DX(デジタルトランスフォーメーション)時代、日本企業が打つべき「次なる一手」は? | SoftBank World 2019

デジタルトランスフォーメーション時代、日本企業が打つべき「次なる一手」は? | SoftBank World 2019

(2019年10月18日掲載)

  • ソフトバンクのDX(デジタルトランスフォーメーション)部門は共創による新規事業創出に注力
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)部門からは新規ビジネスが今、生まれようとしている
  • グローバル企業各社もDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連したテーマで登壇

DX(デジタルトランスフォーメーション)がビジネスの大きなテーマとなるなか、企業はどのような「次なる一手」を打つべきか——。DAY1、DAY2に行われた分科会および特別講演の数々では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」をテーマとした議論も繰り広げられた。7つの講演から振り返る。

ソフトバンクのオンラインヘルスケアサービス戦略

大石怜史 ソフトバンク株式会社 デジタルトランスフォーメーション本部 ビジネス ストラテジスト

大石 怜史

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション(DX)本部
ビジネス ストラテジスト

DX本部の対象領域のひとつが医療・ヘルスケア。労働人口の低下、出産による退職、生活習慣病治療のための通院・休職・退職者ならびに医療費の増大等に端を発した経済損失のインパクトは大きく、「家庭・職場」「医療機関・医療従事者」「国の社会保障」の各方面で大きな課題やストレスが頻出しています。DX本部はヘルスケア領域においてあらゆるステークホルダーが抱える課題をテクノロジーの活用により解決し、幸福で理想的な社会を構築することを目指しています。

ソフトバンクのDXで目指す社会像

いつでもどこでも健康に関する悩みや不安を相談ができる拠り所を「一気通貫のオンライン・ヘルスケア・プラットフォーム」という形で提供します。生活者は日常生活ではスマホアプリ上で健康増進対策を行い、疾病時には同じアプリでオンライン相談サービスも受けられます。もちろん妊娠・出産・子育て期のお母さんやお子さんの健康相談も対象です。

医者にかかったほうがよいと判断されれば、最適な診療科を案内・アプリ内で診察予約。市販薬等での療養で済む場合は、ECモールで必要な薬を購入。このような一気通貫のサービス提供を目指しています。

一気通貫のヘルスケアプラットフォーム

現状はさまざまな法規制がありますが、将来的にはオンラインでの診療や調剤の支援にも携わるロードマップを描いています。

医療という人の生命・身体に関わるサービスであり、知見を持った専門家によるサービス提供が不可欠であるため、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・保健師といった専門人材確保も行っています。

両利きの成長戦略
~ソフトバンクにおける新規事業創造~

河西慎太郎 ソフトバンク株式会社 デジタルトランスフォーメーション本部 本部長

河西 慎太郎

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション(DX)本部
本部長
北村昌英 アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター

北村 昌英

アクセンチュア株式会社
戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター

DX本部のとるアプローチは、自力で新たな事業を検討する「0→1」ではなく、パートナーとなるお客さまと事業を共創する「1→100」のアプローチです。パートナー企業との共創による本業の価値向上と、エコシステム構築を理想とした「B2B2C」のビジネスを目指しています。

例えば物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)では、サプライチェーンの全てがデジタル化のターゲットとなります。特に下流にある「基幹配送」から「受渡し」までの個別サービスをパートナー企業との共創で組み合わせれば、新しい配送サービス——ひいては物流にまつわる社会課題解決も実現できるでしょう。

物流改革に向けた取り組みとして、すでにイオン九州株式会社との共創も始まっており、配送マッチングサービスの実証実験も行っています。

サプライチェーンのデジタル化

現在社内ではこうした「事業計画付き」のプロジェクトが35案件進行中で、2020年度にはそのうち17案件が収益化する予定です。

新規事業を成功に導くうえで、DX本部が意識しているのは、ソフトバンクの「出島」になってはならないということ。新規事業の新会社を設立するのではなく、あえて社内に創設することで、既存事業とのシナジーを生み易い状況をつくることができる。そして、ソフトバンクの既存事業を熟知した人材が新規事業に取り組むからこそ「両利きの成長環境」は醸成できるのです。

創設から約2年間、ソフトバンク社内から営業やSEから人材を選抜してきましたが、今後DX本部は開発案件の増加に備え、新規事業専任のエンジニアも増員予定です。120名から始まったDX本部は2019年7月現在140名規模に拡大していますが、今後300名規模の組織へ進化させていく予定です。

ソフトバンクのデジタルトランスフォーメーション本部

河西氏のプレゼンテーション後、アクセンチュア北村氏よりビジネスの競争ルールが「従来型のビジネスモデル」から「プラットフォーム型のビジネスモデル」へ変化しているとの言及があった。

中でも特に「情報量」や「需要サイドのスケール」という点で、どのように「ソフトバンクらしさ」を示していくか、という北村氏からの問いに対して、河西氏はヤフーの連結子会社化を例に挙げ、グループ全体の情報量とそのデータを産業のために活用していくことを強調した。

