセッションの後、同社・山本圭司氏と柴尾嘉秀氏が登壇。来場した自治体・企業の約600名に向けて、自動運転車『e-Palette』(イーパレット)のコンセプトとMONET Technologiesの「仲間づくり」の施策について語られた。両者のセッションに加え、サービス事業者によるショートセッションの内容を、MONETサミットの展示内容とともに紹介する。

究極の“ジャスト・イン・タイム”を提供する自動運転車『e-Palette』コンセプト

山本圭司 MONET Technologies株式会社 取締役(トヨタ自動車株式会社 常務役員)

山本 圭司 氏

MONET Technologies株式会社(モネ・テクノロジーズ) 取締役
(トヨタ自動車株式会社 常務役員)

トヨタ自動車が2018年に発表したコンセプトムービー「e-Palette Concept」の上映から始まった山本氏のセッションでは、MONET Technologiesのサービスの1つとして市場に投入される自動運転車『e-Palette』の展望が語られた。

「自動運転車『e-Palette』とは、電動化・コネクテッド化・自動運転化を融合した社会共有型のモビリティです。サービサーのニーズに応じ、カーシェア・ライドシェア・物販・運搬など、『絵の具のパレット』のようにあらゆるサービスに対応し、さまざまなビジネスシーンに貢献します。『ヒトの移動』や『モノの移動』に加え、サービスそのものをお客さまのところにお届けする——そんな『サービスの移動』を実現する、究極の『ジャスト・イン・タイム』のモビリティサービスを目指しています」

自動運転車『e-Palette』にはいくつかの特長がある。まずは用途に応じて変幻自在に変えられる低床・箱型デザインで、サービサーが使い方を自由にアレンジできる点。また、さまざまな領域にまたがるオープンAPIにより、異業種間のサービス連携が可能で、時代の変化に応じた柔軟性を兼ね備えている点。さらには制御インターフェースを整備することで、サービサーのニーズに合わせ、自動運転・半自動運転・マニュアル運転等、さまざまな運用方法を選択できる点などだ。

「e-Palette concept」の早期実現

「こうした自動運転車『e-Palette』のコンセプト実現のため、我々は自治体・企業の皆さまとの接点を拡げます。同時に、現在実証実験を進めているオンデマンドサービスの展開を図り、2023年以降に自動運転車『e-Palette』を市場に投入したいと考えています。そのためにも自動車メーカーとの連携を通して車両ラインナップの充実も図りながら、モビリティ版エコシステムの構築にも尽力したい。

自動車業界は100年に一度の変革を迎えようとしています。皆さまとの連携を通じて、人々の生活のあり方が変わる、まちの景色が変わる——そんな新たな時代を一緒に築いていければ、と考えています」(山本氏)

MONETが推進する仲間づくり——自治体連携+コンソーシアム設立

柴尾嘉秀 MONET Technologies株式会社 代表取締役副社長 兼 COO(トヨタ自動車株式会社 コネクティッドカンパニー MaaS事業部 主査)

柴尾 嘉秀 氏

MONET Technologies株式会社(モネ・テクノロジーズ)
代表取締役副社長 兼 COO
(トヨタ自動車株式会社 コネクティッドカンパニー MaaS事業部 主査)

山本氏の後を受けて登壇した柴尾氏からはMONET Technologiesによる「仲間づくり」の展望が語られた。

「高齢化が進む日本において、免許返納者の数は大幅な増加が見込まれます。これまでは自らの意思によりドアツードアで外出できた方々が、自由な移動手段を失うのです。MaaSはそんな課題を抱える一人ひとりに寄り添うライフパートナーになります。

