【初心者向け】Society 5.0を徹底解説!定義・技術・事例まで

"【初心者向け】Society 5.0を徹底解説!定義・技術・事例まで"

(2020年7月6日 掲載)

目次

Society5.0はAIやロボットの力を借りて、我々人間がより快適に活力に満ちた生活を送ることができる社会である。これまでの現実世界に加えて、仮想空間との融合で豊かな社会を実現していこうとしているものだ。そしてこれらは決してSFの話ではなく、現実としてすでに動き出している。Society5.0の世界に乗り遅れないためにも、本記事で定義から利用されている技術、事例までを押さえてみてほしい。

Society 5.0(ソサエティ5.0)とは

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Society 5.0の定義

Society 5.0(ソサエティ5.0)とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と内閣府の『第5期科学技術基本計画』にて定義されている。
現在のSociety 4.0(ソサエティ4.0)が抱えるさまざまな課題に対して、最新技術を利用して克服し、社会の変革を通じて日本が目指すべき未来社会の姿であると提唱された。

Society 4.0までの社会

内閣府によると、「Society 5.0は、Society 1.0からSociety 4.0に続く新たな社会を指す」とされている。それぞれ狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)と定義され、社会はこのような順序で進化・発展してきたとされる。
狩猟社会(Society 1.0)とは、農耕が始まるまでの社会を指す。狩猟や採集を生活基盤としていた原始的な社会だ。
農耕社会(Society 2.0)とは、田畑を耕し、小麦や米などの作物を育て収穫していいた社会を指す。農耕によって人々が土地に定住し始めたとされ、今日に至る社会基盤を形成したとされている。
工業社会(Society 3.0)とは、機械製品の発展などに伴い、工業化していった社会を指す。主に産業革命以後の社会を指す時に用いられ、企業文化の発達や工業化に伴う大量生産が可能となり、農業から工業へ社会構造が変化していった。
情報社会(Society 4.0)とは、インターネットや携帯電話、スマートフォンなどの普及によって世界がネットワークで繋がった社会を指す。それにより、世界のどこにいても瞬時にあらゆる場所の情報を知ることができるようになった。
このように、人間社会は狩猟時代(Society 1.0)から今日に至る情報社会(Society 4.0)まで変化し、発展しながら社会を形成してきたのだ。

Society 5.0が目指す社会

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Society 5.0が目指す社会では、サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間の融合を目指している。

現在のSociety 4.0ではフィジカル空間にいる我々が、サイバー空間にアクセスして初めて情報を得ることができるが、有効な情報が見つからない、情報を探し出すのに時間がかかるなど連携が取れていない点に課題がある。
例えば、スマートフォンを利用して情報を検索しても得たい情報になかなか辿り着けない、車のナビに目的地を入力してもルートが複数あるのでどれが最適なルートか判断が難しい、などといったケースにはSociety 4.0の課題が表れている。
こうした課題を解決するため、Society 5.0では必要なときに必要な情報が得られるよう、サイバー空間とフィジカル空間の融合を目指しているのだ。

では、サイバー空間とフィジカル空間の融合とは具体的にはどのようなことだろうか。ここでは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とAI(人工知能)の活用を例に説明する。

モノがインターネットを経由して通信を行うIoTは、人がその場にいなくても遠隔でモノの操作ができる、状態を知ることができるなど、人とモノを繋ぐ技術だ。将来的にはIoTによってあらゆるモノと人が繋がるとされている。
IoTはざまざまなネットワークを介して多くのデータを収集する。あらゆるモノにIoTが導入されたとき、そのデータ量は膨大なもの(ビッグデータ)になるため、人の手では有効活用しきれない量となる。これを有効活用するのがAIだ。
IoTで集積したビックデータをAIが素早く処理することで、フィジカル空間で生活する私たちに対し、必要なときに必要な情報を届けることができる。

IoTのセンサとインターネット、AIを活用することで、自動車の自動運転やロボットによる倉庫内作業の支援、ドローンによる宅配など、必要なときに必要なサービスが提供される社会、つまりはSociety 5.0が実現するのだ。

このようにSociety 5.0は人とモノが繋がり、より効率的で快適な社会を目指していると言える。

Society 5.0が解決する課題

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Society 5.0の社会では現在のSociety 4.0の社会が抱える多くの課題を解決することが期待されている。具体的にSociety 5.0がどのような課題を解決するかを見ていこう。