また、「0→1」ではなく「1→100」をやるという中で、どのようなアライアンスのイメージを持っているのか、もしくはエコシステムを築いていくのかという問いに対しては、ソフトバンクグループのエクジットベースのビジョンファンドとは違い、我々のパートナーとは事業シナジーベースで共に汗をかき事業を大きくしていきたいという思いを語った。

エンタープライズセキュリティに対応し進化するCDP

芳川裕誠 Arm Limited IoTサービスグループ データビジネス担当 バイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャー

芳川 裕誠

Arm Limited
IoTサービスグループ データビジネス担当
バイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャー
藤長国浩 ソフトバンク株式会社 常務執行役員 法人事業統括 法人プロダクト & 事業戦略本部 本部長

藤長 国浩

ソフトバンク株式会社
常務執行役員 法人事業統括
法人プロダクト & 事業戦略本部 本部長

「Digitize or Be disrupted」——。すなわちデジタライズしなければ、企業はこの先死んでしまうでしょう。GAFA(Google 、Amazon.com、Facebook、Apple)と呼ばれるデジタルネイティブの企業群のようにデータ自体を創造してしまう企業がいるなか、企業はどうやって生き残ればよいのでしょうか。

現状、企業が有するデータはサイロ化され、タッチポイントはEC、店舗、営業、マーケティング、製造などのチャネルや部署ごとにさまざまで、データ活用も限定的になっています。

Arm社の「Arm Treasure Data CDP」は、ありとあらゆるデータポイントから直接的にデータを収集し、それらのデータ統合と分析を行い、データ活用という次のステップへつなげることができます。

Arm Treasure Data CDPの概要

CDPを活用すれば、これまでほとんど勘と経験に頼って描いていた顧客像も明確になります。国内のCDPマーケットシェアは圧倒的な強さを誇り、すでにエンタープライズ企業を中心に、国内外400社超の導入実績があります。

CDPはいわゆる「マーケティングテクノロジー」だと捉えられることが多いですが、そこで得たデータはERPのような業務システムやロジスティクスやSCM(サプライ・チェーン・マネージメント)でも活用でき、その用途は「無限大」です。

CDPからあらゆるオペレーションへのアウトプットが可能

ソフトバンクでは、「Arm Treasure Data CDP」により、あらゆるデータをコンバインさせた、非常に使いやすい「B2B2Xプラットフォーム」を構築できると考えています。

例えばその活用対象は、デジタルマーケティングです。「これを買った人はこれも買った」といったごくごく単純なレコメンドではなく、もっとスマートに、もっと快適にユーザが感じる——そんなデジタルマーケティングをこれから追究していきたいと考えています。

膨大なデータの収集/分析を実現するプラットフォームをご提供

第4次産業革命と「顧客優位の時代」のデジタル変革
~CRMのためのAI活用~

小出伸一 株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長 兼 社長

小出 伸一

株式会社セールスフォース・ドットコム
代表取締役会長 兼 社長

早川 和輝

株式会社セールスフォース・ドットコム
プロダクトマネージャー

蒸気機関から電気、デジタルコンピューティングへと進化し、今、私たちの社会は第4次産業革命のさなかにあります。

それはコネクテッドデバイス、AI、ビッグデータ、IoTなどのテクノロジーによって牽引されますが、その背後には必ず「顧客」が存在していることを忘れてはいけません。

ポイントは「すべての顧客がつながる」です。

第4次産業革命 変革の流れは未来へと続く

しかし現実には、第4次産業革命に向けた取り組みとして顧客とつながることができている企業はほとんどありません。

事実、ある調査では「顧客データを活用できている企業は1%以下」であり、またある調査では「77%の消費者が企業やブランドとつながっていると感じていない」と分かりました。

これらのことを「カスタマークライシス」ととらえ、「顧客」を中心としたビジネスモデルへと変革することが、企業にとっての差別化戦略となるでしょう。

各企業にとっての「顧客」1人ひとりが、何を考え、何を期待しているかを理解する。そして、その先の体験をいかに素晴らしいものにしていくかを考える——。そんな360度の視点で顧客を理解した「Customer 360」が企業に求められています。

360度視点でお客さまに寄り添う Customer360

企業が360度の視点で顧客を理解できるようにするため、セールスフォースはCRMのためのAIアシスタント「Salesforce Einstein」を提供しています。

「Einstein」は顧客を中心に据えながら、営業・コールセンター・マーケティング・コマースなど、あらゆる接点から集約された情報を理解・学習し、「次に何を購入するか」「今後どうなるか」「どういう感情になるか」といった未来まで予測してしまいます。

「Einstein」の機能は、セールス、サービス、マーケティング、コマースなど、セールスフォースが提供するさまざまなビジネスアプリケーションに埋め込まれているため、すぐにでもビジネスに活用できます。

Salesfoece Einstein

IBMの技術とFIFAワールドカップ、ラグビー

三澤智光 日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員、クラウド & コグニティブ・ソフトウェア事業本部長

三澤 智光

日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役専務執行役員、クラウド & コグニティブ・ソフトウェア事業本部長

これは「教えて!ラガマルくん!」というAIアシスタントです。IBM Watsonには12のAPIサービスが用意されており、たった数時間でチャットのコア・プログラムを作ることができます。

スポーツとAI 教えて!ラガマルくん!

