【ソフトバンクCEO宮内謙】日本企業復活の鍵は「データ活用」にある | SoftBank World 2019

Digital Japan 今、テクノロジーで日本を変える
  • 3つのキーテクノロジー「5G」「IoT」「AI」
  • デジタル変革の鍵はデータの一元化
  • デジタライゼーションは企業だけでなく社会課題も解決する

「日本企業復活の鍵は『データ活用』にある」——。ソフトバンクCEOの宮内謙氏がSoftBank World 2019のDay2基調講演に登壇。「Digital JAPAN」というビジョンを掲げ、「5G、IoT、AIの3つのキーテクノロジーを活用した徹底的なデジタル化が日本企業の成長を加速させる」と語った。

また、講演では複数のゲストスピーカーが登壇。企業のデータ活用を推進する取り組みや、テクノロジーを活用した社会課題解決の取り組みなどの事例が紹介された。ソフトバンクはいかにして「Digital JAPAN」の実現を目指していくのか。日本の未来について熱く語られた基調講演の内容を紹介する。

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宮内謙

ソフトバンク株式会社
代表取締役 社長執行役員 兼 CEO

あらゆる産業がデジタルで再定義されていく

あらゆるテクノロジーがシンクロナイズしている現代において、宮内氏が3つのキーテクノロジーとして挙げたのが「5G」「IoT」[AI」だ。

宮内氏は先日、韓国ですでに展開されている5Gのサービスを体験したという。「8K映像のVRを体験したのですが、すごい。日本でも一気に広がる、と確信しました」と話すように、5Gは世の中を大きく変える可能性を秘めている。

ネットワークの速度は5Gになると10Gbpsを超え、遅延は1ms以下。2035年には年間で生産されるデバイスは2,000億個、20年間で合計1兆個に到達することになる。

データ量は20年間で2,450倍になり、一人当たりのデータインタラクション数は2025年には1日約5,000回にものぼると想定され、それは18秒に1回データが行き来することを意味しており、AIの画像認識率はもはや人間を超えている。

こうした中で、世界は今後どう変わっていくのだろうか。

「世界では、あらゆる産業がデジタルによって再定義されています。10年どころか、5年先でも大きな変化が起こるでしょう」(宮内氏)

すでに、アメリカではGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)と呼ばれる企業がテクノロジーによって、小売と広告の世界を再定義した。今後は、5G、IoT、AIによって全産業が革新されていくだろう。

アクセンチュアのデータによれば、2030年にIoTによって生まれる新たなマーケットは全世界で1,534兆円にのぼるという。それぐらい大きなビジネスインパクトがテクノロジーによって生まれる。

「すでに新たなデジタルプラットフォーマーが世界中で生まれています」と語る宮内氏。

その一例として、全工程のデータを一元管理することで工期を大幅に短縮する建設会社「Katerra」、AIで最短経路を算出し、配達時間を正確に通知するフードデリバリー企業「DoorDash」などを紹介した。

「いずれも既存のサービスにデジタルデータやAIを掛け合わせることで、新たな価値を創出しました。日本企業の多くも、いずれかの事例と共通する部分があるはずです」(宮内氏)

各産業のトップ企業がデジタル化すれば必ず成功する

では、世の中が急速に変化する中で、日本企業が成長していくためには何が必要なのか。

「残念ながら、デジタル変革において日本は遅れています。データGDPはチェコに次ぐ11位。時価総額50位以内に入る日本企業は1社のみです。日本企業は製品やサービスの質は高いですが、一方で開発・生産コスト、マーケティング・販売の分野でデジタル化が進まず弱点となっているケースが多い。

日本企業が復活するために何が必要なのか。その鍵は『データの活用』です。成長戦略も構造改革も、徹底的にデジタル化することで一気に加速します。

そう言うと、『データはすでに集めている』とみなさん思うかもしれません。しかし、マーケティング、営業など、それぞれの部門がデータを持ってはいるものの、全てを一貫したデータになっていないというのが多くの企業の実態です。リアルとバーチャルのデータを一元化している事例はまだ少ない。ここが肝です。

各産業分野に詳しい企業がテクノロジーを掛け合わせ、データの一元化を果すことができれば、確実に成功するはずです」(宮内氏)

ソフトバンクでは今後、企業のデータ活用を積極的に支援していくという。宮内氏はデータ活用支援の取り組みとして、Arm Limited社とヤフーを紹介。2社によるプレゼンテーションが行われた。

「カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)」で顧客を理解する

芳川裕誠

Arm Limited
バイスプレジデント
データビジネス担当 ジェネラルマネージャ

「企業では部門ごとにデータがサイロ化され、活用が限定的になりがちです。データを統合し、膨大なデータから顧客像を明確につかまなければ、デジタルネイティブであるディスラプター企業に太刀打ちできません。

我々が提供しているArm Treasure Data eCDPはこうした課題を一気に解決するサービスであり、国内のカスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)のマーケットシェア92.3%を占めています。