そして、その社会実現のためには 『仲間づくり』が不可欠。ここにいる皆さまとともにMaaS実現に向けた取り組みを行っていきたい」

そうした「仲間づくり」の具体的施策の1つが、全国各地で進められている実証実験である。MONET Technologiesが150自治体と話を開始した結果、地方では「自家用車依存と高齢者の課題」、都市部では「渋滞や混雑の解消」、さらに全国共通の課題として「バスドライバーの不足」「データの利活用ができていない」などが見えてきたという。2018年度までに17の自治体と連携しており、柴尾氏からは豊田市、横浜市、福山市との実証実験のほか、新たな実証実験として名古屋市との取り組みも紹介された。

会場に訪れていた名古屋市長・河村たかし氏
会場に訪れていた名古屋市長・河村たかし氏

また、もう1つの「仲間づくり」の具体的施策として、2019年3月28日時点で88社が参加している「MONETコンソーシアム」についても柴尾氏は言及。コンソーシアムの活動内容の1つである「自動運転を見据えたMaaS事業開発」について、3つの観点で詳しく紹介された。

1.サービス企画
各分野におけるMaaS事業企画を具体化。サービスの市場性や事業環境の整備、「MONETプラットフォーム」の具体的活用方法等の協議を進める。さらに分野を超えたサービス事業者同士のマッチングも推進。複数の分野のサービス、移動手段を掛け合わせることで、さらに進化した顧客体験づくりを進める。

2.車両企画
実際の車両(自動運転車『e-Palette』)を用意し、サービス企画に必要な車両空間・室内空間の設計・開発を行いながら利用者のニーズを検証する。ここで得た車両企画の知見は自動運転車両にも生かされる。

3.データ連携
MONET Technologiesが保有する人流データと車両データに加えて、サービス事業者が保有するデマンドデータを「MONETプラットフォーム」に連携させ、利用者一人ひとりのニーズに寄り添ったサービス提供を可能とする。連携が必要なデータ項目や連携方法についても検討する。

セッションの最後に柴尾氏は来場者へこう呼びかけた。「『MONETコンソーシアム』では、サービス事業者様のMaaS事業開発と自治体様の課題解決のマッチングも支援します。MONETを含めた三者の力を掛け合わせた共創により、MaaSのエンジンをスタートさせ、より豊かな社会を実現していきましょう」(柴尾氏)

MONETコンソーシアムに参画するサービス事業者との共創事例

MONETサミットでは、柴尾氏のセッションのなかで挙がった「仲間づくり」の具体的な施策例として、三菱地所(オンデマンド通勤シャトルの実証実験)、フィリップス・ジャパン(ヘルスケアモビリティ)、Yahoo!(Yahoo!とのデータ連携)の3社によるショートセッションも行われた。

太田清 三菱地所株式会社 DX推進部 部長

太田 清 氏

三菱地所株式会社
DX推進部 部長

三菱地所DX推進部は「家とオフィスをつなぐ」をキーワードに、モビリティの進化が街に及ぼす変化と、街が求める機能の研究、移動時間を価値ある時間に変革するための実証実験を開始した。具体的には「子育て中は移動が困難」「満員電車での移動による疲労」「移動時間を有効に活用できていない」などの課題を持ったビジネスパーソンやワーキングパパ&ママを対象に、東京・丸の内エリアで朝と夕方、オンデマンド通勤シャトルを走らせたところ、利用者の反応も上々だったという。「交通事業者や小売・ホテルなどのサービサーの皆さまと連携したエコシステムを構築し、それぞれのアセットをシームレスにつなげ、快適な顧客体験を提供したい」(太田氏)

堤浩幸 株式会社フィリップス・ジャパン 代表取締役社長

堤 浩幸 氏

株式会社フィリップス・ジャパン
代表取締役社長

不足する医療施設・医療従事者、加速する高齢化、肥大化する医療費等の社会的問題を背景に、フィリップス・ジャパンは「MONETプラットフォーム」とモバイル・モビリティを活用した「ヘルスケアモビリティ構想」を掲げている。「コンセプトはすでにできています。まずはただちに自治体の皆さまとの協議を開始し、2019年度中にはサービスを開始したい。さらにその先においても、MONET Technologiesおよび『MONETコンソーシアム』参加企業の皆さまとともに、順次、サービスを横展開しながらラインナップを拡張させていきたい」(堤氏)