IBM Watson AssistantというAIエージェントの開発プラットフォームを使えば、こうしたテキストと写真画像を組み合わせた、複数のAI機能を活用した柔軟なAIアシスタントを開発ができます。また、あらゆるプラットフォームでWatsonが利用可能となるWatson Anywhereという取り組みも発表しています。

スポーツ・エンターテイメントではDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。グローバルでも2018年ロシアW杯の米・FOX Sports試合放映のビデオ・ストリーミングと高速ファイル転送において、IBMの技術が採用されました。

このときFOX Sportsがとった戦略は「人や設備を移動させる代わりにデータを移動させる」というもので、IBM Aspera on Cloudによりインターネット網を活用したロシア各地からの映像ストリーミングの配信と、米・ロサンゼルスでの「ほぼリアルタイム」な編集作業を可能としました。「制作費を大幅に削減しながらも多くのコンテンツ制作を実現できた」との評価もいただいています。

IBM Aspera on Cloudが選ばれる3つの特長

これらのソリューション開発に不可欠なのがクラウドですが、いざクラウドをビジネスに活用しようとすれば、テクノロジー、ガバナンス、セキュリティ、組織、さらにはベンダーロックインなどの問題がつきまとい、「オンプレミス」と「パブリッククラウド」の間に大きな崖が生じます。

しかしビジネスのためのクラウドであるIBM Cloudは、特性の異なる2種類のアプリケーション、、すなわち従来型のSoRアプリケーションとクラウドネイティブなSoEアプリケーションの両方のクラウド化に対応しています。これにより、この大きな崖の間を埋められます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)実現のためには、ビジネスと新しいテクノロジーが表裏一体であるととらえるとともに、変化への対応力を実現するそれらのテクノロジーをいち早く活用しながら「勝ち残る」視点がとても重要です。

IBM Cloud:特性の異なる2種類のアプリケーションのクラウド化に対応

サブスクリプションビジネス成功の鍵
〜アドビが実践する次なる一手「DDOM」〜

中川哲 株式会社アドビ システムズ デジタルエクスペリエンス営業本部 副本部長

中川 哲

株式会社アドビ システムズ
デジタルエクスペリエンス営業本部
副本部長

Adobeはおおよそ3つの時代に区分けできます。転換期のそれぞれでDX(デジタルトランスフォーメーション)にチャレンジしており、それはAdobeのDNAに刻まれていると言っても過言ではありません。

なかでも大きな転換期は2005~2013年頃でした。世界的経済不況に見舞われ、さらに「HTML5」へ市場が移行したことも相まって会社存続も危ぶまれました。スライドにある黄色い線が会社売上推移、青色の線が株価推移。2008年頃に売上が落ち込み、その後回復していることがわかると思います。

このときAdobeはサブスクリプションビジネスへ進出するとともに、抜本的改革を行いました。コンセプトは「Customer Experience Management」。顧客理解と体験管理、意識改革、データ重視経営へ舵を切るとともに、社内的に「先見の明を持つ」「退路を断つ」「全てガラス張りにする」という3つのディシプリン(訓練)が行われました。

現在Adobeが提供するCreative Cloudには「発見・興味→体験→購入→利用→更新」という5つのカスタマージャーニーがあり、これら5つのフェーズごとに組織や人が対置され、それぞれにKPIが設定されます。

これらはAdobe Experience Cloudを活用したもので、それによって実現する「データを通じて顧客ニーズを把握し、自社が顧客のためにすべきことを実施するデータドリブンな組織運営」を「DDOM」(データ・ドリブン・オペレーション・モデル)と呼んでいます。

AdobeはDDOMにより「誰がいつどの製品のどの機能を使ったのか」あるいは「購入以来、どの機能を使っていないのか」といったユーザ情報を知り、「バージョンの定着率はこのくらい」「何をすれば定着率を上げられるのか」といったことも分かるようになりました。カスタマージャーニーとインプロダクトジャーニーを知る——それこそが今のAdobeの強みだといえるでしょう。

Adobe Experience Cloud

後記

DX(デジタルトランスフォーメーション)時代にはあらゆる企業活動、顧客体験フローがデジタル化される。デジタル化のインパクトは、業務効率化に留まらず、新たな市場の創造にまで及ぶ。ソフトバンクでは2017年、新規事業創造の専門組織としてDX本部を新設した。ソフトバンクの有するIoT・AI・通信技術とのシナジーを生みながら、今後も日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく。

関連リンク

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