必要なデータ自体はすでに企業が持っているケースが多い。そこでまず、アクセスポイントや購買状況、デバイスなどバラバラに管理されているあらゆる顧客データをArm Treasure Data eCDPに格納します。数百のデファクトスタンダードのソフトと連携しているため、データを入れるだけですぐに解析が可能です。これまでは、デジタルとフィジカルの掛け合わせが難しかったのですが、CDPを活用することで逆に新しいビジネスイノベーションが生まれます。

Arm Treasure Data eCDPの用途は販売に留まりません。CDPは業務の全てをアップデートし、あらゆるデジタルトランスフォーメーションを可能にします。今動くことで、将来の果実を確実に得ることができるのです」(芳川氏)

データの力で日本を活性化する「DATA FOREST構想」

宮澤弦

ヤフー株式会社
常務執行役員 メディアカンパニー長

「ヤフーが提供するサービスは100以上、月間ログインユーザは4,800万人以上、月間ページビューは700億を超えます。ヤフーでは、検索や決済などから得た膨大なデータを、約500人のデータアナリストが分析。これまで自社サービスに活用してきました。

しかし、ヤフーは国民的サービスともいえる存在。この膨大なデータは国民資産でもあります。そこで、より多くの会社にデータを活用していただくべく、我々が立ち上げたのが『DATA FOREST構想』です。膨大な検索データからはユーザの興味関心がわかるほか、AIを使うことで未来予測も可能です。

これまでマーケティングの領域ではデータの活用が進んでいますが、さらに上流工程である商品開発、生産、物流など、あらゆる領域に拡大して使っていただきたいと考えています。また、防災や災害支援、都市計画の分野などでもデータを活用していただくことができます。

企業や自治体に提供されるデータは、消費者の興味関心を示したデータや、エリア人口や移動状況など。また、サービス導入にあたり、コンサルティングサポートサービスも実施する予定です。

サービス提供開始は2019年10月の予定。日本のためにデータエコシステムを構築し、より豊かな暮らしの実現を目指していきたいというのが我々の考えです。データを積極的に活用して、共に豊かな未来を実現していきましょう」(宮澤氏)

デジタライゼーションで社会課題を解決する

2社のプレゼンテーションによれば、デジタル化を進め、バラバラで管理されているデータを一元化することで、企業活動は劇的に変わっていくという。さらに、「デジタライゼーションは企業活動のみならず、社会課題の解決にも役立つ」と宮内氏は語る。

近年、日本は交通渋滞、自然災害、高齢化、労働人口の低下などさまざまな社会課題に直面しており、それによる経済損失は膨大だ。こうした中、ソフトバンクはテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指していくという。

基調講演の中盤では、社会課題の解決に挑むソフトバンクおよびソフトバンクの関連企業の取り組みを紹介。5人がプレゼンテーションを行った。

需要と供給を移動でつなぐ「目的型MaaS」を目指す

宮川潤一

ソフトバンク株式会社
代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO
MONET Technologies株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

「少子高齢化が進む日本では買い物困難者、高齢者の危険運転など移動における課題が山積みです。こうした課題解決に本格的に取り組むため、ソフトバンクはトヨタ自動車と共同でMONET Technologiesを作りました。

MONETはプラットフォーマーです。自動車は各社で仕様が異なるため、各社のデータをMONETのプラットフォームが翻訳し、サービスに必要な地図、ドライバー情報などをコンポーネントの形で提供していきます。現在、国内8社の自動車メーカーが資本参加。日本を走る自動車の約8割、約6,000万台をプラットフォーム化したいと考えています。

4年後には自動運転が登場するでしょう。しかし、日本には自動運転を受け入れる素地がありません。MONETは現在、20の自治体と連携してオンデマンド交通の実証実験を進めているほか、遠隔医療の取り組みを進めるなど、今は自動運転社会に向けての素地作りを進めています。

さらに、我々はMONETコンソーシアムを設立。参加企業は現在300社以上です。MONETが目指すのは、需要と供給を移動でつなぐ『目的型MaaS』。サービスが人のほうに寄っていくというのもMaaSの1つの考え方です。

1つ、事例を紹介します。コカ・コーラの『オンデマンド・モバイル自動販売機』は、倉庫にて自動補充し、需要のある場所、時間に自動運転で移動するというサービス。

同じような考えで、オフィスやトイレ、コンビニ、喫煙所などが需要のある場所に自ら移動するサービスが考えられます。しかし、従来の不動産が可動産に変わるため、実現するためにはさまざまな規制にぶつかります。

『目的型MaaS』の普及に向け、官公庁と相談しながら課題解決に取り組んでいきます」(宮川氏)

テクノロジーで減災に挑む。地滑りを検知するシステム

河西慎太郎

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部 本部長

「ソフトバンクでは2年前にデジタルトランスフォーメーション本部ができました。我々のミッションは2つ。日本の社会課題に対峙すること、ソフトバンクの次の柱になる事業を創出することです。