持続可能な産業化の推進・人手不足

SDGsに沿った持続可能な産業化の促進もSociety 5.0の重要なテーマだ。Society 5.0では、食糧生産やエネルギーサービス、物流に至るまで、効率的で質の高いインフラが必要だ。背景には日本が抱えている少子高齢化に伴う、人手不足がある。
ここでも活用するのはIoTやAIだ。例えば、建設現場では無人の建設機械が土砂掘削や排土を行う。人は遠隔操作で建設機械に信号を送り、建設機械に設置されたカメラの映像を監視すればよい。IoTやAIが行えることは人に変わって任せることで人手不足解消を目指していく。

食料の増産やロス

Society 5.0では、食品の増産やロスの削減を目標にしている。
この目標は国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に沿ったものでもある。SDGsとは、飢餓や貧困、健康や福祉、エネルギーや気候変動などの問題を2030年までに解決し、持続可能でよりよい世界を目指そうという国際目標だ。
消費者庁の発表によると、2016年度の日本の食品ロスは643万トンとされており、日本人1人当たりの年間食品ロス量は51Kgになるという。この食品ロス量は年間1人当たりの米の消費量に相当する。

さらに世界に目を向けると、食品ロスの量は年間13億トンとなり、生産されている食料のおよそ1/3が廃棄されているのが現状だ。一方で、飢えや栄養失調で苦しんでいる人は約8億人もおり、今後の世界的な人口増加に伴い、さらに増えるのではないかと考えられている。
このような課題を解決するために食品の増産やロスの削減は必須事項と言える。

Society 5.0では、最先端技術とデータを利用したスマート農業と呼ばれる新たな農業の推進により、この食料増産と食品ロスの問題に取り組んでいる。
スマート農業が実現すれば、生産者は効率的・計画的に生産することができ、食料の増産が期待できる。また、計画的に生産を行うことで無駄な食料が減り、ロスの量も減っていくと考えられている。

温室効果ガス(GHG)排出

地球温暖化は人類が解決しなければいけない課題のひとつだ。
地球温暖化の主な原因は温室効果ガス(GHG)の排出とされている。環境省によると2017年の日本の温室効果ガスの排出量は12億9,200万トンと多く、世界の中でも上位に位置する排出量となっている。
そのため、日本では温室効果ガス削減のため、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定した。日本の目標は2050年までに温室効果ガス80%減の達成である。
この目標を達成するために、日本は再生可能エネルギーの主力電源化や最新技術を用いての環境イノベーション戦略を推進していくとしている。そして、最終的には「脱炭素社会」の実現を目指している。
Society 5.0の取り組みの一環として、スマートシティの取り組みを通したエネルギーの効率的な利用が徐々に始まっている。

高齢化に伴う社会コスト

日本は世界で最も高齢化率が高い国だ。総務省によると2019年9月時点での65歳以上の高齢者の人口の割合は28.4%となっており、今後も割合は増加していくとしている。
少子高齢化の進行によって高まるのが医療・介護の需要で、医師の高齢化や人手不足などが解決しなければいけない課題として挙げられている。加えて、人口減による地域医療格差が起こることも懸念されている。

Society 5.0では医療・介護の需要に応えるために、オンラインでの遠隔診療や、医療・介護現場におけるロボットやAIの利用を促進しようとしている。最新技術を駆使して、医療・介護の需要に応え、地域医療格差をなくすことを目指しているのだ。

地域間の格差

日本では「人口、財政力、所得」などの地域間の格差が現実のものとなっている。
総務省によれば東京や埼玉など関東圏で人口が増加している一方で、一部の地方では著しく人口が減少しているという。
人口が減少すれば、地域の財政力は必然的に落ちていく。そのため、公共サービスなどを十分に行うことができず、また人が離れていくという悪循環になっていく。格差が生じれば、人はより良い場所を求めて移動していくのは当然だろう。

こうした地域間の格差を是正するために、Society 5.0では自動運転バスによる地方の交通手段の確保などの取り組みを進めている。
自動運転バスによる地方の交通手段の確保は、先述の高齢化社会への対応にもつながる。高齢化が進むとドライバーの確保が難しくなるだけでなく、採算性の悪化からバスの運行そのものが困難になることも懸念される。Society 5.0では、地方の人口が減少して高齢化が進んだとしても、地域住民が快適な暮らしを送ることができる社会を目指している。