なお、同社のヘルスケアモビリティ車両は、会場でも展示された。

宮沢弦 ヤフー株式会社 常務執行役員 メディアカンパニー長

宮沢 弦 氏

ヤフー株式会社
常務執行役員 メディアカンパニー長

Yahoo!ではYahoo!乗換案内、Yahoo!地図、Yahoo!カーナビという3つのサービスを展開している。累計アプリダウンロード数は6,800万以上。こうした移動に関するユーザのデータ基盤を「MONETプラットフォーム」と連携させることで、「目的地付近の駐車場を自動で検索し予約できるシステム」「優良運転者ほど保険料が割引されるPHYD(pay how you drive)型保険の実現」「電車・バス・タクシーなどの座席確保の利便性向上」や「ダイナミックプライシングの導入による交通運賃の値下げ」などが実現できると宮沢氏は話す。「移動の手間が圧倒的に楽になり、時間も圧倒的に早く、費用も圧倒的に安くなる——。Yahoo!のサービスをタッチポイントに『摩擦係数ゼロ』の移動を実現したい」(宮沢氏)

MaaSによる未来のモビリティの姿を展示

MONETサミットでは各セッションのほか、自動運転車『e-Palette』の内装・外装モックアップなど、いくつかの展示物が披露された。最後に、その一部を紹介する。

●自動運転車『e-Palette』の外装モックアップ
自動運転車『e-Palette』の外装モックアップ
トヨタ自動車が2023年以降の市場投入を目指す自動運転車『e-Palette』。外装は液晶表示も可能。MONET Technologiesの宮川氏は「MaaSが爆発的に普及する鍵」だと話す。
●自動運転車『e-Palette』の内装モックアップ
自動運転車『e-Palette』の内装モックアップ
サービサー(サービス事業者)の需要に合わせて内装もカスタマイズできる。写真は自動運転のコーヒー販売店。このほかにも社会的ニーズに対応したさまざまなサービス創出が期待できる。
●フィリップス・ジャパンの「ヘルスケアモビリティ車両」の実装例
フィリップス・ジャパンの「ヘルスケアモビリティ車両」の実装例
ヘルスケアモバイル車両。オンデマンドでの予約や利用者データの蓄積、利用者ニーズに合わせたサービス提案が行われるほか、健康コンサルティング、簡易クリニック、ヘルスケア製品・デバイスの提供、AEDの搭載・配送も行うという。
●データ可視化アプリケーション
データ可視化アプリケーション
車両データと、人流・移動・人口分布・車両位置・交通渋滞などのデータを掛け合わせることでデータの価値化を図る「データ可視化アプリケーション」。起点終点情報・リアルタイム降水情報・人口密度情報などが可視化される。
●MONET Technologiesの予約システム
MONET Technologiesの予約システム
オンデマンドバスの実証で使われる予約システム。スマートフォンアプリのほか、ボタンを押すだけでオペレータから利用者へ電話がかかって予約ができる、ボタン型デバイスも。また、Amazon Alexa搭載デバイスからは音声での予約が可能。

後記

MONET Technologiesが目指すMaaSプラットフォームは、企業の1つの事業にとどまるものではなく、未来の日本を支える基盤とも言うべきインフラだ。自治体との連携により、日本が抱える課題にアプローチする。そしてそれを実現する「仲間」には、本来競合関係にある自動車メーカーどうしの連携も含まれる。これこそがMONET Technologiesが理想とする日本連合だ。

既に各国で実績を有する海外のMaaSプラットフォーマーの日本市場への参入も報じられているなか、日本連合によるMaaSがどのように結実するのか。今後の動向を注視したい。

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