現在進行している35件の新規事業プロジェクトのうち、17件は2020年度中に収益化する予定です。その中でも、パシフィックコンサルタンツと業務提携を行い、スマートインフラソリューションの開発を進めている事例を紹介します。

その1つが、土砂災害を発生前に検知するシステムです。2018年7月に起きた西日本豪雨の被害額は1兆940億円。昨年発生した土砂災害発生件数は3,459件と過去最多になりました。しかし、現状では土砂災害が発生してから発覚するケースが多い。

そこでソフトバンクでは、テクノロジーを使って発生前に検知する取り組みを始めています。高周波を活用し、斜面のズレをミリ単位でリアルタイムに検知。この技術はトンネルや橋梁の検知にも応用でき、点検作業の効率化にも期待しています。

我々はAI、IoT、データを活用して最適な公共インフラの設計、開発を目指しています。災害対策、減災などの社会課題をパートナーとの共創によって実現していきます」(河西氏)

AIで進化するリアルタイム地図が、Yahoo! JAPANのマップに採用

Eric Gundersen

Mapbox Inc
CEO

「Mapboxはリアルタイムのデータプラットフォームです。開発者は自分たちが考えるデザインのマップをカスタマイズして作ることができ、登録している開発者は165万人、月間アクティブユーザは6億人に上ります。

特長はAIを活用して世界で起きていることをマッピングできること。より多くのデータが集まることでより賢くなり、最適な地図へとアップデートされます。AIによって、匿名化されたリアルタイムの情報を誰もが手軽に手に入れることができるのです。

我々は日本の位置データプロバイダーであるゼンリンとパートナーシップを提携しました。ゼンリンの地図データを統合することで、地図のカバー率は劇的に向上します。

Yahoo! JAPANもMapboxを採用。この秋から新しい地図データを提供します。あらゆるデータが可視化された新しい体験を皆さまに提供していきます」(Gundersen氏)

徹底的な業務効率化を図る「デジタルワーカー4000プロジェクト」を推進

上永吉聡志

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部 副本部長 兼 RPA推進室 室長

「ソフトバンクでは現在、『デジタルワーカー4000プロジェクト』を進めています。

業務プロセスの再定義とデジタルツールの徹底活用によって、真のデジタルワークプレイスを構築する、まさに史上最大級の業務改善プロジェクトです。

このプロジェクトの最終目的地は、お客さまの課題解決につなげること。そのために、『会議が長い』『報告業務に時間がかかる』など1000以上の現場の声を集約し、お客さま目線で課題を抱えている具体的な業務を特定します。

そして、本来あるべき仕事のあり方を徹底的に追求し、実現していく。

例えば、当社のコンシューマ事業部の営業部門では、店舗からの問い合わせ対応に1日2時間かかっていました。しかし、チャットボットを導入したことで、これまで30分かかっていた検索作業が5秒で終わるようになりました。他にも、登録業務やチェック作業の大幅短縮が実現。こうした取り組みを現在は他部門に横展開しています。

ソフトバンクはICT企業です。生産性を高め、お客さまにとって付加価値の高いカスタマーリレーションマネジメントを追求していきます」(上永吉氏)

AIでサイバー攻撃を瞬時に検知する最新セキュリティ

Lior Div

Cybereason Inc.
Co-Founder & CEO

「日本国内のサイバー攻撃件数は5年間で16倍に跳ね上がりました。デジタル化に伴い企業のセキュリティリスクはますます増大しています。

Cybereasonが提供するセキュリティは軍事レベルのテクノロジーを搭載し、AIがサイバー攻撃をリアルタイムで検知、対応し、さまざまなサイバー攻撃に対抗します。ハッカーの攻撃は長期にわたってシステムに潜伏したり、ノイズに隠れて攻撃したりなど、近年巧妙化しており、攻撃されていることに誰も気づかないケースも増加。セキュリティソフトを入れているからといって安全とは限りません。

ハッカーは必ず痕跡を残します。Cybereasonのシステムはそのわずかな痕跡をたどることが可能です。企業はサイバー攻撃に対し100%対応しなければなりません。我々は日本企業の強力なパートナーとして、安全にデジタル化を進めるサポートをしていきます」(Div氏)

基調講演の最後に、宮内氏は「真の『Digital JAPAN』を実現するために、グループ企業と力を合わせて取り組んでいく」と力強く語った。

デジタル化の波は止まらない。今後、日本企業はどのような選択をするのだろうか。そして、ソフトバンクはどのように日本を変えていくのか。確かに言えることは、企業は変革のチャンスを逃してはならないということだ。

後期

今回の基調講演では、5Gの本格的な開始を間近に控え、これまでは少し先の未来として語られてきたデジタライゼーションがいよいよ現実のものとなってきたことが、いくつかの事例と共に伝えられた。

「MONET」を紹介した宮川氏は「今日の挑戦が未来の常識になる」と語った。テクノロジーによって時代が大きく変わりつつある今、企業が成長を続けていくためには立ち止まらずに進み続けるしかない。

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