Society 5.0を支える技術

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IoT

IoT(Internet of Things)とはモノがインターネットを経由して通信を行い、その情報に基づき最適な制御を実現する仕組みである。
PCやスマートフォンに留まらず、家電製品や車、建物など、あらゆるモノがその対象となる。
IoTが進むことで、モノのデータを収集、分析、活用、連携できるようになる。例えば、離れた場所にあるモノの動きを監視する、スマートデバイスとモノを連携させて遠隔操作するなどが可能になる。
IoTが活用されている事例も多くあり、今後は業種を問わずにさらなる広がりを見せていくだろう。

ビッグデータ

ビッグデータとは、データの量(Volume)、データの種類(Variety)、データの発生頻度・更新頻度(Velocity)の3つのVからなる、巨大なデータ群のことだ。
総務省ではビッグデータを『⑴政府:国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」、⑵企業:暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したデータ、⑶企業:M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ、⑷個人:個人の属性に係る「パーソナルデータ」』の大きく4つに分類されたデータであると定義している。
日々、リアルタイムに更新されていくデータを記録し、解析を行うことでこれまでにない新たな仕組みを生み出すことが期待されている。
そのためSociety 5.0では、あらゆる課題を解決するために膨大なデータをリアルタイムに蓄積させることが求められている。

AI

AI(Artificial Intelligence)とは、日本語で人工知能と訳されている。
AIの定義については未だ定まっていないが、Society 5.0の文脈では高度な情報処理能力と機械学習などの学習機能を有し、必要なときに必要な情報を提供できるシステムや仕組みとして、AIに期待が寄せられている。
IoTによって膨大な量のビッグデータが蓄積されていく。そのデータを解析して最適な情報を導き出すのがAIの役割だ。将来的にはAIによって新たな価値が社会にもたらされるだろう。

5G

5Gは、高速かつ大容量のデータを送受信することが可能な、「第5世代移動通信システム」と呼ばれる新たな通信手段である。
通信のタイムラグを解消する低遅延の技術が用いられており、離れた場所でもリアルタイムにデータ通信ができるとされている。さらに、一度に多くのデバイスと接続することも可能になるため、今後IoTの発展には欠かせない技術となっていくだろう。

ロボット

Society 5.0ではロボットと共存する世界になるとされている。
ロボットといっても種類はさまざまだ。工場でものづくりを行う「産業用ロボット」、AIを搭載した「スマートロボット」、人間のように顔や手、足などを持った「サービスロボット」などである。
これまでのロボットと異なる点は、人の手を借りずに人を助けるという点だ。これまでは人が操作することで動かしていたロボットを、Society 5.0では自動で動かすことが想定されている。ロボットが人の手を借りずに自動で動くようになれば、物流や介護支援など多くのことが期待できる。
一人一台スマートフォンを持つのが当たり前になったように、将来的には一人一台ロボットと生きるのが当たり前になるかもしれない。

ドローン

ドローンとは無人航空機の総称だ。個人利用からビジネス利用まで世界的に活用が進められている。
例えば、農業では広範囲に渡る農薬散布などに利用されており、人間の手で1時間かかっていた範囲を10分で散布することが可能だ。また、物流でも過疎地域や高齢者が多い地域などへ宅配する実証実験が始まっている。
これまでは配達員によって届けられていた荷物がドローンによって運ばれるのが当たり前になる世の中になるかもしれない。

自動運転

自動運転もSociety 5.0で実現を目指す大きな技術だ。
自動運転の技術は「認知、判断、操作」の3つの処理を連動して行うことが必要とされている。「認知」は周りの環境や自車のいる位置を正確に把握し、「判断」は状況を踏まえて加速、減速、曲がるなどを選択する。「操作」は文字通り、これまで人が行なっていたものを自動で行う。
自動運転が実現すれば、交通事故の抑制が期待されるほか、過疎化や高齢化が進む地方における交通インフラの維持も可能になる。

キャッシュレス決済

キャッシュレス決済とは現金以外で支払いを行う決済方法のことだ。
Society 5.0では、クレジットカードや交通系などの電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレス決済がより普及することを想定している。キャッシュレス化が進むことにより、消費者は現金を持ち運ぶ必要がなくなり、事業者は現金に関する業務が軽減される。先進的な取り組みとして、利用者が店内の欲しい商品を選んだ後に出口ゲートでQRコードを読み込ませるだけで買い物が完了する、レジのない店舗なども生まれてきている。
キャッシュレス決済が進めば、Society 5.0ではレジという単語がなくなるかもしれない。

リアルタイム翻訳

リアルタイム翻訳とは文字通り、外国語の文字や音声をリアルタイムに翻訳することを意味しており、この技術の実現によって誰もが言語の通じない相手と円滑な意思疎通が可能になる。
現在では翻訳アプリや通訳を介してのコミュニケーションが一般的だが、Society 5.0では相手の言語をリアルタイムに翻訳できる機器を耳につけるなどして、これらを介さずにやり取りすることを目指している。
リアルタイム翻訳の技術が一般的になれば、違う言語を話す人どうしがリアルタムでスムーズにコミュニケーションを取ることができるようになるだろう。

VR(Virtual Reality:仮想現実)

VR(Virtual Reality)は仮想現実と訳され、現実空間から離れ仮想空間にあたかも自分がいるように感じることができる技術のことだ。
現在では主にゲームなどに利用されて世間への認知が広まっているが、旅行に行かなくても旅先の雰囲気を味わうことができる、住宅を購入する際の内見がVRでできる、建築現場や線路工事での事故など実際には体験できないことを疑似体験する安全教育など、ビジネスの世界でもVRの活用が広まっている。
その場にいなくても現実と同じように感じることができるため、より効率的にビジネスは加速して行くだろう。

Society 5.0への政府の取り組み

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公共サービスのスマート化

現在、行政手続きなどは基本的に紙での手続きが一般的だ。しかし、紙の手続きはユーザの利便性を損ねるだけでなく、膨大な紙の管理・保管や、紙に記載された情報を基幹システムへ入力する手間などデメリットが多い。
そのため、政府はSociety 5.0を目指すにあたり、行政手続きの電子化を行うことで手続きのスマート化を目指している。さらに、データを官民で連携させることで煩わしい手続きをワンストップで完了させるといった仕組みの実現に向けても動いている。
例えば、東京都足立区ではRPA (Robotic Process Automation:ロボットによる業務プロセスの自動化)をAI-OCR(AIを活用し画像に含まれる文字をテキストデータに変換する技術)を活用して、申請書類処理の自動化を検証した。結果、対象とした業務の中で、転居届の処理など6業務において年間およそ1,400時間の削減効果が見込めるという成果をあげた。
このように、公共サービスのスマート化の実現には先述したビッグデータやAIの有効活用が必須になるだろう。

ITを利用したキャッシュレス社会の実現

日本政府は「現金に縛られず、簡単に、安く、安全に支払いや送金ができる社会」を目指し、現金を必要としないキャッシュレス決済の推進に向けて動き出した。
キャッシュレス決済での支払いは先述したQRコードでの支払いが促進されおり、中小事業者へのキャッシュレス決済端末の導入補助などを行っている。
また、合わせて統一QRコードの実用化や税金や公共料金のキャッスレス化などインフラの整備を行っている。

多様な働き方の実現

日本政府は、人々が通勤しオフィスで働くという従来の考え方から、時間や場所にとらわれない多様な働き方へのシフトを目指している。
最近になって一般に浸透したテレワークも多様な働き方のひとつだ。テレワークとはICT(情報通信技術)を利用した、時間や場所にとらわれない働き方であり、企業が導入するにあたっては、自宅やサテライトオフィスでもオフィスと変わらずに仕事ができる仕組みを整備することが必要となる。
また日本政府は人生100年時代を掲げており、70歳までの就業機会の確保、女性や外国人登用などの仕組みづくりも積極的に進めている。

都市一極集中から地方活性化へ

日本は人口の都市一極集中が進んでしまい、地方の人材が減少している。
総務省が2018年に発表した資料『内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局』によると、2000年から2015年の間に地方の若者(15歳〜29歳)の人口は29%も減少したという。この結果を受け、人口が減少しても地域社会および経済の維持、活性化を図るため、地域産業の担い手の確保が必要だとしている。
しかし、地方の中小事業者は、どのような人材が不足しているか、どのような機能を担ってもらうべきかが明確化できておらず、また人材紹介事業者も地方への事業展開が消極的という課題がある。
こうした現状を打破するため、「大都市圏の人材とのマッチング機能の抜本的強化、大都市圏から地方への人材供給の促進を促す仕組みの構築」などを行っている。

Society5.0を実現する人材育成

Society5.0の実現にはIoTやAIといった技術の利用が必要不可欠だが、決してこれらに支配される社会ではなく、あくまでも一人一人の人間が中心になる世界だとしている。そのため、全ての国民がAIやデータ活用の知識を持ち、AIに代替されない力を身に付けることを目標にしている。
それには教育が欠かせない。大学では文理問わずに数理・データサイエンス・AI教育を展開、初等教育ではICT環境の整備を行いSTEAM教育の充実が図られている。STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・教養)、Mathematics(数学)の5つの要素を盛り込んだ教育のことであり、新たな時代を作る人材の育成に向けて提唱された概念である。
小学校では2020年からプログラミング教育が必修化となったことも新たな時代の教育の流れと言えるだろう。

その他の取り組み

日本では先述した取り組みに加えて、AIやビッグデータを活用し、社会を変えるような都市作りを目指す「スーパーシティ」構想や、新たなビジネスモデルの創出に向けてのデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進、スポーツや文化芸術などによる地域活性化などを促す取り組みを行っている。 特にスーパーシティ構想では、「生活を支える複数のサービスが導入されていること、複数のサービスがデータ連携を通じて相乗効果を発揮していること、その成果が住民に評価されるような事業になっていること」の3つの条件を満たす「まるごと未来都市」計画を掲げている。
サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した街がスーパーシティと言えるだろう。そしてこうした街がSociety 5.0では当たり前になるのかもしれない。

Society 5.0の各分野の事例

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モビリティ

モビリティとは自動車産業界がIT技術を駆使して、人々の移動を効率かつ快適に行うことを目指すものである。

モビリティ分野での事例としてまず挙げられるのは「MaaS(マース)」だろう。MaaSは電車やバスといった公共交通機関だけでなく、タクシーやカーシェアリング 、レンタルサイクルまであらゆる交通サービスを一元的に管理したものだ。
利用者はスマートフォンのアプリを利用して出発地から目的地までの移動手段の検索から支払いまでを全てアプリ上で完結することができる。

また、ソフトバンクとトヨタ自動車が共同出資したMONET Technologies株式会社では、移動診察車によって医師による遠隔診療を受けるサービスを開発し、長野県伊那市で実証実験を行っている。

さらに、BOLDLY では自動運転バスの実証実験を自治体や交通事業者と連携して行っている。同社のモビリティ技術として挙げられるのが「自動運転車両運行プラットフォーム Dispatcher(ディスパッチャー)」だ。DispatcherはPC1台で複数のバスを遠隔監視でき、運行ダイヤを組んでの走行指示、GPSによるバスの位置情報の把握、搭載したセンサによる走行状況の確認など、事業者が必要な情報をリアルタイムで受け取ることができる。すでに2019年10月に千葉市美浜区の約1.5kmの巡回コースを走行しており、実用化に向けて動いている。
こうした自動運転バスは地域住民の足になるのに加え、バスドライバーの人材不足解消にも期待されている。

参考:MONET Technologies
参考:BOLDLY

医療・ヘルスケア

医療・ヘルスケアは政府が重点的に取り組んでいる分野だが、総務省の「平成29年度 情報通信白書」によると医療・介護分野でのICT活用割合は40%未満であるという。
しかし、Society 5.0の実現に向けてICTの事例も増えてきている。
まずは、介護サービス利用者のスマートホーム化だ。要介護者が住む家をインターネットで繋いで、情報をリアルタイムで得ることを目的といる。ベッドセンサを利用しての睡眠時の動静や排泄センサで尿量を確認するなどを行い、効率的な情報収集を行っている。
医療分野ではタブレットを利用してのオンライン診療や、無人自動車やドローンを利用しての薬の配布を行っている。

アメリカでは自動運転開発技術のNuro社が処方箋を注文した人へ、3時間以内に無人自動車で配送するシステムを試験導入している。また、利用者側は自身のIDを提示しなければ受け取れない仕組みも備え付けている。
今後、地域による医療格差がなくすためにも上記のような技術の実用化が待たれている。

参考:Nuroの無人自動車による配送システム

ものづくり

ものづくりではAIやロボットの積極的な導入が進められている。導入を行うことで、作業の効率化や人件費の削減、柔軟な生産計画や在庫管理などが可能になるなど効果が表れやすいからだ。
また、これまで人から人へと継承されていた技術を人からロボットへ継承できるようになっている。

株式会社コスメックは、自社工場に産業用ロボットを設置したところ、部品生産性が30%増強されたとしている。また、コネクテッドロボティクス株式会社は自動調理ロボットを小金井駅のそば屋へ導入した。小スペースに入り込んだロボットは1時間あたり40食の調理が可能なり、効率化が図られたという。
このような事例から、今後はロボットが作業可能な範囲はロボットが行うのが当たり前になっていくはずだ。

参考:コネクテッドロボティクスの自動調理ロボット

農業

農業分野は人手不足が叫ばれている分野の一つだ。その課題を解消するために、作業の効率化や生産性の向上は必須であろう。

株式会社クボタは「自動走行トラクター」を農業者向けに販売している。トラクターは2台あり、1台は有人で操作、もう1台は無人での操作だ。2台のトラクターは連動するように動き、かつ正確に作業を行うことができる。1人で2台のトラクターを同時に動かすことで作業時間の短縮や計画的な作業が可能になったという。

また、パナソニックはAIが搭載された「トマト収穫機」を開発している。AIの画像認識機能を利用して、トマトのRGBの割合を判別、色合いからAIが収穫に適切かを判断して収穫まで行うというものだ。
収穫は全自動のため、夜も動かすことができ生産性の向上が期待される。また、収穫に際して枝の障害物があっても対応して収穫できるとのことだ。

参考:クボタの自動走行トラクター(日刊工業新聞電子版)
参考:パナソニック「トマト収穫ソリューション~AIで農業の人手不足解消へ~トマトを自動で収穫するロボットが活躍」

食品

食品は私たちの生活と切っても切り離せないものだ。
セブン&アイ・ホールディングスはNECのAI技術を利用して、在庫管理の強化を目的とした実証実験をグループ会社のイトーヨーカドー大森店にて行った。
AIによる需要予測に沿った結果、発注業務の生産性が30%〜40%向上、欠品率は27%減少したという。これまで経験者の予測によって行っていた需要予測をAIが大きく上回った結果だ。今までの人の経験と予測による発注では、商品ロスを抑えるために商品量を抑えた発注にならざるを得なかったが、AIによる需要予測を取り入れることで不要な在庫を抱えることなく、多くの商品を取りそろえることができ、機会損失が減って店舗の業績向上につながった。
今後、バリューチェーン全体での導入を進めることでフードロスを削減し、SDGsで求められる持続可能な消費の実現に向けて前進することを見込んでいる。

参考:セブン&アイ・ホールディングスとNECの実証実験

金融

金融機関でもAIの利用は促進されている。ウェルスナビ株式会社は預けた資産を「ロボアドバイザー」と呼ばれるAIで管理し、適切な運用を長期的に行うサービスを展開している。
これまでの投資には商品の選定や発注、リバランスなど考えることが多くあり、敬遠する人も多かった。しかし、ウェルスナビではこのような作業をAIが行い、運用の手間をゼロにすることで、投資や資産運用を促した。銀行に預金するような感覚で資産を預けることが可能だ。

また、株式会社マネーフォワードではクラウドシステムを利用して、企業の銀行口座やクレジットカード情報と連携して自動で帳簿を作成する会計システムを開発した。帳簿の作成はAIがビッグデータの情報を基に行い、利用者はスマートフォンから自分のお金の流れを管理することができる。このケースではAIの活用により利用者の会計に充てる時間が従来の半分に短縮されたという。これらもAIを利用した効率化と言えるだろう。

参考:ウェルスナビのロボアドバイザー
参考:マネーフォワードの会計システム

エネルギー

エネルギー分野では温暖化の対策などにAIが利用されている。
現在でも、各時間帯の電力使用量、発電所の稼働状況などのデータに基づき、効率的に電力を供給するようにAIがコントロールしている。

また、家庭向けにもAI技術が導入されている。三菱電機株式会社は「Maisart(マイサート)」と呼ばれるスマートメータを住宅に設置することで住宅全体の電力使用量に加え、家電ごとの電力使用量を推定するAI技術を取り入れた。家族構成や保有している家電を基に電力使用量をデータ化し、利用者の省エネ意識を高める狙いがあるという。

参考:三菱電機 Maisart(マイサート)

観光

観光は政府が経済成長の柱として考えている産業のひとつだ。そのため、あらゆるシーンでIoTなどの先端技術が利用され始めている。

NEC、株式会社南紀白浜エアポート、株式会社白浜館は合同で「IoTおもてなしサービス実証」を行なっている。利用者は南紀白浜空港で専用のQRコードから自分の顔やクレジットカード情報を登録する。
すると飲食店や観光施設での買い物は全て顔認証で完了し、現金やクレジットカードは不要だ。加えて対象施設のサイネージには登録された顔を認識すると、その人に合った観光案内を表示させるという。利便性が向上し、財布などを出さないため盗難の恐れも低減されるとのことだ。

また、JR東日本スタートアップ株式会社と新潟市は「新潟トラベルシャトル」という実証実験を実施し、スマホアプリを利用して観光ニーズから送迎ルートの最適化をAIによって行った。本実証実験では、タクシーでの移動において相乗りサービスを活用した結果、利用者の移動費用の削減や地域観光の活性化に期待がもてる結果となった。

参考:NEC、南紀白浜エアポート、白浜館による実証実験「IoTおもてなしサービス実証」
参考:JR東日本スタートアップと新潟市による実証実験「新潟トラベルシャトル」

公共サービス

公共サービスでも、地域住民への満足度向上のために最先端技術が導入され始めている。

福島県会津若松市ではAIを活用した問い合わせ自動応答サービスを開始した。自治体へのよくある問い合わせや各証明書の発行手続き方法などLINEの対話形式のように答えていくサービスだ。
24時間365日いつでも対応が可能なため、地域住民の満足度は80%を超えている。さらに、問い合わされた内容や件数、問い合わせてきた年代などのデータを集積、分析することでさらなる公共サービスの向上に生かそうとしている。

また、千葉県千葉市では地域専用のアプリ「ちばレポ」を利用して、市内の道路の損傷具合をAIが測定している。市民が撮影した写真や車載カメラで撮影された写真を利用しており、これまで専門の作業員が現地に赴き確認していた業務をAIが行うことで効率化を図ったという。
公共サービスでのAIの活用などが進めば、私たちの暮らしはさらに快適になっていくと実感できるだろう。

参考:福島県会津若松市の「LINE de ちゃチャット問い合わせサービス」

防災

日本は地震、火山、台風など多くの災害の危険性がある国として知られている。そのため、被害を少しでも抑えるために防災への労力は惜しむべきではないだろう。

株式会社ウェザーニュース、One Concern、損保ジャパン日本興和株式会社は合同でAIを活用した防災、減災システムを展開している。2017年に発生した熊本地震をモデルケースに、発生前、発生時、発生後の3つの場面でのデータの有効活用を行う形だ。
発生前にはこれまでの地震のデータから被害予測をシミュレーションし、避難経路の予測などを行う。発生時には被害の状況をリアルタイムで検知し、情報を受けた作業員の効率的な初動を目指している。また、発生後は被害データを収集し、次の災害発生時の減災へ生かすとしている。
今後も首都直下型地震を始め、南海トラフ沖地震など大きな地震が発生する可能性があるため、こうしたAIの活用はますます力を入れておくべきだろう。

参考:ウェザーニュース、One Concern、損保ジャパン日本興和による防災、減災システム

まとめ

Society 5.0は決して理想の世界などではなく、既存技術の延長線上にある実現可能な世界であると言える。今、その実現に向けて政府はもちろんのこと、多くの企業が取り組んでいる。
Society 5.0はAIやロボットと共に生きていく社会になっていくが、決してAIやロボットに支配され、監視されるような未来ではないと内閣府も明言している。全ての人にとって快適で質の高い社会の形成へ向けて、人を中心とした便利で持続可能な社会が来ることを期待したい。

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